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別居中の婚姻費用分担義務-過去の婚姻費用請求を明確に認めた判例紹介2

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平成29年 5月 9日:初稿
○「別居中の婚姻費用分担義務-過去の婚姻費用請求を明確に認めた判例紹介1」の続きです。
過去の婚姻費用分担を認めた事例として、夫が申立人(妻)をおいたまま別居家出し、所在不明であつた4か月間、申立人が生後間もない頃から6年余にわたり養育してきた夫と先妻との間の子を養育するのに要した費用は、過去の婚姻費用の分担として夫が支弁すべきであり、その月額は、さきに調停で定められた夫と申立人との間の子の養育費と同額で計算するのが相当であるとして、この4か月分の支払を命じた昭和49年11月15東京家裁審判(家月27巻10号55頁)全文を紹介します。

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主  文
一 申立人と相手方Yとの間の当庁八王子支部昭和48年(家イ)第131号夫婦関係調整事件につき同年6月12日に成立した調停条項2を次のとおり変更する。
 「相手方Yは申立人に対し昭和49年11月1日から両名別居中婚姻費用分担として一ヵ月につき金3万円あて各月末日限り申立人に送付して支払うべし。」
二 相手方Yは申立人に対し昭和48年1月分から同年4月分までの過去の婚姻費用の分担として金8万円を支払うべし。
三 申立人の相手方両名に対する事件本人Aの引渡並びに事件本人Aとの面接を求める申立はこれを却下する。

理  由
一 (申立の趣旨)

(1)申立人は相手方Yに対し婚姻費用の分担を求めた。(その内容は右当事者間の当庁八王子支部昭和48年(家イ)第131号夫婦関係調整調停事件につき同年6月12日成立した調停条項2に定められた金額についてこれを金5万円に増額して貰いたいことと、その余の給付を求めるという。)(2)申立人は、相手方両名に対し事件本人の引渡し並びに面接を求めた。

二 (事実関係)
 記録中の戸籍謄本、家裁調査官の報告書、その余の資料を総合すると次の事実が認められる。
「(1)相手方Yは昭和41年9月3日(松岡)Bと婚姻し、両名間に同42年7月22日長男Aが出生したものであつたところ、同年12月18日その父母は長男Aの親権者を父(相手方)Yと定めて協議離婚した。相手方Yはついで翌43年4月19日申立人と婚姻した。相手方Yは、前婚当時妻Bと別居状態のとき当時の勤め先で申立人と知合い、同年42年7月頃から同棲関係に入り、申立人はYの求めにより生後間もないYの子である右A(事件本人)を養育する外ない事情となつてこれを育て、次第に愛情も深くなつた。相手方Yはその後前記のとおり前妻Bと離婚する一方勤めを辞め、婦人服卸業を自営し他方申立人との婚姻届をしたが、相手方Yと申立人の夫婦関係もまたその後悪化した。右両名の夫婦関係が悪化した理由には、申立人妻がきちようめんなのに対して夫が、自営業の業績をあげるために帰宅の時間などが不規則になり勝ちであつたことに対する妻の理解に欠ける点があつたことも算えられる。

(2)かくて両名の間には離婚話も出るようになり、昭和48年初め頃から別居の状態となり、両名間に前掲家事調停事件が係属し、当庁八王子支部昭和48年(家イ)第131号事件について同年6月12日成立した調停条項において(イ)申立人Xと相手方Yの夫婦は当分別居し、両名間の長男治はXにおいて監護養育すること、(ロ)YはXに対し長男治の養育費として昭和48年6月から右別居期間中一ヵ月金2万円宛各月末日限り右八王子支部に寄託して支払うことと定められた。

(3)然るに右調停後、相手方Yの所在が判らなくなる一方申立人Xは自分の長男治(昭和43年9月29日生)と先妻の子Aとの二名の幼児を抱え生活にも困窮するようになつたので、Yの行方を捜索し、漸く同48年3月頃Yが○○市で相手方しず江と同棲していることを見出した。相手方Yは申立人に対し事件本人Aは自分で育てると言つて、これを引取り、Yの両親のもとに頂けた。これより約10日位後申立人は事件本人Aをそれまで5年余り育てた愛情に惹かれ同人をYの両親のもとから自分のもとに連れ戻した。そこでこれを知つた相手方Yは翌日位に自分の子だから自分で育てる旨申立人に申し向けて、Aを同人のもとから連れ帰り、その頃(同48年4月頃)以降相手方両名の手許において養育し今日に至つている。」

三 (判断)
 申立人は本件において婚姻費用分担及び子の引渡しを求めているが、便宜後者の申立に対する判断を先にし、前者の申立に対する判断を後にすることとする。
(一) 事件本人Aは前記認定事実から明らかなように相手方Yの長男であり父Yのもとで養育されているものであつて、申立人の子ではない。もつともYが申立人と同棲し、婚姻同居した間申立人は夫であるYに対する情愛に基づいてAを養育し、夫のYのため尽すと共に、Aに対しても深い情愛を生ずるに至つたことは首肯することができる。そして申立人の立場に立つてみれば生後間もない頃から同人を養育し曾て同人が申立人になついていたであろうことも充分察せられると共に、現在Yと申立人は法律上は夫婦であり乍ら、別居状態にあり、他方Yは愛人たる相手方しず江と同棲し、Aが両名のもとに居ることに対する申立人の感情の動きも理解できないわけではないが、申立人はAとの間に生理的親子関係も法律上の親子関係もなく、またAの後見人であるというわけでもない。

 そして記録によれば、Aは申立人の引取りを求めているわけでもなくむしろこれを求めていないものと認められる。以上のとおりの事実関係にある以上申立人がAの引渡を求める法律上の理由があるものとは認められない。申立人は若しAの引渡しが認められなければ、同人に面接交渉できる措置を求めるものの如くであるが、年少者である事件本人に対する面接は子の福祉の見地から考慮されるべきものであつて、申立人の求めだけで認められるべきものでもなく、また事件本人の福祉のために必要であるとは認められないから、申立人の右の申立はいずれもこれを容れることができない。

(二) 次に婚姻費用分担の申立について。
(1) 記録によれば次のとおりの事実が認められる。「申立人は肩書地の愛の家(母子寮)において長男治と二人で生活している。そして申立人は小学校の給食婦として勤務し、給与として月額約7万8000円を得るほか、相手方Yからの送金がある。その送金は、前顕調停に基づく月額金2万円のほか昭和49年7月以降はYからこれに毎月金1万円を任意附加したもの(月額金3万円となる)である。(これを加えると申立人は一ヵ月合計金10万8000円の収入を得ている。)」

 他方申立人の生計における支出は、同人の家裁調査官に対する陳述によれば「月額金10万5000円(内訳、食費金5万円・光熱費4500円・生命保険掛金1万円・衣料費金1万円・テレビ洗濯機類月賦金1万円・教養費金1万円・雑費金1万円)を要するほか、現在は家賃支出がないが近く右母子寮を出て○○ハウスなる貸室を賃借する予定のため賃料月額金4万7000円及び住居移転のための前家賃・敷金・礼金・運送賃に約30万円を必要とする」という。ところで申立人の右生計費はこれを裏付ける資料がないが、その内訳を点検するのに生命保険掛金の如きは不要でないにしても、緊急不可欠のものではないばかりでなく、その余の費目の各金額も計数を前記収入金総額に符合させたものと認められるふしもあり、真実の生計費を摘示しているものとは認められない。

 そして母子二人の住居できる貸室の賃料として月額金2万5000円は必要であると認められ(申立人のいう月額4万7000円は相当であると認められない)、他に特段の事情は認められないから申立人母子の生計費は前掲各計数を参酌すると住居費を含め一ヵ月合計金10万5000円が相当であると認められる。申立人は○○ハウスを賃借して、これへ移転するために相手方Yから少くも金15万円ないし20万円位の支払を得たいというものの如くであるが、申立人母子は現在母子寮に住まつて居るもので、同所から迫立てを受け、他へ移転しなければならない緊急の必要に迫られている特段の事情があるものとも認められないから、申立人のため前示婚姻費用分担金の算定に住居費を算入するにしても、申立人の右の要求はたやすく容れることができない。

 そこで相手方Yの収支について次に検討する。記録によれば次のとおり認められる。「相手方Yは婦人服卸業による収入が昭和49年9月分において、仕入金額金103万8800円、売上金127万5700円、差引金23万6900円となるのに対して、その支出は一ヵ月自動車月賦金2万6000円、ガソリン代金3万円、職業上の経費金3万円、生計費金10万円、申立人への送金3万円、住居費金1万5000円(家賃金5万5000円のうち兄二名から補助があるのでYの支出は1万5000円で足りる)以上合計金23万1000円となり、その収支は漸く償つている。」そしてYの右収支の計数は概ね首肯できるところであり、同人は申立人に対し毎月金3万円程度給付しているところであることが認められる。

 以上のとおりの事実関係をすべて考慮に入れると、申立人に対するAの引渡しは認められないこと前記のとおりであるから、申立人は長男Cと母子二名の生計を立てるべきものであり、申立人の月額約金7万8000円の収入を以てしては一ヵ月の前示認定の生計費金10万5000円に約金2万7000円不足するところ、昭和49年7月以降相手方Yから一ヵ月につき金3万円の送金がなされていることでもあるから要するに、長男治の養育費について成立した前記八王子支部における調停条項2を本審判主文一のとおり増額変更するのが相当である。

(2) 申立人の婚姻費用分担の申立における申立の趣旨を、同人の陳述と対照するときは、単に将来の費用に関する分のみならず、申立人がAを養育した過去の養育料を含めて婚姻費用の分担の支払を求める趣旨であると解せられるので、以下右の過去の婚姻費用の分担について検討する。

 さきに認定したとおり申立人はAをその生後間もない昭和42年8月頃から相手方YがAを連れ去つた同48年4月頃まで相手方Yのために養育したのであつたが、同人は昭和48年1月頃から同年4月頃まで申立人をおいたまま別居家出し、所在不明であつたからこの間申立人がAを養育するのに要した費用は過去の婚姻費用の分担としてYにおいて支弁し申立人に支払うべきものであるところ、その数額は、同年6月12日に成立した八王子支部における調停で、治の養育費が1ヵ月金2万円と定められたことに徴して、Aのための右養育料も同額である月額金2万円を以て計算するのが相当であるから、右期間である同年1月から4月までの4ヵ月を1ヵ月金2万円に乗じて得た金8万円と算定することとする。従つて相手方Yは申立人に対し昭和48年1月分から同年4月分までのAの養育に要したとみられる金8万円を過去の婚姻費用分担として支払うべきものである。


四 よつて主文のとおり審判する。
 (家事審判官 長利正己)
以上:4,539文字

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