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離婚後の再婚と養子縁組により養育費の減額を認めた高裁決定紹介

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平成30年 9月14日(金):初稿
○離婚後に再婚し、再婚相手の子らと養子縁組をした場合、事情の変更があったとして、離婚の際に合意した養育費の減額を認め、右合意の趣旨を考慮して養育費の額を算定した平成30年1月30日札幌高裁決定(判時2373号49頁)全文を紹介します。


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主   文
一 原審申立人の本件抗告に基づき、原審判主文第一項を次のとおり変更する。
当事者間の旭川地方法務局所属公証人小鹿愼作成の平成27年××月××日付け子の監護に関する契約公正証書(平成27年第×××号)第二条第一項に定められた未成年者の養育費の支払義務のうち平成29年××月分以降について、次のとおり変更する。
「甲(原審申立人)は乙(原審相手方)に対し、丙(未成年者)の養育費(学費に要する養育費を含む。)として、平成29年××月から丙(未成年者)が満20歳に達する日の属する月まで、一か月金2万円ずつを毎月5日限り、持参又は乙(原審相手方)の指定する金融機関の乙(原審相手方)名義の預貯金口座に振り込んで支払う。
振込手数料は甲(原審申立人)の負担とする。
二 原審相手方の本件抗告を棄却する。
三 手続費用は、原審及び当審とも各自の負担とする。

理   由
第一 抗告の趣旨及び理由
一 原審申立人

 別紙抗告状《略》、同抗告理由書《略》及び同意見書《略》(いずれも写し)のとおり

二 原審相手方
 別紙抗告状《略》、同抗告理由書《略》及び同抗告審意見書《略》(いずれも写し)のとおり

第二 事案の概要
 本件は、原審申立人が、旭川地方法務局所属公証人小鹿愼作成の平成27年××月××日付け子の監護に関する契約公正証書(平成27年第×××号)第二条第一項に定められた未成年者の養育費月額4万円の支払義務のうち平成29年××月分以降について、原審申立人の収入が減少し、また、原審申立人が再婚し、再婚相手の子らと養子縁組をしたことにより事情変更があったとして、上記養育費を月額6616円に減額することを求める事案である。
 原審は、平成29年××月分以降の上記養育費の額を月額3万3000円に減額する旨の審判をしたところ、原審申立人及び原審相手方において、いずれもこれを不服として本件抗告をした。

第三 当裁判所の判断
一 認定事実

 本件において認定することができる事実は、次のとおり補正するほかは、原審判の「理由」中の「第二 当裁判所の判断」の一記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原審判二頁12行目「第二条」の後に「第一項」を加える。
(2)同二頁25行目「再婚し、」の後に「再婚相手並びにその長男(平成19年××月××日生)及び長女(平成24年××月××日生)と同居し、」を加える。
(3)同二頁26行目「養子縁組をした」の後に「(以下、この子らを「再婚相手の子ら」という。)」を加える。
(4)同三頁17行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
 「(3)原審申立人の再婚相手の収入について、原審申立人は、原審の平成29年9月28日付け主張書面においては、月額14万円程度である旨主張し、審問においては、月額7、8万円である旨述べており、少なくとも月額8万円、年額96万円程度の収入を得ているものと認められる。」

二 判断
 前記認定事実によれば、本件公正証書が作成された後、原審申立人が再婚相手の子らに対する扶養義務を負うに至ったこと、当事者双方の収入が変動したことなどにより、本件公正証書において未成年者の養育費を決める際に前提とされた事情は変更されている。そこで、本件公正証書が作成された後の事情を考慮して未成年者の養育費を算定するのが相当である。

(1)まず、本件公正証書が作成された平成27年××月当時の双方の収入や扶養家族の状況を前提とした未成年者の養育費の試算額については、補正して引用する原審判の「理由」中の「第二 当裁判所の判断」の二(1)記載のとおりであるから、これを引用する。これによると、同試算額は月額1万5282円である。

(2)次に、現在の双方の収入や扶養家族の状況を前提として、標準的算定方式を参考に養育費を試算する。
ア 現在、原審申立人は月額20万円(年額240万円。なお、原審相手方は、原審申立人の現在の収入につき,残業代が全くなく、月収が一律である点が極めて不自然であるとし、現在も平成27年当時と同等の収入があるものとみるべきであると主張するが、原審申立人が実際に上記金額を上回る収入を得ていると認めることはできないことから、上記金額により算定するのが相当である。)、原審相手方は年額237万5275円の給与を得ていることから、原審申立人の基礎収入を総収入の39パーセントに相当する93万6000円、原審相手方の基礎収入を総収入の39パーセントに相当する92万6357円とするのが相当である。

 また、原審申立人が再婚相手の子らの生活費指数については、再婚相手も上記子らの扶養義務を有しているから、その生活費指数を原審申立人と再婚相手の収入比によって按分するのが相当であるところ、再婚相手の収入は年額96万円と認められ、基礎収入はその39パーセントに相当する37万4400円とするのが相当である。

イ そして、成人である原審申立人及び原審相手方の生活費指数を100とすると、未成年者、原審申立人が再婚相手の子らの生活費指数はいずれも55となるが、上記子らの生活費指数については、上記アのとおり原審申立人と再婚相手の基礎収入比によって按分するのが相当であるから、いずれも次の計算式のとおり、39とする。
55×93万6000円÷(93万6000円+37万4000円)=39(小数点以下四捨五入)
 これを前提に、原審申立人の収入のうち未成年者の生活費に割り振られるべき金額は、次の計算式のとおり、22万0944円となる。
93万6000円×55÷(100+55+39+39)=22万0944円

ウ これを原審申立人と原審相手方の基礎収入に応じて按分すると、原審申立人が負担すべき未成年者の養育費の試算額は、次の計算式のとおり、年額11万1044円(月額9254円)となる。
22万0944円×93万6000円÷(93万6000円+92万6357円)=11万1044円

(3)上記(1)の養育費の試算額は月額1万5282円となるのに対し、当事者双方は、本件公正証書において、これを2万4718円上回る月額4万円の養育費とすることで合意している。
 本件において、当事者双方が同合意に際し、標準的算定方式による試算をしたことを認めるに足りる資料はないが、上記のとおり、客観的に見て標準的算定方式による試算額を大きく上回る養育費の合意をしていることからすると、同合意における当事者の意思としては、標準算定方式による試算額を上回る場合であっても、その試算額に差額分(本件では2万4718円)を加算する趣旨であったと解するのが合理的である。

 そうすると、現在における養育費の金額を決定するに当たっても上記の合意の趣旨は尊重されるべきものではあるが、同合意は義務者である原審申立人が養育すべき子が未成年者一人であることを前提とするものであって、原審申立人が再婚相手の子らに対する扶養義務を負うことになったことにより、その前提とした事情に変更が生じている。

 このような場合、標準算定方式による試算額に上記差額分を加算するとしても、原審申立人が同じく扶養義務を負う未成年者と再婚相手の子らを不平等に扱うことが相当であるとはいえないから、上記加算額については、未成年者と上記子らに、生活費指数に応じて按分するのが相当である。
 そうすると、上記加算額のうち未成年者に分配すべき額は、次の計算式のとおり、1万0222円となる。
2万4718円×55÷(55+39+39)=1万0222円
 しかるに、上記合意後の事情の変更を考慮した上記(2)の養育費の試算額は、月額9254円となるところ、加算後の金額は、1万9476円となる。

(4)以上を参考に、本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、原審申立人の負担すべき未成年者の養育費の額を月額2万円とし、同金額による養育費の支払の始期は、本件に先立つ調停が申し立てられた平成29年××月とするのが相当である。

三 抗告理由に対する判断
(1)原審相手方の抗告理由に対する判断

ア 原審相手方は、本件公正証書における養育費の合意に際し、原審申立人に扶養すべき子らがいるかどうかを基礎事情にしていないから、再婚相手の子らに対して扶養義務を負うに至ったことは客観的基礎事情の変更に該当しない旨主張する。
 しかしながら、義務者及び権利者の収入の多寡や扶養すべき子の人数は、子の養育費を定める際に考慮の対象となる基本的な事情であるから、当事者双方が本件公正証書の作成当時に標準算定方式による試算を行っていなかったとしても、これらの事情の変更が客観的基礎事情の変更に該当しないということはできない。
 したがって、原審相手方の上記主張は採用できない。

イ 原審相手方は、上記合意に際し、「慰謝料を請求しないから」と言及しており、当事者双方において、原審申立人が再婚すること及び養子縁組することを当然に予測して合意されていたのであるから、これらは事情変更に当たらない旨主張する。
 しかしながら、本件公正証書における合意当時、原審申立人が再婚し、再婚相手の子らと養子縁組をすることを前提にしていたと認めることはできないし、原審相手方が原審申立人に対し、慰謝料を請求しない旨述べたからといって、原審申立人の再婚や養子縁組が当然予測されたものであったとも認められないのであって、原審相手方の上記主張は採用できない。

ウ 原審相手方は、原審申立人が未成年者の養育費を減額させる意図で再婚及び養子縁組をしたものであり、婚姻制度及び養子縁組制度を濫用しており、その点からも事情の変更は認められない旨主張する。
 しかしながら、原審申立人は、前記認定事実のとおり、再婚相手及びその子らと同居した上、その子らと養子縁組をしたものであり、上記意図で再婚し養子縁組をしたと認めることはできないから、原審相手方の上記主張は採用できない。

エ 原審相手方は、原審申立人の再婚及び養子縁組を前提として、養育費を4万円と合意したのであるから、少なくとも標準的算定方式を上回る加算分については、再婚相手の子らとの養子縁組を考慮すべきではない旨主張する。
 しかしながら、そもそも上記前提が採れない上、加算した合意の趣旨を尊重するとしても、原審申立人に扶養義務を負う子が生じた場合に、その子らと未成年者とを不平等に扱うことが相当とはいえないことは、前記二(3)のとおりであるから、原審申立人の上記主張は採用できない。

オ その他、原審申立人の主張するところをもっても前記認定判断を左右しない。

(2)原審申立人の抗告理由に対する判断
ア 原審申立人は、本件公正証書作成に際し、原審相手方の両親から養育費の額の平均が2万円から4万円であると説明されたことで養育費の相場を誤信して合意したにすぎず、標準的算定方式による試算額を上回る額を加算する趣旨はなく、加算のない養育費にするべきである旨主張する。
 たしかに、原審申立人において、標準的算定方式による試算額を上回る額を加算するということについて具体的な認識を有していたとまでは認められないが、前記認定事実のとおり、原審申立人においては、原審相手方の両親から養育費の平均が月額2万円から4万円であるという説明を踏まえ、一旦3万円とすることに合意したものの、最終的には月額4万円とすることで合意したものであり、原審申立人としても少なくとも一般的な養育費の相場の上限との認識は有していたものと認められる。

 このような認識を有した上で上記合意をした以上、それが標準的算定方式による試算額を上回るものであったとしても、その試算額との差額を加算する趣旨であったと解するのが相当であることは、前記二(3)のとおりである。
 したがって、原審申立人の上記主張は採用できない。

イ 原審申立人は、再婚相手の収入を考慮すべきではない旨主張する。
 しかしながら、再婚相手においても、その子らの扶養義務を負っているのであるから、その生活費指数を原審申立人と再婚相手の収入比によって按分するのが相当であることは前記二(2)アのとおりであるから、その範囲において再婚相手の収入を考慮すべきであって、原審申立人の上記主張はその範囲において採用できない。

ウ その他、原審申立人の主張するところをもっても前記認定判断を左右しない。

第四 結論
 以上によれば、原審申立人は、原審相手方に対し、未成年者の養育費として、平成29年××月から未成年者が満20歳に達する日の属する月まで毎月2万円の養育費を支払うよう本件公正証書の第二条第一項を変更する旨命ずるべきであるところ、これと異なる原審判は相当ではないから、原審申立人の本件抗告に基づき、原審判第一項を本決定主文第一項のとおり変更するとともに、原審相手方の本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 竹内純一 裁判官 小原一人 吉田光寿)

別紙 抗告状(原審申立人)《略》
別紙 抗告理由書(原審申立人)《略》
別紙 意見書(原審申立人)《略》
別紙 抗告状(原審相手方)《略》
別紙 抗告理由書(原審相手方)《略》
別紙 抗告審意見書(原審相手方)《略》

以上:5,544文字

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