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マンション一括検針一括徴収制度に関する規約の効力否定判例全文紹介1

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平成25年 8月29日(木):初稿
○マンションで通常行われている水道料金の一括検針一括徴収制度について、各区分所有者が支払うべき額や支払方法、特定承継人に対する支払義務承継を定めた規約について、その効力を否定する、首をかしげざるを得ない上告審としての高裁判例が出ました。平成25年2月22日名古屋高裁判決(判例時報2188号62頁)です。
先ず2回に分けて全文を紹介して、その後、私の感想を述べます。

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主   文
一 原判決中、水道料金の支払に係る不当利得返還請求に関する部分を破棄する。
二 前項の部分につき本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。
三 その余の本件上告を棄却する。
四 前項により生じた訴訟費用は、上告人の負担とする。

理   由
第一 上告人の求めた裁判
 原判決を破棄し、さらに相当の裁判を求める。

第二 事案の概要
一 本件は、競売によりマンションの一室の所有権を取得した上告人が、同マンションの管理組合である被上告人に対し、前所有者の滞納していた駐車場料金24万6000円(以下「本件滞納駐車場料金」という。)及び同水道料金5万3120円(以下「本件滞納水道料金」という。)と上告人の所有権取得後の水道料金7968円(以下「本件取得後水道料金」という。)を被上告人に支払ったことについて、(1)主位的に、上記各支払がいずれも法律上の原因のないものであると主張して、不当利得返還請求権に基づき、本件滞納駐車場料金24万6000円、本件滞納水道料金5万3120円及び本件取得後水道料金の一部5312円の合計30万4432円およびこれに対する各支払日の翌日(本件滞納駐車場料金24万6000円については平成18年11月10日、本件滞納水道料金5万3120円については同月3日、本件取得後水道料金5312円については同月21日)から支払済みまで民法704条前段による民事法定利率年五分の割合による法定利息の支払を求め、(2)予備的に、上記各支払が、いずれも強迫に基づくもので無効であるとして、不当利得返還請求権又は不法行為による損害賠償請求権に基づき、主位的請求と同一の支払(ただし、附帯請求は遅延損害金)を求めた事案である。

二 原審は、上告人の各請求を棄却した一審判決は相当であるとして、上告人の控訴を棄却した。

三 以下において、略語は、特に断らない限り、原判決の例による。

第三 上告理由に対する判断
一 本件滞納水道料金及び本件取得後水道料金(以下「本件各水道料金」という。)に係る不当利得返還の主位的請求に関する上告理由(上告理由第二章)について

(1) 原審が本件各水道料金に係る不当利得返還請求に関して、証拠により確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
ア 被上告人は、《住所略》所在の丙川マンション(区分所有権の対象となる一棟の建物。以下「丙川マンション」という。)の管理組合である。

イ 丙川マンションの管理規約(以下「本件管理規約」という。)には、以下の趣旨の規定がある。
  (ア) 本規約は、区分所有者の特定承継人及び包括承継人に承継される(74条1項)。
  (イ) 専用使用料、駐車場料金及び水道料金等で、区分所有者が管理組合へ支払うものの滞納がある場合、全滞納額を承継人に対しても請求を行うことができる(74条5項)。

ウ 丙川マンションの204号室(以下「204号室」という。)の所有者は戊田竹夫及び戊田花子(以下「戊田ら」という。)であったが、上告人は、平成18年4月19日、204号室を競落し、同年5月26日に代金を納付して204号室の所有権を取得した。
 そして、上告人は、同年10月9日、204号室を駐車場付きの物件として甲田梅夫に売却した。

エ 被上告人は、丙川マンションの区分所有者から、名古屋市水道局(甲19によると、正しくは名古屋市上下水道局である。以下、同じ。)に支払う趣旨で水道料金相当額を受け取り、名古屋市水道局へこれを支払っていた。

オ 上告人は、平成18年11月2日、被上告人に対し、本件滞納水道料金分として5万3120円を支払い、同月20日、同年7月、10月及び11月分の本件取得後水道料金として7968円を支払った(以下、一括して「本件各支払」という。)

カ 本件各支払に係る水道料金は、各水道料金のいずれについても、名古屋市の一般家庭用上下水道料金の最低金額である2656円であった。

キ 204号室には水道設備が設けられており、上告人は、204号室を取得後、そのリフォームのために水道を利用したことがある。
 そして、記録によれば、上記エの被上告人の名古屋市水道局に対する支払に関しては、次の事実も認められる。すなわち、被上告人は、名古屋市水道給水条例及び同施行規程に従って、集合住宅である丙川マンションについて、給水装置ごとに水道料金を計算する原則の例外として、名古屋市水道局との間で一個の給水契約を締結し、同契約に基づき、同局から請求された丙川マンション全体の水道料金を支払ってきているところ、この場合における水道料金は、建物全体に一個設置されたメーター(いわゆる親メーター)により建物全体の使用水量を検針し、その使用水量を各戸で均等に使用したものとみなして料金表を適用して算出されること、そして、被上告人においては、名古屋市水道局から請求された上記水道料金について、各戸に設置されたメーター(いわゆる子メーター)により各戸の使用水量を計測し、その使用水量に応じて名古屋市水道局と同一の料金表を使って各戸の水道料金を算定し、これを各戸に水道料金として請求し、徴収してきていること、以上の事実が認められる(甲2、19、乙3、弁論の全趣旨。以下、上記のような水道料金の支払方法を全体として「一括検針一括徴収制度」という。)。

(2) 原審は、上記(1)アないしキの事実関係の下において、本件各支払に係る本件各水道料金は、いずれも被上告人を通して名古屋市水道局に支払われたものというべきであるから、被上告人には上告人からの利得がないし、また、上告人は最低金額を支払ったに過ぎないから、被上告人との関係では損失がないというべきであるとして、上告人の本件各水道料金に係る不当利得返還請求を棄却した。


以上:2,586文字

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