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2010/10/ 1 第38号 嘘の効用(1)

平成24年 2月29日(水):初稿
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

 嘘がどれほど役に立つか、という話しですね。

 「男にとって、嘘がどれほど大切で、必要とされているか、女と医者だけが知っている」なんて聞いたことがあります。自分自身を省みても、これは真実ですね。

 「大山先生、痩せましたね!」なんて女性に言われると、嘘だとわかっていても良い気になります。「こんな病気すぐに治りますよ。90までは丈夫ですよ!」なんてお医者様に言ってもらえると、これまた嬉しいものです。

 とまあ、ことほど左様に嘘は役に立つのですが、本日の話は、こういうことではないのです。(だったら、長々と書くなよ!)法律における嘘の話です。

 「嘘の効用」は、末弘厳太郎という大変有名な先生が、大正時代の終わりころ(もう90年ほど前ですね)に書いた、一般人向けの法律エッセーの題名なんです。この中で末弘先生は、法律において「嘘」がどれほど必要なものなのか、さまざまな例を引いて説明しています。

 たとえば、例として上がっているのは、大岡越前守の名判決、「大岡裁き」ですね。大岡越前が名判決を出せたのは、「嘘」のつきかたが上手だったからだと、末弘先生は喝破されたわけです。

 「江戸時代は、しっかりした法律なんかないから、大岡さんも融通無碍に法律を加減して、適切な裁判をしたのだろう。」なんて考えるのは間違いなんですね。

 当時の法律は、現代よりもっと融通の利かないものであり、お上の決めたものですから、絶対に守らないわけにはいかないわけです。そういう中で、妥当な判決を得るにはどうするかといいますと、事実の方を曲げるしかないわけです。つまり「嘘」をつくんですね。指が6本あるとか、容貌が非常におかしい鬼子だということで、母親が生まれてきた子供を殺してしまうような事件が起きます。法律によれば、人を殺した母親は、当然厳罰となりますね。こういう場合に大岡越前は、「指が6本ある者は人ではない。従って、これを殺しても人殺しではない。」と名判決?を出すわけです。今の感覚からすると、障害のある子でも、愛情をもって育てるのが当然のことですよね。指の数が多いからといって子供を殺すなど、およそ許されないというのが現代の常識です。

 しかし、江戸時代の人たちにとってこの大岡裁きは、花も実もある名判決だったのでしょう。(末弘大先生自身、障害のある子は「人」ではないなどという「嘘」を、必ずしもおかしなものとは考えていなかったように読めますので、なんだかおかしな気もしましたね。)そもそも法律というのは、すべての人に杓子定規に適用されます。そうしますと、場合によっては、法律をそのまま適用すると、どうにも一般人の常識とかけ離れてしまう場合があるわけです。

 「それなら、法律を変えればいいだろう」と言われそうですが、それはそれで非常に大変です。それに、まさに現在問題になっている具体的な問題を解決する役にはたちません。そういう場合に、「法律」を「常識」に近づける手段として、「嘘」が非常に重要だと末弘先生は強調されるわけです。

 それでは、末弘先生がこの本を書かれてから90年近くたった現代において、「法律実務において、嘘がどれほど大切で、必要とされているのか!」について、末弘大先生と比べられては役者不足ですが、次回私の方からご報告できればと思います。

 
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 弁護士より一言

 妻が5歳の息子を連れて、六本木ヒルズの恐竜展に行ったんです。息子がお昼はお寿司が良いと言うが、他にお店がなかった。(ほんとですか?)そこで、思い切って、かの有名な「すきやばし次郎」のヒルズ店に行ったんですね。

 本店ではないし、お昼だし、いくら高いにしても、そんなには高くないだろうと考えたそうです。(ホントかなあー)お店に入ると、他にお客さんはなく、カウンターに案内されました。

 特に御品書もなく、付きっきりで対応してくれる職人さんから、「お嫌いなものはありませんか?」と聞かれました。

 すでに、「お幾らですか?」と聞ける雰囲気ではなかったのです。(本人談。ホントかよ?)緊迫の次号に続きます!

 (2010年10月1日第38号)
以上:1,666文字

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