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裁判所鑑定心因性視力障害で素因減額が否定された例13

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平成22年11月 4日(木):初稿
○約3万字の判決文もようやく最後のコンテンツです。なお、判決全文のHTMLファイルを掲載しておきます。
私が最大の関心を寄せていた「5 素因減額の可否及び割合」ですが、判決は、
本件事故態様は,上記認定のとおり本件事故の衝撃により右眼窟付近がスチール製のバーに衝突したうえ,車外に放り出され,アスファルト舗装された地面に右顔面を強打したというものであって,その結果Xは,右眉の上下に脂肪が露出するほどの裂傷を負い,右眼は充血し,大きく腫れ上がったものである。このような事故態様及び負傷状況からすれば,Xの右眼に視力障害や視野狭窄等の障害が生じても全く不自然ではないことは上記のとおりであるから,かかる障害という損害は,本件事故という加害行為のみによって通常発生する程度,範囲を超えるものではないというほかはない。
 加えて,本件の全証拠を見ても,Xには,本件事故に起因する心的ストレスのほかには,うつ病等の精神的疾患や個人の脆弱性その他の心因的要因は見当たらない(そもそも,被告らもかかる心因的要因については何ら具体的な主張をしていない)。
 したがって,本件においては,民法722条2項を類推適用して損害額を減額することは相当でない。

と原告主張を全面的に認めて頂き、4年半に及ぶ苦労が完全に報われ、大感激でした。

○この判決の結論に代理人の「めんたまが飛び出した」と言う保険会社側は、直ちに控訴して4000万円の保証金を積んで仮執行停止決定を得て、顧問医の過激とも言える意見書を繰り出し、分厚い控訴理由準備書面を提出して、猛烈に反論してきました。平成21年11月から第2ラウンドが、始まりましたが、控訴審での最大の争点は、Xさんの視力障害の心因性の内容と心因性減額で、最終解決までにまだまだ苦労が続きます。

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5 争点5について
(1)身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができるものと解される(最高裁判所第一小法廷昭和63年4月21日判決・民集42巻4号243頁参照)。

(2)これを本件について検討すると,本件においては,Xの右眼に障害が生ずるとすれば,その原因は外傷性視神経症であると考えるのが自然であると考えられるにもかかわらず,他覚的検査の結果等が外傷性視神経症についての医学的知見と合致しないこと,しかしXの右眼に障害が存することは認められ,これが心因性によるものと認められることの2点において,特殊な事情の存する例であるとは考えられる。
 しかし,そもそも本件事故態様は,上記認定のとおり本件事故の衝撃により右眼窟付近がスチール製のバーに衝突したうえ,車外に放り出され,アスファルト舗装された地面に右顔面を強打したというものであって,その結果Xは,右眉の上下に脂肪が露出するほどの裂傷を負い,右眼は充血し,大きく腫れ上がったものである。このような事故態様及び負傷状況からすれば,Xの右眼に視力障害や視野狭窄等の障害が生じても全く不自然ではないことは上記のとおりであるから,かかる障害という損害は,本件事故という加害行為のみによって通常発生する程度,範囲を超えるものではないというほかはない。
 加えて,本件の全証拠を見ても,Xには,本件事故に起因する心的ストレスのほかには,うつ病等の精神的疾患や個人の脆弱性その他の心因的要因は見当たらない(そもそも,被告らもかかる心因的要因については何ら具体的な主張をしていない)。
 したがって,本件においては,民法722条2項を類推適用して損害額を減額することは相当でない。


6 認容されるべき損害額について
 したがって,Xについて認められる損害額は合計4990万2765円であるが,被告東京海上は,平成17年9月21日に自賠責保険金として75万円を,Y1は,平成19年11月2日に100万円,同年12月12日に100万円,平成21年7月8日に50万円をそれぞれ支払っている(争いなし)。
 そこで,これら既払金について,まず本件事故時からの遅延損害金に充当し,その後元金に充当する方式で充当計算すると,以下のとおりとなり,本訴において認容されるべき金額は,損害額元本で4990万2765円,遅延損害金を加えた残債務額は5855万4231円となる。
① 平成17年9月21日
損害額元本:4990万2765円
遅延損害金:242万6778円
(本件事故日翌日から355日分の日割計算。1円未満切り捨て。計算方法につき以下に同じ)
返済額:75万円
遅延損害金残額:167万6778円
(242万6778円-75万円)
残債務額:5157万9543円
(4990万2765円+167万6778円)
② 平成19年11月2日
損害金元本:4990万2765円
遅延損害金:527万7388円
(①から②までの772日分)
返済額:100万円
遅延損害金残額:595万4166円
(167万6778円+527万7388円-100万円)
残債務額:5585万6931円
(4990万2765円+595万4166円)
③ 平成19年12月12日
損害金元本:4990万2765円
遅延損害金:27万3439円
(②から③までの40日分)
返済額:100万円
遅延損害金残額:522万7605円
(595万4166円+27万3439円-100万円)
残債務額:5513万0370円
(4990万2765円+522万7605円)
④ 平成21年7月8日
損害金元本:4990万2765円
遅延損害金:392万3861円
(③から④までの574日分)
返済額:50万円
遅延損害金残額:865万1466円
(522万7605円+392万3861円-50万円)
残債務額:5855万4231円
(4990万2765円+865万1466円)

7 結論
 以上の次第で,Xの請求は主文記載の限度で理由があるからこれを認容することとし,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項を各適用して(なお,仮執行免脱宣言の申立については,相当でないからこれを付さないこととする。),主文のとおり判決する。

仙台地方裁判所第3民事部 裁判官  安福 達也

以上:2,763文字

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