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交通事故とRSDとの因果関係を認めた地裁判決紹介1

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令和 1年11月13日(水):初稿
○「RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)の基礎」に、RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)認定要件として「RSDの取扱いは、従来認定基準上明確ではなかったが、外傷後に残る特殊な型の痛みとして慢性期における一定の要件((1)関節拘縮、(2)骨の萎縮、(3)皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮))を満たすものについて、症状の程度に応じて障害等級(7、9、12級)を認定することとしたこと (注2)RSDとは、外傷後に生じる慢性疼痛であり、激しい痛みを生じることがある。」と記載していました。

○今般、このRSDを後遺障害と主張する案件を受任し、交通事故との因果関係を認めた判例を探していますが、RSD認定につき客観的医症に基づく骨・筋萎縮、皮膚変化等を重視し、52歳男子の皮膚蒼白等はRSD9級10号と認定した平成20年5月21日東京地裁判決(自動車保険ジャーナル・第1747号)のRSD認定部分を紹介します。

○この判決では、RSD診断基準としては「Gibbonsらの診断基準や労災保険又は自賠責保険における診断基準等を参考に、症状の経過等を総合的に評価してRSDの該当性を判断するのが相当であるが、その際、客観的な医証に基づいて、認定することが可能な骨萎縮、筋萎縮、皮膚変化等を重視すべきである。」としています。「客観的な医証に基づいて、認定することが可能な骨萎縮、筋萎縮、皮膚変化等を重視」と言う点が重要です。

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主   文
1 被告Y会社は、原告に対し、3457万9676円及びこれに対する平成15年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社損害保険ジャパンは、原告に対し、3411万7383円及びこれに対する平成16年10月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、原告と被告Y会社との間においてはこれを5分し、その2を被告Y会社の負担とし、その余を原告の負担とし、原告と被告株式会社損害保険ジャパンとの間においてはこれを10分し、その7を被告株式会社損害保険ジャパンの負担とし、その余を原告の負担とする。
5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することかできる。

事実及び理由
第一 請求

1 被告Y会社は、原告に対し、8195万6045円及ひこれに対する平成15年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社損害保険ジャパンは、原告に対し、4962万3005円及びこれに対する平成16年10月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、原告が、県道を自転車で走行中に、舗装工事による凹凸により転倒し、よって、右上肢が反射性交感神経性ジストロフィー(複合性局所疼痛症候群ともいう。以下「RSD」という。)に罹患したとして、工事施工者である被告Y会社(以下「被告会社」という。)に対し、不法行為に基づく損害賠償を求め、また、被告株式会社損害保険ジャパン(以下「被告保険会社」という。)に対し、自動車総合保険契約(以下「本件保険契約」という。)の人身傷害補償条項に基づく保険金の支払を求めた事案である。

1 前提事実
 以下の事実は当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。

         (中略)



第三 争点に対する判断
1 争点(1)(本件事故態様、被告会社の責任原因及び過失相殺)について


         (中略)

2 争点(2)(RSD発症の有無、本件事故との相当因果関係・機能障害の内容・程度)について
(1) 原告の受傷状況


         (中略)


(3) RSDの診断基準
ア RSDの発生機序、病態、定義等については現在種々の説があり、未だ現在の医学界においてコンセンサスを得た見解が確立しているとは言い難い状況にあるが、RSDは、本来の外傷や疾病からは予想できないほど強い症状を呈するとされており、RSDの主な症状として、①疼痛、②腫脹、③関節拘縮、④皮膚変化、(栄養障害)が挙げられ、このほか、⑤末梢循環不全、⑥発汗異常、⑦骨萎縮、⑧筋萎縮、⑨手掌腱膜炎等の症状が現れることがあるとされている(証拠略)。

イ RSDは、先行して症状出現の誘引となる何らかの出来事があり、多くはそれに遅れて発症するが、多くは1か月以内に発症することが多く、また、遠位から隣接する近位への拡大、全く離れた部位への拡大、対側への拡大が報告されており、罹患部位から広範囲に拡大することが特徴と考えられている(証拠略)。また、肩はRSDの好発部位であり、通常は肩手症候群の形をとることが多く、肩の疼痛性機能障害と同側の手の疼痛、腫脹により特徴付けられると指摘されている(証拠略)。

ウ RSDの診断について、臨床的診断基準として、Gibbonsらの診断基準が最近ではよく用いられていることが認められる。同診断基準は、①アロディニア・痛覚過敏、②灼熱痛、③浮腫、④皮膚色調・体毛の変化、⑤発汗の変化、⑥温度変化、⑦X線上骨脱灰像、⑧血管運動障害・発汗機能障害の定量的測定、⑨骨シンチグラフィー所見、⑩交感神経ブロックの効果の10項目について、各項目ごとに該当する場合を1点、不明瞭だがありそうな場合を0.5点、該当しない場合を0点としてスコアリングし、5点以上をprobableRSD、3点から4.5点をpossibleRSD、3点未満をRSDでないとする(証拠略)。

 他方、労災保険に基づく傷害補償制度においては、「明確な末梢神経損傷のない」病態であるRSDについて、主要な末梢神経の損傷という明瞭な診断根拠がないこと、疼痛自体の客観的な尺度がないことから、障害認定実務上、RSDと診断するに足る客観的な所見を必要とし、慢性期に至って初めて障害認定することを踏まえると、疼痛のほか、少なくとも①関節拘縮、②骨の萎縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められることを要するとされており、自賠責保険における後遺障害等級認定においても、ほぼ同様の基準が用いられている(証拠略)。

ウ RSDは疼痛を主な症状とするものの、疼痛を裏付ける客観的な医学的根拠が明らかでなく、これのみでRSDと認定することは相当ではなく、他方、RSDの発生機序、病態等について、未だ現在の医学界においてコンセンサスを得た見解が確立しているとは言い難い状況にあることからすると、労災保険又は自賠責保険における診断基準により、一義的に認定することも相当ではないというべきである。

 したがって、上記Gibbonsらの診断基準や労災保険又は自賠責保険における診断基準等を参考に、症状の経過等を総合的に評価してRSDの該当性を判断するのが相当であるが、その際、客観的な医証に基づいて、認定することが可能な骨萎縮、筋萎縮、皮膚変化等を重視すべきである。

(4) RSD発症の有無
 前記認定の事実によれば、原告は、本件事故後から現在に至るまで強い疼痛を訴えており、右拇指、右手関節、右肩関節のいずれについても骨萎縮、関節拘縮が認められ、かつ、原告の右上肢は左上肢と比べ明らかに皮膚温が低下しており、かつ、皮膚の色調も蒼白であり、Gibbonsらの診断基準でも8点のスコアを得ていることが認められること、RSDは罹患部位から広範囲に拡大することが特徴とされており、右拇指から右手関節、右肩関節に拡大することも不自然ではないこと、原告を直接診断したD病院の己川医師、F病院の丁山医師、丙川医師、L病院の辛田医師のいずれもが、原告の右上肢の症状をRSDであると診断していること(証拠略)から、原告の右上肢は、右拇指、右手関節、右肩関節のいずれについてもRSDに罹患したと認めるのが相当である。

 これに対し、被告保険会社は、関節可動域の改善が認められること、平成15年10月18日の肩関節のレントゲン写真では骨萎縮は認められず、平成16年7月23日の肩関節のレントゲン写真では軽度の骨萎縮が認められるのみであることを理由にRSDを否定するが、平成17年9月の時点でも、右拇指の他動可動域のほとんどは健側の2分の1以下であり、右手関節の他動可動域はいずれも健側の2分の1以下であり、右肩関節の他動可動域は、肩関節伸展(後方挙上)、肩関節外転で2分の1以下であることから、関節可動域の制限の程度は未だ大きいこと、原告が肩関節の疼痛を訴えるようになったのは平成15年10月であり、同月18日のレントゲン写真で骨萎縮が認められなくても不自然ではなく、他方、原告が肩関節の疼痛を訴えるようになってから3年以上経過した平成19年1月19日撮影のレントゲン写真では明らかな骨萎縮像が認められることから、被告保険会社の主張は採用できない。

(5) 本件事故との相当因果関係
 そして、前記認定した本件事故態様及びRSDの病態からすると、本件事故により原告の右拇指がRSDに罹患し、その後、右手関節、右肩関節に拡大することは十分考えられること、原告は、D病院での靱帯再建術前の時点で右拇指の強い疼痛を訴えており、上記靱帯再建術以前の段階で原告の右拇指にRSDが発症したことが強く推認されること、上記靱帯再建術は、本件事故による受傷に対する治療の一環としてなされたものであることから、原告の右上肢のRSD発症と本件事故との間には相当因果関係が認められると解するのが相当であり、その他、上記認定を左右するに足りる証拠はない。

(6) 機能障害の内容・程度
 前記(2)で認定したとおり、原告は、右拇指、右手関節及び右肩の疼痛を訴え、原告の右拇指関節の他動可動域はそのほとんどが、右手関節の他動可動域はいずれも、右肩関節の他動可動域は肩関節伸展(後方挙上)及び肩関節外転で、健側である左上肢の可動域に比べて2分の1以下に制限されている。また、証拠(略)によれば、原告は、技術アジャスターとして損害保険業務に携わっていたところ、上記のとおり、利き腕である右上肢の関節が拘縮したことにより、主要な業務である現場での査定業務や車の運転ができなくなったこと、また、RSDに伴う疼痛により、パソコン入力や筆記等の事務作業にも支障が生じたが、示談業務等は行っていることが認められる。

 そして、RSDの場合、自賠責保険では、その病態を裏付ける他覚的所見等を参考に、労働能力に及ぼす影響を判断しその程度に応じて自動車損害賠償保障法施行令別表第2の後遺障害等級7級4号、9級10号、12級12号をそれぞれ適用するものとされているところ、7級4号の「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」とは、労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているものをいい、「労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもの」とは、独力では一般平均人の2分の1程度に労働能力が低下していると認められる場合をいい、9級10号の「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されているもの」とは、「一般的労働能力は残存しているが、神経系統の機能又は精神の障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」をいうものとされている(裁判所に顕著な事実)。

 原告は、上記の後遺障害により、技術アジャスターの主要な業務である現場での査定業務や車の運転ができなくなっており、職種の範囲が制限されているといえるが、事務作業が全くできないという訳ではなく、示談業務は行っていることから、一般人の2分の1程度に労働能力が低下しているものとは認められない。
 したがって、原告の後遺障害等級は9級10号であると認めるのが相当である。

3 争点(3)(素因減額)について
 被告保険会社は、原告の痛みに対する耐性のなさを理由に素因減額を主張し、これに沿う証拠(略)もあるが、RSDの病態自体が、一般に誘因となった出来事からは想像ができないような強い疼痛の症状を呈するものであり、このようなRSDの症状自体が精神的に影響を与えることも考えられることから(証拠略)、素因減額を行うにあたっては慎重な判断が求められるところ、前記2で認定したとおり、原告がRSDに罹患したことは明らかであり、また、本件事故前の原告の身体は健常であった上(証拠略)、証拠上、原告に明らかな身体的又精神的な疾患があったことをうかがわせる事実も認められないから、本件において素因減額を行うべきでなく、被告保険会社の主張は採用できない。


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