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収支共同型法律事務所概観5-弁護士法人概要

平成21年11月10日(火):初稿
○収支共同型法律事務所概観を続けます。最後は弁護士法人です。

1 弁護士法人とは
 弁護士法人とは弁護士法30条の2以下の規定に基づいて設立された事務所の経営形態。1人法人の設立も可能で多数存在するが、ここでは複数の社員弁護士が所属する弁護士法人について述べる。
 なお,弁護士法人制度の詳細については,「Q&A弁護士法人制度」(2008年4月1日改訂版)を参照されたい。

2 弁護士法人の形成要因(メリット)
(1) 弁護士法人は事務所そのものに法人格

 事務所自体が法人格を持つことが,事務所としての対外的信用,ブランド力の向上に寄与することが期待でき、事務所の構成員に変更があっても事務所自体は継続的に存在し、事務所の安定的存続と業務の継続性を図れる。
(2) 主たる事務所のほかに従たる事務所設立可能(弁護士法30条の17)
 複数拠点での業務展開が可能となり,業務範囲広域化に対応。
(3)社員は法人持分を処分可能
 構成員変更の場合の業務承継円滑化と、事務所組織価値について取引対象化が可能となった。これにより、ベテラン弁護士が法人事務所を作り,顧客との間の受任契約を法人契約とし,そのリタイアにあたって法人持分を他の弁護士に売却して退職金相当の代金を得ることが可能となった。

3 財務の管理について
(1)事務所が法人格を持つことによる特質

 弁護士法人自身が資産を所有し,契約当事者となる。但し,事件受任に伴う法的責任は,担当として指定された弁護士の無限責任であり(弁護士法30条の15第4項。指定がない場合には全社員の連帯無限責任となる。同条第1項。)。
(2) 収益の配分方法
 収益の配分は,社員弁護士の合意に基づく。社員弁護士を含め,構成員全員が法人からの給与所得となり、構成員は給与所得控除のメリットを享受できる。
 収益配分方法は,年度当初に規定した割合に拘束。予想外の利益は内部留保となり、財務基盤を強固にある。

4 業務の管理について
(1) 収支共同型事務所との対比

 パートナー規約ではなく、定款の作成が義務(弁護士法30条の8第1項)。日常の業務上の意思決定は,パートナー(社員弁護士)会議。また,利益相反の禁止については,弁護士職務基本規程61条以下において,共同事務所一般の場合以上に詳細に規定。
 勤務弁護士や事務局との関係は収支共同型事務所と基本的に同じ。
(2)専門化・広域化への対応
 専門化への対応についても,弁護士法人は収支共同型事務所と同様。依頼者との委任契約の主体は法人自身であるが,具体的にその案件を担当するのは構成員のうち最も適切な個別の構成弁護士で、専門化への布石となる。また弁護士法人では従たる事務所設置が可能で,複数拠点による広域案件への対応も可能となり,マーケティング上有用。

5 弁護士法人制度の問題点と課題
 設立は法の規定に従った手続でとなり、さらに受任事件の担当社員弁護士の指定の通知手続等,法人格を持たない共同事務所の場合には必要ではない煩雑な手続が要求される。そのため事務所としての業務・経営管理の労力が増し、管理部門を担当する社員弁護士も必要となるところ、税制上のメリットであるはずの給与所得控除が、必ずしも有益とは限らない。
 導入後5年を経過してもあまり活用されていないが、今後,弁護士法人のメリットを活用した共同事務所業務展開と報告が必要。
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