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日弁連”預り金等の取扱いに関する規程”解説冊子配布雑感

平成25年 7月21日(日):初稿
○平成25年7月に入り、日弁連から「(解説)預り金等の取扱に関する規程2013年(平成25年)7月」と題する全24頁の小冊子が配布されました。「発刊にあたって」には、平成23年から24年にかけて弁護士による巨額の詐欺事件・横領事件が相次ぎ、弁護士に対する市民の信頼を大きく揺るがせ、その後も、横領等の不祥事は止まることがなく、日弁連・弁護士会に不祥事根絶のための施策を求める声が高まり、日弁連は、平成24年10月「弁護士不祥事対策検討プロジェクトチーム」を編成し、市民窓口機能強化等の諸施策と共に預り金管理規程を制定することにして、規程案文を作成し、各単位弁護士会・関連委員会等に意見照会して平成25年5月定期総会で、可決され同年8月1日から施行されることになったそうです。

○この鳴り物入り?の「預り金等の取扱いに関する規程」、日弁連HPのPDFファイルとして公表されていますが、私の備忘録として後記します。ザッと読んでみましたが、これで弁護士横領事件防止の対策になるとは、到底、思えません。この規程の作成に当たったメンバーもそんなことは百も承知と思われます。しかし、不祥事対策として何らかのポーズを示さなければならず、ギリギリの妥協線として作成してものと思われます。

○第3条専用「預り金口座」ですが、いくら「預り金口座」と銘打っても、弁護士に自由な払戻権限がある限り、第2条「流用の禁止」の意味はありません。裁判所の許可がないと払戻が出来ない破産管財人口座のようなシステムを作らない限り、「預り金口座」と言っても、他の出入り自由な弁護士口座と同じです。かといって例えば弁護士会の許可がないと払戻が出来ないシステムの構築は現実問題として不可能でしょう。

○当事務所も最近は預り金が少なくなりましたが、弁護士業務遂行上常時預り金を持っています。20年以上前、任意整理による債務整理事件が常時100件以上あったときは、債務弁済資金預り金が増えて多いときは預り金1億円を超える期間が長く続きました。この時どのお客さまにいくらの金額の預り金があるかを瞬時に把握するシステムの必要性を感じて、桐による簡易複式簿記会計処理システムを考案し、全体預り金額と共に補助簿として各お客さま毎の収支明細が瞬時に出るようにしました。

○20年近く前に初めて税務調査が入ったとき、調査官は預り金収支明細を重視して、お客さまの預り金について、特に大口預り金のあったお客さまを事前に把握しており、その提出を求められたとき瞬時に印刷してお渡しして感心されたことがあります。調査官は預り金精算時の報酬金の誤魔化しがないかを領収証控えと照合してチェックしていましたが、全く誤魔化しがないことを納得して頂きました。

○預り金横領防止対策の要諦は、キチンとした会計処理の確立ですが、いくら会計処理が確立していても、借金が増えて、困窮すれば他人様のお金に手を出す動機が増えます。一番の不祥事対策は、各弁護士の健全経営の確立に尽きます。お客さまの立場からすれば、健全経営が確立された事務所かどうか見極めて依頼することが重要となります。しかし、その見極めは困難ですね。

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預り金等の取扱いに関する規程(平成25年5月31日会規第97号)

第1条(目的)
 この規程は、弁護士又は弁護士法人である会員(以下「会員」という)が職務に関して預かり保管する金員(以下「預り金」という)及び預貯金(以下「預り預貯金」という)の取扱いの適正を図るため必要な事項を定めることを目的とする。

第2条(流用の禁止)
 会員は、預り金及び預り預貯金を預かり保管した目的以外に使用してはならない。

第3条(預り金口座の開設)
 会員は、預り金の保管に備えるため、預り金のみを管理する専用の口座( 以下「預り金口座」という)を、銀行その他の金融機関に開設しなければならない。

第4条(預り金の保管方法)
 会員は、預り金を保管するときは、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にする方法で保管しなければならない。
2 会員は、一の事件又は一の依頼者について預り金の総額が50万円以上となった場合において、当該預り金を14営業日(日本銀行の休日を除いた日をいう)以上にわたり保管するときは、当該預り金のうち50万円以上の額を、預り金口座で保管しなければならない。

第5条(通知義務)
 会員は、依頼者のために相手方その他利害関係人から預り金を受領したとき(官公署の委嘱によるときを除く)は、遅滞なく、依頼者にその旨を通知しなければならない。

第6条(預り証)
 会員は、依頼者から預り金を受領し、又は預り預貯金に係る通帳等の引渡しを受けたとき官公署の委嘱によるときを除くは依頼者に対し預り証を発行しなければならない。ただし、口座、振込みの方法で預り金を受領した場合にあっては依頼者の請求があったときに限る。

第7条(記録義務)
 会員は、預り金及び預り預貯金を保管するに当たり、入出金の年月日及び金額並びに入金の目的及び出金の使途を記録しなければならない。
2 会員は、前項に規定する記録を、当該預り金又は預り預貯金に係る職務が終了した後3年間保存しなければならない。

第8条(収支報告)
 会員は、依頼者の請求があったとき、及び当該預り金又は預り預貯金に係る職務が終了したとき(官公署の委嘱による職務が終了したときを除く)は、依頼者に対し、入出金の概要を記載した書面により、預り金及び預り預貯金の収支について報告しなければならない。

第9条(弁護士会による照会)
 弁護士会は、第2条から前条までの規定に違反すると思料する相当の理由があるときは、所属する会員に対し、預り金及び預り預貯金の保管状況全般について、次に掲げる事項を照会し、調査することができる。
一 入出金の年月日及び金額並びに入金の目的及び出金の使途
二 第3条に規定する預り金口座開設の有無
三 第4条に規定する保管方法の実施の有無
四 第5条に規定する通知の実施の有無
五 第6条に規定する預り証発行の有無
六 前条に規定する収支報告の有無

第10条(照会に対する回答義務)
 会員は、前条の規定による照会を受けたときは、弁護士会に対し、速やかに、預り金又は預り預貯金に関する帳簿、通帳その他の第7条に規定する記録の写し(当該記録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を紙面に印刷したもの)を添付して、書面で回答しなければならない。ただし依頼者相手方その他利害関係人の氏名、経緯等事件の内容に関わる事項が記録に含まれている場合は、当該事項を伏せて回答することができる。

第11条(弁護士会の措置等)
 弁護士会は、前条に規定する回答に基づき調査した結果、相当と認めるときは、次に掲げるいずれか又は各号の措置を採る。
一 当該会員に助言すること。
二 当該会員について懲戒の事由があると思料するときは、懲戒の手続に付し、弁護士会の綱紀委員会に事案の調査をさせること。
2 弁護士会は、前項第一号の措置を採った会員に対し、助言に応じた措置の実施状況を報告するよう求めることができる。
3 前項の規定により報告を求められた会員は、これに応ずるよう努めなければならない。

第12条(秘密の保持)
 弁護士会の役員及び職員は、第10条の規定により知り得た会員の預り金及び預り預貯金に関する秘密を他に漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

 附則
この規程は平成25年8月1日から施行する。

以上:3,112文字

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