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不動産売主なりすまし詐欺加担責任巨額損害賠償を弁護士に命じた判例紹介2

平成29年 7月12日(水):初稿
○「不動産売主なりすまし詐欺加担責任巨額損害賠償を弁護士に命じた判例紹介1」を続けます。
この平成28年11月29日東京地裁判決(金法2067号81頁)は、結構、長文ですので、裁判所の判断部分のみを3回に分けて紹介します。



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第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前記前提事実に証拠(甲28,36ないし38,乙15,丙1,丁3のほか,以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(1) Fが本件不動産をGに紹介した経緯
ア Gは,かつて不動産会社に勤務していたことがあり,本件売買契約締結の当時,不動産仲介業を行っていたが,宅地建物取引業の免許を有していなかった。原告は,Gが不動産会社に勤務していた平成12年頃以降,Gから延べ約10件の物件の紹介をしてもらっていた。また,a社は,平成25年11月29日に,神奈川県座間市に所有していた土地及びその上の共同住宅を代金1億1000万円で売却しており,原告は,その頃から,上記売却により得た代金を使って他の不動産を購入することを検討していたため,いい不動産があれば紹介してほしいとGに話していた。(甲45の1及び2,証人G,原告本人)

イ Fは,金融取引や不動産取引のブローカーを仕事とする者である。Gは,平成25年の春頃に,不動産会社に勤務していたときの取引先の社長からFを紹介され,以後,Fから2件の不動産の紹介を受けたことがあったが,いずれの不動産についても売買契約の成立には至らなかった。(証人G,同F)

ウ Fは,平成25年9月頃,仕事上の付き合いがあった者から紹介を受けたブローカーらから,本件不動産についての情報を得て,同年10月頃,その情報をGに伝えた。Fは,上記ブローカーらから,本件不動産はBが相続により取得したものであることや,本件不動産を売るに当たり弁護士を関与させる必要があることを聞き,弁護士を探すよう指示を受けた。(証人F,同G)

エ Gは,平成25年10月頃,Fから本件不動産の情報を得ると,本件不動産の現地を確認した上で,本件不動産の場所,売却希望価格(売買代金2億5000万円とその他費用4000万円の合計2億9000万円による現金一括決済を条件とするものであった。)などの点から本件不動産に興味を抱き,Fに更に詳細な情報を求めたところ,本件不動産は売主が相続により取得した不動産であるが親族間で揉め事があること,売買代金を税金の支払に充てるため売却を急いでいること,売主の側に交渉の窓口として弁護士が関与することなどを聞き,Fに対し,窓口となる弁護士との面会を求めた。また,並行して,原告や複数の不動産業者に対し,本件不動産を購入できるかもしれないとしてその購入を打診した。(証人F,同G)

(2) 被告が本件不動産の売買契約に関与した経緯
ア Fは,平成26年1月23日頃,以前に数回商標登録等の業務を依頼したことがあった被告に対し(被告はかつて弁理士登録をしていた。),本件不動産の売買契約について,売主となる者が弁護士が契約締結の立会人となるよう希望していることを話した上で,本件売買契約に弁護士として立ち会ってほしいと依頼した。被告は,不動産の売買契約であれば弁護士が立ち会う必要はないと考え,同依頼を断ったが,その数日後に,Fから,どうしても弁護士の関与が必要であるとして再度の依頼を受けたため,売買契約への立会いを承諾し,売主となる者と一緒に被告の事務所に来るようFに指示した。(証人F,被告本人)

イ Fは,平成26年2月13日,自称Bを伴い,被告の事務所を訪れた。被告が,自称Bに対して身分証を持参しているかを尋ねると,自称Bは,本件住基カードを被告に提示した。そこで,被告が,本件住基カードのカラーコピーをとった上で,自称Bに対し,氏名,住所及び生年月日を尋ねたところ,自称Bは本件住基カードに記載のとおりの回答をした。さらに,被告が,弁護士の関与が必要である理由を尋ねると,自称Bは,本件不動産は夫の遺産であり遺産分割協議により自らが単独で所有することになったが,不動産の売買は初めてであり,不安があるため,弁護士に契約締結に立ち会ってほしいと思ったとの回答をした。(被告本人)

(3) 本人確認情報作成の依頼等
ア Fは,平成26年2月17日,被告に対し,電話で,Bが本件不動産の登記識別情報通知を紛失したため被告に本人確認情報の作成を依頼したいと言っていることを伝え,本人確認情報の作成が可能かを尋ねた。被告は,本人確認情報の作成は司法書士が行えば足りる業務であると考えていったんこれを断ったが,同日中に,Fとの再度の電話のやり取りにおいて,Bの本人確認情報作成の依頼を引き受けることとし,翌日である同月18日に本人確認情報作成のための自称Bとの面接を行うこととした。(証人F,被告本人)

イ Fは,平成26年2月18日,自称Bを伴い,被告の事務所を訪れた。被告が自称Bに対して本人確認のための書類の提示を求めると,自称Bは,被告に本件住基カードを手渡した。被告は,本件住基カードを手に取り,その記載内容が自称Bに見えないようにした上で,自称Bに氏名,住所及び生年月日を質問したところ,自称Bは,前回の面接の際と同様に,本件住基カードの記載どおりの回答をし,さらに,干支を正しく告げた。続いて,被告が,本件不動産の登記識別情報通知が紛失したことについての状況が分かるような追加の資料の提出を求めると,自称Bはこれを承諾し,その日の面接は終了した。(証人F,被告本人)

ウ 被告は,それまで不動産登記申請における本人確認情報を作成したことがなかったため,前記イの面接の後,その日のうちに,法令及び書式を調べた上で,弁護士事務所の事務員に指示をして,書式を参考にしながら日付部分を空欄にしたBの本人確認情報を作成させた。また,その頃,Fから電話があり,本人確認情報の作成及び本件売買契約の立会いの報酬を30万円とすることが合意された。さらに,被告は,Fから,翌日である平成26年2月19日に,買主の関係者と会ってほしいと求められ,会議があるため時間がないとしてこれを断ったものの,どうしても会ってほしいとFから頼まれたため,飯田橋で同日の午後7時頃であれば会議を中座して買主関係者と面会することができるとして,買主関係者と面会することになった。(証人F,被告本人)

(4) 被告とGとの面会
 Gは,Fから,平成26年2月19日午後7時頃であれば本件不動産の売主側の窓口となる弁護士と面会できると言われ,同日の同時刻に,Fから指定された場所である飯田橋の喫茶店に行き,Fを介して,被告と名刺交換をするなどした。被告は,仕事中で急いでいるため本件不動産の売買契約について詳しい話はFから聞いてほしいと言ってGとFを残して先に店を出た。Gは,この日に,本件不動産の登記識別情報通知が紛失されているために被告が売主の本人確認情報を作成することを知った。(証人G,同F,被告本人)

(5) Gが原告に本件不動産の購入を提案した経緯
ア Gは,前記(4)の被告との面会を終えて,コフジインテグレーション社のI(以下「I」という。)に被告のホームページを確認させるなどした結果,本件不動産の購入について具体的な提案をすることが可能だと判断したが,それまでGから本件不動産の購入を打診していた複数の不動産業者が,いずれも短期間で現金一括決済によるという条件に応じられないとのことであったため,原告に本件不動産の購入の具体的な提案をすることとし,平成26年2月22日の夜,原告に対し,電話で,近日中に代金約3億円を一括決済する方法により本件不動産を購入することが可能かどうか打診した。(証人G,原告本人)

イ 原告は,Gから前記アの電話を受けた際,シンガポールへの出張を翌日に控えて成田のホテルに宿泊していたところ,Gに対し,前記(1)アのとおりa社が不動産を売却したことによる余剰資金を原資にすれば本件不動産の購入が可能と思われるが,念のため知り合いのJ弁護士にも取引条件を確認してほしいため,J弁護士に取引条件を伝えるようにと言った。(証人G,原告本人)

ウ Gは,平成26年2月23日,J弁護士に対し,本件不動産の取引が代金約3億円の現金決済によるものであること,登記識別情報通知が紛失されており,被告が売主の側に関与していることなどを説明したところ,J弁護士から,法的には問題ないだろうとの回答を受けた。そこで,Gが,Fに,原告が本件不動産を購入することになったと連絡すると,Fから,本件不動産の売買契約締結日を平成26年2月26日とするとの連絡を受けた。(証人G)

エ 原告は,平成26年2月23日及び24日に,シンガポールで行われていた国際交渉の合間にGやJ弁護士と電話をする中で,J弁護士から,書類上は取引に問題点がみられないこと,被告の経歴からすれば被告を信頼できるだろうということを告げられた上で,さらに,Gを信頼するかどうかは原告が判断する必要があること,本件不動産を購入するのであれば現地を確認すべきであるとの助言を受けた。そして,原告は,Gから,本件売買契約の締結日が同月26日となったが決行してよいかと聞かれ,その日はJ弁護士が契約締結に立ち会うことができないとのことであったが,同日に契約を成立させることを承諾した。また,原告は,これらのやり取りの中で,Gから,本件不動産の代金が約2億5000万円であるが,その他にGに報酬として5000万円を支払う必要があること,その中には本件不動産の居住者を退去させるための費用などが含まれていることを聞いた。(証人G,原告本人)

オ 原告は,前記エと並行して,城南信用金庫の千代田支店長に電話をし,本件不動産を総額約3億円で購入することについて,相場からみて適正な価格かどうかを調査するよう依頼した。これを受けて,平成24年6月頃から原告及びa社など原告の経営する会社の取引の担当をしていた同金庫厚木支店の営業職員であるK(以下「K」という。)が,不動産業者に問い合わせたところ,Kは,相場の範囲内であり代金額に違和感はないとの回答を受けたため,その旨を原告に伝えた。そして,原告が,平成26年2月24日,Kに,本件不動産を購入することを決意したこと,同月26日に売買契約を締結するところ,現金で一括決済する必要があることを告げると,Kは,同日に城南信用金庫銀座支店での現金決済ができるよう準備を始めた。また,原告は,同月25日,原告名義の城南信用金庫の預金口座に3億0500万円を振り込んだ。(甲27,証人K,原告本人)

(6) 原告補助参加人への依頼
 FとGは,平成26年2月24日,Gが日頃から仕事を依頼している司法書士から同月26日は都合がつかないと言われたため,Fの提案により,Fの知り合いの弁護士から紹介を受けた原告補助参加人に,本件不動産の売買契約において原告の登記申請代理人となってほしいと依頼した。原告補助参加人は,同月25日,GとFから,売主が登記識別情報通知を紛失しているため,弁護士である被告が売主の本人確認情報を作成すること,したがって被告が原告の登記申請代理人となることは利益相反になることの説明を受け,原告の登記申請代理人となることを引き受けた。(証人G,同Z)

(7) 本人確認のための追加資料の提出
ア Fは,平成26年2月25日,自称Bを伴い,被告の事務所を訪れた。自称Bは,平成25年12月10日付けでD及びEとともに作成したとされる,Bが本件不動産を取得し,本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産はBが取得する旨の記載のある本件遺産分割協議書の写しと,上記3名が遺品の整理中に誤って紛失したため登記識別情報通知が存在しないことを確認するとの内容の平成26年2月20日付けの確認書の写し(以下「本件確認書」という。),これらに押捺されたD及びEの印鑑についての印鑑登録証明書を持参しており,これらを被告に提示した。(乙2,3,4の1及び2,被告本人)

イ 被告は,上記アの際に,Fから,本件不動産の売買契約の締結日が翌日である平成26年2月26日になったと聞いた。被告が,同日の午後3時から30分間程度であれば時間があると言ったところ,Fがこれを了承し,同日の午後3時に被告の弁護士事務所において本件売買契約を締結することが合意された。(証人F,被告本人)

(8) 本件売買契約締結当日のやりとり
ア 原告は,平成26年2月26日午前8時30分にシンガポールから帰国し,成田空港まで原告を迎えに来たGとともにGの車で本件不動産に行き,現地の確認を行い,さらに,昼頃にGとともにコフジインテグレーション社に行き,同社との間で一般媒介契約を締結するとともに,宅地建物取引主任者であるIから,本件不動産の売買についての重要事項説明を受けた。(甲26,39,証人G,原告本人)

イ その後,原告とGは,平成26年2月26日午後2時前に,城南信用金庫銀座支店に行った。Gは,Fの指示により,被告の事務所で売買契約を締結し代金を支払うつもりでいたところ,Kから,2億4000万円もの現金を被告の事務所まで運搬することには賛成できないと言われたため,売買契約書の調印は被告の事務所で行い,その後,現金の授受を城南信用金庫銀座支店で行うことにした。そのため,原告は,まず,Gの口座に報酬等として5000万円を送金するとともに,売買代金として現金2億4000万円を預金口座から払い戻して同支店に預けた上で,登記関係費用として現金310万円を払い戻し,これを持ってGとともに被告の事務所に向かった。(甲20の1の1及び2,甲20の2,甲21,27,証人G,同K,原告本人)


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