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民法第900条第4号婚外子相続差別規定違憲判決触り部分紹介

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平成25年 9月 5日(木):初稿
○戦後9件目の法律について違憲判決が出ました。結構な長文であり、触り部分だけ紹介します。
民法第900条第4号の「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし」との部分が違憲無効とされました。

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キ 当裁判所は,平成7年大法廷決定以来,結論としては本件規定を合憲とする判断を示してきたものであるが,平成7年大法廷決定において既に,嫡出でない子の立場を重視すべきであるとして5名の裁判官が反対意見を述べたほかに,婚姻,親子ないし家族形態とこれに対する国民の意識の変化,更には国際的環境の変化を指摘して,昭和22年民法改正当時の合理性が失われつつあるとの補足意見が述べられ,その後の小法廷判決及び小法廷決定においても,同旨の個別意見が繰り返し述べられてきた(最高裁平成11年(オ)第1453号同12年1月27日第一小法廷判決・裁判集民事196号251頁,最高裁平成14年(オ)第1630号同15年3月28日第二小法廷判決・裁判集民事209号347頁,最高裁平成14年(オ)第1963号同15年3月31日第一小法廷判決・裁判集民事209号397頁,最高裁平成16年(オ)第992号同年10月14日第一小法廷判決・裁判集民事215号253頁,最高裁平成20年(ク)第1193号同21年9月30日第二小法廷決定・裁判集民事231号753頁等)。

特に,前掲最高裁平成15年3月31日第一小法廷判決以降の当審判例は,その補足意見の内容を考慮すれば,本件規定を合憲とする結論を辛うじて維持したものとみることができる。

ク 前記キの当審判例の補足意見の中には,本件規定の変更は,相続,婚姻,親子関係等の関連規定との整合性や親族・相続制度全般に目配りした総合的な判断が必要であり,また,上記変更の効力発生時期ないし適用範囲の設定も慎重に行うべきであるとした上,これらのことは国会の立法作用により適切に行い得る事柄である旨を述べ,あるいは,速やかな立法措置を期待する旨を述べるものもある。

これらの補足意見が付されたのは,前記オで説示したように,昭和54年以降間けつ的に本件規定の見直しの動きがあり,平成7年大法廷決定の前後においても法律案要綱が作成される状況にあったことなどが大きく影響したものとみることもできるが,いずれにしても,親族・相続制度のうちどのような事項が嫡出でない子の法定相続分の差別の見直しと関連するのかということは必ずしも明らかではなく,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を平等とする内容を含む前記オの要綱及び法律案においても,上記法定相続分の平等化につき,配偶者相続分の変更その他の関連する親族・相続制度の改正を行うものとはされていない。そうすると,関連規定との整合性を検討することの必要性は,本件規定を当然に維持する理由とはならないというべきであって,上記補足意見も,裁判において本件規定を違憲と判断することができないとする趣旨をいうものとは解されない。また,裁判において本件規定を違憲と判断しても法的安定性の確保との調和を図り得ることは,後記4で説示するとおりである。

なお,前記(2)のとおり,平成7年大法廷決定においては,本件規定を含む法定相続分の定めが遺言による相続分の指定等がない場合などにおいて補充的に機能する規定であることをも考慮事情としている。しかし,本件規定の補充性からすれば,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を平等とすることも何ら不合理ではないといえる上,遺言によっても侵害し得ない遺留分については本件規定は明確な法律上の差別というべきであるとともに,本件規定の存在自体がその出生時から嫡出でない子に対する差別意識を生じさせかねないことをも考慮すれば,本件規定が上記のように補充的に機能する規定であることは,その合理性判断において重要性を有しないというべきである。

(4) 本件規定の合理性に関連する以上のような種々の事柄の変遷等は,その中のいずれか一つを捉えて,本件規定による法定相続分の区別を不合理とすべき決定的な理由とし得るものではない。しかし,昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向,我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化,諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘,嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化,更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば,家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして,法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,上記のような認識の変化に伴い,上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。

以上を総合すれば,遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては,立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。
したがって,本件規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたものというべきである。


4 先例としての事実上の拘束性について
本決定は,本件規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断するものであり,平成7年大法廷決定並びに前記3(3)キの小法廷判決及び小法廷決定が,それより前に相続が開始した事件についてその相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。

他方,憲法に違反する法律は原則として無効であり,その法律に基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであることからすると,本件規定は,本決定により遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断される以上,本決定の先例としての事実上の拘束性により,上記当時以降は無効であることとなり,また,本件規定に基づいてされた裁判や合意の効力等も否定されることになろう。

しかしながら,本件規定は,国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し,相続という日常的な現象を規律する規定であって,平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると,その間に,本件規定の合憲性を前提として,多くの遺産の分割が行われ,更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。

取り分け,本決定の違憲判断は,長期にわたる社会状況の変化に照らし,本件規定がその合理性を失ったことを理由として,その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず,本決定の違憲判断が,先例としての事実上の拘束性という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し,いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは,著しく法的安定性を害することになる。

法的安定性は法に内在する普遍的な要請であり,当裁判所の違憲判断も,その先例としての事実上の拘束性を限定し,法的安定性の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず,このことは,裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる(前記3(3)ク参照)。

以上の観点からすると,既に関係者間において裁判,合意等により確定的なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが,関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば,本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当であるといえる。

そして,相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については,債務者から支払を受け,又は債権者に弁済をするに当たり,法定相続分に関する規定の適用が問題となり得るものであるから,相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく,その後の関係者間での裁判の終局,明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて,法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当である。

したがって,本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。


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