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委託者指図型投資信託受益権・個人向け国債に関する最高裁判決解説

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平成26年 8月20日(水):初稿
○「委託者指図型投資信託受益権・個人向け国債に関する最高裁判決全文紹介」の続きで、私なりの解説です。
先ず判決要旨ですが、共同相続された①委託者指図型投資信託の受益権、②個人向け国債は,いずれも相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないというものです。
遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は難問?」記載の通り、預貯金等可分債権は、相続によって当然分割されるとの結論は、特別受益制度との関係で決定的不合理を生じ、学説では反対説が多いのですが、家裁実務では、争いになった場合、当然分割説を徹底しています。

○次に事案ですが、遺産分割審判で、相続人4名が各持分4分の1で共有取得するとされた株式,MRF等の投資信託受益権(振替投資信託受益権)及び個人向け国債につき、相続人の一部が他の相続人に共有物分割等を求めたところ、第一審は国債・投資信託受益権等いずれも四等分して小数以下を切り捨てた数を取得すると本案判決をしたところ、第二審は国債・投資信託受益権はその性質上可分債権に該当し、相続と同時に当然に分割されることを理由に第一審判決を取り消し、訴えを不適法却下したので上告したものです。

○これに対する上告審判決が平成26年2月25日最高裁判決(判タ1401号153頁、判時2222号53頁)ですが、結論は上記の通りです。
その理由については、投資信託受益権(振替投資信託受益権)及び個人向け国債の性質の理解が必要です。

先ず投資信託とは、投資者から集めた資金を信託の形式で運用しその成果を投資者に分配するもので、投資信託及び投資法人に関する法律に規定されています。委託者指図型投資信託とは、投資信託委託会社と信託銀行が委託会社を委託者、信託銀行を受託者とする信託契約を締結し、委託会社は,信託契約に基づいて発生した受益権を均等に分割し、販売会社を通じて投資家に販売するもので、投資信託受益権を取得した者は、収益分配請求権及び償還金請求権の他に委託会社に対する信託財産の帳簿閲覧請求権等の権利を持ちます。

次に国債は、国が発行する債券であり、公募による国債の発行は消費貸借類似の一種の無名契約とされ、個人向け国債とは、専ら個人が保有することを目的とし、変動金利型10年満期のもの、固定金利型5年満期のもの、固定金利型3年満期のものが発行され、額面金額の最低額は1万円で発行条件等は発行毎に財務省の告示によって定められています。

○相続時可分債権該当性についての学説・判例状況ですが、投資信託受益権は、下級審裁判例及び学説は肯否両説あり、最高裁判決はなく、個人向け国債は、当然分割を否定した平成23年6月10日福岡高裁判決がある程度で最高裁判決はありませんでした。

○可分債権かどうかの決め手は、不可分な権利が含まれているかどうかですが、資信託受益権には収益分配請求権のほか、帳簿閲覧請求権や議決権などの不可分な権利があり、これらは不可分であり、また、個人向け国債は、額面金額最低額が1万円とされて、1万円未満の権利行使は許容されていない点が不可分と評価出来ます。一定期間の据置期間を定め分割払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預入するものである定額郵便貯金債権について、郵便貯金法が分割した権利行使を許容していないことなどを理由に当然分割を否定した平成22年10月8日最高裁判決(判タ1337号114頁)の考え方からは、①委託者指図型投資信託の受益権、②個人向け国債いずれも当然分割されないとの結論は妥当と思います。

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