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生命保険金を特別受益として持ち戻し対象としない家裁審判紹介1

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令和 1年 7月 4日(木):初稿
○「生命保険金を特別受益として持ち戻し対象とした高裁決定紹介1」の続きで、保険契約に基づき保険金受取人とされた二男が取得した死亡保険金の合計額は約430万円で、相続財産合計額の6パーセント余りにすぎないこと、二男は被相続人と長年生活を共にし、被相続人の入通院時の世話をしていたことなどの事情にかんがみると、保険金受取人である二男と他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存在するとは認めがたいとして、同条の類推適用により死亡保険金を持戻しの対象とすべきであるとはいえないとした平成18年3月22日大阪家裁堺支部審判(家月58巻10号84頁)関連部分を紹介します。

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主  文
1 相手方Bの寄与分を定める処分の申立てを却下する。
2 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1) 別紙目録1ないし3記載の各土地を相手方B、相手方C及び相手方Dの共有取得(相手方Bの持分は3929万7000分の1384万4516、相手方C及び相手方Dの持分は各3929万7000分の1272万6242である。)とする。
(2) 別紙目録6(1)記載の郵便定額貯金の2分の1を相手方Cの取得とし、その2分の1を相手方Dの取得とする。
(3)
ア 相手方B保管の現金41万2000円のうち20万6000円を相手方Cの取得とし、20万6000円を相手方Dの取得とする。
イ 相手方Bは、相手方C及び相手方Dに対し、上記各20万6000円を引き渡せ。
3 相手方Bは、前項の遺産取得の代償として、本審判確定の日から3か月以内に、申立人に対し、913万2242円を支払え。
4 本件手続費用中、鑑定人に支払った60万円はこれを4分し、その1を申立人の、その1を相手方Bの、その1を相手方Cの、その1を相手方Dの各負担とし、その余の手続費用は各自の負担とする。

理  由
 一件記録による当裁判所の事実認定及び法律判断は、以下のとおりである。

第1 相続の開始、相続人及び法定相続分
1 被相続人(大正6年×月×日生)は、平成14年9月5日死亡した。


(1) 被相続人は、昭和10年10月3日、F(大正元年×月×日生)と婚姻し、Fとの間に、昭和13年×月×日長女である相手方Cを、昭和16年×月×日二女である相手方Dを、昭和20年×月×日長男である申立人を、昭和24年×月×日二男である相手方Bをそれぞれもうけた。
(2) Fは、昭和60年10月10日死亡した。
(3) したがって、被相続人の共同相続人は、申立人、相手方B、相手方C及び相手方Dの4名であり、その法定相続分は各4分の1である。

第2 遺言書の存在とこれが被相続人の遺産分割に及ぼす影響

         (中略)


第3 遺産の範囲

(1) 被相続人は、その死亡当時、別紙目録1ないし3記載の各土地(以下「本件各土地」という。本件各土地の価額は合計3929万7000円である。)、同目録6(1)及び(2)記載の各郵便定額貯金(合計281万2000円)並びに同目録7記載の各銀行預金(合計2752万9389円)を有していた(総合計6963万8389円)。

 なお、相手方Bは、「被相続人は、死亡する以前に、相手方Bに対し、本件各土地を贈与又は死因贈与した。」旨主張するが、この相手方Bの主張事実を裏付ける客観的資料は見当たらないから、この主張は採用できない。
 また、相手方Bは、「相手方Bは、昭和58年、申立人から、マンション購入代金に充てる400万円を出してくれたら、本件各土地及びその地上建物(別紙目録4記載の建物)についての権利は主張しないと言われたため、申立人に対し、400万円を贈与した。申立人は、本件各土地についての相続権を放棄したものであり、そうでないとしても、申立人が、本件各土地が遺産に属すると主張することは信義則に反して許されない。」旨主張する。しかしながら、相手方Bの「相続権の放棄」の主張が法律的にいかなる意味を持つのか理解し難いし、また、仮に、相手方Bが、申立人から、上記主張のとおりの依頼を受けて、申立人に対し、400万円を贈与していたとしても、相続の開始前における遺留分の放棄でさえ、家庭裁判所の許可を得たときに限り、その効力を生ずることとされていること(民法1043条1項)にかんがみると、申立人が、本件各土地が遺産に属すると主張することが信義則に反するとは到底いえない。

(2) 申立人、相手方B、相手方C及び相手方Dはいずれも、別紙目録6(1)記載の郵便定額貯金を遺産分割の対象とすることに異存がない。

(3) 申立人、相手方B、相手方C及び相手方Dは、相続開始後、別紙目録6(2)記載の各郵便定額貯金の払戻しを受けた(払戻額合計241万2000円)。申立人は、相手方B、相手方C及び相手方Dの了解を得て、このうち200万円を、遺産分割の自己の取得分の一部として取得し、相手方Bは、残りの41万2000円を遺産として保管している。

(4) 申立人、相手方B、相手方C及び相手方Dは、相続開始後合意の上で、別紙目録7記載の各銀行預金の払戻を受け(払戻額合計2752万9389円)、申立人、相手方C及び相手方Dが各688万2347円を、相手方Bが688万2348円を取得した。


(1) 被相続人は、その死亡当時、別紙8(1)記載の各簡易保険(いずれも被保険者は被相続人、保険金受取人は相手方Bである。)の契約者であり、相手方Bは、被相続人の死亡により、死亡保険金請求権を取得し、死亡保険金合計428万9134円を受領した。

(2) 申立人は、上記死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は被相続人の遺産である旨主張するが、死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、保険金受取人の固有の財産であるから、遺産とはならない。

3 そうすると、本審判において遺産分割の対象となる被相続人の遺産は、本件各土地、別紙目録6(1)記載の郵便定額貯金及び相手方Bが保管する現金41万2000円である。

第4 特別受益
1 申立人関係

(1) 相手方Bは、「申立人は、被相続人から、昭和60年7月26日100万円、平成2年7月20日220万円、平成3年7月28日150万円、平成3年10月14日88万円、平成3年11月26日20万円、平成4年4月13日60万円、平成6年9月27日50万円、平成11年10月200万円、そのころ2回にわたり合計220万円を贈与した。この贈与に係る合計1108万円は申立人の特別受益である。」旨主張する。

(2) しかしながら、申立人が、被相続人から、その生前、少なくとも200万円の贈与を受けたことを認めることはできるものの、これを超える金額の贈与を受けたことを認めるに足りる資料は見当たらない。

(3) そうすると、上記贈与に係る200万円が、申立人の特別受益に当たるといえる。

2 相手方B関係
(1)
ア 相手方Bは、昭和62年7月25日、被相続人から、その所有の別紙目録4記載の建物(自宅として使用していた。)の贈与を受け、同年10月、680万円を金融機関から借り入れ、この資金で上記建物の修理、増築工事をした(上記建物の修理、増築工事後の登記簿上の表記は別紙目録5記載のとおりである。)。

イ 申立人は、相手方Bが被相続人から受けた上記建物は特別受益に当たる旨主張するが、贈与当時、上記建物は、築後80年程度経過した老朽化の著しい木造建物であって、経済的価値はなかったとみるのが相当であるから、上記主張は採用できない。

(2)
ア 被相続人は、別紙目録8(2)記載の各簡易保険に加入していた(保険契約者の地位をFから相続取得した。)。相手方Bは、上記各簡易保険の実質的な保険契約者が相手方Bである旨主張するが、保険契約者の変更手続がされていない以上、相手方Bを保険契約者とみる余地はない。
イ 被相続人は、平成12年4月に別紙目録8(2)イ記載の簡易保険を、平成13年6月に同目録8(2)ア記載の簡易保険をそれぞれ解約し、その受領額合計841万9970円を相手方Bに贈与した。
ウ 申立人は、「被相続人は、昭和62年2月に別紙目録8(2)ウ記載の簡易保険を解約し、その受領額50万円を相手方Bに贈与した。」旨主張するが、この主張事実を裏付けるに足りる資料は見当たらない。
エ そうすると、上記贈与に係る841万9970円が、相手方Bの特別受益に当たるといえる。

(3)
ア 前記第3の2(1)のとおり、被相続人は、その死亡当時、別紙8(1)記載の各簡易保険(いずれも被保険者は被相続人、保険金受取人は相手方Bである。)の契約者であり、相手方Bは、被相続人の死亡により、死亡保険金請求権を取得し、死亡保険金合計428万9134円を受領した。

イ 申立人は、「相手方Bの受領した上記死亡保険金428万9134円は、相手方Bの特別受益に当たる。」旨主張する。しかしながら、簡易保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産に当たらないと解するのが相当であるし、相手方Bが受領した死亡保険金は合計428万9134円であるところ、これは被相続人の相続財産の額6963万8389円の6パーセント余りにすぎないことや、後記第5の1(1)のとおり、相手方Bは、長年被相続人と生活を共にし、入通院時の世話をしていたことなどの事情にかんがみると、保険金受取人である相手方Bと他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存在するとは認め難いから、同条の類推適用によって、相手方Bの受領した上記死亡保険金428万9134円を、特別受益に準じて持ち戻しの対象とすべきであるとはいえない(最高裁平成16年10月29日決定・民集58巻7号1979頁参照)。

(4)
ア 被相続人は、別紙目録6(3)記載の各郵便定額貯金を有していたが、平成13年1月から平成14年4月までの間にその払戻しを受けた(払戻額合計659万7200円)。
イ 申立人は、「被相続人は、上記払戻金のうち509万7200円を相手方Bに贈与した。この贈与に係る509万7200円は相手方Bの特別受益である。」旨主張する。しかしながら、申立人の主張する上記贈与の存在を裏付ける資料は見当たらない。

第5 寄与分

         (中略)



第6 相続分の算定
1 遺産価額
 6963万8389円である。

2 特別受益額
 申立人の特別受益額は200万円であり、相手方Bの特別受益額は841万9970円である。

3 みなし相続財産の価額
 上記1及び2の合計8005万8359円である。

4 各相続人の本来的相続分額
 8005万8359円÷4=2001万4589円(1円未満切り捨て)

5 特別受益による具体的相続分
 申立人  2001万4589円-200万円=1801万4589円
 相手方B 2001万4589円-841万9970円=1159万4619円
 相手方C 2001万4589円
 相手方D 2001万4589円

6 一部分割後の相続分額
 申立人  1801万4589円-200万円(前記第3の1(3))-688万2347円(前記第3の1(4))=913万2242円
 相手方B 1159万4619円-688万2348円(前記第3の1(4))=471万2271円
 相手方C 2001万4589円-688万2347円(前記第3の1(4))=1313万2242円
 相手方D 2001万4589円-688万2347円(前記第3の1(4))=1313万2242円

第7 本件各土地の利用状況
 本件各土地は、相手方Bが自宅建物(別紙目録5記載の建物である。)の敷地として利用している。なお、相手方Bは、平成10年8月21日、長男Gに対し、上記自宅建物を贈与した。

第8 当事者の意見
1 申立人
 本件各土地を相手方Bの取得とした上、相手方Bから、申立人の具体的相続分に応じた代償金の支払を受けることを希望する。

2 相手方B
 本件各土地を相手方Bの取得とすることを希望するが、支払可能な代償金は500万円であり、これを越える代償金を支払うことはできない。

3 相手方C及び相手方D
 貯金及び現金の各2分の1及び本件各土地の具体的相続分に応じた共有特分の取得を希望する。代償金の支払はできないので、これを必要とするような割合の持分の取得は希望しない。

第9 当裁判所の定める分割方法
1 相手方Bは、喪主として、被相続人の葬儀を執り行い、香典を受領し、葬儀関係費用を支出したところ、相手方Bは、「相手方Bが受領した香典は合計107万円であり、支出した葬儀関係費用は279万9178円である。相手方Bは、その差額172万9178円を遺産から優先的に償還を受ける権利を有する。」旨主張する。しかしながら、香典でまかないきれない葬儀関係費用の負担者は、原則的には喪主であると解されるし、仮に、他の相続人も共同して負担すべきであるような事情が存在する場合であっても、葬儀関係費用の負担の問題は、民事訴訟で解決されるべきであって、遺産分割の手続の中で考慮することはできない。

2 本件各土地の利用状況、当事者の意見、本件各土地は、相手方Bの長男であるG所有の別紙目録5記載の建物の敷地として利用されており、これを分割して複数の相続人に取得させることは現実的でなく、また、換価分割も困難であること、相手方C及び相手方Dは、相手方Bが引き続き本件各土地を自宅の敷地として使用することを望んでおり、本件各土地の共有特分を取得しても、共有物分割請求をする意思はないこと、申立人は、経済的に苦しい状況にあり、本件各土地の持分を取得しても、共有物分割請求をする蓋然性が高いものの、それがされた場合でも、現物分割も、換価分割も困難であると見込まれることなどの事情を総合勘案すると、相手方C及び相手方Dにはそれぞれ、別紙目録6(1)の郵便定額貯金の各2分の1(20万円)及び相手方Bの保管する現金41万2000円の各2分の1(20万6000円)を取得させた上、不足分(1313万2242円-20万円-20万6000円=1272万6242円)については、これに相当する本件各土地の持分(3929万7000分の1272万6242)を取得させることとし、相手方Bには、本件各土地のその余の持分(3929万7000分の1384万4516)を取得させた上、申立人に対し、その残余の相続分額(913万2242円)を代償金として支払わせることとするのが相当である(相手方Bが、被相続人の死亡後、死亡保険金428万9134円を受領し、かつ、遺産の一部分割金688万2348円を取得していることなどの事情にかんがみると、相手方Bには、この程度の代償金を支払う能力があると考えられる。)。なお、この代償金の支払については、本審判確定後3か月の余裕を置くのが相当である。

第10 手続費用
 本件手続費用中、鑑定人に支払った60万円は、申立人、相手方B、相手方C及び相手方Dに4分の1ずつ負担させ、その余の手続費用は各自に負担させることとするのが相当である。

第11 結論
 よって、主文のとおり審判する。(家事審判官 谷口幸博)
以上:6,384文字

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