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栄養失調凍死と瑕疵担保責任判例紹介1

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平成20年10月10日(金):初稿
「建物に幽霊が出るとの噂と瑕疵担保責任」で、当事務所で実際取扱例の判例を後日紹介しますと記載していました。建物内での自殺と瑕疵担保責任を巡る裁判例は相当数公開されていますが、栄養失調による凍死、その後の幽霊が出るとの噂が瑕疵担保責任に該当するとされた判例はおそらく公開されていないと思いますので、当事務所依頼者のご了解を受けた上で当事者名匿名で紹介します。

○先ず判決の結論と争いのない前提事実部分を紹介します。
 前提事実部分概要は、引きこもりで一人暮らしの中年女性が栄養失調で凍死し土地建物が残されましたが、相続人がいないため相続財産管理人が選任され、同管理人から不動産業を営む被告会社がこの土地建物を代金550万円で買い受け、これを第1買受人に代金1500万円で売り渡したものを代金620万円で買い戻し、更に通所介護施設を営む原告に代金1400万円で売り渡したというものです。

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仙台地方裁判所平成18年8月31日判決言渡 その1

  判   決
宮城県○○市
原告 医療法人甲一会
同代表者理事長 甲野太郎
同訴訟代理人弁護士 小松亀一
宮城県○○市
被告 株式会社乙二
同代表者取締役 乙野二郎
同所同番地
被告 乙野二郎
上記被告両名訴訟代理人弁護士 ○○○○

  主   文
1 被告株式会社乙二は、原告に対し、1680万円及びこれに対する平成17年6月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 原告の被告株式会社乙二に対するその余の請求及び被告乙野二郎に対する請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は、原告に生じた費用の2分の1と被告株式会社乙二に生じた費用を被告会社乙二の負担とし、原告に生じたその余の費用と被告乙野二郎に生じた費用を原告の負担とする。

  事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 請求の趣旨
(1)被告らは、連帯して、原告に対し、1680万円及びこれに対する平成17年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)訴訟費用は被告らの負担とする。

2 請求の趣旨に対する答弁
(1)原告の請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告の負担とする。

第2 事案の概要
1 本件は、原告が、被告らに対し、売買契約の解除及び債務不履行等に基づき、売買代金の返還及び損害賠償として、合計1680万円及びこれに対する解除の日である平成17年6月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金又は法定利息の支払を求めた事案である。

2 前提事実(証拠援用部分を除き、争いがない。)
(1)原告は平成17年5月12日、被告株式会社乙二(以下「被告会社」という。)との間で、原告が被告会社から別紙物件目録記載の土地建物(以下、上記土地建物を「本件土地建物」といい、上記建物を「本件建物」という。)を代金1400万円で買い受ける旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。
 本件売買契約には、相手方の義務違反によって本件売買契約が解除された場合には、義務違反者は売買代金の20パーセント相当額を相手方に支払う旨の約定(以下「本件損害賠償の予定特約」という。)があった。

(2)原告は、平成17年5月12日、本件売買契約に基づき、その売買代金1400万円を被告会社に支払い、本件土地建物の所有権移転登記をした。

(3)原告は、老人介護事業を主に営む医療法人であり、本件土地建物を通所介護施設として利用する目的で購入したのであり、この利用目的は売主であり宅地建物取引業者でもある被告会社に事前に説明し、本件売買契約当時、被告会社も認識していた。

(4)原告は、平成17年6月21日、被告会社に対し、本件土地建物に隠れた瑕疵があることを理由として、本件売買契約を解除する旨の意思表示(以下「本件解除」という。)をし、売買代金の返還を請求した(甲13)。

(5)本件土地建物に関しては、以下の事情(以下「本件事情」という。)が存在した(甲3ないし9、10の1・2、12の1ないし3、25,乙8,9)。
ア 本件土地建物は、もともと丙野花子(以下「花子」という。)が所有していた不動産であった。花子は、昭和56年12月ころから、その両親と3人で本件土地建物に居住していたが、昭和60年5月に父が、平成4年11月に母が死亡し、その後は、結婚することもなく、一人で本件土地建物で生活していた(花子の兄弟姉妹もすべて死亡していた)。花子は、両親が死亡した後、隣近所や友人との付き合いを一切しなくなり、玄関の錠ををかけたまま誰とも会おうとしなくなった。本件土地建物の隣地に居住していた花子の叔父丁野三郎(花子の母の弟。以下「丁野」という。)は、花子に精神科への通院を勧めたが、花子は丁野の言うことを聞かず、丁野が集金に訪れたときだけ玄関を開けるようになった。

 平成9年4月ころから、花子の生活は乱れ始め、自宅からハイヤーで仙台まで遊びに行き、1週間家を不在にすることもあった。同年10月末日ころ、丁野が本件土地建物を訪問したところ、布団にくるまり、返事もおぼつかない状態の花子を発見した(花子は、このとき、両親が残した預貯金や自分の退職金等を使い果たし、食べる物も購入できず、極度の栄養失調に陥っていた。)ことから、丁野は、翌11月1日、救急車を呼び花子を○○病院に入院させた。

 花子は、平成10年2月ころ、回復して同病院を退院した。丁野は、退院した花子に対し、生活のため仕事を見つけて働くように話したが、花子は、再び、同病院に入院する前の本件土地建物に引きこもる状態に戻ってしまった。花子は、掃除や洗濯をせず、食事も作らず、風呂にも入らず、日中は外出をせず、夜にコンビニエンスストアやスーパーに買い物に行くという生活を続けた。平成11年2月15日、見回りにきた地区担当の民生委員と丁野が本件建物の玄関の鍵を開けて中に入ったところ、本件建物内で死亡している花子が発見された。花子は、平成11年2月1日ころから同月10日ころまでの間に栄養失調により凍死したものと推定された。室内は、水道管が破裂して廊下が水浸しとなっていた。

イ 丁野は、平成11年3月18日、仙台家庭裁判所○○支部に対し、相続財産管理人選任の申立をし、同年5月20日、同支部により、山田太郎弁護士(以下「山田弁護士」という。)が相続財産管理人に選任された。
 花子の相続財産管理人山田弁護士は、同支部から本件土地建物の売却許可審判を得た上、平成12年8月17日、被告会社との間で、本件土地建物を代金550万円で被告会社に売り渡す旨の売買契約を締結し(以下「8・17売買」という。)、同年10月13日、被告会社に本件土地建物の所有権移転登記手続をした。

ウ 被告会社は、平成12年10月18日、本件建物にリフォーム工事を施工した上、戊野四郎(以下「戊野」という。)に対し、本件土地建物を代金1500万円で売り渡す旨の売買契約を締結し、同日、戊野に対し、本件土地建物の所有権移転登記手続をした。被告会社は、平成16年5月6日、戊野から、本件土地建物を代金620万円で買い戻した。

エ 平成17年3月9日、原告会社の担当者である己野五郎(以下「己野」という。)が、本件土地建物を通所介護施設として購入したいとして被告会社の事務所を訪れた。被告会社の代表者である被告乙野二郎(以下「被告乙野」という。)は、己野を本件土地建物に案内し、本件土地建物の概要書と土地・建物登記事項証明書のコピーを己野に渡し、交渉を重ねた上、平成17年5月12日、原告との間で、本件土地建物を代金1400万円で売り渡す旨の本件売買契約を締結した。

(その2に続く)
以上:3,169文字

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