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民事執行法第4章第196条以下”財産開示手続”勉強開始宣言

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平成26年 7月12日(土):初稿
○弁護士の重要な仕事の一つが債権回収です。債務の支払をしない債務者に対する最終的な債権回収手段は訴えを提起して判決を得て、この判決に基づいて債務者の財産を差押をかけて強制的に回収するものです。この財産の差押で最も効果のあるのは、債務者が事業者の場合は、銀行預金口座の差押です。銀行預金口座を差押をかけると口座は凍結されてその債務者はその銀行との取引が停止され、事実上倒産に追い込まれるからです。

○「これは使えない判例紹介-支店不明な銀行預金差押方法4」で紹介したとおり、平成25年1月17日最高裁決定(判タ1386号182頁、判時2176号29頁)は、銀行預金口座差押には支店名まで特定することが必要とのこれまでの実務取扱を容認することで決着をつけたので、銀行預金は支店名まで判らないと差押はできないことで確定しています。

○事業者の場合は、取引上の金銭債務決済は殆ど銀行経由で行われているため取引銀行を支店名まで調査することは比較的容易ですが、個人の場合は、結構、難しいものです。また、個人の場合、銀行預金を差押しても、残高が殆どなく事実上空振りに終わることが多く、差し押さえられた銀行の取引を止めて別な銀行に口座を変えて普通に生活をすることが可能です。個人の場合、水道光熱費等公共料金の自動引落をする総合口座が重要ですが、これも簡単に変えることができるからです。

○そのため個人に対する判決を取っても銀行預金口座の差押が困難であり、また、仕事が自営業等の場合、差し押さえる売掛金等の債権を特定することも困難で、更に勤務先が不明で勤務先を調査するのも結構難しくて、なかなか債権回収の実が上げられないことがしばしばあります。持ち家に住んでいても、住宅ローンが一番抵当権でついており、殆どの場合、住宅の価値よりローン残額の方が大きいオーバーローンとなっており、この住宅に対する差押もできません。

○なかには結構な豪邸に住みながら判決を得ても手も足も出せない債務者が居て、債権者としては甚だ悔しい思いをすることもあります。豪邸の住宅ローンだけは、直接支払形式で支払っていると、住宅ローン債権者は住宅ローン滞納による差押はしません。従って他の債務は一切支払わず豪邸の住宅ローンだけを支払って豪邸に住み続けることも可能です。さらにこの豪邸はオーバーローンで実質価値がない場合、ローン債務引受を対価として例えば夫が妻名義に換えても詐害行為として取り消すことも困難になります。判決が夫に対するものだと、豪邸を妻名義に換えられると、将来、剰余価値が生じても差押はできません。

○このように判決が出されても一切支払をせずのうのうとしている債務者を何とかできないかとして創設された制度が平成15年民事執行法改正で導入された財産開示手続です。この財産開示手続の参考書として小柳茂秀弁護士著「財産開示の実務と理論」があります。この制度の活用場面として、
例えば、損害賠償請求事件で勝訴し、判決が確定したのに債務者が任意に支払わない。債務者の生活ぶりをみるとお金に困っているようには見えないが、居住している不動産には既に優先的な担保権が設定され、強制執行を実施しても意味がなく、他に差し押さえるべき財産を特定できないというときに、財産開示手続により債務者に財産目録を提出させたうえで裁判所に呼び出して質問し、預金口座や勤め先等の情報を得て、強制執行を実施していくというのが活用場面の一例である。
と解説されています。

○この財産開示手続は実効性が余りないと言われていましたが、同著によると「要は使い方なのである。食わず嫌いの代理人に対して、『いわれるほど、使えない制度ではない。』と申し上げたい。」とのことで、必要性に迫られており、少しずつ勉強していこうと思っているところです。
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