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借地借家法第11条地代等増減請求権に関する重要最高裁判決全文紹介1

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平成26年 8月26日(火):初稿
○「賃料増減額請求の要件-結構厳しい」に「賃料増減額請求は弁護士費用に加えて不動産鑑定士による賃料鑑定費用も必要になり、結構、裁判費用がかかり、且つ容易に目的を達することは出来ませんので、目的達成までのコストを慎重に判断するようにアドバイスしています。」と記載していましたが、今般、バブル期に定められた地代の減額請求手続を依頼されました。

○そこで借地借家法第11条の規定について詳細に勉強する必要が生じました。先ず、地代等自動改定特約において地代等の改定基準を定めるに当たって基礎とされていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には、同特約の適用を争う当事者は、同特約に拘束されず、同項に基づく地代等増減請求権の行使を妨げられないとする平成15年6月12日最高裁判決(判タ1126号106頁、判時1826号47頁)全文を紹介します。

○世の中にはたまたま先祖が広い土地を持ってビル用地として貸していたために、僅か1ヶ月の間に、何もしないでも普通のサラリーマン1年分、或いは、数年分の収入に相当する地代を貰える、誠に羨ましい人々が居ます。当事務所でも人件費等経費が1ヶ月数百万円かかり、その売上を上げるために、日々不安感に苛まれながら、血の滲むような努力を継続しています。しかし、世の中の一定割合部分居る、何もしないで1ヶ月に数百万円(或いは数千万円、数億円)入ってくる土地資産家の方々には、ただただ羨ましい限りです(^^;)。

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主  文
原判決を破棄する。
被上告人の請求についての本件控訴を棄却する。
上告人の請求に関する部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。
第2項の部分に関する控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理  由
 上告代理人○○○○、同○○○○、同○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は、本件各土地を被上告人から賃借した上告人が、被上告人に対し、地代減額請求により減額された地代の額の確認を求め、他方、被上告人が、上告人に対し、地代自動増額改定特約によって増額された地代の額の確認を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1) 上告人は、大規模小売店舗用建物を建設して株式会社Aの店舗を誘致することを計画し、昭和62年7月1日、その敷地の一部として、被上告人との間において、被上告人の所有する本件各土地を賃借期間を同月20日から35年間として借り受ける旨の本件賃貸借契約を締結した。

(2) 被上告人及び上告人は、本件賃貸借契約を締結するに際し、被上告人の税務上の負担を考慮して、権利金や敷金の授受をせず、本件各土地の地代については、昭和62年7月20日から上告人が本件各土地上に建築する建物を株式会社Aに賃貸してその賃料を受領するまでの間は月額249万2900円とし、それ以降本件賃貸借契約の期間が満了するまでの間は月額633万1666円(本件各土地の価格を1坪当たり500万円と評価し、その8%相当額の12分の1に当たる金額)とすることを合意するとともに、「但し、本賃料は3年毎に見直すこととし、第1回目の見直し時は当初賃料の15%増、次回以降は3年毎に10%増額する。」という内容の本件増額特約を合意し、さらに、これらの合意につき、「但し、物価の変動、土地、建物に対する公租公課の増減、その他経済状態の変化により甲(被上告人)・乙(上告人)が別途協議するものとする。」という内容の本件別途協議条項を加えた。

(3) 本件賃貸借契約が締結された昭和62年7月当時は、いわゆるバブル経済の崩壊前であって、本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていた。したがって、当事者双方は、本件賃貸借契約とともに本件増額特約を締結した際、本件増額特約によって、その後の地代の上昇を一定の割合に固定して、地代をめぐる紛争の発生を防止し、企業としての経済活動に資するものにしようとしたものであった。

(4) ところが、本件各土地の1m2当たりの価格は、昭和62年7月1日には345万円であったところ、平成3年7月1日には367万円に上昇したものの、平成6年7月1日には202万円に下落し、さらに、平成9年7月1日には126万円に下落した。

(5) 上告人は、被上告人に対し、前記約定に従って、昭和62年7月20日から昭和63年6月30日までの間は、月額249万2900円の地代を支払い、上告人が株式会社Aより建物賃料を受領した同年7月1日以降は、月額633万1666円の地代を支払った。

(6) その後、本件各土地の地代月額は、本件増額特約に従って、3年後の平成3年7月1日には15%増額して728万1416円に改定され、さらに、3年後の平成6年7月1日には10%増額して800万9557円に改定され、上告人は、これらの地代を被上告人に対して支払った。
 しかし、その3年後の平成9年7月1日には、上告人は、地価の下落を考慮すると地代を更に10%増額するのはもはや不合理であると判断し、同日以降も、被上告人に対し、従前どおりの地代(月額800万9557円)の支払を続け、被上告人も特段の異議を述べなかった。

(7) さらに、上告人は、被上告人に対し、平成9年12月24日、本件各土地の地代を20%減額して月額640万7646円とするよう請求した。しかし、被上告人は、これを拒否した。

(8) 他方、被上告人は、上告人に対し、平成10年10月12日ころ、平成9年7月1日以降の本件各土地の地代は従前の地代である月額800万9557円を10%増額した月額881万0512円になったので、その差額分(15か月分で合計1201万4325円)を至急支払うよう催告した。しかし、上告人は、これを拒否し、かえって、平成10年12月分からは、従前の地代を20%減額した額を本件各土地の地代として被上告人に支払うようになった。

3 本件において、上告人は、被上告人に対し、本件各土地の地代が平成9年12月25日以降月額640万7646円であることの確認を求め、他方、被上告人は、上告人に対し、本件各土地の地代が平成9年7月1日以降月額881万0512円であることの確認を求めている。

4 前記事実関係の下において、第一審は、上告人の請求を一部認容し、被上告人の請求を棄却したが、これに対して、被上告人が控訴し、上告人が附帯控訴したところ、原審は、次のとおり判断して、被上告人の控訴に基づき、第一審判決を変更して、上告人の請求を棄却し、被上告人の請求を認容するとともに、上告人の附帯控訴を棄却した。

(1) 本件増額特約は、昭和63年7月1日から3年ごとに本件各土地の地代を一定の割合で自動的に増額させる趣旨の約定であり、本件別途協議条項は、そのような地代自動増額改定特約を適用すると、同条項に掲げる経済状態の変化等により、本件各土地の地代が著しく不相当となる(借地借家法11条1項にいう「不相当となったとき」では足りない。)ときに、その特約の効力を失わせ、まず当事者双方の協議により、最終的には裁判の確定により、相当な地代の額を定めることとした約定であると解すべきである。


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