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ヌーブラ事件

平成17年 9月 7日(水):初稿
1 不正競争防止法
不正競争防止法2条1項3号の主体性
ヌーブラ事件

大阪地判平16年9月13日 平成16年(ワ)第6772号 損害賠償等請求事件
 (参考:最高裁判所ホームページ及びL&T No.26 97頁)

      日本における独占的販売権
X  ←――――――――――――――― 訴外)ブラジェル社
(平成15年2月1日販売開始)     (平成14年10月販売開始)
商品名「ヌーブラ」



(平成15年6月頃、ロ号製品販売)
商品名「パス ブラ」「アン ブラ」「シリコンブラジャー」

争点:
① 独占的販売権者は不競法2条1項3号の主体となり得るか。
② 不競法5条2項による損害額の計算方法。

結論:請求一部認容。(損害額を若干減額)
(① 主体となり得る。
② 廉価販売分は除外、高額返品は返品額基準。)

争点①について
「3号の趣旨をみると、他人が市場において商品化するために資金、労力を投下した成果の模倣が行われるならば、模倣者は商品化のためのコストやリスクを大幅に軽減することができる一方で、先行者の市場先行のメリットは著しく減少し、模倣者と先行者の間に競争上著しい不公正が生じ、個性的な商品開発、市場開拓への意欲が阻害され、このような状況を放置すると、公正な競業秩序を崩壊させることになりかねない。そこで、3号は、他人が商品化のために資金、労力を投下した成果を、他に選択肢があるにもかかわらず殊更完全に模倣して何らの改変を加えることなく自らの商品として市場に提供し、その他人と競争する行為をもって、不正競争としたものである。」

「このような3号の趣旨を前提として、3号による保護の主体の範囲を考えると、自ら資金、労力を投下して商品化した先行者は保護の主体となり得るが、そのような者のみならず、先行者から独占的な販売権を与えられている者(独占的販売権者)のように、自己の利益を守るために、模倣による不正競争を阻止して先行者の商品形態の独占を維持することが必要であり、商品形態の独占について強い利害関係を有する者も、3号による保護の主体となり得ると解するのが相当である。」

【参考】
⇔独占的販売権者は3号の主体足り得ない

「不正競争防止法によれば、不正競争行為により、営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者は、侵害の停止又は予防を請求することができ(同法三条一項)、営業上の利益を侵害された者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる(同法四条)ものであるが、不正競争防止法二条一項三号に規定する不正競争につき差止請求権及び損害賠償請求権を有する主体は、同号の規定によって保護された『営業上の利益』を有するものである。

(二) 不正競争防止法二条一項三号の趣旨につき考察するに、他人が資金・労力を投下して開発・商品化した商品の形態につき、他に選択肢があるにもかかわらずことさらこれを模倣して自らの商品として市場に置くことは、先行者の築いた開発成果にいわばただ乗りする行為であって、競争上不公正な行為と評価されるべきものであり、また、このような行為により模倣者が商品形態開発のための費用・労力を要することなく先行者と市場において競合することを許容するときは、新商品の開発に対する社会的意欲を減殺することとなる。このような観点から、模倣者の右のような行為を不正競争として規制することによって、先行者の開発利益を模倣者から保護することとしたのが、右規定の趣旨と解するのが相当である。

(三) 右によれば、不正競争防止法二条一項三号所定の不正競争行為につき差止めないし損害賠償を請求することができる者は、形態模倣の対象とされた商品を、自ら開発・商品化して市場に置いた者に限られるというべきである。」(東京地判(三村判事)H11.1.28【平成10年(ワ)第13395号事件】【キャディバック事件】)

争点②について
「廉価販売の場合に、それによる赤字分を、同法5条2項に基づく利益の算出に当たり計算に入れるとすると、その購入経費を経費として差し引くこととなり、廉価販売の対象物を廃棄した場合に比べて、不正競争を行った者が実際に得る売上は多くなるにもかかわらず、算出される利益の額は減少することとなる。侵害組成物は、本来廃棄の対象となるべきものであることに鑑みると、廉価販売の場合に、それによる赤字分を計算に入れて、廃棄した場合より同法5条2項所定の利益額が減少することは、相当でないというべきである。」

「また、侵害組成物は、本来廃棄の対象となるべきものであり、廃棄された場合には同法5条2項所定の利益の算定の対象に含まれないから、返品は、同利益の算出に当たり、販売価格と同額に評価するのが相当であるところ、高額返品の場合は、返品を高額に評価することにより、評価額と販売価格の差額だけ利益が減少することとなるから、これについては、同法5条2項の利益の算出に当たり、評価額を販売価格と同額とすべきである。」
以上:2,047文字

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