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R 7- 7-19(土):恋愛感情利用金品詐取理由不法行為損害賠償請求を棄却した地裁判決紹介
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○令和2年8月当時、原告(55歳)が、被告(16歳、高校1年)に対し、被告が原告の恋愛感情を利用して原告から金品を詐取したなどと主張して、不法行為に基づき、原告が被告のために支出したとする金品等約266万円損害賠償等を求めました。原告は、原告と恋人として交際する意思がないにもかかわらず、原告に対し、その意思があるかのように装ってその旨誤信させ、別紙支出一覧表に記載のとおり、生活費の援助やブランド品の贈与等の支出をさせた。かかる行為は、原告の恋愛感情を利用して、原告から金銭や経済的利益を詐取するものであり、不法行為に当たると主張しています。

○原告と被告が知り合う契機となった原告の本件アカウントは、そのアカウント名及び投稿内容から見て、女子中学生や女子高校生向けにいわゆる「パパ活」として買い物等の金銭的援助をする旨を申し出たものであり、被告は本件アカウントを通じて原告に「パパ活」をしたいと申入れ、原告から買い物代や小遣いの提供を受けることを合意したうえで金品等の提供を受けていたものと認められました。

○原告は令和4年に至り当時18歳の成年者になった被告に対し、訴えを提起しましたが、令和5年9月13日東京地裁判決(LEX/DB)判決は、この事案について、金品等の交付に向けた欺罔行為があったとは認められず、原告本人の供述をにわかには採用し難く、被告の欺罔行為と、原告が金品等を提供したこととの間に、因果関係があるとは認められないとして、原告の請求を棄却しました。

○地方の裁判所では、到底、訴訟になるような事案ではないと思われますが、東京地裁には、色々な訴えが提起されることを実感する事案です。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、265万8726円及びこれに対する令和4年4月14日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は、原告が、被告に対し、被告が原告の恋愛感情を利用して原告から金品を詐取したなどと主張して、不法行為に基づき、原告が被告のために支出したとする金品等の合計265万8726円の損害賠償等を求める事案である。

2 前提事実
(1)原告は、昭和40年生まれの男性であり、被告は、平成16年生まれの女性である。
(2)原告(当時55歳)と被告(当時16歳、高校1年)は、令和2年8月までに、原告が、インスタグラム上の「○○○○○○○○○○」との名称のアカウント(以下「本件アカウント」という。)から、被告のアカウントに対してフォローリクエストを行い、これを受けた被告が、原告に対して「パパかつしたいです」「女の子2人です」とのメッセージを送ったことを契機として会うようになり、以降、令和3年8月まで、原告において、被告の食事代や買い物代を負担したり、プレゼントを贈ったり、会った際に現金を渡したりする関係にあった。

3 争点及び当事者の主張
(1)不法行為の成否

(原告の主張)
ア 令和2年9月10日から令和3年1月8日までの行為について
(ア)被告は、原告と恋人として交際する意思がないにもかかわらず、原告に対し、その意思があるかのように装ってその旨誤信させ、別紙支出一覧表に記載のとおり、生活費の援助やブランド品の贈与等の支出をさせた。かかる行為は、原告の恋愛感情を利用して、原告から金銭や経済的利益を詐取するものであり、不法行為に当たる。

(イ)また、別紙支出一覧表のうち、令和2年10月15日から同月23日までの支出は、被告が、原告に対し、親から追い出されて家出中であり生活費が足りない等と虚偽の事実を述べ,同年12月20日から令和3年1月6日までの支出は、被告が、原告に対し、財布を無くしたとの虚偽の事実を述べ、それぞれ、原告をしてその旨誤信させて支出させたものであり、この点においても不法行為に当たる。

イ 令和3年5月8日から同年8月21日までの行為について
(ア)被告は、令和3年4月18日、「C」という別人を騙って原告に連絡し、原告をして、「C」が被告とは別人であると誤信させ、同年5月8日以降、別紙支出一覧表に記載のとおり、生活費の援助やプレゼント等の支出をさせた。原告は、「C」を被告であると認識していれば、これらの支出をすることはなかった。 

(イ)また、別紙支出一覧表のうち、同年6月25日以降の支出は、被告が、原告と恋人として交際する意思がないにもかかわらず、原告に対し、その意思があるかのように装ってその旨誤信させて支出させたものであるから、この点においても不法行為に当たる。

     (中略)

第3 争点に対する判断
1 認定事実

 前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)原告は、被告と知り合った当時、本件アカウントのプロフィール欄に、「ぱぱ 貧困女子を救いたい。最初は2人でもいいよ。DMきて」と表示し、「a」というブランドの服や小物の写真に「a やっぱりギャルには人気なのかな #JKブランド #JCブランド #お買い物 #神奈川 #ギリ東京 #初心者歓迎」との文章を添えた投稿や、複数のブランドの紙袋を並べた写真に「質より量って感じかな 買い物 #神奈川jkと繋がりたい #神奈川JCと繋がりたい #買い物」との文章を添えた投稿をしていた。(乙1の1から3)

(2)原告は、本件アカウントに連絡してきた被告に対し、初めは友人を連れてきても良く、原告において被告と友人の買い物代各3万円程度、交通費及び食事代を負担し、帰りに1万円ずつ渡す旨を申し出るとともに、2度目からは2人がいい、1週間に1回程度会って月額10万円程度、「表向きカレカノって感じ」にしたい、等と伝えた。(甲2の4、甲5、原告本人)。

(3)原告は、令和2年8月20日、初めて被告と会い、被告と被告が同行した友人の美容室代等各3万円程度を負担し、同人らに対し、現金各1万円を渡した。(甲2の2、甲5、乙7、原告本人、被告本人、弁論の全趣旨)
 原告は、以降、令和3年1月8日までの間、被告と10回程度会い、被告に対し、食事をおごったり、被告が欲しがる衣類や雑貨等を買い与えたり、会った際には都度現金1万円程度を渡したりした。(甲2の1から4、甲5、乙7、原告本人、被告本人、弁論の全趣旨)

     (中略)

2 争点(1)(不法行為の成否)について
(1)令和2年9月10日から令和3年1月8日までの行為について
ア 上記期間中に原告が被告に対して支出ないし交付した食事代、買い物代や現金等について、原告は、被告が原告と恋人として交際する意思があるかのように装って原告からこれを詐取した旨を主張する。
 しかし、原告と被告が知り合う契機となった原告の本件アカウントは、そのアカウント名及び投稿内容から見て、女子中学生や女子高校生向けにいわゆる「パパ活」として買い物等の金銭的援助をする旨を申し出たものであることが明らかであるといえ(前提事実(2)、認定事実(1))、被告は本件アカウントを通じて原告に「パパ活」をしたいと申入れ(前提事実(2))、原告から買い物代や小遣いの提供を受けることを合意した上で金品等の提供を受けていた(認定事実(2)、(3))ものと認められ、金品等の交付に向けた欺罔行為があったとは認められない。

 これに対し、原告本人は、被告に対し、「パパ活」ではなく「恋人」としての交際を求めていた旨を供述するものの、原告が被告に伝えていたのは、要するに、彼氏彼女のような体裁を取りつつ、性交渉を伴う交際に対してお金を支払うというものであり(認定事実(2)、(4))、被告はそのようなメッセージのやり取りに応じていたにとどまり(同(5))、客観的にも欲しい物を買ってもらったり小遣いをもらったりする以上の付き合いはしていなかったのであり(同(6))、欺罔行為に当たる行為が認められない。また、原告においても、原告の出費に見合う被告からの見返りがないことについて不満を述べつつも(同(6))、被告の歓心を買い、被告との交際を発展させる目的で金品等を提供していたものというべきであり、何ら錯誤はないといえる。

イ 被告が原告に対し、家出や財布の紛失を申告して金品の提供を受けた点(認定事実(7))については、被告本人は、財布の紛失について、警察に届け出た事実や生徒手帳まで無くした事実はないのに、SNS等にその旨を「盛って」書いてしまったなどと供述しているものの、家出をしたことや財布を紛失したこと自体は事実である旨を供述しており、これらの事実が全くの虚偽であったと認めるに足りる証拠はない。なお、被告が原告から援助を受けるために多少事実を脚色した部分があったからといって、その内容や提供を受けた金額にも照らし、それが社会通念上許容されない違法行為であるとまでは認められない。
 よって、この点においても金品等の交付に向けた欺罔行為があったとは認められない。

ウ よって、令和2年9月10日から令和3年1月8日までの行為について、不法行為に当たるとは認められない。

(2)令和3年5月8日から同年8月21日までの行為について
ア 上記期間中に原告が被告に対して支出ないし交付した食事代、買い物代や現金等については、被告が、原告との関係を一旦解消した後(認定事実(8))、別人の「C」を装って再び原告に接触し、「C」として提供を受けようとしたものであり(同(9))、金品等の交付に向けた欺罔行為があったといえる。
 そして、原告本人は、上記期間を通じて、「C」が被告とは別人であると信じていた旨を供述するところ、確かに、原告は、「C」こと被告に対し、被告の誕生日とは違う時期にプレゼントを贈ったり、被告を示す「D」について裁判準備中であると伝えるなど、「C」を被告とは別人であると考えていたともとれる言動をしている(認定事実(10))。

 もっとも、原告は、「C」を名乗る被告と複数回にわたって実際に会っているのであり、会ったその日に「B」ではないかと指摘し、その後も身分証を見せるよう繰り返し求めて素性を疑う言動をしたり、被告が「C」として送ったメーセージに対して「あー B?」と自然に応じたりもしている(認定事実(10))。これらの事実に加え、原告は被告に対し、ことあるごとに「Bでもいいんだよ、怒らないから言ってみな」等と言っていたとの被告本人の供述や、原告が、「C」と連絡が取れなくなってから直ちに被告に対して「C」との交際分も含めて損害賠償請求をした事実(同(13))にも照らすと、むしろ、原告は、「C」が被告であるとわかっていたか、被告ではないかと強く疑いつつも、被告の歓心を買い、被告との交際を発展させる目的で金品等を提供していたことが窺われるといえる。

 以上によれば、原告本人の上記供述をにわかには採用し難く、被告の欺罔行為と、原告が金品等を提供したこととの間に、因果関係があるとは認められない。

イ また、原告は、「C」こと被告に対する支出のうち、令和3年6月25日以降の支出については、被告が原告と恋人として交際する意思があるかのように装って原告からこれを詐取した旨を主張する。
 しかし、本件アカウントを通じた交際開始経緯や客観的な交際の状況等は、令和3年1月までの交際時とほとんど同じであり(認定事実(9)、(11)、(12))、(1)アと同様、金品等の交付に向けた欺罔行為があったとは認められないし、この点についての錯誤も認められない。

ウ よって、令和3年5月8日から同年8月21日までの行為についても、不法行為に当たるとは認められない。

3 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。

第4 結論
 よって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第37部 裁判官 中井彩子

(別紙)支出一覧表

以上:4,937文字
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R 7- 7-18(金):2025(令和7)年参議院選挙直前予測雑感
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○令和7年7月20日(日)は第27回参議院議員通常選挙投票日ですが、大方の予想では自民・公明の与党が50議席を割り、衆議院に続き、参議院でも少数与党になるのかと思っていました。そこで参議院選挙結果予測のキーワードでネット検索すると以下の予測記事が見つかりました。

○以下の2つの予測記事は、意外にも与党辛勝でした。いずれも7月15日時点の記事で、その後、さらに動いているかも知れません。参議院選挙も与党敗北となれば石破首相が持たないと思われ、自民党総裁が交代となると後任総裁は予測が付かず、また、野党側が野田元首相で一本化するとも思えず、首班指名選挙の予測も付かず、政局は大混乱で困ったものだと思っていました。以下の2つの予測記事の通り何とか、与党過半数割れを回避して貰いたいところです。

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NEWS DAILY 2025年参議院選挙予想・最新情勢と議席シミュレーション
2025年7月15日

各シナリオの概況
・ベースラインシナリオ: 世論調査通りの支持率で投票率も前回並み(約52%)と仮定した場合、自民・公明の与党は改選議席で約60議席前後を獲得と試算されます。自民党は地方1人区でやや議席を落とすものの複数区で複数当選を確保し45議席±程度、公明党は堅調に7〜8議席を維持。野党側は立民が20議席前後、維新が15議席前後、国民・共産・れいわ・社民・参政などその他野党で合計20弱と見込まれます。与党の改選議席数は55〜60議席程度となり、非改選と合わせた参院全体では130議席前後で辛うじて過半数維持のシナリオです。改憲勢力も3分の2には届かず、現在146ある与党議席は約15減少する計算です。これは過去の平均的な中間選挙で与党がやや後退するパターンに相当します。

・楽観シナリオ(与党勝利): 経済対策の奏功や野党共闘不調で与党に追い風が吹いた場合、与党は改選65〜70議席近くを確保しうると試算されます。自民党が2019年並みの善戦(地方1人区の7割以上制し、複数区でも複数当選)を遂げ50前後を獲得、公明党も8〜9議席得る展開です。立民は議席横ばいか微減の15前後、維新も伸び悩み10台前半、国民や共産は各3〜4議席程度にとどまります。参政党など新興も議席獲得は1〜2に留まり、結果として与党は非改選と合わせ140議席前後を維持、改憲勢力も引き続き3分の2を上回る可能性があります。石破首相に対する信任が示され、与党盤石・野党退潮となるシナリオです。ただ現状の支持率からはかなり楽観的で、与党に有利な投票率(高齢者中心の投票)や野党分裂が前提になります。

・悲観シナリオ(与党敗北): 逆に与党に逆風が吹き投票率が上昇(無党派が大量投票)した場合、与党獲得は50議席前後にとどまる試算です。自民党は地方1人区で野党統一候補に競り負け続出、複数区でも都市部で議席を落とし40前後まで低下、公明党も支持母体票の伸び悩みで5議席程度に減らすケースです。野党側は立民が25議席前後と躍進、維新も20議席近く獲得、国民・共産もやや議席増、参政や地域政党などが複数議席を得る可能性があります。この場合、与党合計は改選50議席±となり参院全体でも124議席以下(過半数割れ)に陥る計算です。実際、共同通信の調査では有権者の半数が「与党過半数割れがよい」と答えており、その民意が反映されると戦後初の与党参院少数政権が現実味を帯びます。改憲勢力も大幅に議席を減らし、3分の2どころか過半数維持も危うくなるでしょう。


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ビッグデータで見る第27回参議院選挙の議席数予測
2025年7月15日


以上:1,564文字
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R 7- 7-17(木):2025年07月16日発行第393号”弁護士も真面目が大切2.0”
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○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年7月16日発行第393号「弁護士も真面目が大切2.0」をお届けします。

○令和7年から11年前の「2014年08月16日発行第131号”弁護士も真面目が大切 ”」が、「弁護士も真面目が大切」のバージョン1でした。11年ぶりに読み返してみましたが、恐縮ながら「お盆でみんな働いていないし、暑くてやる気も出ないし。。。」と始まる内容は忘却の彼方でした(^^;)。記憶力は落ちる一方ですが、いつもながら大山先生の博識に感嘆です。

○選択式夫婦別姓反対論者の反対理由に、夫婦別姓にすると家族の一体性を失い家族制度が崩壊するなんて大袈裟な理由を挙げています。しかし私自身の経験も含めて長年破綻した夫婦を見つめてきた経験から真面目に言うと、「逃げられたらお終い」に記載した演歌「心のこり」の歌詞「一度離れた~、心は二度と~、戻らないのよ~、元には~~」の通り、夫婦破綻理由は「心」に尽きます。なまじ同一の「姓」で夫婦の一体性が守られるなんて甘く考えるから「心」を失い夫婦破綻に至ると確信しています。その意味で選択式夫婦別姓大賛成ですが、なかなか実現しないのがもどかしところです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士も真面目が大切2.0

「真面目が大切」は、世紀末耽美作家、オスカー・ワイルドの戯曲です。遊び人の男が、Earnest、つまり「真面目」という偽名で女性と付き合います。男が本気になって女性にプロポーズするにあたり、自分の本名を告げます。すると女性は、自分はEarnestという真面目な名前に惹かれたのだから、名前が違うなら結婚できないと言い出します。そこで、結婚の為に名前をEarnest に変更するという喜劇です。喜劇の話ではありますが、当時のイギリスではそんなに簡単に名前を変更できたのだろうかと、少し気になりました。

日本では、名前を変更するのは本当に大変です。家庭裁判所に申し立てる必要がありますが、よほどのことが無いと認めてもらえません。「名前」を変えてしまったら、かつての自分と違う人になれてしまうのが問題だからです。以前、親から「悪魔」と名前を付けられた人の場合、名前の変更が認められたとニュースになりました。もっとも、お釈迦さまは出家に当たって自分の子供に「悪魔」と名付けました。子供というのは、自分を俗世間に執着させる「悪魔」だということでの名づけだったはずですが、常識的には酷いものに思えます。名前の変更を認めた裁判官が、敬虔な仏教徒でなくてよかったと思ったのでした。

名前に比べると、姓の方が変更しやすいですね。結婚すると一般的には女性の姓が変わるというのは、つい最近までの日本の常識でした。しかし、姓が変わっただけでも、本人が別人に成り済ます可能性はあります。実際、借金でブラックリストに載った人が、結婚で姓を変えて、新たな名前のもとまた借金をしたなんて、以前は有りました。結婚による姓の変更に関して現在日本では、「選択的夫婦別姓」が議論されています。結婚しても夫婦がそれぞれ今までの姓を使い続けることができるように法改正しようということです。私自身は、他の先進国に合わせて、制度改正して良いのではと思っています。その方が、本人の同一性にも問題が生じません。ただ、多くの女性がそれほど夫婦別姓を望んでいるかと言えば、疑問がありそうです。

結婚相談所の人が面白いことを言っていました。結婚の相手を決めるときに、相手の収入はとても気になるので、必ず開示されることになります。家事分担や親の介護の問題なども、女性に寄り添う内容を開示した方が、婚活を有利に行えるそうです。ところが、結婚後の姓を女性側にするといった内容は、基本的に女性がほとんど興味を示さない。従って男性に対して特に開示することを勧めもしないそうです。結婚が難しい「弱者男性」が相手の姓を名乗ると言っても、「尊敬できる方が良いです」と断られるそうです。

話が変わりますが、少し前に日本製鉄による、USスティールの買収が決まりましたUS スティール創業者と言えば、鉄鋼王カーネギーです。この人は、合併によって会社を大きくしてきたのですが、会社合併に際しては相手の社名を採用したそうです。「名」を捨てて「実」を取るというのでしょうか、名前についてはそれほどこだわりが無かったそうです。日本の夫婦の形でも、かつて女性は夫の姓を名乗る一方、社会に出て働くことは要請されていませんでした。名前は譲る一方で、経済的な責任を負わないで良いという「実」を取っていたような気もします。

専業主婦が認められず、女性も働くのが当たり前となる中で、選択式夫婦別姓の議論も高まってきたのは偶然ではないようです。選択式夫婦別姓に反対する人は「結婚前の旧姓を通称として使用することが広く認められるようになったのだから、それで十分だ」と主張しているようです。しかし「通称」は「本当の名前」とは違うというのが夫婦別姓論者の主張です。それなら結婚前の名前を「本当の名前」と定め、家族共通の名前を「家族生活上の通称名」と規定すれば良いと「真面目」に考えたのです。私としてはコペルニクス的問題解決と自画自賛しますが、どんなものでしょうか?

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◇ 弁護士より一言

子供たちの名前を付けるときには考えたものです。男の子なら「〇太郎」みたいな古風な名前が良かったんですが「〇」のところをどうするのか悩みました。「太郎」なんて面白そうですが、「悪魔」と似たり寄ったりになりそうです。「公太郎」も好みでしたが、子供が「ハム太郎」といじめられたらと思い諦めました。こんな親の苦労を息子は分かっているのでしょうか。。。

以上:2,462文字
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R 7- 7-16(水):人身傷害保険金は被害者素因減額分は填補しないとした最高裁判決紹介
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○裁判所が自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に対する損害賠償の額を定めるに当たり被害者に対する加害行為前から存在していた被害者の疾患をしんしゃくしいわゆる素因減額をする場合における上記条項に基づき人身傷害保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲を判断した令和7年7月4日最高裁判決(裁判所ウェブサイト)全文を紹介します。

○事案は以下の通りです。
・h30.5、上告人Xは、D株式会社所有管理駐車場の設置保存瑕疵が原因で自動車事故に遭い傷害を受けた
・この事故でのXの過失割合は2割、既存症状による素因減額
・r310、被上告人YがDを吸収合併し、Dの権利義務承継
・本件事故でのXの全損害約941万円
・h31.2、YはXに80万円支払
・Xは、訴外保険会社と自動車保険契約締結、人身傷害条項被保険者
・r2.1までにXは、訴外保険会社から人身傷害保険金約666万円受領
・Xの3割素因減額後損害額は約659万円、2割過失相殺後損害額約527万円
・527万円から既払額80万円を差し引いた残額は約447万円
・Xは全損害941万円から損害賠償金80万円と人身傷害保険金666万円差し引き195万円をYに請求?
・原審は、訴外保険会社は、保険金額666万円と過失相殺後損害額527万円の合計額約1193万円から素因減額後損害額約534万円を控除した659万円の範囲でXの損害賠償請求権を代位取得するので、XにはYに対する損害賠償請求権はないとした


○これに対しXは、人身傷害保険金はXの過失割合分だけでなく素因減額分も填補するので、訴外保険会社は素因減額後損害額約534万円を控除できずXには195万円の損害賠償請求権は残っていると主張したと思われます。しかし、最高裁はXの主張を退けました。

○人身傷害保険金は被害者の過失部分は填補するが、素因減額部分は填補しないとした判決で、被害者としては納得できないところがありますが、約款が「傷害を被った時に既に存在していた身体の障害又は疾病(以下「既存の身体の障害又は疾病」という。)の影響により、上記傷害が重大となった場合には、訴外保険会社は、その影響がなかったときに相当する金額を支払う(以下「本件限定支払条項」という。)」となっている以上やむを得ないと思われます。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由(ただし、排除された部分を除く。)について
1 本件は、上告人が、普通乗用自動車で走行中に進入しようとした駐車場の設置又は保存の瑕疵により傷害を負ったと主張して、被上告人に対し、不法行為(工作物責任)に基づく損害賠償を求める事案である。上告人は、上記自動車の登録使用者が自動車保険契約を締結していた保険会社から、上記保険契約に適用される普通保険約款中の人身傷害条項に基づき、人身傷害保険金の支払を受けたことから、上記保険会社が上告人の被上告人に対する損害賠償請求権を代位取得する範囲、具体的には、裁判所が、被上告人の上告人に対する損害賠償の額を定めるに当たり民法722条2項の規定を類推適用して上記の事故前から上告人に生じていた身体の疾患をしんしゃくし、その額を減額する場合に、支払を受けた人身傷害保険金の額のうち上記損害賠償請求権の額から控除することができる額の範囲が争われている。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
(1)上告人は、平成30年5月、Aが使用者として登録されている普通乗用自動車を運転して、D株式会社が所有管理する駐車場に進入した際、上記駐車場の設置又は保存の瑕疵に当たる路面の陥没に上記自動車の右前輪が入り込み、その衝撃により腰椎椎間板ヘルニア等の傷害を負った(以下、この事故を「本件事故」という。)。上告人には上記陥没の発見が遅れた過失があり、本件事故における上告人の過失割合は2割である。また、上告人には、本件事故前から、第5腰椎と第1仙椎の間の椎間板に変性(以下「本件変性」という。)が生じており、上記腰椎椎間板ヘルニアは、本件変性に本件事故による外力が加わったことにより生じたものである。

(2)被上告人は、令和3年10月、Dを吸収合併し、その権利義務を承継した(以下、D及び上記の合併後の被上告人を、合併の前後を問わず「被上告人」という。)。

(3)本件事故により上告人に生じた人的損害の額(弁護士費用相当額を除く。)は、合計941万2961円である。

(4)上告人は、平成31年2月、上記損害につき、被上告人から80万円の支払を受けた。

(5)Aは、本件事故当時、A損害保険株式会社(以下「訴外保険会社」という。)との間で、人身傷害条項のある普通保険約款(以下「本件約款」という。)が適用される自動車保険契約を締結しており,上告人は本件約款中の人身傷害条項に係る被保険者であった。

(6)本件約款中の人身傷害条項には、要旨、次のような定めがあった。 
ア 訴外保険会社は、日本国内において、自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により、被保険者が身体に傷害を被ることによって被保険者等に生じた損害に対し、人身傷害保険金を支払う。

イ 被保険者が上記傷害を被った時に既に存在していた身体の障害又は疾病(以下「既存の身体の障害又は疾病」という。)の影響により、上記傷害が重大となった場合には、訴外保険会社は、その影響がなかったときに相当する金額を支払う(以下「本件限定支払条項」という。)。

(7)本件変性は、本件限定支払条項にいう既存の身体の障害又は疾病に当たる。

(8)上告人は、上記(4)のほか、令和2年1月までに、上記(3)の損害につき、訴外保険会社から、本件約款中の人身傷害条項に基づき、人身傷害保険金として666万3789円の支払を受けた(以下、この支払を受けた保険金を「本件保険金」という。)。

(9)被上告人の上告人に対する損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、本件変性をしんしゃくし、上記(3)の損害額から3割の減額(以下「本件素因減額」という。)をすると、本件素因減額をした後の損害額は658万9073円となる(以下、この損害額を「本件素因減額後の損害額」という。)。そして、本件素因減額後の損害額について2割の過失相殺をした後の損害額は527万1258円となる(以下、この損害額を「本件過失相殺後の損害額」という。)。また、本件過失相殺後の損害額から上記(4)の既払金の額を控除した損害金の残額は447万1258円となる。

3 原審は、被上告人の上告人に対する損害賠償の額を定めるに当たり、本件素因減額をするのが相当であるとした上で、訴外保険会社は、本件保険金の額と本件素因減額後の損害額のうちいずれか少ない額を限度として上告人の被上告人に対する損害賠償請求権を代位取得すると判断し、本件素因減額後の損害額について過失相殺がされる本件においては、訴外保険会社は、本件保険金の額と本件過失相殺後の損害額との合計額(1193万5047円)から本件素因減額後の損害額を控除した残額(534万5974円)の範囲で上記損害賠償請求権を代位取得するから、上記損害賠償請求権の全部を代位取得したとして、上告人の請求を棄却すべきものとした。

 所論は、訴外保険会社は本件限定支払条項に基づく減額をすることなく本件保険金の支払をしたのであるから、本件保険金は本件素因減額をする前の損害額(上記2(3)の損害額)を填補するものであり、訴外保険会社は、本件保険金の額と本件素因減額後の損害額との合計額が本件素因減額をする前の損害額を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する額の範囲で上告人の被上告人に対する損害賠償請求権を代位取得するにすぎないとして、原審の上記判断には法令の解釈適用の誤り及び判例違反があるというものである。

4 自動車保険契約に適用される普通保険約款中の人身傷害条項に基づき、被保険者である交通事故等の被害者が被った損害に対して人身傷害保険金を支払った保険会社は、支払った人身傷害保険金の額の限度内で、これによって填補される損害に係る保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得するところ、保険会社がいかなる範囲で保険金請求権者の上記請求権を代位取得するのかは、上記約款の定めるところによることとなる(最高裁平成21年(受)第1461号・第1462号同24年2月20日第一小法廷判決・民集66巻2号742頁参照)。

 本件約款中の人身傷害条項には、被保険者が自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により傷害を被った時に既に存在していた身体の障害又は疾病(既存の身体の障害又は疾病)の影響により、上記傷害が重大となった場合には、訴外保険会社は、その影響がなかったときに相当する金額を支払う旨の定め(本件限定支払条項)が置かれている。

これは、人身傷害保険金は上記事故により被保険者が身体に傷害を被ることによって被保険者等に生じた損害の填補を目的として支払われるものであることから、上記の場合には、訴外保険会社は、その影響の度合いに応じて保険金の一部を減額して支払うものとすることにより、既存の身体の障害又は疾病による影響に係る部分を保険による損害填補の対象から除外する趣旨を明らかにしたものと解される。そうすると、上記人身傷害条項に基づき支払われる人身傷害保険金は、被保険者の既存の身体の障害又は疾病による影響に係る部分を除いた損害を填補する趣旨・目的の下で支払われるものであるということができる。したがって、上記人身傷害条項の被保険者である被害者に対する加害行為と加害行為前から存在していた被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した事案について、裁判所が、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、上記疾患をしんしゃくし、その額を減額する場合において、上記疾患が本件限定支払条項にいう既存の身体の障害又は疾病に当たるときは、被害者に支払われた人身傷害保険金は、上記疾患による影響に係る部分を除いた損害を填補するものと解すべきである。

 以上によれば、上記の場合において、上記疾患が本件限定支払条項にいう既存の身体の障害又は疾病に当たるときは、被害者に対して人身傷害保険金を支払った訴外保険会社は、支払った人身傷害保険金の額と上記の減額をした後の損害額のうちいずれか少ない額を限度として被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。このことは、訴外保険会社が人身傷害保険金の支払に際し、本件限定支払条項に基づく減額をしたか否かによって左右されるものではない。

5 以上と同旨の見解に立って、上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができ、所論引用の判例(前掲最高裁平成24年2月20日第一小法廷判決)に抵触するものではない。論旨は採用することができない。なお、その余の上告受理申立て理由は、上告受理の決定において排除された。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官林道晴の補足意見がある。

 裁判官林道晴の補足意見は、次のとおりである。
 私は、法廷意見に賛同するものであるが、補足して意見を述べておきたい。
 所論は、いわゆる素因減額は、損害の公平な分担を図るという趣旨に照らし、民法722条2項の過失相殺の規定の類推適用を法的根拠とするものであるから、過失相殺と同様に扱うべきであり、本件で問題となっている素因減額がされる場合に人身傷害保険金を支払った保険会社が被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する範囲についても、過失相殺がされる場合(前掲最高裁平成24年2月20日第一小法廷判決参照)と同様に解すべきであるとの考え方に基づくものと解される。

しかし、素因減額は、基本的には、被害者に対する加害行為と加害行為前から存在していた被害者の疾患とが共に原因となった場合における損害額の発生そのものに係る局面の問題であり、発生した損害額について公平な分担のための調整を図る過失相殺の問題とは局面が異なるのである。したがって、所論のいうように、素因減額がされる場合を過失相殺がされる場合と同様に解すべきであるということはできない。
(裁判長裁判官 平木正洋 裁判官 宇賀克也 裁判官 林道晴 裁判官 渡辺惠理子 裁判官 石兼公博)
以上:5,200文字
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R 7- 7-15(火):男性従業員セクハラ被害損害賠償請求を棄却した地裁判決紹介
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○被告の従業員であった原告が、被告会社のの女性従業員で原告の指導を担当していたCからセクシュアル・ハラスメントや嫌がらせ行為を受けて損害を被ったと主張して、被告会社に対し、不法行為(使用者責任)による損害賠償として適応障害等診断され休業を余儀なくされた精神的苦痛の慰謝料として200万円、就労できなくなった逸失利益として500万円その他弁護士費用等合計約812万円を請求しました。

○これに対し、原告は、Cから嫌がらせ行為を受けた旨主張するが、原告の主張は、Cの言動によって気分又は感情を害した旨をいうものにすぎず、これが原告の権利又は法律上の利益を侵害するものとして不法行為を構成するとは認められないなどとして、原告の請求を棄却した令和6年12月11日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○Cは原告から週末に従妹が家に泊まりに来ることがあり、同じベッドで寝ている旨聞き、その後、本件部署の従業員数名に対し、原告が従妹の大学生と一緒の布団で寝ているらしいがどう思うかという趣旨のことを話したことがあるが、それが尾ひれがついて、原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いているという噂になったことは関知していないと主張しました。

○判決は、「原告が従妹の大学生と同じベッドで寝ている」というCの発言を聞いた一般の者の普通の注意と理解を基準に判断して、同発言が「原告が従妹を自宅に連れ込んで性行為をしている」という事実を摘示するものであるとはいえないことはもとより、同発言によって原告の社会的評価が低下するとも認められないから、同発言によって名誉を毀損された旨の原告の主張は採用することがでず、同発言の内容が、一般人の感受性を基準にして公開を欲しないであろう事柄であるとは認められないことや、原告がCに対して同発言の内容を他言しないように求めてはいないことに照らして、同発言によって原告のプライバシーが侵害されたとは認められないとしました。

○原告はこの認定を不服として控訴しているようですが、その結果が気になります。男性の原告が「従妹の大学生と同じベッドで寝ている」ことをCに話すことも、これを聞いたCが他の従業員に伝えることも、いずれも常識では考えられず、微妙な事案です。

********************************************

主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
(以下、個人名は姓のみで表記する。)
第1 請求
 被告は、原告に対し、811万9793円及びこれに対する令和5年4月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 事案の概要

 本件は、被告の従業員であった原告が、被告の従業員からセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)や嫌がらせ行為を受けて損害を被ったと主張して、被告に対し、不法行為(使用者責任)による損害賠償請求権に基づき、811万9793円及びこれに対する不法行為後の日である令和5年4月21日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実
 以下の事実は、当事者間に争いがないか、証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる。
(1)当事者等
ア 被告は、情報処理サービス業等を行う株式会社である。
イ 原告(平成2年生まれの男性)は、令和5年1月1日、被告との間で期間の定めのない労働契約を締結し、営業グループ・広域第一営業本部・東日本第一営業部・第一営業室(以下「本件部署」という。)に配属された。
ウ C(女性)は、本件部署に所属する被告の従業員であり、令和5年1月から同年3月まで、原告の指導を担当するマンツーマンリーダーという立場にあった。

(2)本件懇親会
 本件部署の従業員複数名は、令和5年3月28日午後7時頃からD駅付近の飲食店において懇親会を行い(以下「本件懇親会」という。)、原告及びCも参加した。

(3)原告の休職等
ア 原告は、令和5年4月21日、適応障害と診断された(甲6)。
イ 原告は、令和5年4月26日、本件部署の室長に対し、休職したい旨のメールを送信し、被告は、原告を同月21日付けで休職とした(乙7)。

第3 争点及び争点に関する当事者の主張
1 Cによる行為が原告に対する不法行為を構成するか


     (中略)

3 賠償すべき損害の発生及びその額
(1)原告の主張
 原告は、下記アからオまでのとおり、合計811万9793円の損害を被った。
ア 慰謝料:200万円
 原告は、Cによるハラスメントによって、令和5年4月21日、適応障害と診断された。その後、同月24日には被告を休職するに至り、さらには、ストレスによって免疫力が下がったことなどが原因で慢性扁桃炎を発症し、同年5月23日には両側口蓋扁桃摘出術を受けるに至った。原告が受けた精神的苦痛は筆舌に尽くし難く、その損害を金銭的価値に換算すると、200万円を下回らない。

イ 短期解約違約金:23万3000円
 原告は、前記アの休職及び手術に伴い、家賃の支払を継続することができなくなり、賃借していた物件を解約せざるを得ず、短期解約違約金23万3000円の損害を被った。

ウ 治療費等:14万8630円
 原告は、前記アの手術に伴い、治療費等として14万8630円を負担した。

エ 逸失利益:500万円
 原告は、精神的苦痛によって就労を継続できなくなり、賞与を含む1年分の賃金500万円の逸失利益という損害を被った。

オ 弁護士費用:73万8163円
 原告は、本件訴訟の遂行を代理人弁護士に委任した。このうち、被告による不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、73万8163円である。

(2)被告の主張
 争う。

第4 当裁判所の判断
1 認定事実

 前記前提事実に加えて、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)Cによる発言及び原告との関係等
ア Cは、令和5年1月頃、原告から、大学生の従妹が自宅に泊まりに来ることがあり、原告と同じベッドで寝ている旨聞いた。その際、Cは、原告から、上記を他言しないように言われることはなかった。

イ Cは、異性の従妹と同じベッドで寝るのが通常の感覚なのかが気になったことなどから、令和5年2月頃、本件部署の従業員数名に対し、原告が従妹の大学生と同じベッドで寝ているらしいがどう思うかという趣旨のことを述べた。

ウ Cは、原告の勤務態度には問題があり、原告を指導しても改善が見られないと感じたことなどから、令和5年3月、本件部署の室長に対し、原告のマンツーマンリーダーから外すよう要望し、同年4月にこれを外れた。

(2)本件懇親会
ア 本件部署の従業員は、令和5年3月28日午後7時頃から、D駅付近の飲食店において、同年4月に本件部署の室長に就任予定の者を交えて、懇親会を行った(本件懇親会)。本件懇親会には、原告及びCを含む本件部署の従業員十数名のほか、隣接部署の従業員数名が参加した。

イ 本件部署の従業員であるEは、本件懇親会の場で、原告に対し、原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いているという噂を聞いたが本当かと尋ねたところ、原告は、事実と異なる旨答えた。

(3)原告と本件部署の従業員とのやり取り
ア 原告は、令和5年4月21日、本件部署の従業員であるFに対し、Cが流した「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という噂が原因で被告を退職しようと思っている旨のメッセージを送信した。Fは、Cがそのようなことを言っていたと初めて知った旨返信した。(乙6の1)

イ 原告は、令和5年4月22日、本件部署の従業員であるGに対し、Cが流した「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という噂が原因で体調を崩している旨のメッセージを送信した。Gは、「まじすか、、」などと返信した。(甲3の1、乙6の2)

ウ 原告は,令和5年4月22日、本件部署の従業員であるHに対し、「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という噂を誰から聞いたのか尋ねる旨のメッセージを送信した。Hは、自身の聞いた話とは違う旨及び「東京に遊びにきた従妹が家に来て泊めた」程度にしか聞いていない旨返信した。(乙6の3)

エ 原告は、令和5年4月22日、Eに対し、「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という噂を誰から聞いたのか尋ねる旨のメッセージを送信した。Eは、酔っ払っていたためあまり覚えていない旨返信した。原告が、本件懇親会ではCから聞いたと言っていたので確認しようと思った旨返信すると、Eは、「そうなのですね、誤解はその時Aさんと会話してすぐとけているので一応もう誤解はないと思います。」などと返信した。(甲3の2、乙6の4)

(4)原告代理人と被告とのやり取り
ア 原告代理人は、令和5年6月15日、被告に対し、原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いているという噂が従業員の間で流れているようであることなどについて、被告が行った調査の結果を書面で回答するよう求める旨の内容証明郵便を発送した(乙8)。

イ 被告は、令和5年7月3日、原告代理人に対し、原告及び被告関係者に対する聴取調査によって以下の内容を確認した旨回答した(甲10の1、乙9)。 
 原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いているという噂について、原告も参加した令和5年3月に実施された所属組織の懇親会において、過去に原告が同僚1名に話した「従妹が上京した際に泊めてあげることができる」という内容が、その懇親会上で、宴席の場ということもあり尾鰭が付いた形で話題に上ったもの。その席上で、原告が事実は異なる旨説明し否定したことでそれ以降話題に上ることはなかった。原告がその後も話が広まっていると考え、組織内の複数名に対して確認を行ったことで、話を知らなかった者も知ることとなった。特定の時期において一部の社内関係者の間で会話がされたことは事実であるものの、それが原告が主張するような内容・状況であったという認定には至らなかった。

ウ 原告代理人は、令和5年7月11日、被告に対し、原告が問題視しているのは複数の従業員がCから聞いたと言っていた点であり、Cが噂を流したものであるかどうか調査及び回答を求める旨連絡した(乙9)。

エ 被告は、令和5年7月19日、原告代理人に対し、当該宴席で、原告とは離れた場所にいたCが話題に挙げて、それを聞いた数名がその場で原告に話をしたものであったことを確認している旨回答した(甲10の2、乙9)。

(5)労働審判等
ア 原告は、被告を相手方として、損害賠償を求める労働審判を申し立て(当庁令和5年(労)第617号)、令和6年1月10日、原告の請求を棄却する旨の審判がされたが、同月17日、原告が異議を申し立てた。

イ 被告は、前記労働審判において、Eが、本件懇親会の場で、原告に対し、「従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という噂を聞いたが本当かと尋ねたことを認めていた。

2 Cによる行為が原告に対する不法行為を構成するかについて
(1)原告は、Cが「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という噂を流布した旨主張する。
 しかしながら、Cはこれを否定する証言をするところ(証人C 5頁)、Cが本件部署の従業員数名に対して「原告が従妹の大学生と同じベッドで寝ている」旨述べたことがあること(前記認定事実(1)イ)及びEが本件懇親会の場で原告に対して「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いているという噂を聞いたが本当か」と尋ねたこと(同(2)イ)は認められるものの、Cの上記発言が、「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という内容に、いつ何が原因で転化したのかは明らかではなく、Eが上記のとおり尋ねた際に転化した、いわばEがCの発言に尾鰭を付けた可能性を含めて、Cの与り知らないところで転化した可能性を否定することができず、上記事実から、Cが「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という噂を流したと推認することはできない。

本件部署の従業員の中には、原告から、Cが「原告が従妹を自宅に連れ込んで抱いている」という噂を流した旨伝えられると、初めて知った(同(3)ア)、自身の聞いた話とは違っており「東京に遊びにきた従妹が家に来て泊めた」程度にしか聞いていない(同ウ)と答えた者がいる上、Eもあまり覚えていないなどとして明確な回答をしておらず(同エ)、Cが上記噂を流したことは裏付けられていない。また、原告は、本件懇親会の場でE及び複数の従業員が上記噂をCから聞いたと答えた旨主張し、原告の陳述書(甲13)には同旨の記載があるが、それを裏付ける他の証拠はない上、仮にその旨答えたとしても、上記噂に転化前のCの上記発言の存在を指すものと解することもできるのであり、Cが上記噂を流したと認めるに足りるものではない。

 被告は、原告代理人に対し、前記噂について、本件懇親会でCが話題に挙げそれを聞いた者が原告に話した旨回答したことがあり(前記認定事実(4)エ)、その旨被告に説明していた者がいたことはうかがわれるが(なお、Cは、上記回答に際して被告から事実関係を確認されていない旨証言し(証人C 6頁)、被告は、上記回答は不正確であった旨主張する(答弁書10頁)。)、被告の回答は、原告がCに話した内容に尾鰭が付いて話題に上った旨をいうものにすぎず(前記認定事実(4)イ)、Cが前記噂を流した旨認めるものではないから、Cが前記噂を流したと認める根拠となるものではない。
 そのほか、本件記録を検討しても、Cが前記噂を流したとは認めるに足りない。原告の主張は採用することができない。

(2)原告は、Cが流布したのが「原告が従妹と一緒の布団で寝ている」という内容であったとしても、原告とCとの関係が険悪であったことを踏まえると、原告が性的にふしだらであるという印象付けを狙ってされたものであることは明らかで、従妹を自宅に連れ込んで性行為をしていることを伝える趣旨のものであることは明らかであるから、原告の名誉を毀損し又はプライバシーを侵害する性質のものである旨主張する。

 しかしながら、Cが原告のマンツーマンリーダーから外すよう要望した(前記認定事実(1)ウ)など原告とCの関係が悪化していたことを踏まえたとしても、「原告が従妹の大学生と同じベッドで寝ている」というCの発言を聞いた一般の者の普通の注意と理解を基準に判断して、同発言が「原告が従妹を自宅に連れ込んで性行為をしている」という事実を摘示するものであるとはいえないことはもとより、同発言によって原告の社会的評価が低下するとも認められないから、同発言によって名誉を毀損された旨の原告の主張は採用することができない。

また、同発言の内容が、一般人の感受性を基準にして公開を欲しないであろう事柄であるとは認められないことや、原告がCに対して同発言の内容を他言しないように求めてはいないこと(同ア)に照らして、同発言によって原告のプライバシーが侵害されたとは認められない。原告の主張は採用することができない。

(3)原告は、前記第3の1(1)アのとおり、Cから嫌がらせ行為を受けた旨主張するが、原告の主張は、Cの言動によって気分又は感情を害した旨をいうものにすぎず、これが原告の権利又は法律上の利益を侵害するものとして不法行為を構成するとは認められない。

3 結論
 以上のとおり、Cによる行為が原告に対する不法行為を構成するとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、被告が原告に対して使用者責任による損害賠償責任を負うとは認められない。
 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第36部 裁判官 矢崎達也
以上:6,446文字
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R 7- 7-14(月):映画”タワーリングインフェルノ”を観て-パニック映画原点堪能
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○令和7年7月13日(日)は午後最近購入したBDソフトで1974(昭和49)年製作映画「タワーリングインフェルノ」を鑑賞しました。この映画は是非4KUHDソフトで鑑賞したのですが、残念ながら4KUHDソフトは発売されておらずやむを得ずBDソフトを購入したものです。平成元年頃LDを購入して少なくとも2回以上は旧宅AVルームで鑑賞しており、主演消防士役のスティーブ・マックィーン氏の強烈な演技が印象に残り、その内容もおぼろげながら記憶にある映画でした。

○共演者はジーン・ハックマン氏かと記憶していましたが、この点はその2年前1972(昭和47)年製作映画「ポセイドン・アドベンチャー」を混同していました。もう一人の主演は設計士役のポール・ニューマン氏でしたがこちらはスッカリ忘却の彼方で、ストーリーの大半も忘却の彼方でした。映画コムでは「サンフランシスコにそびえ立つ地上138階の超高層ビルの落成式の日、発電機の故障から発火、たちまちビルは炎の地獄と化した。(略)“グラス・タワー”の地下室にある発電機が故障したため主任技師のキャラハンが予備の発電機を始動させたとたんショートし、81階にある物置室の配線盤のヒューズが火を発し、燃えながら床に落ちた絶縁体の破片が発動機のマットをくすぶらせ始めたのだ。」と解説されています。

○ホントに1974年当時138階もの高層ビルがサンフランシスコに存在していたのかネット検索すると令和7年現在でも、サンフランシスコで最も高いビルは2017(平成29)年完成のセールスフォース・タワーで61階約326mでした。令和7年からは51年も前の1972(昭和47)年当時は138階のビルはあり得ず映画は架空のビルでした。現在世界で一番高いビルはドバイのブルジュ・ハリファで163階約823m、アメリカで一番高いビルは、104階541mのワールドトレードセンターですから、映画「タワーリングインフェルノ」の架空ビルは、当時としては世界でダントツに高いビルでした。主演消防士のスティーブ・マックウィーン氏は最後に死者は200人以内で済んだが、今後、こんなビルが建てられたら1万人以上の死者が出るだろうと警告していましたから、この映画のせいで、その後、しばらく高いビルの建築が控えられたのかも知れません。

○この映画は、映画「ポセイドン・アドベンチャー」と同様その後のパニック映画の原点ともなった映画とのことで、数々のエピソードをちりばめながらのビル火災での危険拡大経緯が良く伝わります。ストーリーの流れは殆ど忘却の彼方でしたが、巨大ビルの窓から強烈な炎が吹き出す映像は記憶に残っていました。BD映像は余りクオリティーが高いとは言えないレベルで、是非とも4KUHD化して貰いたいと念願しながらの鑑賞でした。135階のパーティー会場に取り残された多くの人々を救出方法とその強烈なシーンは、あっ、こんなシーンがあったなと僅かに記憶が残っていましたが、その内容は観ての楽しみです。165分2時間45分の大作ですが、次々に襲うパニックの連続に、時間の長さを全く感じさせずにパニック映画の原点をたっぷり楽しませてくれました。

『タワーリング・インフェルノ(The Towering Inferno)』 予告編 Trailer 1974.

以上:1,367文字
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R 7- 7-13(日):映画”カジノ”を観て-夫婦の崩壊過程が見もの
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○令和7年7月12日(土)は、ツルカメフラメンコアンサンブルの練習日でしたが、練習終了後、夕食を取りながら、最近購入した4KUHDソフトで1995(平成7)年製作映画「カジノ」を鑑賞しました。令和7年からは丁度30年前の製作ですが、映像のクオリティは結構良く、ラスベガスの風景等目に心地よいものでした。ラスベガスは平成24年12月の事務所旅行で訪れ「H19ラスベガス&ディズニーランド・リゾート旅行思い出1」以下にその記録を残しています。ホテルと言い街の風景と言い豪華絢爛だったことが記憶に残っています。

映画「カジノ」でも、その豪華絢爛たるホテル等街の風景と一歩外に出た荒涼たる砂漠の風景がまずまずハイクオリティの映像で楽しめます。映画コムでは「巨匠マーティン・スコセッシが、1970年代ラスベガスのカジノをめぐる欲と暴力にまみれた人間模様を描いた骨太ドラマ。(略)凄腕の予想屋サムはマフィアのボスたちに才能を見込まれ、ラスベガスのカジノ「タンジール」のマネージャーを任される。見事な経営手腕でカジノを大繁盛させたサムは、美しいハスラーのジンジャーを見初めて結婚し、豪奢で満ち足りた人生を手に入れたかに見えた。」と解説されています。

○1970(昭和45)年というと事務所旅行で訪れた平成24(2012)年から40年以上前の時代で、ラスベガスはマフィアが牛耳った無法地帯だったと思われますが、横領・傷害・殺人行為が当たり前のように繰り返されていました。登場人物の多くが無残な最後を迎えますが、名優ロバート・デニーロ氏演ずる主人公だけはしぶとく生き残り、気が滅入るストーリー展開が多い中で唯一救いとなりました。映画「氷の微笑」でセクシー女優として大ブレイクしたシャロン・ストーン氏が37歳時で、相変わらず妖艶でセクシーですがそれだけにとどまらない凄まじい演技で、ロバート・デニーロ氏と渡り合います。

○シャロン・ストーン氏演ずる女性は、ハスラーと評されていましたが、ハスラーの意味をネット検索するとこの映画で使われたハスラーは「要するに「泥棒」や「詐欺師」などのいわゆる犯罪者のことを指し、特にアメリカなどではネガティブな意味を持つことが多いです。」との意味が一番近いようです。このハスラーを妻にして、女の子をもうけ幸せな夫婦生活を営むかと思われたロバート・デニーロ氏との夫婦関係が破綻していく状況は、身につまされる気が重いものでしたが、名優の両者は巧みに演じており、特にロバート・デニーロ氏の表情は見ものでした。

○ジョー・ペシ氏が演ずる主人公の30数年来の友人ニッキーは血の気が多く暴挙の限りを尽くしこれだけ悪行の限りを尽くして良く逮捕されないものだと感心します。当時のラスベガスは、治安が悪い、正に無法地帯だったことが実感できますが、最後は、FBI・警察等捜査機関が動いてマフィア達を一網打尽にしようとします。しかし、その結論は、……見ての楽しみです。178分約3時間の大作ですが、マフィア達の悪辣非道行為の連続と主人公夫婦の破綻経過さらに多くの登場人物の悲惨な末路に時間を忘れて没頭できました。

Casino Official Trailer #1 - (1995) HD

以上:1,331文字
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R 7- 7-12(土):マンション法第59条に基づく競売請求を認めた地裁判決紹介
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○「マンション法59条競売に民執法63条は適用されないとした高裁決定紹介」の続きで、マンション法第59条1項に基づく競売請求をめた令和5年8月9日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○本件マンションの本件管理組合の管理者である原告が、区分所有者である被告に対し、本件管理規約に定める管理費等に係る被告による長期滞納管理費等元金169万8706円及び遅延損害金70万6661円の合計240万5367円について、区分所有法59条1項に規定する要件に該当するとして、同条項に基づき、被告の区分所有権及び敷地利用権の競売を求めました。

○被告による管理費等の滞納行為は、同法57条1項に規定する行為をした場合に該当し、また、当該行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいともいえ、被告の区分所有権及び敷地利用権には、根抵当権が設定されたところ、根抵当権の元本が確定し、一部弁済を原因として根抵当権が一部移転していること、担保不動産競売開始決定がされて差押えがされたものの、取消決定がされたことが認められ、「他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」に該当するなどとして、請求を認容し


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主   文
1 原告は、被告が所有する別紙1物件目録記載の区分所有権及び敷地利用権について競売を申し立てることができる。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要
 本件は、別紙1物件目録「一棟の建物の表示」欄記載の建物(以下「本件マンション」という。)の管理組合(以下「本件管理組合」という。)の管理者である原告が、本件マンションの区分所有者である被告に対し、本件マンションの管理規約(以下「本件管理規約」という。)に定める管理費等に係る被告による長期滞納について、同法59条1項に規定する要件に該当するとして、同条項に基づき、本件マンションに係る被告の区分所有権及び敷地利用権の競売を求める事案である。

第3 当事者の主張
1 原告の主張

 別紙「請求の原因」記載のとおり

2 被告の主張
 原告が本件マンションの管理者であること、被告が別紙物件目録1記載の建物を取得したこと、被告が管理費の支払義務等を負っていたこと、令和2年11月19日に不動産競売開始決定がされたこと、被告の商業登記後上に解散して代表清算人が選任される等の記載があることは認める。その余の事実については、不知。

第4 当裁判所の判断
1 証拠(甲1から3まで及び9)及び弁論の全趣旨によれば、別紙請求の原因1及び2の各事実のほか、本件管理組合の収入は1億6257万7303円であるのに対し、支出は1億6107万4607円であるとの事実を認めることができる。そうすると、このような被告による管理費等の滞納行為は、区分所有法57条1項に規定する区分所有者が第六条第一項に規定する行為(建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同利益に反する行為)をした場合に該当するといえ、また、当該行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいともいえる。

2 証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば、本件マンションに係る被告の区分所有権及び敷地利用権については、平成5年12月17日に根抵当権が設定されているところ、平成29年12月11日に根抵当権の元本が確定し、平成30年3月23日の一部弁済(弁済額4582万0683円)を原因として根抵当権が一部移転していること、令和2年11月19日に担保不動産競売開始決定がされて差押えがされたものの、令和3年8月4日に取消決定がされたことが認められる。これらの事情等によれば、本件については、「他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」に該当するというべきである。

3 証拠(甲7及び8)及び弁論の全趣旨によれば、別紙請求の原因5及び6の各事実を認めることができる。そうすると、本件は、区分所有法59条1項及び2項に規定する集会の決議に基づく訴えであって、同決議に際しては同条2項において準用する弁明する機会も与えられており、同条に規定する要件に該当するというべきである。

4 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第49部
裁判官 谷地伸之

(別紙1)物件目録

     (中略)

(別紙2)請求の原因
1 当事者

(1)原告は、別紙物件目録記載の一棟の建物(甲1)であるa(以下「本件マンション」という。)の区分所有者らが本件マンション及びその敷地並びに付属施設の管理を行うために、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)に基づいて設立した管理組合(権利能力なき社団)(以下「本管理組合」という。)の管理者である(甲2)。

(2)被告は、平成5年12月17日、別紙物件目録記載の建物であるa××××号室(以下「本件建物」という。)の区分所有権を取得し、現在に至るまでこれを所有している(甲1)。

2 被告が区分所有者の共同の利益に反する行為をしたこと
(1)管理費等の支払義務
 被告は、平成5年12月17日、本件建物の区分所有権を取得したため、管理規約(以下、単に「規約」という。)第25条1項1号及び2号、第30条2項及び3項、第31条2項及び3項に基づき、管理費、修繕積立金、給湯暖房基本料、給湯使用料、暖房費、水道使用料(以下「管理費等」という。)の支払義務を負う(甲2)。

(2)被告による管理費等の滞納
 被告は、平成28年9月分から管理費等を滞納していたため、本件管理組合は被告に対し、令和元年12月11日に管理費等の請求訴訟を提起した。そして、令和2年3月4日、同訴訟の認容判決が出ている(甲3)。しかし、被告は、その後の管理費等の支払も履行していない。
 そのため、被告の滞納額は、令和4年7月6日現在、管理費等元金169万8706円及び遅延損害金70万6661円の合計240万5367円に増加している(別紙「滞納管理費等内訳書」参照)。

(3)以上のような、長期にわたり、かつ多額にのぼる被告の管理費等の滞納は、「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法59条1項、57条1項、6条1項)に該当する。

3 区分所有者の生活上の障害が著しいこと
 管理費等は、マンションの維持管理費に充てられるものであり、マンションの維持管理等に必要不可欠なものである。しかし、前述2(2)に述べたとおり、被告は、長期にわたり、多額の管理費等を滞納しているのみならず、後述4(1)に述べる被告の対応のとおり、今後発生する管理費等を完済しようという意思が認められず、今後も被告の管理費等の不払額は増大することが予想される。

 本件管理組合の予算は、直近の収支状況を見ると、収入としては1億6257万7303円あるのに対し、支出としては1億6107万4607円の支出をしており、剰余金は150万2696円しか生じていない(甲9管理費収支表参照)。また、直近の収入の内、剰余金の原資になっているのは、他の区分所有者の管理費等の滞納の回収の際に回収した遅延損害金での収入である(甲9 収支明細書参照)。

そのため、このような遅延損害金の収入がなければ剰余金はほとんど生じないような予算状況であることは明らかである。そのため、240万5367円もの滞納をしている被告が今後も本件居室を所有し続けると、収支状況はマイナスになる可能性が高く、マイナスとなった場合は、他の区分所有者が被告の負担分を補填し続けるか、それとも、本件マンションの管理・修繕の質を落とす等の措置をとらざるを得ないこととなり、区分所有者の生活上の障害が著しいといえる(区分所有法59条1項)。

4 他の方法によっては滞納管理費の回収が困難であること
     (中略)

5 総会決議
 本件マンションの区分所有者らは、令和4年3月26日の棟総会において、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数をもって、本件区分所有権及び敷地利用権について、区分所有法59条による競売請求訴訟を提起することを決議した(甲7)。

6 弁明の機会の付与
 原告は、上記決議に先立ち、被告に弁明の機会を与えるために、弁明の機会の付与を行った(甲8)。

7 結語
 以上の事実によれば、被告の管理費等の滞納は、「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法59条1項、57条1項、6条1項)に該当し、これにより「区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難」(同法59条1項)な状態が生じていることは明らかといえる。
 よって、原告は、被告を除く他の本件マンションの区分所有者全員のために、区分所有法59条に基づき、被告の有する本件区分所有権及び敷地利用権について競売を請求する。

以上:3,761文字
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R 7- 7-11(金):マンション法59条競売に民執法63条は適用されないとした高裁決定紹介
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○「滞納管理費約170万円でのマンション競売請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、建物の区分所有等に関する法律(マンション法)59条1項に基づく競売については、民事執行法63条は適用されないとされた平成16年5月20日東京高裁決定(判タ1210号170頁)全文を紹介します。

○本件建物の管理組合の理事長である抗告人が、専有部分の建物に対する区分所有法59条1項に基づき競売請求を認容した確定判決を債務名義とし、同判決の被告(本件建物の共有者2名)を相手方として本件建物の競売開始決定を得たところ、原審が本件建物の最低売却価額で手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権合計を弁済して余剰を生ずる見込みがないとして競売手続を取消す旨の決定をしました。

○そこでこれを不服として抗告人が抗告した事案において、東京高裁は区分所有法59条に基づく競売においては建物の最低売却価額で手続費用を弁済することすらできないと認められる場合でない限り、売却を実施したとしても民事執行法63条の趣旨(無益執行の禁止及び優先債権者の保護)に反するものではないところ、本件では最低売却価額で手続費用を弁済することができないとは認められないとして、原決定を取消しました。原決定はマンション法59条の趣旨の理解が不十分でした。

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主   文
原判決を取り消す。

理   由
1 本件抗告の趣旨

 主文と同旨。

2 事案の概要
 本件は,原決定別紙物件目録記載の一棟の建物(サンピア鎌ヶ谷)の管理組合の理事長(建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)上の管理者)である抗告人が,同目録記載の専有部分の建物(区分所有権及び敷地利用権。以下「本件建物」という。)に対する区分所有法59条1項に基づく競売請求を認容した確定判決(千葉地方裁判所松戸支部平成14年(ワ)第1128号同15年2月5日判決)を債務名義とし,同判決の被告(本件建物の共有者2名全員)を相手方として,民事執行法195条に基づき,本件建物に対する競売を申し立て(同支部平成15年(ケ)第169号),平成15年4月28日に競売開始決定を得たところ,原審が,本件建物の最低売却価額418万円で手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権合計2788万円(見込額)を弁済して剰余を生ずる見込みがないとして,その旨を抗告人に通知した上で,同年8月20日,民事執行法63条2項により,本件建物に対する競売の手続を取り消す旨のいわゆる無剰余取消決定(原決定)をしたため,抗告人が,上記競売は区分所有法59条に基づくものであり,これに民事執行法63条の剰余主義の規定は適用されないと主張して,原決定の取消しを求めた事案である。

3 判断
(1)民事執行法63条の規定は,差押債権者に配当されるべき余剰がなく,差押債権者が競売によって配当を受けることができないにもかかわらず,無益な競売がされ,あるいは差押債権者の債権に優先する債権の債権者がその意に反した時期に,その投資の不十分な回収を強要されるというような不当な結果を避け,ひいては執行裁判所をして無意味な競売手続から解放させる趣旨のものと解される(最高裁判所昭和43年7月9日第三小法廷判決・裁判集民事91号639頁(ただし,同法施行前の民事訴訟法656条に関するもの)参照)。

(2)ところで,区分所有法59条1項による建物の区分所有権及び敷地利用権(以下,敷地利用権を含む意味で単に「区分所有権」という。)に対する競売請求は,区分所有者が同法6条1項の規定に違反して建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合等において,他の方法によっては当該行為による区分所有者の共同生活上の著しい障害を除去してその共同生活の維持を図ることが困難であるときは,他の区分所有者において当該区分所有者の区分所有権を剥奪することができるものとし,そのための具体的な手段として認められたものである。

 このような同法59条の規定の趣旨からすれば,同条に基づく競売は,当該区分所有者の区分所有権を売却することによって当該区分所有者から区分所有権を剥奪することを目的とし,競売の申立人に対する配当を全く予定していないものであるから,同条に基づく競売においては,そもそも,配当を受けるべき差押債権者が存在せず,競売の申立人に配当されるべき余剰を生ずるかどうかを問題とする余地はないものというべきである。

その一方で,同条が当該区分所有者から区分所有権を剥奪するための厳格な要件を定め,訴えをもって競売を請求すべきものとしていることからすれば,そのような厳格な要件を満たすものとして競売請求を認容した確定判決が存在する以上,同条に基づく競売においては,売却を実施して,当該区分所有者からの区分所有権の剥奪という目的を実現する必要性があるというべきであるから,不動産の最低売却価額で執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)及び担保権者等の優先債権(もっとも,競売の申立人との関係においては,上記のとおり,そもそも配当における優先関係が問題とならない。)を弁済して剰余を生ずる見込みがない場合(民事執行法63条1項)であっても,区分所有法59条に基づく競売をもって無益ないし無意味なものということはできない(もっとも,売却代金によって手続費用を賄うことすらできない場合には,その不足分は,少なくとも競売の手続上は,上記目的の実現を図ろうとする競売の申立人において負担すべきものである。)。

 そうであるとすると,民事執行法63条の規定の趣旨を踏まえても,なお,上記のような区分所有法59条の規定の趣旨にかんがみると,同条に基づく競売については,民事執行法63条1項の剰余を生ずる見込みがない場合であっても,競売手続を実施することができ,その場合も,競売手続の円滑な実施及びその後の売却不動産(建物の区分所有権)をめぐる権利関係の簡明化ないし安定化,ひいては買受人の地位の安定化の観点から,同法59条1項(いわゆる消除主義)が適用され,当該建物の区分所有権の上に存する担保権が売却によって消滅するものと解するのが相当である。

 もっとも,その場合は,一方で,優先債権を有する者,特に,担保権を有する債権者がその意に反した時期に,その投資の不十分な回収を強要されるという事態が生じ得る。
 しかしながら,区分所有者は,区分所有法6条1項により,建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない義務を負っているものであり,区分所有者がこの義務に違反した場合には,これに対する措置の一つとして,同法59条により,当該区分所有者の区分所有権に対する競売請求が認められているのであるから,区分所有者の権利である区分所有権は,そもそも,同条による競売請求を受ける可能性を内在した権利というべきであり,区分所有権を目的とする担保権は,このような内在的制約を受けた権利を目的とするものというべきである。

したがって,同条に基づく競売によって,当該担保権を有する債権者がその意に反した時期に,その投資の不十分な回収を強要される事態が生じたとしても,それは,上記のような区分所有権の内在的制約が現実化した結果にすぎず,当該債権者に不測の不利益を与えるものではなく,不当な結果ともいえないものというべきである。

 これに対し,民事執行法63条1項の剰余を生ずる見込みがない場合には区分所有法59条に基づく競売を実施することができないとすると,同法6条1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく,他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活上の維持を図ることが困難であるとして,確定判決をもって,当該行為に係る区分所有者の区分所有権に対する競売請求が認められているにもかかわらず,そのような事態が放置される結果となり,そのような事態の解消は,専ら,当該区分所有者の意思か,あるいは担保権者が適当と認める時期での担保権の実行にゆだねられることとなるが,このようなことは,余りに区分所有者全体の利益を害するものであって,同法59条の規定の趣旨を没却するものであるといわざるを得ない(なお,同条に基づく競売に民事執行法63条が適用されるとすると,剰余を生ずる見込みがない場合には,同条2項に定める申出及び保証の提供により,競売の手続を続行することができるが,区分所有法59条に基づく競売の場合には,これは現実的ではなく,このことを考慮に入れても,なお,上記の判断を左右するものではない。)。

(3)以上の次第で,区分所有法59条に基づく競売においては,建物(区分所有権)の最低売却価額で手続費用を弁済することすらできないと認められる場合でない限り,売却を実施したとしても上記(1)の民事執行法63条の規定の趣旨(無益執行の禁止及び優先債権者の保護)に反するものではなく,むしろ売却を実施する必要性があるというべきであるから,同条は適用されない(換言すれば,手続費用との関係でのみ同条が適用される)ものと解するのが相当である(なお,最低売却価額で手続費用を弁済する見込みがない場合であっても,競売の申立人がその不足分を負担すれば,なお,競売は実施すべきものと解される。)。

 なお,民事執行法195条は,民法,商法その他の法律の規定による換価のための競売については,担保権の実行としての競売の例による旨規定し、これによれば,区分所有法59条に基づく競売についても,民事執行法188条,63条がそのまま適用されるようにも読めるが,上記換価のための競売には種々のものがあるにもかかわらず,その一つ一つについて民事執行法が個別の規定を置かず,同法195条において担保権の実行としての競売の例による旨だけを規定していることからすれば,むしろ,上記換価のための競売については担保権の実行としての競売に関する個々の規定の適用関係について,その趣旨や性質に応じた合理的な解釈を許容しているものとみることができるから,区分所有法59条に基づく競売について,その趣旨等に照らし,上記のとおり手続費用との関係でのみ民事執行法63条が適用されるものと解することは,同法195条に反するものではないというべきである。

(4)そこで,これを本件についてみると,本件建物の最低売却価額418万円で手続費用(見込額)を弁済することができないとは認められず,本件建物に対する競売に民事執行法63条は適用されないというべきであるから,それにもかかわらず同条2項により上記競売の手続を取消した原決定は不当である。

(5)よって,原決定を取り消すこととし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 横山匡輝 裁判官 佐藤公美 裁判官 萩本修)
以上:4,523文字
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R 7- 7-10(木):錯誤に基づく相続放棄申述取消の申述が可能な期間についての覚書
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○被相続人に多額の借金があったと思って家庭裁判所に相続放棄の申述をして受理されましたが、しばらく経って借金は無かったことが判明し、相続放棄の申述をなかったことにして、相続人になることはできませんかとの質問を受けました。最近になって遠隔地に被相続人の名義の不動産が残っていることが判明し、この不動産について相続人として他の相続人と遺産分割協議をしたいとのことです。以下の民法第919条の問題です。なお、説例は考えやすいようにアレンジしています。

第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
 相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。
2 前項の規定は、第1編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
3 前項の取消権は、追認をすることができる時から6箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から10年を経過したときも、同様とする。
4 第2項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。


○相続放棄の申述が受理されるとその人は最初から相続人ではなかったとみなされる効果が生じますが、その効果は確定的ではありません。例えば被相続人の債権者が相続放棄は無効として相続債権請求をして相続放棄の効果を争うことができます。しかし相続放棄申述者自身が、相続放棄を撤回することはできません。これを認めると身分関係が不安定になるからです。それでも質問者の場合のように相続放棄をすることに錯誤があった場合や他人に欺されて相続放棄をした場合は、民法919条2項で、取消の主張は可能です。

○この取消の主張は、再度家庭裁判所に申述しなければ効果が生じませんので、質問者のように新たに発見された不動産について相続人として遺産分割協議に参加するには家庭裁判所の相続放棄取消申述証明書が必要になります。その質問者に新たな財産が発見されたのは相続放棄申述をしてから何年後ですかと聞いたら10数年経っていますとのことでした。そうすると前記民法第919条3項によって時効によって相続放棄の取消を主張できません。残念ながら新たな財産について相続人としての権利を主張できないとの結論になります。

○ここでさらに質問者から他の相続人は、私を相続人として遺産分割協議に参加させると言っているのですがそれでもダメですかとの質問を受けました。新たに発見された財産が不動産の場合は、質問者が相続を原因とする登記することは法務局が認めないと思われ、登記原因は贈与等になり、価値があれば贈与税が課税されるおそれがありますとの回答になりました。これに対しさらになんとか相続登記をして、贈与税を回避する巧い方法はありませんかと重ねて質問され、登記の専門家は司法書士で、税務の専門家は税理士なので、そちらに相談して下さいと逃げを打ちました(^^;)。
以上:1,221文字
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R 7- 7- 9(水):1回の不貞行為に慰謝料120万円の支払を命じた地裁判決紹介
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○原告が、夫Cと被告の不貞行為により精神的苦痛を受けたとして、被告に対し不法行為に基づき、慰謝料等合計330万円等の支払を求めました。被告は、Cとホテルに同宿した事実は認めるも性的関係はなかったと主張しました。

○これに対し、本件宿泊当時、Cと被告が既に相当親密な関係にあったことを推認させるものであるところ、そのような関係にある成人男女が、あえてホテルの同じ部屋に宿泊していることからすれば、性的行為が行われたとみるのが自然として、1回の不貞行為を認め、慰謝料120万円・弁護士費用12万円合計132万円の支払を命じた令和6年1月23日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○「15年間の密接な関係継続に慰謝料150万円を認めた地裁判決紹介」のように15年間の密接な関係に慰謝料150万円を認める判例もあれば、本件のように認定できる不貞行為1回で120万円もの慰謝料支払を認める判例もあり、不貞慰謝料金額は裁判官によって相当差があります。

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主   文
1 被告は、原告に対し、132万円及びこれに対する令和4年1月24日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し、その4を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和4年1月24日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は、原告が、夫と被告の不貞行為により精神的苦痛を受けた旨を主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等合計330万円及びこれに対する令和4年1月24日(不法行為日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は、当事者間に争いがない。)
(1)原告(昭和50年○○月○○日生まれ)は、平成21年11月22日、古美術店を営むC(昭和24年○月○○日生まれ。以下「C」という。)と婚姻した。原告とCの間には、3人の子(平成24年○月生まれの長男、平成28年○月生まれの長女、平成31年○月生まれの二女)がいる。(甲6)
(2)被告とCは、令和4年1月24日、「a」(以下「本件ホテル」という。)において、同じ部屋で宿泊した(以下「本件宿泊」という。)。
(3)原告は、令和4年7月7日頃、東京家庭裁判所に対し、Cを相手方とする夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てた(甲5)。

3 争点及び当事者の主張の骨子

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件宿泊の際の不貞行為の有無)について

(1)Cは、30年来の知人である被告に対し、カニを食べに行こうなどと言って宿泊を前提とした旅行の約束をした上で、本件ホテルの部屋を一室だけ予約した(被告本人2、5頁、証人C 9頁。Cは第三者に予約をお願いしたかもしれないとも述べるが、当初から被告と同じ部屋で宿泊するつもりであったことは認めている。)。また、被告も、別の部屋を希望したりすることもなく、Cと同じ部屋に泊まることを受け容れている(被告本人9頁)。

 これらの事実は、本件宿泊当時、Cと被告が既に相当親密な関係にあったことを推認させるものであるところ、そのような関係にある成人男女が、あえてホテルの同じ部屋に宿泊していることからすれば、性的行為が行われたとみるのが自然である。

(2)被告は、Cとはプライベートな事情まで深く話すような間柄ではないなどと主張し、それまで二人きりで食事に行った経験すらなかったなどと述べる(乙7、被告本人8頁。Cも同旨〔証人C 1、8、9頁〕。)。しかしながら、そのような浅い関係性しかなかった被告を、いきなり宿泊を伴う旅行に誘うこと自体、相当不自然・不合理であるところ、その理由に関する明確な説明はない(証人C 9頁)。また、この誘いに乗り、同部屋での宿泊を受け容れた被告自身の態度とも整合しない。

 被告は、宿泊した部屋は広くてプライバシーが保たれていたから性的行為には及んでいないなどとも主張して、同旨を述べる(被告本人4頁。Cも同旨〔証人C 2頁〕。)が、これを裏付けるに足りる的確な証拠ないし事情も見当たらない。
 したがって、性的行為を否定する被告やCの供述はいずれも信用できないものといえ、これらを根拠とする被告の主張は採用できない。

(3)以上によれば、本件宿泊の際、被告とCの間には性的行為(不貞行為)があったと認めることが相当である(以下「本件不法行為」という。)。

2 争点2(被告の故意過失の有無)について
(1)前記1(1)のとおり、本件宿泊当時、被告とCは相当親密な関係にあったことが推認できる上、Cは、自身の古美術店の常連客には原告と婚姻している事実を明らかにしていたことがうかがわれるから(甲2)、被告においても、C本人や共通する友人を通じて、当該事実を認識していた可能性は高いといえる。前記1(2)のとおり、本件宿泊に関する被告やCの供述は信用性に乏しいものであり、この点からも、被告において、Cと性的関係を持つことが不貞行為に当たることを認識していたことが疑われる。
 もっとも、上記各事情を総合しても、被告において、Cが既婚者であることを認識していたとまではいえないところ、他にこの点を認めるに足りる的確な証拠ないし事情は見当たらない。

(2)被告は、Cの婚姻関係の有無を全く確認していない旨を述べるところ(被告本人8、9頁)、Cが過去に婚姻していた事実や子どもがいた事実を認識していたこと(乙7)からすれば、Cと性的関係を持つに当たり、適宜の方法で婚姻関係の有無等を確認することが期待されていたといえ、それは極めて容易に行うことができた。被告は、その程度の慎重さを欠いてCとの性的行為に至ったものであるから、本件不法行為に関し、過失が認められる。

3 争点3(婚姻関係破綻の抗弁の当否)について
(1)原告が平成31年○月○○日にCに送信した電子メール(乙1。以下「本件メール」という。)には、Cの日々の言動に対する強烈な不満や怒りが綴られていた。原告は、本件メールにおいて、Cに対し、感情をコントロールして、すぐに怒鳴ったりしないようにすることを強く求め、これができず、話し合う気持ちもないのであれば、「ほんとに不本意ですけど、セックスレスの仮面夫婦として、同居しましょう。」〔乙1の1・26枚目〕などと綴っており、同年10月1日には別居を始めた(別居先は原告の現在の住所地である。)。これらの事情は、原告とCの婚姻関係が危機的な状況にあったことをうかがわせるものである。

 他方で、原告は、本件メールの送信後にCが態度を改めたため、危機的な状況は回避された旨を述べており(原告本人18、19頁)、これに沿う内容のCとのやり取りや写真も存在する(甲8、9)。実際、本件メールが送信されて以降、同様の内容の電子メールは送られていない(証人C 11頁)。また、原告が別居を始めたのは、子ども達が通うインターナショナルスクールへの通学の利便性等を考えてのことであり(原告本人2、3頁)、別居先の賃貸借契約を締結したのはCであって、別居後も双方の住居を行き来したり家族旅行をしたりしていたこと(甲8、9、乙2、原告本人17頁)を踏まえれば、Cとの仲が険悪になったことが別居の直接的な理由であったとまでは認め難い。原告は、別居先から離れたインターナショナルスクール(乙3)に子ども達が通うようになった後も、別居を解消していないが、引越し費用の節約等の合理的な理由が存在したと認められ(甲7、原告本人17、18頁)、婚姻関係の破綻を推認させる事情とはいえない。

(2)これらの事情を踏まえれば、本件宿泊当時、原告とCの婚姻関係が破綻していたとは認めるに足りないというべきであるから(なお、被告は、原告が令和3年頃には別の男性と交際していた旨を主張し、Cも同旨を述べるが〔証人C 4、5頁〕、本件全証拠に照らしても、これを裏付ける的確な証拠ないし事情は見当たらないから、同主張は採用できない。)、被告の婚姻関係破綻の抗弁は採用できない。

4 争点4(損害額等)について
 本件不法行為に至るまでの間、原告とCの婚姻期間は約12年間に及んでおり、3人の未成年の子がいた。婚姻期間中、夫婦関係に大きな亀裂が生じたこともあったが、前記3で述べたとおり、良好であるとはいえないまでも、少なくとも本件不法行為の頃まで危機的な状況が継続していたとはいえないところ、本件不法行為を契機として、原告とCの婚姻関係は破綻するに至ったことが認められる(原告本人8、9頁、前提事実(3))。

 以上の事情に加えて、本件不法行為以前からCと被告は相当親密な関係にあったとみられるものの、認定できる不貞行為は1回にとどまることなど、本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、被告が原告に対して支払うべき慰謝料の額を120万円と認めることが相当である。また、本件不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用相当額の損害としては、12万円を認めることが相当である。

5 結論
(1)前記1ないし4で認定説示したとおり、原告は、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、132万円及びこれに対する不法行為日(令和4年1月24日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金を請求することができる。

(2)よって、原告の請求は、主文記載の限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部 裁判官 小西俊輔

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R 7- 7- 8(火):15年間の密接な関係継続に慰謝料150万円を認めた地裁判決紹介
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○原告妻が、離婚調停中の夫Cと、平成18年頃から15,16年以上の期間、肉体関係を伴う交際を継続しているとして慰謝料500万円、調査費用68万2000円弁護士費用等合計618万2000円を請求する訴えを提起し、被告は、Cとの不貞行為を否認しました。

○これに対し、平成18年頃から被告とCは親密な関係になり、令和3年頃まで不貞行為があったとして、被告に対し調査費用も含めた慰謝料150万円と弁護士費用15万円の合計165万円の損害賠償支払を命じた令和6年3月27日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○Cは令和2年には原告妻と別居し、令和3年に至り、離婚調停を申し立てており、原告と夫Cとの婚姻関係は完全に破綻状態にあり、判決は、被告が、訴訟に至り不貞行為を否認し、原告の精神的苦痛を増加させ、被告が不貞行為を認めない態度から、証拠収集のために探偵に依頼しており、その費用全額が損害額とまでは認め難いとしながら、Cが令和3年10月に離婚調停申立をして、原告とCのおよそ30年にわたる婚姻関係が破綻の危機に瀕している等本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告とCとの不貞行為による慰謝料額は150万円が相当としました。

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主   文
1 被告は、原告に対し、165万円及びこれに対する令和4年12月11日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを15分し、その4を被告の負担として、その余は原告の負担とする。
4 この判決は、1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、618万2000円及びこれに対する令和4年12月11日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は、原告が、被告が原告の夫と不貞行為を重ねたことにより、精神的損害等の損害を被ったとして、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害額合計618万2000円及びこれに対する不法行為以後の日である令和4年12月11日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(証拠等の掲記がない事実は争いがない。)
(1)原告とC(以下「C」という。)は、平成4年に婚姻した夫婦であり、平成7年に長女を、平成10年に二女をもうけた(甲1)。
(2)被告とCは、令和2年5月27日、「a」というネットカフェ(以下「本件ネットカフェ」という。)にチェックインし、共に××××号室(以下「本件部屋」という。)に入室して滞在した(甲3)。
(3)Cは、令和2年12月28日、原告と共に住んでいた自宅を出て、以降、原告との別居を続けている。
(4)原告は、令和3年7月11日、被告の自宅を訪問し(以下「本件訪問」という。)、被告との間で、被告とCとの関係等について会話をした。
(5)Cは、令和3年10月20日付けで、横浜家庭裁判所に対し、原告を相手方として、夫婦関係等調整調停(離婚)を申し立てた(以下「本件調停」という。甲2)。

3 争点及び当事者の主張
(1)本件の争点は、〔1〕被告とCが不貞行為を行ったか(争点1)及び〔2〕損害及び額(争点2)である。
(2)争点に関する当事者の主張の要旨は、別紙のとおりである。なお、別紙で用いた略語は本文においても用いる。

第3 当裁判所の判断
 当裁判所は、被告とCが不貞行為を行ったと認められ、これによる損害額は165万円と認めるべきであるから、原告の請求は同金額の限度で理由があり、一部認容すべきものと判断する。その理由は以下のとおりである。
1 認定事実
 前記前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被告とCは、遅くとも平成18年頃には、それぞれの職場の仲間同士のグループ合計8名程度で、年に1、2回程度、飲み会をしたり、買い物をしたりする仲となった。その後、被告とCは、二人だけで食事などをするようになった。(甲12、乙2、3、証人C、被告本人)

(2)
ア 被告は、令和2年5月27日午前9時4分頃、自宅の最寄り駅であるb駅から電車に乗ってc駅へ移動し、午前9時42分頃、同駅で被告と合流した。そして、被告とCは、二人でコンビニのイートインスペースで談笑した後、午前10時22分頃、被告が元々予約していた美容室に一緒に入店した。
 なお、被告とCは、同日、同じショルダーバッグを肩に掛けており、同種類の靴及びジーパンを身に着けていた。また、Cは、被告が同日の午前中に美容室の予約が入っていることを聞かされたにもかかわらず、同日に二人で会う約束をし、美容室に一緒に行くことにした。
(以上につき、甲3、8、11、証人C、被告本人)

イ 被告とCは、同日午後0時25分頃に上記美容室から出て、c駅付近を歩いて回ったのであるが、その際、両名は手をつないで歩くこともあった。その後、被告とCは、電車でd駅に移動し、午後1時47分頃に中華料理店に入って昼食をとった。(甲3)

ウ 被告とCは、同日午後2時22分頃、上記料理店から出て、α付近を歩いて回ったのであるが、その際、両名は手をつないで歩くこともあった。その後、被告とCは、複数のお店に入ったあと、電車でe駅に移動し、同日午後3時45分頃、本件ネットカフェのフロントでチェックインをし、同日午後3時49分頃、全室防音の完全個室である共用(女性優先)フロアにある本件部屋に二人で入室した。(甲3)

エ 被告とCは、同日午後6時29分頃、本件ネットカフェを出て、ドラッグストアー2店と居酒屋に入店し、午後9時30分頃、電車でe駅からf駅まで移動し、同駅で別れた(甲3)。

(3)被告は、令和3年7月11日の原告による本件訪問の際、原告から「ダブル不倫になりますよね?」と問われたのに対して「うん。」と、原告のことをどんなふうに考えていたのかを問われたのに対して「私はいつも悪いなと思ってましたよ。」と、「一番最後に会ったのはいつとかですか?」と問われたのに対して「そうですね。先月?」、「そうですかね。うん。」などと、それぞれ回答した(甲8、11)。

(4)Cは、平成18年7月8日に被告名義のクレジットカードで購入したメンズシャツ1点及びレディスカットソー1点並びに平成19年7月14日に同クレジットカードで購入したメンズシャツ1点のレシートを所持していた(甲12)。

2 争点1(被告とCが不貞行為を行ったか)について
(1)検討
 被告とCがグループ同士で知り合ったのが平成18年頃であること(前記1(1))、Cが同年に被告名義のクレジットカードで購入したレシートを所持していること及び購入した物の中には女性用の衣服が含まれていること(以上につき、前記1(4))からすると、被告とCは、グループ同士で知り合った後、程なくして二人で買い物に行き、Cが被告に対して衣服をプレゼントする関係となっていたことがうかがわれるところである。

 また、Cは、被告に美容室という予定があることを知りながら、会う日を別日にすることも、美容室終了予定時間後に待ち合わせをすることもせず、被告と共に美容室に行く決断をし(前記1(2)ア)、e駅からだと自身の最寄り駅であるb駅とは反対方向のf駅までわざわざ被告を送っている(前記1(2)ア、エ)ところ、Cのこれらの行動は、二人が単なる相談相手や飲み友達であることを超えて、長く一緒にいたいと思う関係であることを示すものといえる。

 さらに、二人は、おそろいのショルダーバッグ、靴及びジーパンを身に着けるといういわゆるペアルックで街を出歩き(前記1(2)ア)、時には手をつないでいた(前記1(2)イ、ウ)のであり、これらの事実からも二人が親密な関係にあったことが優に推認できる。

 そして、被告は、本件訪問の際に原告から被告とCとの関係がダブル不倫である旨を問われたのに対して、認める旨の返答をしている(前記1(3))。

 以上の事実を踏まえると、被告とCとは、平成18年頃から親密な関係にあったものと認めることができる。そして、これによれば、被告とCが防音の完全個室である本件個室に入室した事実(前記1(2)ウ)から、被告とCが不貞行為を行ったと認めることができる。

(2)被告の主張等について
ア 被告は、Cから、コロナ禍で手に入りにくいマスク等を東京に買いに行くので付き合ってほしいと誘われて出かけることになり、実際にマスク等を購入したが、Cの物件探しの関係でパソコンを使用する必要が生じ、本件個室に入室したにすぎず、不貞行為は行っていない旨の主張及び供述をし、Cもこれに沿う供述をする。
 しかし、マスク等を一緒に買いに行くだけであれば、被告の美容室にCが一緒に行く必要性がないことは前記(1)に説示したとおりであり、また、Cの用事のために本件個室に入室したのであれば、被告が一緒に本件個室に入る必要性もないことから、被告の上記主張及び供述並びにCの上記供述は到底信用することができない。

イ 被告は、Cと手を取り合っていると思われる状態となったのは、被告が受けた事故により足の神経を痛め、一時的に補助が必要となることがあるためである旨の主張及び供述をし、Cもこれに沿う供述をする。

 しかし、調査報告書(甲3)において、終日、Cと被告の行動を調査していた探偵において、被告が痛がる様子が特に確認されていない上、同探偵は、被告とCとが手をつなぐ様子について「親密な様子で」(甲3〔27頁〕)と表現しているのであって、このことからも、被告が足を痛がったことを契機としてCが補助するために手を引いたとは考え難い。さらに、被告とCとが手をつないでいる様子を写した写真(甲
3〔27、44頁〕)からも、単に二人が横並びで手をつないで歩いていることが認められるのみで、Cが足の痛みやしびれを訴える被告の補助をしていることはうかがわれない。
 よって、被告の上記主張及び供述並びにCの上記供述を採用することはできない。

ウ 被告は、本件訪問の際の被告の言動は、原告の突然の訪問や様子に恐怖を覚え、適当なあいづちをうったものである旨の主張をし、同主張に沿う供述をする。
 しかし、被告は、本件訪問の際、原告から、Cと15、6年付き合っていたかを問われたのに対して「私はそんなに付き合ってない」と、娘達へのプレゼントであるタオルをCと一緒に選んでいないかを問われたのに対して「はあ?何の話か全然分からないけど。」と、肉体関係がずっと続いていたということを認めるかと問われたのに対して「それはないと思いますけどね。」と、それぞれ明確に否定しているのであり(以上につき、甲8、11)、迎合的な回答に終始していたとは認められないことから、被告の上記主張及び供述を採用することはできない。

3 争点2(損害及び額)について
(1)慰謝料(調査費用を含む) 150万円
 不貞行為の始期自体は必ずしも明確ではないものの、被告とCとが平成18年頃に知り合った後、程なくして二人で買い物に出かけるなど親密な関係にあったことは前記2(1)で認定説示したとおりである。また、前記認定事実によれば、被告とCとは、少なくとも令和3年6月までは会っていたことが認められる(前記1(3))のであって、全期間にわたって不貞関係にあったといえるかはともかく、少なくとも親密な関係であった期間が相当程度長期にわたるものといえる。

 また、被告は、本件訴訟前の本件訪問の際には、被告とCとが不倫の関係であったことを問われたのに対して認める旨の回答をしていた(前記1(3))にもかかわらず、本件訴訟では不貞行為自体を争っており、このことも原告の精神的苦痛を増加させるものといえる。

 さらに、上記のとおり、被告が不貞行為を認めない態度をとっていることからすると、原告としては証拠収集に迫られることとなるところ、素人である原告による証拠収集には限界があることから、探偵に依頼することも無理からぬところである。他方で、不貞行為の立証に当たって、必ずしも探偵による調査が必須というわけでないことから、その費用全額が損害額とまでは認め難い。よって、探偵による調査が必要となった事情を含めて慰謝料額を算定することが相当である。

 以上のほか、Cが令和3年10月に本件調停を申し立てるなど、原告とCのおよそ30年にわたる婚姻関係が破綻の危機に瀕することとなったこと(前記前提事実(1)、(5))、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告とCとの不貞行為による慰謝料額は150万円と認めるのが相当である。

(2)弁護士費用 15万円
 上記(1)のとおりの本件事案の性質及び内容、その他諸般の事情を考慮すると、被告とCとの不貞行為と相当因果関係のある弁護士費用は、上記(1)の慰謝料額の1割に相当する15万円と認めるのが相当である。

(3)損害額合計 165万円

第4 結論
 以上によれば、原告の請求は、主文掲記の範囲で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第26部
裁判官 安部利幸
以上:5,471文字
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