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R 7-11- 6(木):期間4年の不貞行為について慰謝料100万円を認めた地裁判決紹介
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○被告が原告の夫Cと、平成29年から令和3年まで約4年間に不貞行為を継続し、令和3年にはCの子を出産して精神的苦痛について慰謝料600万円の支払を求めました。

○被告は、Cは被告以外にも肉体関係をもった女性が居たことを知りながらCと関係を持ったもので既に原告とCの夫婦関係は破綻していたこと、不貞行為発覚後も原告とCは同居を継続し婚姻関係が破綻していない等の理由で責任がないと主張しました。

○これに対し、本件不貞行為前に、原告とCが別居していたとか、具体的な離婚協議に入っていたといった事情は認められず、原告とCの婚姻期間は、本件不貞行為の開始時点で、24年余りのところ、不貞行為の期間は約4年に及び、被告はCの子を妊娠、出産したことや、原告とCは、離婚しておらず、本件不貞行為発覚後も、同居を継続していることが認められる等の事情から慰謝料を100万円と認めた令和6年8月8日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○被告は、Cについて関係を始めた当時、他にも女性関係があったので原告との夫婦関係は破綻していたと主張しましたが、これに対し、そのようなケースに破綻を認め不貞相手に対する慰謝料請求を認めないと、共同不法行為責任を負うことになる不貞をした配偶者に対する不貞の慰謝料請求も認められないことになり、不貞行為を繰り返す者を利することにもなりかねず不合理と認定しています。そのようなCを利することになるとの認定ですが、本件で最も責任があるのはCと思われます。Cは原告に有利な証言をする証人となっているようですが、被告はCに対しどのように対処しているのか不明です。

*********************************************

主   文
1 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和5年2月2日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを6分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、600万円及びこれに対する令和5年2月2日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、被告が原告の夫であるC(以下「C」という。)と不貞行為をしたとして、原告が、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料600万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年2月2日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提事実(争いがないか、掲記の証拠等により容易に認められる事実)
(1)
ア 原告とCは、平成4年11月6日に婚姻した(甲1)。
イ 原告とCとの間には、子はいない(甲1、弁論の全趣旨)。

(2)
ア 被告は、平成29年2月頃にCと知合い、その後、同年より交際を開始した(争いがない。)。
イ 被告は、平成29年以降、Cが婚姻していることを知りながら、Cとの交際を継続し、令和3年5月に妊娠し、令和4年○月○日に出産をした(争いがない。)。
 上記被告が出産をした子は、DNA鑑定の結果、Cの子であることが確定し、令和4年5月6日、Cにおいて認知をした(争いがない。甲1)。

(3)なお、原告は、令和3年8月頃、Cから、被告と交際していること知らされ、また、同年12月頃、被告がCの子と思われる子を妊娠していることを知らされた(甲7、弁論の全趣旨)。

2 争点
 本件では、被告がCと不貞行為を行っていたこと(以下「本件不貞行為」という。)については争いがなく、本件の争点は、以下のとおりである。
(1)本件不貞行為の開始時点で原告とCの婚姻関係は破綻していたか
(2)被告が原告とCの婚姻関係は破綻していると認識したことについて、被告に過失がないといえるか
(3)原告の損害

3 争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)について
(被告の主張)
 Cは被告と交際するより前に原告以外の複数の女性と交際し、連日のように25時から26時に帰宅していた上、その様子が被告を含む周囲の人間にも知られており、その直後に被告と交際を開始してからも、被告が交際相手であるとの前提で行動し、積極的に妊娠にも協力した上、被告のためにマンションの賃借人となっており、タイで買春までしていることからすれば、被告と交際した当時においては既に原告とCとの婚姻関係が破綻していることは明らかである。したがって、被告の不法行為は成立しない。

(原告の主張)
 被告は、本件不貞行為の開始時には既に原告とCの婚姻関係は破綻していた旨主張するが、争う。原告とCは、婚姻後、現在に至るまで同居を続け、本件不貞行為が発覚するまでの間、離婚の話をしたこともなかったのであり、原告とCの夫婦関係は円満であった。

(2)争点(2)について
(被告の主張)
 仮に、原告とCの婚姻関係が破綻していなかったとしても、Cが原告以外の女性と交際していた(肉体関係を持っていた)ことなどを知りながら、被告がCと交際を開始したことからすれば、被告には、Cと交際を開始した当時、原告とCの婚姻関係が破綻していると認識したことについて過失がなかったことは明らかである。

(原告の主張)
 争う。
 Cが被告との交際期間中も自宅に帰っていたことや、妊娠が発覚するまで被告がCに対して離婚を求めたことはなく、被告はCとの関係を単なる愛人関係として捉えていたといえることなどからすれば、被告が、本件不貞行為の当初から、原告とCの婚姻関係が破綻しているとの認識を有していなかったことは明らかである。

(3)争点(3)について
(原告の主張)
 原告とCの婚姻関係は、本件不貞行為以前と同様の夫婦関係に戻ることは不可能であり、本件不貞行為によって、原告とCの婚姻関係は破綻に至ったことは明白である。
 原告は、被告の本件不貞行為により、著しい精神的苦痛を受けた。加えて、その後の被告の対応や行動によっても、更なる精神的苦痛を受けた。原告の受けた損害は600万円を下らない。

(被告の主張)
 争う。本件不貞行為が発覚後も、原告はCと同居しており、離婚等の予定もないとのことであり、本件不貞行為により、原告とCの婚姻関係が破綻に至ったとはいえない。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)について

(1)被告は、被告の本件不貞行為より前に、Cが複数の女性と不貞行為をしていたから、原告とCの婚姻関係は既に破綻していたと主張するものであると解される。
 確かに、不貞行為は離婚事由(民法770条1項1号)とされているが、不貞行為があっても、必ず当該夫婦が離婚に至るわけではなく、相手方配偶者がこれを宥恕し、婚姻関係を継続することも見られるところである。

不貞行為があり、別居に至ったとか、具体的な離婚協議に入っていたといった事情があれば格別、そのような事情がない限り、不貞行為があったことから、直ちに婚姻関係が破綻したと認めることは困難であると解する。そして、本件において、本件不貞行為前に、原告とCが別居していたとか、具体的な離婚協議に入っていたといった事情は認められない(証人C(陳述書(甲8)を含む。以下同じ。)、原告本人(陳述書(甲7)を含む。以下同じ。)、弁論の全趣旨)。

 なお、仮に、本件のようなケースで破綻を認め、不貞相手に対する慰謝料請求を認めないとすると、共同不法行為責任を負うことになる不貞をした配偶者に対する不貞の慰謝料請求も認められないことになると解されるが、それでは、不貞行為を繰り返す者を利することにもなりかねず、不合理である。

(2)以上からすれば、本件不貞行為より前に原告とCの婚姻関係が既に破綻していたと認められないことになるが、訴訟の経緯等に鑑み、更に検討を加える。
ア 被告は、Cが平成27年より前にDに宿泊した女性と不貞関係にあったと主張するが、証人Cはこれを否定するところ、被告本人(陳述書(乙20)を含む。以下同じ。)によっても、このような話をCなどから聞いたというにとどまっており、客観的な裏付けがあるわけではなく、この女性と不貞関係にあったと認めるに足りない。

イ 被告は、Cが平成27年から平成28年頃、キャバクラに勤務していた女性と不貞関係にあったと主張するが、証人Cはこれを否定するところ、被告本人によっても、このような話をCから聞いたというにとどまっており、客観的な裏付けがあるわけではなく、この女性と不貞関係にあったと認めるに足りない。

ウ 被告は、Cが平成28年から平成29年までE(以下「E」という。)という女性と不貞関係にあったと主張する。この点についても、証人Cは不貞関係を否定する供述をしている。
 もっとも、証拠(証人C、被告本人)によれば、Cは、平成29年1月に、E、F(Cの友人の男性歯科医)、Fの知人女性及びG(Cの知人の男性歯科医)の5人で韓国旅行に行っているところ、この旅行にEが行くことを原告に伝えていなかったことが認められる。このように伝えていないことからすると、Eとの関係について後ろめたいところがあったことがうかがわれる。

 ただ、これ以上に客観的な裏付けはなく、CがEと不貞関係にあったと断じることは困難である。なお、仮に、不貞関係にあったとしても、直ちに婚姻関係の破綻が認められるものではないことは、上述したとおりである。

(3)その他被告の主張立証内容を検討しても、本件不貞行為の開始時点で原告とCの婚姻関係が既に破綻していたと認めるべき証拠はない。

2 争点(2)について
 被告は、Cと交際を開始する時点で、被告はCと原告の婚姻関係は既に破綻していると認識していたものであり、このように認識したことについて過失はない旨主張する。
 そして、このように認識した理由として、Cが原告以外の複数の女性と不貞関係にあったことを知っていたことを挙げる。もっとも、被告は、C等から聞いて知ったというにすぎず(被告本人)、不貞関係の客観的な証拠を有していたわけでない。

 また、被告本人は、Cから夫婦関係は既に破綻していると言われたと述べるが、それ以上に、別居しているとか、具体的に離婚協議をしているといったことを聞いていたわけではない。
 加えて、被告の認識を前提とすれば、Cは、妻がいながら、複数の女性と交際するような不倫をいとわない人物ということになるが、そのような人物が夫婦関係は破綻しているなどと甘言を弄して交際に入ろうとすることは、容易に想像できるところであり、このような言葉を信じたとすれば、軽率といわざるを得ない。

 以上の検討からすれば、被告がCと原告の婚姻関係は既に破綻していると認識していたとしても、このように認識したことについて被告に過失がなかったとはいえない
というべきである。その他被告の主張立証内容を検討しても,被告がCと原告の婚姻関係は既に破綻していると認識したことについて被告に過失がなかったと認めるに足りる証拠はない。
 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 

3 争点(3)について
 前記前提事実からすれば、原告とCの婚姻期間は、本件不貞行為の開始時点で、24年余りであったところ、本件不貞行為の期間は約4年に及んでおり、被告はCの子を妊娠、出産したことが認められる。もっとも、他方で、証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告とCは、離婚しておらず、本件不貞行為発覚後も、同居を継続していることが認められる。
 以上の事情、その他本件に表れた諸事情を総合的に勘案すれば、原告の受けた精神的苦痛に対する慰謝料として、100万円を認めるのが相当である。


4 まとめ
 以上より、被告は、原告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年2月2日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金を支払うべきである。

第4 結論
 よって、原告の請求は、主文第1項掲記の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法64条本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部
裁判官 烏田真人
以上:4,997文字
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R 7-11- 5(水):平成13年相続に平成25年改正相続法を適用した家裁審判紹介
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○平成13年2月に死亡した被相続人Nの嫡出子である申立人A・B・C・D・Eが,嫡出でない子である相手方F・G・H・I・J・K・L・Mらに対して,被相続人の遺産の分割を申し立てをして、平成25年法律第94号による改正前の民法900条4号ただし書き前段の適用が問題になった令和5年2月28日那覇家裁審判(判タ1514号250頁)関連部分を紹介します。

○改正前の民法900条四号ただし書きは、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とする」という規定で、非嫡出子に対する相続差別規定でした。この規定は、2013年(平成25年)9月4日の最高裁判所大法廷の違憲判決を受けて、同年12月の民法改正により削除され、現在は存在しません。

○しかし相続開始時は平成13年2月のため平成25年12月の改正民法が適用になるかどうか争いになりました。那覇家裁は、平成13年2月当時においても,法律婚制度の下で父母が婚姻関係になかったという子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されないとして、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたので、本件相続開始時点においても,改正前民法の規定は,憲法14条1項に違反しており(最高裁平成25年9月4日大法廷決定・民集67巻6号1320頁参照)本件では,いずれも被相続人の子である申立人ら及び相手方らの法定相続分は等しい割合とすべきであるとして代償分割金額等を定めました。極めて妥当な審判です。

○被相続人N氏は、嫡出子5人の外に配偶者以外の3人の女性との間に合計8人もの子をもうけ、その上で約4億5000万円の遺産を残して亡くなりました。遺産は、自ら取得したものかどうかは不明ですが、日本国人口増加に大きく寄与し、且つ、平均を大きく超える遺産を残し、その意味では、立派なものです。

**********************************************

審   判

申立人 A B C D E
相手方 F G H I J K L M
被相続人 N

主   文
1 被相続人Nの遺産を次のとおり分割する。
(1)別紙2遺産目録記載5ないし8,10ないし18の各土地,24の借地権,33ないし37の各株式,38ないし53の各預貯金,54の現金及び56ないし58の各権利は,申立人Aが取得する。
(2)別紙2遺産目録記載2,20ないし22の各土地,28ないし30の各区分所有建物及び32の株式は,申立人Bが取得する。
(3)別紙2遺産目録記載19の土地及び31の区分所有建物は,申立人Cが取得する。
(4)別紙2遺産目録記載9の土地は,申立人Dが取得する。
(5)別紙2遺産目録記載23の借地権,26及び27の建物並びに55の権利は,申立人Eが取得する。
(6)別紙2遺産目録記載3の土地及び59の権利は,相手方Jが取得する。
(7)別紙2遺産目録記載4の土地及び25の建物は,相手方Lが取得する。
(8)別紙2遺産目録記載1の土地は,申立人B及び相手方Jの持分各2分の1の割合による共有取得とする。

2(1)申立人Aは,申立人Cに対し,1項(1)の遺産を取得した代償として,2219万0902円を支払え。
(2)申立人Aは,申立人Dに対し,1項(1)の遺産を取得した代償として,2714万7567円を支払え。
(3)申立人Aは,申立人Eに対し,1項(1)の遺産を取得した代償として,3408万6152円を支払え。
(4)申立人Aは,相手方Jに対し,1項(1)の遺産を取得した代償として,38万0927円を支払え。
(5)申立人Aは,相手方Lに対し,1項(1)の遺産を取得した代償として,918万6094円を支払え。
(6)申立人Aは,相手方F,同G,同H,同I,同K及び同Mに対し,1項(1)の遺産を取得した代償として,各1576万9064円をそれぞれ支払え。

3(1)申立人Bは,申立人Cに対し,1項(2)の遺産を取得した代償として,217万2122円を支払え。
(2)申立人Bは,申立人Dに対し,1項(2)の遺産を取得した代償として,265万7297円を支払え。
(3)申立人Bは,申立人Eに対し,1項(2)の遺産を取得した代償として,333万6470円を支払え。
(4)申立人Bは,相手方Jに対し,1項(2)の遺産を取得した代償として,3万7286円を支払え。
(5)申立人Bは,相手方Lに対し,1項(2)の遺産を取得した代償として,89万9167円を支払え。
(6)申立人Bは,相手方F,同G,同H,同I,同K及び同Mに対し,1項(2)の遺産を取得した代償として,各154万3530円をそれぞれ支払え。

4 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 相続の開始,相続人及び相続分

1 被相続人N(以下「被相続人」という。)は,平成13年2月*日死亡し,相続が開始した。

2 被相続人には,配偶者(昭和27年5月16日婚姻)であるO(以下「O」という。)との間に,A,B,C,D及びEの5人の子がいる。
 被相続人には,○○(平成11年*月*日死亡)との間に,F及びGの2人の子がおり,いずれも被相続人死亡後である平成14年10月16日に認知の裁判が確定した。
 被相続人には,○○との間に,H及びIの2人の子がおり,同人らは,いずれも被相続人により認知されている。
 被相続人には,Sとの間に,J,K,L及びMの4人(以下「相手方Jら」という。)の子がおり,同人らは,いずれも被相続人により認知されている。
 Oは,平成20年*月*日,死亡した。
 したがって,本件遺産分割の当事者となる相続人は,申立人ら及び相手方らである。

3 法定相続分について
 本件相続開始日は,平成25年12月11日より前であるため,平成25年法律第94号による改正前の民法900条4号ただし書き前段(嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1とする部分)を適用すべきかが問題となる。

 この点,本件相続開始日は,前記部分の憲法適合性に関する各最高裁判例が判断していない時期に該当するため,前記適用の点につき拘束力のある判例は存在しない。

 そこで,我が国の婚姻や家族の実態,諸外国の立法傾向や条約の存在に係る状況及び立法動向や最高裁判所判例に関する評価を踏まえて検討するに,平成13年2月当時においても,法律婚制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきていたものということができ,当時の立法府の裁量を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきであり,本件相続開始時点においても,前記部分に係る民法の規定は,憲法14条1項に違反していたものというべきである(最高裁平成25年9月4日大法廷決定・民集67巻6号1320頁参照)。

 そうすると,本件では,いずれも被相続人の子である申立人ら及び相手方らの法定相続分は等しい割合とすべきである


 被相続人の死亡時の法定相続分は,O2分の1,申立人ら及び相手方ら各26分の1であり,Oの死亡により,申立人らに各5分の1の割合で相続され,申立人らの法定相続分は各65分の9となる(計算式は次のとおり)。
(1/26+1/2×1/5=9/65)

第2 遺産の範囲,評価
 別紙2遺産目録(以下「遺産目録」という。)記載1ないし59の各財産が被相続人の遺産であること(同記載6の墓地並びに同記載55,56及び59の債権を含めて本件遺産分割の対象とすること),及び,同記載1ないし31までの各不動産(借地権を含む。)の評価額,同記載32から37までの有価証券(株式)の評価額,同記載38から53までの各預貯金の残高,同55ないし59までの被相続人の財産に係る各権利の債権額ないし評価額が遺産目録記載のとおりであることは,当事者間の合意があり,本件記録によっても認められる。

第3 特別受益及び相続開始後の預金払戻

     (中略)

第4 当裁判所の定める分割方法
1 具体的相続分等

 遺産目録記載の各遺産の相続開始時の評価額合計は,3億1077万4471円であり,前記第3の1記載の申立人Aの特別受益3000万1302円と同2記載の申立人らの預貯金払戻に係る金額合計1億0935万1674円を加算した相続財産(特別受益との関係ではみなし相続財産)の評価額は,4億5012万7447円となる。
 以上から,各当事者の具体的相続分に基づく具体的取得分は,以下のとおりとなる(以下の本項目では,1円未満の金額は切捨計算する。)。

     (中略)

(4)代償分割の検討
 前記(1)ないし(3)の本件遺産分割を実現した場合,Aにおいて前記1(1)の,Bにおいて同(2)の各具体的取得分を超える遺産の取得をすることとなる(Aの取得額は合計1億9805万9721円となり,同人の具体的取得分より1億8760万6018円超過している。Bの取得額は合計5881万8537円となり,同人の具体的取得分より1836万3533円超過している。両名の超過分の金額合計は2億0596万9551円となる。)。

 一方で,その余の申立人ら及び相手方らにおいては,いずれも同(3)又は(4)の具体的取得分に足りず,A及びBにおいて,その余の申立人ら及び相手方らに不足する各金額を代償金として支払うのが相当であり,預貯金債権を分散して取得させるより当該方法によるのが合理的というべきである。

 この点,Aにおいて遺産である預貯金をすべて取得し(取得額合計1億4481万8645円),さらに市場取引のあることも明らかな遺産目録35ないし37の各株式(評価額合計1273万5119円)も取得していることに加え,提出された同人の預金残高を示す資料(甲17)からすれば,Aには,各代償金を支払う資力があると認められ,また,提出されたBの預金残高を示す資料(甲19)からすれば,同人にも同資力があると認められる。なお,相手方F及び同Gは,本件代償分割に関し,遅延利息の取得を主張するものの,同利息の発生は観念できず主張は採用できない。

 A及びBの代償金は,各不足額に応じて負担させるのが相当であり,次のとおり,各代償金額を定めるのが相当である(1円未満の端数については,計算結果に基づき適宜調整した。)。
(Aの負担割合)
91.08435%(計算式:187,606,018÷205,969,551=約0.9108435)

(Bの負担割合)
8.91565%(計算式:18,363,533÷205,969,551=約0.0891565)

(Cへの代償金)
C取得分      4045万5003円
C取得額      1609万1979円
不足額       2436万3024円
A代償金      2219万0902円
B代償金       217万2122円

(Dへの代償金)
D取得分      4045万5003円
D取得額      1065万0139円
不足額       2980万4864円
A代償金      2714万7567円
B代償金       265万7297円

(Eへの代償金)
E取得分      4045万5003円
E取得額       303万2381円
不足額       3742万2622円
A代償金      3408万6152円
B代償金       333万6470円

(Jへの代償金)
J取得分      1731万2594円
J取得額      1689万4381円
不足額         41万8213円
A代償金        38万0927円
B代償金         3万7286円

(Lへの代償金)
L取得分      1731万2594円
L取得額       722万7333円
不足額       1008万5261円
A代償金       918万6094円
B代償金        89万9167円

(その余の相手方らへの代償金)
各取得分及び不足額 1731万2594円
A代償金      1576万9064円
B代償金       154万3530円

第5 結論
 よって,主文のとおり審判する。
(裁判長裁判官 井上直樹 裁判官 高橋良徳 裁判官 島尻香織)

別紙
1〈省略〉
2 遺産目録〈省略〉
3 特別受益目録〈省略〉
4 位置関係の概要〈省略〉
以上:5,125文字
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R 7-11- 4(火):多数回の暴言・暴行について慰謝料30万円の支払を命じた地裁判決紹介
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○暴行に対する慰謝料を認めた裁判例を探していますが、暴行だけを理由としての慰謝料請求に対する判決は余り見つからず、暴行だけの理由ではなかなか慰謝料は認められないようです。

○原告が、同じ勤務先の知人であった被告から、多数回暴言や暴行を受けるなどし、これが原告に対する不法行為に該当すると主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料200万円と弁護士費用等を請求しました。

○原告は被告の不法行為として、約4か月間、周囲に止める者等がいない状態で、本件ロッカー室内で「いじめ殺す」等の粗暴で攻撃的な言葉を告げるとともに、身体(主に背中)を叩く、後ろから首付近に腕を回して強く絞めるなどの暴行を多数回、継続的に行ったと主張しました。

○これに対し被告は休憩時間中に本件ロッカー室において、本件各発言を行ったり、その際に原告の身体を触ったり叩いたりしたことは認めるも、時期を争い、原告に対する好意的な感情から発せられたもので、原告は発達障害により他人との距離感が把握しにくい特性があり、原告の対応から自身が原告に受け入れられていると認識して気が緩み、ふざけて不適切な言動に及んだもので不法行為には該当しないと答弁しました。

○この事案について、原告がその場で強い抵抗を示さなかったこと、原告が休憩時間に本件ロッカー室に来ることをしばらくの間やめなかったことを踏まえても、原告がこれに同意して受け入れていたとは認められず、被告においても原告がこれらの行為に真に同意していたものでないことを認識していたと認められ、「殺す」や「奥さん襲う」等が直ちに現実的にこれらを実行することを示す趣旨で発言されたとまでは認め難いものの、これらが、原告に対する実際の暴行を伴って一定期間継続して多数回行われていることなどの本件不法行為の態様等に照らせば、全体として、原告に身体的攻撃による痛みのほか、相当な不快感、不安感を与える言動の一部と評価するのが相当で、被告が主張するような冗談や悪ふざけとして許容されるものとはいえないとして、慰謝料30万円の支払を命じた令和6年8月21日東京地裁判決(LEXDB)全文を紹介します。

○認定した事実関係でも慰謝料は200万円の請求に対し僅か30万円しか認められておらず、原告としては納得できない判決と思われます。

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主   文
1 被告は、原告に対し、33万円及びこれに対する令和4年5月24日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを20分し、その17を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求の趣旨

 被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する令和4年5月24日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、原告が、同じ勤務先の知人であった被告から、令和4年1月頃から同年5月24日にかけて、多数回暴言や暴行を受けるなどし、これが原告に対する不法行為に該当すると主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料及び弁護士費用計220万円及びこれに対する不法行為の最終日である令和4年5月24日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、証拠番号は枝番を含む。)及び弁論の全趣旨から容易に認定できる事実)
(1)原告及び被告は,本件当時、東京都葛飾区所在の医療法人財団C病院(以下「本件病院」という。)の従業員であった。なお、被告は、令和4年10月31日から休職し、令和5年11月30日、自然退職となった。

(2)被告は、令和4年4月15日(以下、同年の出来事については年の記載を省略する。)から5月24日の本件病院での休憩時間中、本件病院4階男子ロッカー室(以下「本件ロッカー室」という。)において、原告に対し、別紙「2暴言」記載の各発言をした(以下「本件各発言」という。)。 

2 争点及びこれに対する当事者の主張
 本件の主要な争点は、被告による不法行為の有無及び損害額である。
(1)不法行為の有無
(原告の主張)
 被告は、1月頃から、原告に対し、本件ロッカー室において、休憩時間中、「殺すぞこの野郎」等の暴言をかけるようになり、その後、暴言のほか、原告に対し、背中や頬を殴る、首を絞めるなどの暴行を毎日のように行うようになり、その一部が本件各発言及び別紙「1暴行」記載の各暴行(以下「本件各暴行」といい、個別の機会の暴行については別紙記載の番号を付して「本件暴行1」などという。)である。
 被告による上記暴言、暴行が社会通念上許容されないものであることはその内容から明らかであり、原告に対する不法行為が成立する。

(被告の主張)
ア 被告が、原告に対し、休憩時間中に本件ロッカー室において、本件各発言を行ったり、その際に原告の身体を触ったり叩いたりしたことがあることは認めるが、1月頃から毎日のように行ったとする点は否認する。

イ 被告による原告への言動には不適切なものが含まれるが、原告に対する好意的な感情から発せられたものである。被告は、発達障害により他人との距離感が把握しにくい特性があるところ、原告の対応から自身が原告に受け入れられていると認識して気が緩み、ふざけて不適切な言動に及んでしまったものである。

ウ 原告は、5月24日までの被告の言動を録音した後、本件ロッカー室での休憩を止めて被告の言動についてカウンセラーに相談を始め、被告との接点がほぼなくなった後に通院を開始していることなどから、原告が被告の言動により適応障害を発症したことには疑義がある。

エ 上記事情からすれば、被告の原告に対する言動は不法行為に当たらない。

(2)損害額
(原告の主張)
ア 慰謝料 200万円
 原告は、被告による暴言、暴行を直接の原因として適応障害に陥った。その精神的損害を評価すれば200万円を下らない。
イ 弁護士費用 20万円

(被告の主張)
 争う。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)原告と被告は、本件病院における職務上の関係は特になかったが、休憩時間等に本件ロッカー室で顔を合わせることなどから、1月頃には、本件ロッカー室で会話等をする関係となった。被告は、1月頃以降、原告に対し、「殺すぞ」などと言ったり、背中を叩いたりするようになった。被告による上記のような発言や暴行は、4月までに頻度が高くなったため、原告は、被告に処分を受けさせようと考え、4月15日から5月30日まで、本件ロッカー室での被告の言動を録音した。本件病院には、原告が休憩時間を過ごせる場所は他にも存在したが、原告は、仮眠をとるには本件ロッカー室が最適だと考えており、5月までは、被告の言動を理由に休憩時間に過ごす場所を変更することはしなかった。(甲2~8、13、原告本人、被告本人)

(2)被告は、4月15日から5月24日の間、休憩時間中に、本件ロッカー室において、原告に対し、本件各発言をした。また、被告は、本件各発言のされた休憩時間中に、原告に対し、背中を平手で叩く、肩を拳骨で叩く、後ろから首付近に腕を回して強く抱き締める等の行為を行った。上記各行為の内容等は、具体的な殴打の部位・回数等について詳細な認定が困難な部分があるものの、概ね本件各暴行のとおりである(ただし、「首を絞める」とは上記のような行為の限度で認められ、本件暴行13の「頬を1回叩く」及び同14の「ロッカーへ1回突き飛ばす」は、録音反訳でも対応する出来事は判然とせず、具体的な事実経過も明らかでないところ、原告の供述のみからこれらを認めるに足りない。)。(甲2~8、13、乙5、原告本人、被告本人)

(3)原告は、6月以降、休憩時間に本件ロッカー室で休憩することをやめ、原告は、6月6日頃、本件病院のカウンセラーに対し、メールで人間関係についての悩み相談を申込み、同年7月11日、カウンセラーに対し、被告の本件各発言や本件各暴行等の言動について、刑事事件として書類送検されることを希望していることなどの相談をした(甲1、原告本人)。

(4)原告は、7月上旬頃、本件病院に対し、被告による本件各発言及び本件各暴行の被害を訴えた。被告は、7月13日、本件病院の事務長に呼び出され、原告に対する言動について厳重注意を受けた。被告は、同日、本件ロッカー室で原告と出会い、謝罪の弁を述べた。同日頃以降、被告が休憩時間を本件ロッカー室で過ごすことはなくなり、原告と被告が病院内で接触する機会はほとんどなくなった。(甲13、乙5、原告本人、被告本人)

(5)原告は、7月30日、強度の不安やイライラ等を訴え、神経科D病院を受診し、「うつ病(適応障害)」の診断を受け、同日から令和6年1月27日まで通院した(甲9)。

2 不法行為の有無について
(1)前記認定のとおり、被告が、少なくとも4月以降、原告に対し、本件各発言をし、その機会に本件各暴行と概ね一致する暴行(本件暴行13、14については一部を除く。)を行ったこと、同様の言動は、1月頃以降に始まり、頻度は4月以降より低かったものの、3月までの間にも行われていたことが認められる(以下「本件不法行為」という。)。なお、被告は録音開始前の暴行、暴言の事実を否認するが、それまでに何ら問題となる暴行等がないにもかかわらず、原告において録音を開始し、録音開始間もなく暴行や暴言が始まるに至るとは考え難く、1月頃以降に暴行、暴言が始まった旨の原告の供述は信用でき、この認定を妨げるに足りる証拠はない。

(2)本件不法行為は、散発的に行われていた期間を含めれば約4か月間、頻回の行為態様が具体的に認定できる期間に限っても1か月余りの間、周囲に止める者等がいない状態で、本件ロッカー室内で「いじめ殺す」等の粗暴で攻撃的な言葉を告げるとともに、身体(主に背中)を叩く、後ろから首付近に腕を回して強く絞めるなどの暴行を多数回、継続的に行ったものであり、原告がその場で強い抵抗を示さなかったこと、原告が休憩時間に本件ロッカー室に来ることをしばらくの間やめなかったことを踏まえても、原告がこれに同意して受け入れていたとは認められず、当時の録音から窺えるやりとりに照らし、被告においても原告がこれらの行為に真に同意していたものでないことを認識していたと認められる。

本件各発言を個別に見ると、友人間の悪ふざけの域を出ないと見る余地があるものも含まれており、その文脈に照らし、「殺す」や「奥さん襲う」等が直ちに現実的にこれらを実行することを示す趣旨で発言されたとまでは認め難いものの、これらが、原告に対する実際の暴行を伴って一定期間継続して多数回行われていることなどの本件不法行為の態様等に照らせば、全体として、原告に身体的攻撃による痛みのほか、相当な不快感、不安感を与える言動の一部と評価するのが相当であり、被告が主張するような冗談や悪ふざけとして許容されるものとはいえない。

 したがって、本件不法行為は、原告に対する不法行為に該当し、被告はこれにより生じた原告の損害を賠償する義務を負う。
 被告は、発達障害を有していたため原告が自分を受け入れてくれていると思って本件不法行為に及んでしまったなどとも主張するが、被告が上記のような障害を有していたとしても、他人に粗暴な声をかけながら身体を殴る等の加害行為を継続的に行うことが許されないことは明らかであり、被告においてそのことが理解できなかったとも解されない。前記のとおり、原告と被告のやりとりからも、原告が被告からの攻撃について真に同意していないことは把握していたと認められるのであって、被告の上記主張は不法行為の成立を妨げるものとはいえない。

3 損害額
(1)慰謝料 30万円
 原告は、本件不法行為によりうつ病ないし適応障害に罹患したことを前提に、原告の精神的苦痛に対する慰謝料は200万円を下らないと主張する。
 しかし、前記各認定事実によれば、原告は、被告の本件不法行為を受けている間、被告との接触を避けることはせず、本件ロッカー室での仮眠を優先して休憩場所を変えなかったこと、原告が具体的な症状を訴えて精神科を受診したのは、被害がなくなってから2か月以上後であり、かつ、被告が勤務先から処分を受けた後の7月30日であること、原告の適応障害の診断は、専ら原告からの主観的愁訴を前提としたものであると考えられるところ、その具体的な診療経過等も必ずしも明らかでないこと、以上の事実が認められる。

これらの事実からすれば、原告が罹患したとされる適応障害が、被告の言動(本件不法行為)により発症したものであることを直ちに認めることは困難である。また、原告の精神科への受診が本件不法行為を契機とするものであること自体は否定できないとしても、当該通院等により、原告の業務等に具体的な影響が生じたことを認めるに足りる的確な証拠はない。

 以上を踏まえ、被告の発言及び暴行の態様や頻度、継続期間等を含む本件不法行為の内容、被告の身体的暴行により原告が治療を要するような傷害を受けた事実は認められないこと、その他、本件に顕れた一切の事情を総合すると、本件不法行為により原告が被った精神的損害に対する慰謝料は30万円と認めるのが相当である。

(2)弁護士費用 3万円
 本件事案の内容、訴訟の難易、認容額等に照らし、原告が負担した弁護士費用は3万円の限度で本件不法行為と相当因果関係にある損害と認められる。

第4 結論
 よって、原告の被告に対する請求は、不法行為に基づく損害賠償請求として33万円及びこれに対する不法行為の最終日である令和4年5月24日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部 裁判官 伊藤吾朗

別紙

以上:5,836文字
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R 7-11- 3(月):映画”もしも徳川家康が総理大臣になったら”を観て-浜辺美波氏がいい
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○令和7年11月1日(土)午後、AmazonPrimeで映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」を鑑賞しました。勿論、日本語字幕付です。令和6年製作公開映画で映画コムでは「コロナ禍の2020年、首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活させて最強の内閣をつくることに。江戸幕府を作った伝説の男・徳川家康を総理大臣に据え、織田信長や豊臣秀吉といった偉人たちが集結した夢のような内閣が誕生する。」と解説されています。

○令和3年に出版され大ヒットした同名ビジネス小説が原作とのことですが、小説も読んでおらず、何ら予備知識無く鑑賞しました。家康役野村萬斎氏、豊臣秀吉役竹中直人氏、信長役GACKT氏でしたが、やはり一番印象に残ったのは信長役GACKT氏でした。独特の存在感と貫禄があります。秀吉役竹中直人氏は正に定番で、独自の秀吉像をスッカリ固めており、その暴走もスンナリと受け入れられました。家康役野村萬斎氏は前2者に比べると最後まで影が薄いままでした。家康役野村萬斎氏の最後の演説も、残念ながら、妙に説教調で、余り響きませんでした。

○北条政子役江口のりこ氏は独特の存在感があり、NHKTV小説あんぱんの母親役を思い出しながら鑑賞しました。アナウンサー志望の新人テレビ局員・西村理沙役の浜辺美波氏は、ホントに見栄え良く、往年の吉永小百合氏にも匹敵すると感じ入りました。NHKTV小説らんまんや最近のゴジラで神木隆之介氏と夫婦や連れ合いを演じましたが、その清楚さにはウットリとします。同世代の美人役者にはNHKTV小説おむすびの橋下環奈氏も居ますが、私は浜辺美波氏の方が好みで、これからの活躍が楽しみです。

○家康など過去の人物がどのような方法で現代に甦るのかと思ったら、AI技術とホログラム技術の融合で作る立体映像として甦るとのことでした。要するにコンピュータで作られたプログラム作品で、この映画では、一部にプログラムバグがあり、そのバグで一部暴走が興るも、なんとか収めるストーリー展開です。令和6年の作品ですので、映像の綺麗さは文句なく、目に心地よく鑑賞できました。

映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』予告【7月26日(金)公開】


以上:959文字
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R 7-11- 2(日):2025年11月01日発行第400号”弁護士の四字熟語”
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○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年11月1日発行第400号「弁護士の四字熟語」をお届けします。

○「論語」は殆ど読んだことがない私にも「巧言令色」は言葉巧みで見た目も良いと言う意味で、口先だけで中身はないというような余り良い意味ではないとは思っていました。しかし「暖衣飽食」は全く知りませんでした(^^;)。漢字から暖かい衣を着て腹一杯食べるくらいは予測できますが、否定的な意味とも知りません。大山先生言われるように「衣食足りて礼節を知る」は正にそのとおりで、最近は、景気が悪いせいか「貧すれば鈍する」方が増えているような気がします。

○大山先生が好きだと言う「汗牛充棟」も今回初めて知りました。古典から現代物、和洋様々な膨大な数の本に囲まれている大山先生が偲ばれますが、私の事務所は自宅にも高尚な文学本等は余りありませんが、結構な数の本があり、終活準備中の私は処分方法をどうするか迷っているところです。いざ捨てるとなるとシッカリ読んでいないのにというより、シッカリ読んでいないから勿体ないと思い、なかなか捨てられないのが辛いところです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の四字熟語

私の好きな四字熟語を紹介していきます。愛読書の「論語」由来の四字熟語なんて大好きです。「巧言令色」なんて言葉があります。「令色」とは見た目がいいことです。「令嬢」や「令和!」の「令」ですね。「巧言」とは言葉が上手いことです。見た目がカッコ良い人が巧みな弁論をするというのが、この四字熟語の意味です。それなら、そんな人を目指せというのかと思えば違います。そういう人は真心に欠けているんだというのが、孔子先生のお考えです。でも、弁護士としてお客様に接することを考えると、見た目も話し方も素敵な方が良いに決まっています。そういえば結婚相談所に入会したばかりの人に最初に指導するのは、身なりと言葉遣いだそうです。私など、身なりや話し方など、いつも妻に怒られています。もっと注意していきたいものです。

「暖衣飽食」という、これまた論語の四字熟語も好きです。文字通り、暖かい衣服と十分な食事を意味しますが、こちらも論語の中では否定的に捉えられている言葉です。志を持った人間は、「暖衣飽食」などを求めてはいけないというのが、孔子のお言葉です。これまた大先生に逆らうようですが、私は暖衣飽食をしっかりと追求すべきだと思うのです。寒さに震えていたり、お腹が空いたりした場合、人間はろくなことを考えません。「衣食足りて礼節を知る」のです。まずは自分が十分に「暖衣飽食」をして、初めて他人のことを考えることができるようになるはずです。そういえば最近、弁護士が預り金に手を出したといった横領事件のニュースをよく見ます。若い頃は自分の「暖衣飽食」を後回しにして人権問題などに取り組んでいた弁護士が、こういう事件を起こすことがよくあるんです。一方、最初から企業系の仕事をして、若い頃から儲けているような弁護士の場合、こういう不祥事を聞いたことはありません。というわけで、私もまずは「暖衣飽食」を考えたいと思うのです。(おい。。。)

論語以外にも好きな四字熟語はあります。「汗牛充棟」なんて、本好きにはたまらない言葉です。昔の本は、竹や皮で作られていたので、とても重かった。そんな重い本が沢山あるので、運ぶのには牛が汗をかき、家には本が満ち溢れているといことだそうです。私自身本が好きですから紙の本が積み上がっているのを見ると嬉しくなります。豪邸を建てた成金が、「見栄えの良い本を100万円ほど見繕って飾ってくれ」と言ったなんて笑い話がありますが、私も似たようなものです。読めもしない難しい本で本棚を飾ると、なんか賢くなったような気になるのです!

でも還暦を過ぎて気が付いたのですが、本を1万冊読む人よりも、1冊の本を読んでその内容を実践する人の方がよほど凄い。昔の人たちは、論語や聖書だけを読んで思索を深めていたそうです。そう考えますと、四字熟語についても、あれもこれもと紹介するより、「絶対にこれだけを実践して!」という四字熟語を伝えるのが大切なんでしょう。というわけで、私が絶対お勧めする四字熟語は「乱打必中」です。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」という意味です。これって本当に真理だと思います。「何をしてもうまくいかない」なんて愚痴をこぼしている人がいます。そういう人に「これまでに何をしてきたんですか」と聞いてみると、特に何もしていなかったなんてことはよくあります。

弁護士は脳内でのシミュレーションが得意ですから、現実に行動する前に、「これはダメだろう」なんて諦めてしまうんです。わ、私のことです。。。 うちの事務所は「独立道場」ということでやっていますが、独立してうまくいく人は共通しています。何か思いついたことがあると、まずはエイやでやってみる人です。大体最初は失敗しますが、それに懲りずにまたやってみる。諦めずに下手な鉄砲を撃ち続ければ、そのうち当たるんですね。私自身、独立開業したときの「乱打必中」の気持ちを、忘れずにいたいなと思ったのでした。

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◇ 弁護士より一言

今回ニュースレターを書く中で、現代の新四字熟語を知りました。無礼な人を表わす四字熟語が「既読無視」なんだそうです。き、気を付けます。「七菌八起」といおい。。。うのもありました。「ななコロナ やおき」と読むそうです。なるほど! 一番ドキッとしたものに「減量無理」なんて熟語がありました。思い当たるだけに、そういう四字熟語は止めて欲しいと思うのでした。。。。

以上:2,422文字
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R 7-11- 1(土):ああ無情!多焦点レンズ手術希望で受診するも時期尚早宣告2
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○「ああ無情!多焦点レンズ手術希望で受診するも時期尚早宣告」を続けます。
老眼鏡から解放されたく、意を決して、白内障多焦点レンズ挿入手術希望として春樹記念眼科で岡部仁先生の診察を受けたところ、各種検査の結果、時期尚早と診断され、次回は適切な老眼鏡使用のメガネ合わせ検査となり、当分老眼鏡から解放されないことになり、ガッカリしていました。

○その後、Googleで白内障眼内レンズ挿入手術適用要件とのキーワードでGoogle検索をかけるとAIによる概要として以下の回答でした。

白内障眼内レンズ挿入手術の主な適用要件は、白内障による視力低下で日常生活に不自由が生じていること、そして原則として白内障以外に重篤な目の病気がないことです。
また、手術のタイミングは、眼鏡などでの矯正視力が0.5以下になることが目安ですが、患者さんの自覚症状や生活状況に応じて医師が総合的に判断します。

具体的な適用判断のポイント
自覚症状の程度

視力低下、かすみ、ぼやけ、まぶしさなどにより、読書、運転、趣味などの日常生活に支障が出ている。

矯正視力
眼鏡などで矯正しても、視力が0.5以下になっている場合。

目の状態
白内障のほかに、緑内障、加齢黄斑変性などの重篤な眼疾患がないこと。
全身状態が良好で、手術に耐えられること(寝たきりの方や重度の認知症の方は手術できない場合がある)。

患者さんの希望
眼鏡からの解放を希望していること。
多焦点眼内レンズを選択する場合は、術後のハロー・グレア現象(光の輪、まぶしさ)の可能性や、数ヶ月で新しい見え方に慣れる必要があること、眼鏡が完全になくなるわけではないことなどを理解・納得していること。


○上記要件に当て嵌めると、私の老眼鏡による矯正視力は1.2以上と言われており、また、自覚症状として、視力低下により裸眼では日常生活に支障がありますが、かすみ、ぼやけ、まぶしさなどにより、読書、運転、趣味などの日常生活に支障が出ているとは言えません。老眼鏡をかけると視力が1.2以上になるとしても、そのいちいち老眼鏡をかける煩わしさから解放されるためにレンズ挿入手術を希望しているのですが、それが叶えられないのが、ああ無情!です。

○「感激-サンテルタックス20+DHAの1年間服用で加齢性黄斑変性消失」記載のとおり、令和2年の検診での眼底検査で、左目に加齢性黄斑変性を指摘されて定期健診を受けている大橋眼科山口医師の診察を受けると、私の黄斑変性は「萎縮型」で特に治療は必要ないとされ、眼の健康を保つ大切な栄養素ルティンを含むサンテルタックス20の毎日服用を勧められて、毎日飲み始めるとなんと1年後に黄斑変性が消滅しました。サンテルタックス20は現在も毎日服用していますが、先日の検査でも黄斑変性は全く無いと診断されて安心しました。

○平成眼科で眼内多焦点レンズ挿入手術を受けメガネから解放され感激し、私に盛んに手術を勧めたくれた友人に結果を報告して、彼の手術前の眼の状態を確認すると乱視等もあり矯正視力も悪く相当問題があったとのことで正に手術適用要件に該当したようです。「老眼と加齢性白内障との違い-矯正視力1.5でも白内障か?」に「白内障は老眼鏡で矯正できず、老眼は老眼鏡で矯正できる」との解説を紹介し、「矯正視力「1.5」まで回復するのに加齢性白内障と診断されるのが納得できない」と書いていましたが、次の診察日にホントに白内障なのかどうかを確認してみます。
以上:1,419文字
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R 7-10-31(金):土留工事完成後の地盤沈下損害について消滅時効を否認した高裁判決紹介
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○「土留工事完成後の地盤沈下損害について消滅時効を認めた地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和7年2月5日東京高裁判決(判時2629号66頁)関連部分を紹介します。

○亡Aの相続人である控訴人及び原審原告らが、被控訴人・甲府市に対し、被控訴人は亡A所有の土地及びその周辺土地の土留改修工事を業者に発注し、当該業者は工事を実施したところ、被控訴人の不適切な指示監督等により本件土地の地盤沈下が生じた旨主張して、民法716条ただし書、同法709条に基づき、損害賠償金等約8900万円の支払を求め、原審が、控訴人らの請求権は時効消滅しているとして、控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、控訴人が控訴しました。

○これに対し、控訴審判決は、本件において地盤沈下という損害の発生を待たずに消滅時効の進行を認めることは、亡Aないし控訴人にとって著しく酷であり、被控訴人としても、仮に業者に対する適切な指示及び監督等を怠った場合、地盤沈下という損害の性質からみて、相当の期間が経過した後に被害者が現れることを予期すべきであるといえるから、消滅時効の起算点は、地盤沈下が発生した時点であるとするのが相当であり、消滅時効の抗弁を否認し、原判決を取り消しました。

○そして、本件においては、控訴人の主張する地盤沈下の存否や、本件工事の不備の有無、これと地盤沈下との因果関係の有無等について審理が尽くされていないとして、この部分を地方裁判所に差し戻しました。

○筑豊じん肺訴訟上告審判決は、不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきであるとしています。被控訴人甲府市は、この判決は人身損害に限定されると主張しましたが、東京高裁判決は、人身損害に限定されるものではなく、その他の損害賠償においても妥当し得るとして甲府市主張を排斥しました。極めて妥当な判決です。

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主   文
1 原判決中控訴人に関する部分を取り消す。
2 前項の部分につき、本件を甲府地方裁判所に差し戻す。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 主文第1項に同じ
2 被控訴人は、控訴人に対し、8900万1000円及びこれに対する令和5年4月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 事案の概要

(1)本件は、亡Aの相続人である控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人はA所有の甲府市■■■1250番17の土地(以下、後述する合筆の前後を通じて「本件土地」という。)及びその周辺土地の土留改修工事を業者に発注し、当該業者は平成14年11月から平成15年3月にかけて工事を実施したところ、被控訴人の不適切な指示監督等により本件土地の地盤沈下が生じた旨主張して、民法716条ただし書、同法709条に基づき、損害(調査及び復元工事費用)8900万1000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年4月26日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

(2)原審は、民法724条2号の消滅時効の起算点は遅くとも平成15年3月19日というべきであり、本訴の提起までに20年の時効期間が経過していたから、控訴人の請求権は時効消滅している旨判断して、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の請求を棄却した。
 これを不服とする控訴人が、本件控訴を提起した。
 なお、原審では他にも周辺土地の地権者ら3名が被控訴人に対して同種の損害賠償を請求していたが、その請求を棄却した原判決に対して控訴の提起がなく、上記地権者らと被控訴人との間では原判決が確定している。

2 関係法令の定め
(1)改正前民法
 改正前民法724条は、以下のとおり定めている。
 「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」

(2)民法
 平成29年法律第44号による改正後の民法724条は「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。」と定め、同条第2号は「不法行為の時から二十年間行使しないとき。」と定めている。
 なお、平成29年法律第44号の附則35条1項は、「旧法〔改正前民法〕第七百二十四条後段…に規定する期間がこの法律の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については、なお従前の例による。」と定めている。

3 前提事実
(1)当事者
ア 控訴人は、Aの子である。
イ 被控訴人は、地方公共団体である。

(2)Aによる土地の購入等
 Aは、昭和61年5月28日、本件土地(当時の地積は196.37平方メートル)を購入し、以後、本件土地上の建物(以下「本件建物」という。)に居住していた。
 被控訴人は,当時、本件土地に隣接する甲府市■■■1250番12の土地(地積14.90平方メートル。以下「旧1250番12の土地」という。)を所有していた。 
 旧1250番12の土地は崖状の土地であり、土留めのための擁壁が設けられるとともに、擁壁の上部には水路が設けられていた。また、本件土地は崖上に位置しており、上記擁壁によって本件土地の土砂の流出が防止されていた。

(3)土留改修工事
 被控訴人は、上記擁壁の老朽化等に伴い、本件土地を含めた周辺土地の地盤改良をして新たな擁壁を設置するとともに、上記水路を廃止して新たな水路を設けることとし、Aその他の周辺土地の地権者らの了承を得て、平成14年11月14日、株式会社F(以下「F」という。)に対して土留改修工事(以下「本件工事」という。)を発注した。

 Aの所有する本件土地では、本件建物の基礎部分の下部を掘削し、複数の鋼管杭を打ち込み、埋め戻しを行って、もって沈下を防ぐ旨の工事が予定されていた。
 Fは、同月15日頃から平成15年3月12日頃までの間、本件工事を実施した(ただし、仕様書どおりの工事がされたのかにつき、当事者間に争いがある。)。

(4)完了検査及び引渡し
 被控訴人は、平成15年3月19日、本件工事の完成検査を行い、同工事につき「合格」と決定するとともに、同日、Fから土地の引渡しを受けた。

(5)旧1250番12の土地の譲渡
 被控訴人は、平成16年5月18日、旧1250番12の土地を複数に分筆した上、同年6月22日から同年7月9日にかけて、Aを含む周辺土地の地権者らに譲渡した。
 本件土地は、平成30年12月27日、譲渡を受けた土地と合筆された(合筆後の地積は206.63平方メートル)。

(6)控訴人による相続
 Aは、令和3年×月×日に死亡し、本件土地は控訴人が相続した。

(7)本訴の提起及び消滅時効の援用
ア 控訴人は、令和5年3月27日、本訴を提起した。
イ 被控訴人は、令和5年7月27日実施の原審第1回弁論準備手続期日において、本訴請求債権につき民法724条2号の消滅時効を援用するとの意思表示をした。

4 争点
(1)被控訴人の不法行為責任の有無
(2)損害発生の有無及びその額
(3)民法724条2号の消滅時効の成否

5 争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(被控訴人の不法行為責任の有無)について
(控訴人の主張)
 控訴人は、Aが死亡したため、令和3年5月30日頃に本件土地を訪れたところ、本件土地に地盤沈下が生じているのを発見した。
 これは、本件工事において、〔1〕埋め戻しに際し、仕様書の記載よりも小粒の砕石が使用され、かつ十分な転圧がされていない、〔2〕本件建物の基礎部分の下部に打ち込まれる鋼管杭8本のうち、3本が打ち込まれていない、〔3〕本件土地に降った雨水が新たな水路に流れ込まず、本件土地の地下に浸透し続けるという不備があり、これらの不備によって地盤沈下が生じたものである。
 そして、上記〔1〕ないし〔3〕の不備は、被控訴人の不適切な指示及び監督によるものであり、「注文又は指図についてその注文者に過失があったとき」(民法716条ただし書)に該当する。また、被控訴人は、このような不備があるにもかかわらず、完成検査において「合格」と決定したものである。被控訴人のこれらの行為は、不法行為を構成する。

(被控訴人の主張)
 本件土地の地盤沈下については不知。上記〔1〕ないし〔3〕の不備の存在、これらの不備と地盤沈下との因果関係及び被控訴人の過失については否認ないし争う。控訴人は、これらの不備の存在及び地盤沈下との因果関係につき、詳細な主張及び客観的資料に基づく立証をされたい。

(2)争点(2)(損害発生の有無及びその額)について
     (中略)

第3 当裁判所の判断
 当裁判所は、原審とは異なり、被控訴人の主張する消滅時効の抗弁には理由がないものと判断する。その理由は、以下のとおりである。
1 争点(3)(民法724条2号の消滅時効の成否)について
(1)法令の適用関係について
 被控訴人は、民法724条2号の消滅時効を主張するところ、被控訴人の主張する起算点は平成15年3月19日であり、平成29年法律第44号の施行日である令和2年4月1日時点で20年を経過していない(なお、控訴人の主張する起算点は平成15年3月27日以降であって、同様に令和2年4月1日時点で20年を経過していない。)。
 したがって、被控訴人の主張する消滅時効については、同法附則35条1項の経過措置規定の適用はなく、同法による改正後の民法724条2号の規定が適用される。

(2)筑豊じん肺訴訟上告審判決について
ア 筑豊じん肺訴訟上告審判決は、以下のとおり判示している。
 「〔改正前〕民法724条後段所定の除斥期間の起算点は、『不法行為ノ時』と規定されており、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点となると考えられる。しかし、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害や、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害のように、当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである。」

イ そこで検討するに、筑豊じん肺訴訟上告審判決の上記判断は、改正前民法724条後段所定の除斥期間に関するものであるが、その理由として、
〔1〕このような場合に損害の発生を待たずに除斥期間の進行を認めることは、被害者にとって著しく酷である、
〔2〕加害者としても、自己の行為により生じ得る損害の性質からみて、相当の期間が経過した後に被害者が現れて、損害賠償の請求を受けることを予期すべきである旨
を挙げている。
これらの理由は現行の民法724条2号の場合にも妥当するのであって、筑豊じん肺訴訟上告審判決の上記判断は、同号所定の消滅時効の起算点を判断する際にも適用されるものと解される。

ウ ところで、被控訴人は、筑豊じん肺訴訟上告審判決の上記判断は人身損害に関するものであり、本件は人身損害に関する事案ではないから、同判決の判断は適用されない旨主張する。

 しかしながら、確かに筑豊じん肺訴訟上告審判決は「身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害」や「一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害」を挙げているものの、これに続けて「…のように」と判示していることからすると、これらは飽くまでも例示であって、結論としては「当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合」には当該損害の全部又は一部が発生した時をもって除斥期間の起算点とする旨判断しているものである。

また、同判決がその理由として挙げている上記イ〔1〕及び〔2〕の各事情は、いずれも人身損害に限定されるものではなく、その他の損害賠償においても妥当し得るというべきである。
 したがって、筑豊じん肺訴訟上告審判決の上記判断については、人身損害以外の損害類型をその射程外とするものではないと解するのが相当であって、被控訴人の上記主張は採用することができない。

エ これを本件についてみるに、控訴人の主張は、周辺土地の地盤改良をして新たな擁壁を設置するという本件工事について、
〔1〕埋め戻しに際し、仕様書の記載よりも小粒の砕石が使用され、かつ十分な転圧がされていない、
〔2〕本件建物の基礎部分の下部に打ち込むとされていた鋼管杭8本のうち、3本が打ち込まれていない、
〔3〕本件土地に降った雨水が新たな水路に流れ込まず、本件土地の地下に浸透し続ける
という不備があり、これにより本件土地に地盤沈下が生じたというものである。

 このように、控訴人の主張は、本件土地の地盤沈下の発生をもって損害とした上、これは本件工事により直ちに発生したものではなく、小粒の砕石の使用、不十分な転圧、鋼管杭の一部の不設置、雨水の継続的な浸透などの諸事情が積み重なり、本件工事が終了してから相当の期間が経過した後に本件土地に地盤沈下が発生したとするものである(その上で、控訴人は、本件土地の地盤沈下を発見したのは令和3年5月30日頃である旨主張している。)。

現に、被控訴人において、平成15年3月19日に本件工事の完成検査を行い、同工事につき「合格」と決定していることからすると、本件工事の終了時点では本件土地の地盤沈下はまだ発生していなかったものと推認されるところであり、加害行為時とされる時点において損害は発生していなかったことになる。

そのため、本件において地盤沈下という損害の発生を待たずに消滅時効の進行を認めることは、Aないし控訴人にとって著しく酷であるとともに、被控訴人としても、仮に業者に対する適切な指示及び監督等を怠った場合、地盤沈下という損害の性質からみて、相当の期間が経過した後に被害者が現れることを予期すべきであるということができる。

 したがって、控訴人の本訴請求債権は、筑豊じん肺訴訟上告審判決のいう「当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合」に該当し、民法724条2号の消滅時効の起算点は、地盤沈下が発生した時点であるとするのが相当である。

オ そこで、地盤沈下が発生した時点を検討するに、上記のとおり、平成15年3月19日の時点ではまだ地盤沈下は発生していなかったものと推認されるのであるから、同日を消滅時効の起算点であるとする被控訴人の主張は採用することができない。

 そして、被控訴人は同日以外の起算点を主張していないし、念のために検討しても、本訴の提起(令和5年3月27日)の20年前である平成15年3月27日の時点で地盤沈下が発生していたことを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、被控訴人の主張する消滅時効の抗弁は、理由がないものというべきである。


2 結論
 以上によれば、原判決中控訴人に関する部分については、取消しを免れない。そして、本件においては、控訴人の主張する地盤沈下の存否や、本件工事の不備の有無、これと地盤沈下との因果関係の有無、被控訴人の不法行為の特定及びその成否等について審理が尽くされていないから、これらの点について更に審理を尽くさせるため、民事訴訟法308条1項に基づき、上記部分について本件を甲府地方裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 相澤眞木 裁判官 廣瀬孝 宮崎拓也)
以上:6,458文字
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R 7-10-30(木):土留工事完成後の地盤沈下損害について消滅時効を認めた地裁判決紹介
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○原告らが、被告甲府市が原告ら所有の土地及びその周辺土地の土留改修工事を業者に発注し、当該業者は工事を実施したところ、被告甲府市の不適切な指示監督等により本件土地の地盤沈下が生じた旨主張して、被告に対し、それぞれ民法709条に基づく損害賠償金等の支払を求めました。

○原告X1は、被告発注土留改修工事の不備により沈下した所有地の地盤を回復するために、敷地等の調査を行い、建物を解体撤去・地盤改良工事を行い、建物及びコンクリート路面の復元工事を行う必要があり、これらに要する費用8900万1000円が被告の不法行為と相当因果関係が認められるというものです。

○これに対し、被告甲府市は、原告らが主張する本件工事の不備は、本件工事の完成までに生じたもので、消滅時効の起算点は、遅くとも本件工事の完成検査日の平成15年3月19日であり、本訴提起は、同日から20年以上が経過した令和5年3月27日なので、被告の不法行為による損害賠償請求権は、被告の消滅時効の援用により時効消滅したと主張しました。

○この事案について、被告主張を全面的に認めて原告ら請求を棄却した令和6年2月20日甲府地裁判決(判時2629号72頁、参考収録)全文を紹介します。この判決は控訴審東京高裁に判決で、取り消されて甲府地裁に差し戻されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は
、原告X1に対し、8900万1000円及びこれに対する令和5年4月26日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は、原告X2に対し、1487万2000円及びこれに対する令和5年4月26日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
3 被告は、原告X3に対し、996万6000円及びこれに対する令和5年4月26日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
4 被告は、原告X4に対し、1552万1000円及びこれに対する令和5年4月26日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 被告は、平成14年、現在原告らがそれぞれ所有する各土地について擁壁の土留改修工事を発注し、同工事は、平成15年3月に完成した。
 本件は、原告らが、上記工事における被告の不適切な指示等により上記各土地に地盤沈下が生じたと主張して、被告に対し、民法709条に基づき、原告X1につき8900万1000円、原告X2につき1487万2000円、原告X3につき996万6000円、原告X4につき1552万1000円及びこれらに対する不法行為後の日である令和5年4月26日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。

1 前提事実(当事者間に争いがない事実、顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、争いがない事実は認定根拠を摘示しない。)
(1)
ア 亡Aは、昭和61年5月28日、甲府市■■■所在の地番1250番17の土地を購入し、原告X1は、令和3年×月×日、同土地を相続した。
イ 亡B及び原告X2は、昭和60年8月31日、甲府市■■■所在の地番1250番1の土地を上記Bの持分を3分の2、原告X2の持分を3分の1として購入し、原告X2は、平成17年×月×日、上記Bの持分3分の2を相続した。
ウ 亡Cは、昭和57年6月10日、甲府市■■■所在の地番1249番7の土地を購入し、原告X3は、平成30年×月×日、同土地を相続した。
エ Dは、昭和57年6月23日当時、甲府市■■■所在の地番1250番18の土地(以下、前記アないしウの各土地と併せて「本件各土地」という。)を所有していたところ、亡Eは、平成13年10月8日までに、同土地を取得し、原告X4は、平成28年×月×日、同土地を相続した。

(2)被告は、平成14年頃、本件土地と接する隣接地(甲府市■■■所在の地番1250番5の土地)との間の土留擁壁改修工事の一部(以下「本件工事」という。)を発注した。本件工事は平成15年3月に完成した。

(3)原告らは、令和5年3月27日、本訴を提起した。

(4)被告は、令和5年7月27日に行われた第1回弁論準備手続期日において、原告らに対し、本訴請求債権について、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。

2 争点及び争点に関する当事者の主張
(1)被告の不法行為責任の成否

(原告らの主張)
 本件工事における被告の不適切な指示及び監督並びに本件工事の施工内容に不備があったにもかかわらず完成検査により「合格」と決定したことにより、
〔1〕本件工事において十分な転圧がされず、
〔2〕甲府市■■■所在の地番1250番17の土地の自宅建物の下に施工されるべき8本の支柱が施工されず、
〔3〕もともと存在した水路が廃止された。
その結果、本件各土地には、地盤沈下が生じたから、被告は、原告らに対し、不法行為責任を負う。

(被告の認否)
 本件各土地に地盤沈下が生じたことは不知。その余は、否認ないし争う。

(2)損害及び因果関係
(原告らの主張)
ア 原告X1は、沈下した所有地の地盤を回復するために、敷地等の調査を行い、建物を解体撤去したうえで地盤改良工事を行い、建物及びコンクリート路面の復元工事を行う必要がある。したがって、これらに要する費用8900万1000円が被告の不法行為と相当因果関係が認められるというべきである。

イ 原告X2は、沈下した所有地の地盤を回復するために、敷地等の調査を行い、損傷したコンクリート路面を撤去したうえで地盤改良工事を行い、コンクリート路面を復元する必要がある。したがって、これらに要する費用1487万2000円が被告の不法行為と相当因果関係が認められるというべきである。

ウ 原告X3は、沈下した所有地の地盤を回復するために、敷地等の調査を行い、損傷した境界壁を撤去したうえで地盤改良工事を行い、境界壁を復元する必要がある。したがって、これらに要する費用996万6000円が被告の不法行為と相当因果関係が認められるというべきである。

エ 原告X4は、沈下した所有地の地盤を回復するために、敷地等の調査を行い、損傷した擁壁を撤去したうえで地盤改良工事を行い、擁壁を復元する必要がある。したがって、これらに要する費用1552万1000円が被告の不法行為と相当因果関係が認められるというべきである。

(被告の認否)
 否認ないし争う。

(3)消滅時効の成否
(被告の主張)
 完成検査日には、本件工事が終了していることから、被告の不適切な指示及び監督を不法行為とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、遅くとも、本件工事の完成検査日である平成15年3月19日である。また、本件工事の施工内容に不備があったにもかかわらず完成検査により「合格」と決定したことを不法行為とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、本件工事の完成検査日である同日である。そして、本訴提起は、同日から20年以上が経過した令和5年3月27日であることから、消滅時効が完成している。

(原告らの主張)
 本件工事の完成検査は、「甲府市低入札価格調査実施要項」で定められた段階検査や「承諾書」で定められた変更工事に当たっての協議がされていないことからすれば、重大な瑕疵が存在し、無効というべきであって、完成検査日である平成15年3月19日を消滅時効の起算点とすることはできない。
 また、被告の工事検査調書によれば、「都市整備部都市整備課」による完成検査の他に、「総務部指導検査課」による合否の判断がされ、合格となった後に更に下部に「検査報告」なる欄が存在し、施工主管部及び契約主管部の各担当者全員が検査報告を受けた又は行ったのは,平成15年3月27日であるところ、同日をもって本件工事は終了したと考えるのが相当であるから、消滅時効の起算点は同日である。

第3 当裁判所の判断
1 争点(3)(消滅時効の成否)について

(1)不法行為による損害賠償の請求権は、不法行為の時から20年間行使しないときは時効によって消滅するところ(民法724条2号)、その文言からして、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点となると解すべきである(最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁参照)。 

(2)原告らの主張する不法行為は、本件工事における被告の不適切な指示及び監督並びに本件工事の施工内容に不備があったにもかかわらず完成検査により「合格」と決定したことであるところ、証拠《略》によれば、本件工事は、平成15年3月12日まで行われ、被告は、同月19日、完成検査を行い、引渡しを受けたことが認められるから、加害行為の終期は、遅くとも平成15年3月19日であるというべきである。

 そして、原告らは、上記不法行為により、
〔1〕本件工事において十分な転圧がされず、
〔2〕甲府市■■■所在の地番1250番17の土地の自宅建物の下に施工されるべき8本の支柱が施工されず、
〔3〕もともと存在した水路が廃止され、その結果、本件各土地に地盤沈下が生じ、損害が生じた
と主張するところ、原告らが主張する上記〔1〕ないし〔3〕の不備は本件工事の完成までに生じていたものであるから、原告らが主張する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、遅くとも平成15年3月19日であるというべきであり、上記請求権は、被告の消滅時効の援用(前提事実(4))により、時効消滅したというべきである。

(3)これに対し、原告らは、本件工事の完成検査は、重大な瑕疵が存在し、無効というべきであって、完成検査日である平成15年3月19日を消滅時効の起算点とすることはできないと主張するが、同検査の法的効力如何によって原告らが主張する加害行為の終期が変わるということはできないから、原告らの上記主張は、前記(2)の説示を覆すに足りない。

 また、原告らは、施工主管部及び契約主管部の各担当者全員が検査報告を受けた又は行った平成15年3月27日をもって本件工事は終了したと考えるのが相当であるから、消滅時効の起算点は同日であると主張し、証拠《略》によれば、施工主管部及び契約主管部の各担当者全員が検査報告を受けた又は行ったのは、同日であると認められる。しかし、上記検査報告は、完成検査を行い、請負業者から引渡しを受けた後の被告内部の報告にすぎず、原告らが主張する加害行為の終期は、被告が完成検査を行い引渡しを受けた同月19日であるというべきであるから、上記事実は、前記(2)の説示を覆すには足りない。

 他に、前記(2)の説示を覆すに足りる証拠はない。

2 以上の検討によれば、その余の争点について検討するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がない。
(裁判長裁判官 新田和憲 裁判官 井上有紀 今澤俊樹)

以上:4,573文字
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R 7-10-29(水):ああ無情!多焦点レンズ手術希望で受診するも時期尚早宣告
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○令和5年1月4日の「”嗚呼!白内障進行-手術の適応宣告されるも1年待ちから”5年経過」以来、2年10ヶ月ぶりに眼の話題です。私は、丁度10年前の平成27年10月10日の「嗚呼!白内障進行-手術の適応宣告されるも1年待ち」に「60代に入ると加齢性白内障の進行を指摘されていましたが、先日、受診すると水晶の白濁が強くなっており、手術適応と無情な宣告を受けました。」と記載していました。

○「”嗚呼!白内障進行-手術の適応宣告されるも1年待ちから”5年経過」では、「最近は、3.0の強い老眼鏡でも近くのPC画面や本・新聞を読むのが、特に小さい文字だと読み取れなくなってきました。」と記載していましたが、数ヶ月前に私としては、最強の4.0の老眼鏡をAmazonで4個ほど購入し、特に小さな文字の本を読むときに使用するようになりました。PC使用ではまだ3.0で間に合うのですが、本を読むときは3.0では文字が見えにくくなったからです。

○そこで、令和7年9月に眼内多焦点レンズを入れる手術を行うことを決意して、定期健診を受けている大橋眼科山口医師から、多焦点レンズ手術で定評のある平成眼科への紹介状を書いて貰いました。山口医師は、単焦点レンズ手術しか行わず多焦点レンズ手術は他の病院を紹介しますと言われていたからです。直ぐに平成眼科に連絡すると新規予約患者はなんと1ヶ月先とのことで、1週間先に予約可能な春樹記念眼科通院を紹介され、令和7年10月28日午前8時30分に予約して岡部仁医師の診察を受けてきました。

○多焦点レンズ手術希望患者として、先ず春樹記念眼科で詳細な視力検査をし、その後、さらに検査が必要とのことでシャトルバスで平成眼科に行き、2件の検査を受け、その結果をもって春樹記念眼科で岡部医師の診察を受けました。すると岡部医師は、検査結果の眼底写真画像や検査結果数値を示されて、白内障ではあるけれども年齢相応で状態は大変良く、黄斑変性も全くなく、なにより矯正視力が良いので、多焦点レンズ手術は時期尚早で勧められませんとの、私にとっては薄情な宣告を受けました。面倒な老眼鏡からおさらばしたいと思って意を決して診察を受けたのですが、結果は当分の間、老眼鏡で十分間に合うので、次回診察で適切な老眼鏡使用のメガネ合わせ検査をしますとの無情なものでした(^^;)。

○しかし、むやみに手術を勧めない岡部医師の説明は、大変説得力があり、極めて良心的なお医者さんと確信でき、岡部医師の指示に従っていこうと思った次第です。
以上:1,046文字
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R 7-10-28(火):小野寺五典衆議院議員国政報告会参加-途中日焼け顔の村井知事登場
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恐れ入りますが、本ページは、会員限定です。

以上:21文字
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R 7-10-27(月):映画”Broken Rage”を観て-どこが面白いのか不明
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○令和7年10月26日(日)は、午後、AmazonPrimeでたまたま見つけた北野武監督・脚本・主演の映画「Broken Rage」を鑑賞しました。映画コムでは「「暴力映画におけるお笑い」をテーマに型破りな演出で撮りあげた実験作。約60分の映画を前後半に分け、前半は警察とヤクザの間で板挟みになった殺し屋の奮闘を活写する骨太のクライムアクション、後半は前半と同じ物語をコメディタッチのセルフパロディで描く。」と解説されています。

○北野映画鑑賞は、「映画”首”を観て-どこが面白いか不明でした」記載の映画「首」以来でしたが、映画「Broken Rage」の感想も映画「首」と同様、どこが面白いのか不明でした。北野映画は有名なアウトレイジシリーズを始め多数ありますが、私が持っているソフトはDVDで1997(平成9)年製作映画「HANA-BI」・1999(平成11)年製作映画「菊次郎の夏」、BDで2015(平成27)年製作映画「龍三と七人の子分たち」の三本だけです、いずれも鑑賞した記憶ですが、このHPに感想は書いていません。最も最近鑑賞したのはBDでの映画「龍三と七人の子分たち」ですが、感想を書く気にもなれない作品でした。

○1997(平成9)年製作映画「HANA-BI」・1999(平成11)年製作映画「菊次郎の夏」も鑑賞したはずですが、DVD時代の20年以上前の鑑賞で殆ど記憶に残っていません。アウトレイジシリーズはTV放映されていたモノを断片的に観た記憶はありますが、通して全て観た記憶はありません。おそらくどの映画も私の感性には合わず観る気がしなかったと思われます。北野武氏は、定期購読している週刊ポストに毎号連載記事を書いており、欠かさず読んで共感する部分も多いのですが、残念ながら映画は殆ど共感できません。

映画「Broken Rage」も映像は結構綺麗で目に心地よかったのですが、その内容は、前半のシリアス部分はまだ観られたのですが、後半パロディ部分は、私にとっては下らないとしか感じられません。笑わそうとしているのは判るのですが、到底笑えないもので、とても観られたものではありませんでした。シリアス部分では主役北野武氏は桁外れの強さを持った設定ですが、お腹の出たモッサリとした身体と緩慢な動作は、到底、桁外れの強さは感じられませんでした。しかし、下半身膝下をさらけ出したその足は肉付きが良く、ガッチリした逞しいもので、これはたけしさん、長生きすると思わせるものでした(^^)。

Broken Rage (2025) ブロークン レイジ - Movie Trailer - Far East Films


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R 7-10-26(日):映画”Mr.ノーバディ2”を観て-二番煎じながら痛快・爽快・愉快変わらず
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○令和7年10月25日(土)は、夕食後、TOHOシネマズ仙台4番シアターで映画「Mr.ノーバディ2」を鑑賞しました。「映画”Mr.ノーバディ”を観て-痛快・爽快・愉快この上ない映画」記載の通り、第1作映画「Mr.ノーバディ」は、映画館での鑑賞ができなかったので、第2作は是非映画館で鑑賞したいと思っての鑑賞でした。第1作映画「Mr.ノーバディ」は、4KUHDソフトで令和4年1月に鑑賞して以来、面白くて友人達に紹介がてら3回程鑑賞し、内容も良く覚えています。

○2作目も面白いだろうと大いに期待して鑑賞したのですが、結果は少々残念ながらでした。一言で言えば二番煎じでした。確かに「痛快・爽快・愉快」であることは変わりませんが、今回は「この上ない」までとは評価できませんでした。ケンカシーンで少々グロっぽいシーンが出てきましたが、私にとっては、不快にさせるだけの不要なシーンでした。敵役の極悪非道ななボスとして登場したかつてのセクシー女優シャロン・ストーン氏は、67歳になって映画「氷の微笑」当時の印象はなくなっていましたが、極悪非道さを巧く演じていました。

○87歳になった「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズの準主役ブラウン博士「ドク」役のクリストファー・ロイド氏は、今回は前作ほどの大暴れはありませんでしたが、悪役退治に大きな役割を果たしてくれました。87歳になったお顔を拝見したかったのですが、終始サングラス姿で、お目を見せてくれなかったのが残念でした。前回も登場した養弟の黒人男性も悪役退治に見事な剣裁きを見せてくれました。今回変わったのは主人公ハッチの妻まで悪役退治に加わったことです。前回は気付かなかったのですが映画「グラディエーター」のヒロインなどよく観る顔でした。

○上映時間が90分と短めのせいか、あっという間に終わった感じですが、もう2,30分長くしても、ちと詳しい状況説明が欲しいと思うところが多々ありました。え、いつもまにそこまで完全準備ができたのかと驚くシーンが多くありました。随所に笑える場面をちりばめて、「痛快・爽快・愉快」な映画であることは変わりません。4KUHDソフトが発売されたら、価格が下がった時点で購入して再鑑賞をしたいと思っています。

映画『Mr.ノーバディ2』日本版予告編<10月24日(金)全国公開>


映画『Mr.ノーバディ2』特別映像<最悪のバカンスに備えて>10月24日(金)全国公開


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