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R 7-12- 4(木):離婚しても離婚時までの婚姻費用請求権は消滅しないとした最高裁決定紹介
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○「離婚した元夫への離婚時までの婚姻費用支払申立を却下した高裁決定紹介」の続きでその許可抗告審令和2年1月23日最高裁決定(判タ1475号56頁、判時2454号18頁)全文を紹介します。

○妻である抗告人は、夫である相手方に対し、平成30年5月婚姻費用分担調停の申立てをし、平成30年7月離婚の調停が成立しました。しかし、離婚調停においては、財産分与に関する合意はされず、いわゆる清算条項も定められませんでした。おそらく離婚だけ早く成立させたい事情があったのでしょう。

○婚姻費用分担調停事件は、離婚調停成立の日と同日、不成立により終了したため、上記申立ての時に婚姻費用分担審判の申立てがあったものとみなされて、審判に移行し、札幌高裁は、抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求権は離婚によって消滅したから、離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であるとして、これを却下しました。そこで抗告人元妻が、そんなバカなことがあるかと、許可抗告をしました。

○最高裁は、婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても、これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえないとし、本件申立てを却下した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻しました。

○最高裁は、婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないが、婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができると当然の判断をしました。

*********************************************

主   文
原決定を破棄する。
本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

理   由
 抗告代理人○○○○,同○○○○,同○○○○の抗告理由について
1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1)妻である抗告人は,平成30年5月,夫である相手方に対し,婚姻費用分担調停の申立てをした。

(2)抗告人と相手方との間では、平成30年7月,離婚の調停が成立した。同調停においては,財産分与に関する合意はされず,いわゆる清算条項も定められなかった。

(3)上記(1)の婚姻費用分担調停事件は,上記(2)の離婚調停成立の日と同日,不成立により終了したため,上記(1)の申立ての時に婚姻費用分担審判の申立て(以下「本件申立て」という。)があったものとみなされて(家事事件手続法272条4項),審判に移行した。 

2 原審は,要旨次のとおり判断し,抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求権は消滅したから,離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であるとして,これを却下した。
 婚姻費用分担請求権は婚姻の存続を前提とするものであり,家庭裁判所の審判によって具体的に婚姻費用分担請求権の内容等が形成されないうちに夫婦が離婚した場合には,将来に向かって婚姻費用の分担の内容等を形成することはもちろん,原則として,過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等につき婚姻費用の分担の内容等を形成することもできないというべきである。そして,当事者間で財産分与に関する合意がされず,清算条項も定められなかったときには,離婚により,婚姻費用分担請求権は消滅する。

3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 民法760条に基づく婚姻費用分担請求権は,夫婦の協議のほか,家事事件手続法別表第2の2の項所定の婚姻費用の分担に関する処分についての家庭裁判所の審判により,その具体的な分担額が形成決定されるものである(最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁参照)。

また,同条は,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないことは明らかである。

しかし,上記の場合に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから(前掲最高裁昭和40年6月30日大法廷決定参照),夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解するのが相当である。このことは,当事者が婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の請求をすることができる場合であっても,異なるものではない。

 したがって,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない。

4 以上と異なる見解の下に,本件申立てを却下した原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口厚)

以上:2,371文字
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R 7-12- 3(水):離婚した元夫への離婚時までの婚姻費用支払申立を却下した高裁決定紹介
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○「離婚した元夫に離婚時までの婚姻費用支払を命じた家裁審判紹介」の続きでその抗告審平成30年11月13日札幌高裁決定(家庭の法と裁判27号40頁、最高裁判所民事判例集74巻1号12頁)全文を紹介します。

○被抗告人元妻が、婚姻費用分担を申し立て、原審が、抗告人元夫に対して未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命ずる審判をしたところ、抗告人が即時抗告を申し立てしました。

○これに対し、札幌高裁は、被抗告人と抗告人との間では、既に調停離婚が成立し、同調停においては、財産分与については合意されず、また、いわゆる清算条項も定められなかったことが認められるから、上記調停離婚の成立をもって被抗告人の抗告人に対する婚姻費用分担請求権は消滅し、被抗告人が抗告人に対して未払の過去の婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法として許されないというべきであるとしました。

○その上で、未払の過去の婚姻費用の清算については、財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるので(最高裁判所昭和53年11月14日第三小法廷判決(民集32巻8号1529頁)参照)、本件において、被抗告人は抗告人に対して、財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付を求めるのが相当として、原審判を取り消し、被抗告人元妻のの婚姻費用分担申立てを却下しました。

○要するに財産分与申立をしてもう一度審理をやり直せというもので、被抗告人元妻としては到底納得できず最高裁に許可抗告をして、最高裁で再度覆されていますので、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 原審判を取り消す。
2 被抗告人の本件申立てを却下する。
3 手続の総費用は各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由等

 抗告人は,釧路家庭裁判所北見支部平成30年(家)第316号婚姻費用分担申立事件について,平成30年9月20日に同裁判所がした審判(抗告人に対して未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命じたもの)に対し,即時抗告を申し立てた。
 抗告の趣旨及び理由は,別紙「抗告状」(写し)に記載のとおりであり,被抗告人の反論及び当審における主張は,別紙「主張書面」(写し)に記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 以下のとおり補正するほか、原審判書「理由」欄の「第2 当裁判所の判断」の1(1)ないし(3)に記載のとおりであるから,これを引用する。 
(1)原審判書1頁23行目及び2頁1行目の各「当庁」をいずれも「釧路家庭裁判所北見支部」と改める。

(2)原審判書1頁23行目の末尾を改行して,以下のとおり加える。
「上記調停においては,被抗告人と抗告人が調停離婚すること,長男及び二男の親権者をいずれも被抗告人と定めること,被抗告人と抗告人との間の年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めること,が合意されたが,財産分与については合意されず,また,いわゆる清算条項も定められなかった。」

(3)原審判書1頁24行目から25行目までを削る。

(4)原審判書2頁2行目の「上記調停」を「同調停」と改める。

2 検討
(1)婚姻費用分担審判は,「夫婦の一方が婚姻から生ずる費用を負担すべき義務があることを前提として,その分担額を形成決定するものである」(最高裁判所昭和40年6月30日大法廷決定(民集19巻4号1114頁)参照)ところ,家庭裁判所の審判によって具体的に婚姻費用分担請求権の内容及び方法等が形成されないうちに夫婦が離婚したときは,婚姻の存続を前提とする婚姻費用分担請求権は消滅し,将来に向かって婚姻費用分担の内容及び方法等を形成することはもちろん,原則として,過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等を婚姻費用の分担としてその内容及び方法等を形成することもできないものというべきである。

(2)上記1のとおり,被抗告人と抗告人との間では,平成30年7月11日に調停離婚が成立し,同調停においては,財産分与については合意されず,また,いわゆる清算条項も定められなかったことが認められる。そうすると,上記調停離婚の成立をもって被抗告人の抗告人に対する婚姻費用分担請求権は消滅し,被抗告人が抗告人に対して未払の過去の婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法として許されないというべきである。

 未払の過去の婚姻費用の清算については,財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるのであり(最高裁判所昭和53年11月14日第三小法廷判決(民集32巻8号1529頁)参照),本件において,被抗告人は抗告人に対して,財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付を求めることが可能であって,相当であるというべきである。

3 よって,被抗告人の本件申立ては不適法であり却下すべきところ,本件申立てが適法であることを前提に抗告人に対し未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命じた原審判は相当ではないから,原審判を取消し,被抗告人の本件申立てを却下することとして,主文のとおり決定する。
平成30年11月13日 札幌高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 草野真人 裁判官 飯淵健司 裁判官 下澤良太
以上:2,278文字
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R 7-12- 2(火):2025年12月01日発行第402号”弁護士のワーク・ライフ・バランス”
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○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年12月1日発行第402号「弁護士のワーク・ライフ・バランス」をお届けします。

○「ワーク・ライフ・バランス」とは、「仕事」と「仕事以外の生活(育児、介護、自己啓発、趣味など)」の調和が取れている状態を指すと説明されています。私はこの言葉を聞いたことはありますが、これを意識したことは全くありませんでした。それが高市早苗新総裁就任時に「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」「働いて働いて働いて働いて参ります!」とやったものだから、一躍脚光を浴びました。令和7年流行語大賞は、高市早苗内閣総理大臣の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」に決まったとのことです。

○穏健保守派を自称する私は、高市氏の過激保守ぶりに首相になるのは困ったものだと思っていました。しかし、実際なってみるとその支持率の高いのには驚きました。台湾有事について余計なことを言って中国を激怒させ、日中関係を悪化させても支持率が下がらないのには更に驚きました。世のため人のために一生懸命尽くそうとする姿勢を好意的に見る国民が多いようです。「世のため人のためになろうなんてだいそれた気持はこれっぽっちもない」と言い続けてきた私も、少しは高市首相を見習うべきとは思うのですが。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士のワーク・ライフ・バランス

少し前に高市総理が、「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」「働いて働いて働いて働いて参ります!」などと所信表明したことが話題になってました。これに対して、「働き過ぎを容認する」みたいに批判する人もいましたけど、私は素直に「凄いな。健康に気を付けて頑張ってください」と思ったのです。ただそうは言いましても、生活や家族まで犠牲にして何かに夢中になるというの、あまり良くないと思うのも事実です。安倍総理を暗殺した犯人の裁判が行われていますよね。被告人の母親が熱心な統一教会信者で、家庭や子供を犠牲にしていたなんて事実が明らかにされています。「宗教ライフ バランス」を考えるべきだと思うのは私だけではないはずです。

もっとも、統一教会に限らず、宗教っていうのはこんな風にバランスを欠いてしまうものかもしれません。お釈迦様の教団に入った子供達を「救い出す」為に、親たちが王様に歎願したなんて話があったはずです。これなんか今ならさしずめ、カルト教団に入った子供を救う親の立派な活動と言われそうです。キリストも金持ちの青年に、「神の国に行きたいなら、全てを捨てて私に従え」と言いました。お金や家族といった「ライフ」を捨てられない青年が断ると、キリストは「金持ちが天国に行くのは、ラクダが針の穴を通るより難しい」と有名な決めゼリフを言います。現代社会でこんな勧誘している新興宗教は厳しく非難されちゃいそうです。

宗教だけでなく、どの分野でも超一流と言われ人はワーク・ライフ・バランスなんて言葉は無視している気がします。オバマ大統領といった政治家や、有名な実業家も無視していたはずです。稲盛和夫といえば日本を代表する大実業家でしたが、こんな凄いエピソードがあります。年商100億円規模の会社創業者が稲盛さんに、「そんなに仕事一辺倒でなくて、もっと人生を楽しんだ方が良くないか?」と聞いたそうです。それに対する稲盛さんの回答が凄い。「そんなことを言っているから、あなたの会社は年商100億程度しか稼げないんだ!」 ひゃ、100億稼げれば十分すぎるのでは。。。 まあ、雲の上にいるような凄い人たちは「ワーク・ライフ・バランス」なんて気にしないで頑張ってもらって良いのでしょう。

しかし、普通の人たちに関して言うと、「ただひたすら仕事を頑張っているなんて人が優秀だった例はほとんど無いな」というのが私の正直な感想です。生活を犠牲にして仕事しても、結局は非効率なだけに思えてしまうのです。ということで、弁護士のワーク・ライフ・バランスです。弁護士の就職先として人気なのは何と言っても大手渉外事務所です。若くて優秀な人しか入れてもらえませんから、入れるだけでステータスになるんです。ただ、こういう事務所の仕事はかなりキツイと言われています。夜は終電後にタクシーで帰って、朝からまた事務所に出るなんてことがざらにあるんですね。こういう環境下で競争して、生き残った人だけが事務所に残れるという方式です。

これなんか完全にワーク・ライフ・バランスを壊しています。だから家庭を持つと、大手を辞めて比較的業務量の調整が利く社内弁護士などに転身する人がいるわけです。私が勤務していた法律事務所は、オバマ大統領が働いていた米国の事務所です。このときはかなり忙しくて、終電後にタクシーで帰ることなどよくありました。これは長く勤めていられないなと思って、独立開業したわけです。今の事務所ではワーク・ライフ・バランスを考えて働くようにしていますが、お客様のためならば、高市総理を見習って「働いて働いて働いて働いて参ります!」

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◇ 弁護士より一言

ダイエットを始めると、ついつい頑張りすぎてしまいます。今回、一月ほどでかなり痩せたんですが、誰も何も言ってくれない。「みんな気が付かないのかな?」と娘に言ったら、教えてくれました。「みんな、怖い病気が原因かもしれないと思って、口に出せないんだと思うよ」 ほ、ホントですか。気を使わせてしまったなら済まなく思います。今後は、ダイエット ライフ バランスを考えて、減量するようにします。

以上:2,395文字
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R 7-12- 1(月):離婚した元夫に離婚時までの婚姻費用支払を命じた家裁審判紹介
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○申立人と相手方は、平成13年6月27日に婚姻した夫婦で、両名の間には長男(平成14年生)及び二男(平成24年生)がいるところ、両名は平成26頃から別居状態となり、以降、申立人が長男及び二男とともに生活していました。

○申立人と相手方は、平成30年7月11日に調停により離婚しました。相手方は、申立人に対し、婚姻費用として1か月あたり15万円を支払っていたましたが、平成30年2月から支払がとまったため、申立人が、離婚時までの未払婚姻費用として約93万円の支払を求めて婚姻費用分担調停を申し立て、調停は不成立となり、審判手続に移行しました。

○婚姻費用の分担額については、義務者世帯及び権利者世帯が同居していると仮定し、義務者及び権利者の各総収入から税法等に基づく標準的な割合による公租公課並びに統計資料に基づいて推計された標準的な割合による職業費及び特別経費を控除して得られた各基礎収入の合計額を世帯収入とみなし、この世帯収入を生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって推計された権利者世帯及び義務者世帯の各生活費で按分して権利者世帯に割り振られる婚姻費用から、権利者の上記基礎収入を控除し、義務者が分担すべき婚姻費用の額を算定するとの方式に基づき検討するのが相当であるとして、申立人に対し、74万5161円を支払うよう相手方に命じた平成30年9月20日釧路家裁北見支部審判(家庭の法と裁判27号41頁、最高裁判所民事判例集74巻1号8頁)全文を紹介します。

○この審判は相手方が抗告し、抗告審札幌高裁で、離婚の成立をもって被抗告人の抗告人に対する婚姻費用分担請求権は消滅したとして取り消されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 相手方は,申立人に対し,74万5161円を支払え。
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨

 相手方は,申立人に対し,婚姻費用分担金として,93万2488円を支払え。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 本件記録によれば,次の事実が認められる。
(1)申立人(昭和51年■月■日生)と相手方(昭和50年■月■日生)は,平成13年6月27日に婚姻した夫婦であり,申立人と相手方との間には,長男(平成14年■月■日生)及び二男(平成24年■月■日生)がいる。

(2)申立人及び相手方は,平成26年頃から別居状態にあり,以降,申立人が長男及び二男と共に生活していたが,平成30年7月11日,調停により,離婚した(当庁平成29年(家イ)第166号)。
 なお,相手方は,平成30年1月までは,申立人に対し,婚姻費用として1か月当たり15万円を支払っていた。

(3)申立人は,平成30年5月21日,平成30年2月からの未払婚姻費用の支払を求めて婚姻費用分担調停を申し立てた(当庁平成30年(家イ)第76号)が,同年7月11日,上記調停は,不成立となり,本件審判手続に移行した。

(4)申立人は,医療法人に勤務しており,平成29年の給与収入は,241万2763円である。
 他方,相手方は,2つの会社に勤務しており,平成29年の給与収入は,合計720万円である。また,相手方は,焼肉店も営んでいるもので,平成29年の確定申告書の事業所得は-161万8085円で,この事業所得を計算するに当たって差し引かれた経費のうち,旅費交通費は15万3670円,通信費は3万8966円,接待交際費は80万4996円である。なお,この確定申告書の課税される所得金額を算定する過程においては,上記給与収入も考慮されている。

(5)長男は,平成30年4月,高等学校に進学し,野球部に入部をした。その入学時学校諸納金は合計2万5000円,第1学年の授業料及び学校諸費は合計20万0100円,制服代は5万3784円,教科書その他の教材費は合計4万7048円,野球部のユニフォーム代,グローブ代等は合計20万1560円,通学定期代は12万9430円である。

2 検討
(1)夫婦は,互いに協力し扶助しなければならず(民法752条),別居した場合でも,自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務を負うもので,別居中の婚姻費用は,この義務の履行として支払われるものである。

(2)婚姻費用の分担額については,義務者世帯及び権利者世帯が同居していると仮定し,義務者及び権利者の各総収入から税法等に基づく標準的な割合による公租公課並びに統計資料に基づいて推計された標準的な割合による職業費及び特別経費を控除して得られた各基礎収入の合計額を世帯収入とみなし,この世帯収入を生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって推計された権利者世帯及び義務者世帯の各生活費で按分して権利者世帯に割り振られる婚姻費用から,権利者の上記基礎収入を控除し,義務者が分担すべき婚姻費用の額を算定するとの方式に基づき検討するのが相当である。

(3)
ア 申立人の給与収入並びに相手方の給与収入及び事業収入は,前記1(4)のとおりであるが,婚姻費用の算定に当たっては,異なる種類の収入がある場合には,一方の収入を他方の収入に換算する必要があり,相手方の給与収入がその事業収入より多い本件では,後者を前者に換算するのが相当である。そして,事業収入については,確定申告書の課税される所得金額によるのが原則であるが,本件では,この所得金額を算定する過程において給与収入も考慮されていることから,この所得金額により事業収入を認定することができない。そこで,次善の策として,確定申告書の事業所得に,給与所得の職業費に相当する交通・通信費,交際費等を加えることにより,事業収入を給与収入に換算したものとすることとする。

 以上の結果,申立人の給与収入は241万2763円となり,上記換算後の相手方の給与収入は合計657万9547円となる(なお,申立人は,相手方の事業が趣味に過ぎず,事業所得の赤字分を考慮すべきではない旨主張するが,相手方の事業が趣味に過ぎないものと認めるに足りる証拠はなく,その主張は採り得ない。)。そして,それぞれの給与収入に対する基礎収入の割合は,申立人については39%,相手方については37%であり(顕著な事実),成人1人当たりに必要な生活費に対する未成年の子1人当たりに必要な生活費の割合(生活費指数)は,14歳未満が55%,15歳以上が90%である(顕著な事実)から,前記(2)の算定方式によれば,相手方が申立人に対して負担すべき婚姻費用分担額は,1か月当たり12万1337円と試算される。

〔計算式〕
A:申立人の基礎収入=¥2,412,763/年×39%=約¥940,977/年
B:相手方の基礎収入=¥6,579,547/年×37%=約¥2,434,432/年
C:前記(2)の方式による婚姻費用分担額=(A+B)×{(100+90+55)
(100+100+90+55)}-A=約¥1,456,052/年=約¥121,337/月

イ 前記(2)の算定方式では,1年当たり33万3844円の公立高等学校の学校教育費が15歳以上の未成年の子の生活費指数の中で考慮されているが,この額を上回る教育費についても,義務者の収入等から不合理なものでない限り,義務者において,それぞれの基礎収入に応じて按分した額を負担するのが相当である。
 前記1(5)の教育費合計65万6922円(この額は1年間に必要な額と認めるのが相当である。)は,義務者の収入等からして不合理なものではないから,上述した上回る教育費として義務者が負担すべき額は,1か月当たり1万9752円と試算される。
〔計算式〕(¥656、922/年-¥333,844/年)×B/(A+B)=約¥233,012/年=約¥19,417/月

ウ 前記ア及びイの試算結果に加え,本件記録に現れた一切の諸事情を考慮すると,相手方が申立人に対して負担すべき婚姻費用の分担額は,1か月当たり14万円とするのが相当であり,平成30年2月1日から離婚した前日の同年7月10日までの未払婚姻費用は,74万5161円となる。 
〔計算式〕¥140,000/月×(5か月+10日/31日/月)=約¥745,161

3 結論
 よって,相手方は,申立人に対し,未払婚姻費用分担金74万5161円を支払うべきである。そこで,手続費用については家事事件手続法28条1項を適用し,主文のとおり審判する。
平成30年9月20日
釧路家庭裁判所北見支部 裁判官 安木進

以上:3,541文字
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R 7-11-30(日):映画”悪い奴ほどよく眠る”を観て-爽快感無く興業成績不振納得
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○令和7年11月29日(土)は、夕方、数年前に購入していた黒澤明監督作品1960(昭和35)年製作映画「悪い奴ほどよく眠る」を鑑賞しました。黒澤映画は大好きで映画「七人の侍」等有名映画は、ハイビジョンLDから4KUHDまで発売された作品は全て購入しています。しかし映画「悪い奴ほどよく眠る」は、DVD・BDでは発売されていますが、ハイビジョンLD・4KUHDいずれも発売されていません。この作品は、興行成績が悪く発売しても売れないと評価されていたので高価なハイビジョンLD・4KUHD版は発売されなかったと思われます。

○令和7年からは65年も前の昭和35年製作で私が小学3年生時の作品ですが、私には映画館でもBDでも鑑賞したことは無く、全く初めての鑑賞でした。映画コムでは「黒澤プロ設立第1作として監督が選んだテーマは、当時社会問題となっていた政治汚職。汚職事件の隠蔽工作により自殺に追い込まれた男の息子による復讐劇を通して、政界に根深くはびこる腐敗の構造にメスを入れた意欲作。」と解説されています。「極めて社会性の強いテーマでありながら、スリルとサスペンスを盛り込むことで十二分に娯楽映画として通用する作品。」とも解説されていますが、確かに鑑賞中は「次はどうなるかと」固唾をのんで、鑑賞に没頭しました。しかし、最後の結論が極めて後味の悪いもので、不快感の残る映画で、興行成績が悪かった理由も納得できるものでした。

○1920年生まれの主人公三船敏郎氏40歳時の作品で、映画黒澤組の常連志村喬(当時55歳)・西村晃(当時37歳)・藤原鎌足(当時55歳)各氏が重要な役どころで登場します。主人公の盟友役加藤武氏(当時31歳)は最後の絶望感を良く表現しており、主人公の妻役香川京子氏(当時29歳)も映画に花を添えています。三船敏郎氏は、映画「七人の侍」や「用心棒」等での派手で豪快な演技を押さえて淡々とした演技に徹していました。確かにスリルとサスペンスの連続には、流石黒澤映画と感じましたが、最後の結末には、映画の爽快感皆無で、スカッと爽やかにはほど遠い映画でした。それが黒澤監督の狙いだとの感想もありましたが、気の滅入ることこの上なく終わりました。

○田中邦衛氏(当時28歳)もホンの僅か殺し屋役で登場し、僅かの時間でこのような殺し屋を手配できる役人の闇の力の大きさを感じさせます。映画表題のよく眠る「悪い奴」は、映画には出てきませんが、「悪い奴」らの頂点には悪徳政治家が居る設定のようです。戦後大きな汚職事件が次々と発生し、大物政治家の関与が取り沙汰され、その都度小物役人の課長補佐などが自殺して闇に葬られていたことに憤激して闇を暴こうとした作品でもあるとのことですが、暴けず終わる結論が不思議なところです。

○近時でも記録改ざんを命じられ、それを苦に自殺した財務省の役員もいるところ、それを命じた上司はなんのお咎めもなく、さらにその上の大物政治家は全く無関係と言い張り、映画「悪い奴ほどよく眠る」のような状況は今でも続いているのかも知れません。

The Bad Sleep Well (1960) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]


以上:1,318文字
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R 7-11-29(土):オンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」紹介-料金
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○「オンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」紹介」の続きで、具体的事件で費用がどのくらいかかるのかHP「OneNegotiation(ワンネゴ)」の記述から探ってみました。

○具体的な事案としてアパート賃借人Aさんが賃貸人Bさんから月額賃料7万円で借り受け、敷金2か月分14万円を支払っていたところ、期間満了で退去・明渡をして、敷金の返還を求めたところ、Bさんはクリーニング代として14万円以上かかるとの理由で返還を拒否され、その返還を求めると場合とします。弁護士に相談したらそのような低額の案件は、裁判所の少額訴訟制度を利用して自分で訴えを出すことを勧められました。しかし、裁判所利用は敷居が高くもっと簡単な方法として、オンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」の利用を考えました。

HP「OneNegotiation(ワンネゴ)」で最も気にかかるのは利用料金です。「OneNegotiation(ワンネゴ)」料金プランによるとトライアルプランを利用した場合、基本料金・申立通知手数料・「システム調停 (※2) 」申立手数料は無料となっています。「※2 システム調停とは、債権者と債務者が、チャットのような画面で選択肢をタップして交渉する方法です。」と説明されており、申立人AさんとBさんが直接チャット画面で遣り取りをする仕組みです。しかし、Bさんは、たとえ申立に応諾したとしても、従前の主張を繰り返し、支払に応じることはないはずです。

○そうなると「債権者と債務者の双方が必要と判断した場合、Web会議にて調停人を介して交渉する方法です。」と説明されているオンライン弁護士調停になります。債務者Bさんがオンライン弁護士調停に応諾すれば、Aさんは申立手数料として2万7500円を支払い、弁護士による調停を受けることができます。このオンライン弁護士調停は、
・「システム調停」では折り合わず、債権者と債務者が希望する場合には、債権者と債務者の間に「弁護士資格を持つ調停人」を介する形で、Web会議形式(Zoom)でやりとりする「オンライン弁護士調停」に移行できます。

・ここでは、債権者、債務者が同時に会議に参加することがないよう、調停人が管理して協議を進めますので、画面上で相手方と顔を合わせて会話する必要はありません。

※各者のスケジュール調整のため、平均2週間後の実施となります。
と説明されています。

○AさんとBさんは、オンラインですから、パソコン或いはスマホ画面で、調停員弁護士に双方の主張を述べ、調停員弁護士が、調停案としてBさんがAさんに10万円支払うとの調停案が出されて、双方に合意が出来て、AさんがBさんから10万円を受領したとします。この場合、合意成功報酬として34.848%の成功報酬が発生しますので、Aさんには10万円×0.34848=3万4848円の支払義務が発生します。Aさんは、10万円を回収するためにオンライン弁護士調停申立費用2万7500円と合意成功報酬3万4848円の合計6万2348円の費用を負担し、手取りは3万7652円となります。

○Aさんが裁判所の少額訴訟制度を利用して訴えを提起し、裁判所に出頭して全て自分で行い、裁判官による和解が成立して10万円全額を回収する場合は、Aさんにとっては相当な手間暇がかかります。「OneNegotiation(ワンネゴ)」を利用して余り手間暇をかけず少しでも回収できる方がよいかどうかは、Aさんの判断になります。なお、日本の裁判所では、少額訴訟の手続き全体をオンラインで完結できるシステムは、現状、提供されていないとのことです。
以上:1,516文字
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R 7-11-28(金):オンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」紹介
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○先日、従前のお客様から身内の問題として敷金返還請求の相談を受けました。アパートを退去する際に、仲介不動産業者に預けた敷金返還請求をしたらクリーニング費用等で返還する分は無いと拒否されたとのことでした。当HPの「建物賃貸借での退去時の原状回復義務」を紹介して敷金からクリーニング代を控除することは原則としてできないので返還請求できますと回答し、相手は応じないと思われるので、裁判所の少額訴訟制度を利用する方法がありますと回答しました。

○しかし、素人の方には少額訴訟制度の利用も大変だろうなと思っていたら、弁護士ドットコムニュースの「少額未払い「泣き寝入り」に終止符…利用増えるオンライン調停、日本でもODRじわり」という記事を見つけて驚きました。記事では、
弁護士が開発した、少額の未払い解決に特化したオンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」の累計申立て件数が、このほど1万8000件を突破した。年内には2万件を超えそうな勢いだ。
ワンネゴのようなオンライン調停サービスは「ODR(Online Dispute Resolution )」と呼ばれる。トラブル解決でイメージされやすいのは裁判だが、時間や費用がかかるため、費用対効果で泣き寝入りになることも珍しくない。一方、ODRは、公正な手続きでありながら、費用負担が少なく、比較的軽微なトラブルの解決方法として注目されている。
と記載されて居ます。

○「OneNegotiation(ワンネゴ)」とは、現役の弁護士か開発したお金のトラブルを解決する新時代のデジタルサービスで、ワンネゴと読んで下さいとのYouTube動画もありました。

トップランナー認定事業プレゼンテーション【株式会社AtoJ】


○令和7年11月28日午前4時30分現在、2023/09/08にアップして152回視聴とのことで余り、視聴されていないようですが、前述の通り、「累計申立て件数が、このほど1万8000件を突破した。年内には2万件を超えそうな勢いだ。」とのことで結構利用者が増えているようです。

○詳しい仕組みは、HP「OneNegotiation(ワンネゴ)」に解説されています。基本的には、少額督促案件を多数抱える事業者向けのシステムのようですが、先の敷金返還請求のような個別の案件でも利用できるようです。料金プランを見るとトライアルは、債権者と債務者が、チャットのような画面で選択肢をタップして交渉するシステム調停までは、無料で利用できますが、債権者と債務者の双方が必要と判断した場合、Web会議にて調停人を介して交渉するオンライン弁護士調停まで行くには2万7500円かかり、1期日増す毎に1万1000円かかるようです。敷金返還請求のような個別の案件での利用にはコストが高すぎるような気もしますが、少額訴訟を自分で出すよりは手間が省けます。今後どこまで利用されるかは見ものですが、このようなシステムが普及すると益々弁護士需要が狭まります。
以上:1,238文字
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R 7-11-27(木):抑うつ病退職夫に退職後4割収入ありと扱い婚姻費用支払を命じた高裁決定紹介
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○「抑うつ病退職夫に退職後4割収入ありと扱い婚姻費用支払を命じた家裁審判紹介」の続きで、その抗告審令和5年5月8日福岡高裁決定(判時2631号5頁)全文を紹介します。161万5000円の支払を命じた夫が、就労不能で収入が無いのに収入があると認めるのは不当と主張して抗告していました。

○大阪高裁決定も、原審と同様、抗告人が抑うつ状態であることは認められるものの、相手方との別居以前には症状がなく、長男及び二男との面会交流等を巡ってその症状が発現し、その後、従前の勤務先を退職するに至ったという経緯等や、抗告人の指摘する診断書によっても具体的な症状の内容や程度、通院の頻度、投薬内容等が明らかでないことなどに照らすと、直ちに就労することが不可能と判断することはできないとして、原審審判を維持して抗告を棄却しました。

*********************************************

主   文
1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。

理   由
第1 本件抗告の趣旨及び理由

 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「抗告状」(写し)《略》に記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所も、原審判と同様、抗告人に対し、婚姻費用分担金として、161万5000円の支払を命じるのが相当と判断する。その理由は、2のとおり判断を補足するほかは、原審判の「理由」欄の「第2 当裁判所の判断」の1及び2(原審判1頁17行目から同5頁3行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

2 判断の補足
 抗告人は、抑うつ状態のため就労困難と診断され、その状態は令和3年8月以降悪化傾向にあり就労不能な状態が継続していることが明らかであり、今後、その症状が改善する見込みがないにもかかわらず、令和4年7月以降の抗告人の収入を270万円として婚姻費用分担金を算定した原審判は不当である旨主張する。

 しかし、原審判が認定説示するとおり、抗告人が抑うつ状態であることは認められるものの、相手方との別居以前には症状がなく、長男及び二男との面会交流等を巡ってその症状が発現し、その後、従前の勤務先を退職するに至ったという経緯等や、抗告人の指摘する診断書によっても具体的な症状の内容や程度、通院の頻度、投薬内容等が明らかでないことなどに照らすと、直ちに就労することが不可能と判断することはできない。また、上記診断書には抗告人において就労が困難である旨記載があるものの、いかなる仕事についても就労することができないのか、あるいは、何らかの条件を付したとしても就労することができないのかといった点については明らかでない。

 以上によれば、上記診断書をもってしても、抗告人において就労が不可能であり、全く稼働能力がないといえるかについては疑問が残るといわざるを得ず、相手方の求めがあったにもかかわらず、抗告人が具体的な診療内容等を明らかにすることを拒否していることなどを考慮すれば、令和4年7月以降の抗告人の収入について,従前の収入の約4割である270万円の収入があるものとして婚姻費用分担金を算定した原審判は相当である。
 したがって、抗告人の上記主張は採用できない。 

3 よって、本件抗告は理由がないから棄却することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 岡田健 裁判官 佐藤道恵 阿閉正則)

別紙 抗告状《略》
以上:1,404文字
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R 7-11-26(水):抑うつ病退職夫に退職後4割収入ありと扱い婚姻費用支払を命じた家裁審判紹介
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○妻が別居中の夫に対し婚姻費用分担金の支払を求めたところ、夫が抑うつ症状との診断を受け勤務先を退職して収入が無いと主張してその支払を拒絶しました。

○これに対し、夫の就労が不可能な程度かは疑いが残るとして、退職後も退職前収入の約4割の収入があるものと扱い、基礎収入額をその43%と認めた上で、申立人代理人が相手方夫に対して受任通知を送付した令和3年12月から離婚が確定した令和5年2月までの婚姻費用分担金として161万5000円の支払を夫に対して命じた令和5年2月28日福岡家裁審判(判時2631号7頁)全文を紹介します。

○審判理由として相手方は、令和4年5月に抑うつ症状の診断を受け、同年6月末で退職しているが、診断書及び相手方の主張によっても、申立人の別居以前には特に症状はなく、別居後の長男及び二男との面会交流等を巡って発症し悪化したというもので、受診及び退職の経緯、本件調停への対応状況等を考慮すると、相手方の症状が就労不可能な程に重篤なものかについては疑いが残ると、夫に厳しい認定がなされています。

*********************************************

主   文
1 相手方は、申立人に対し、161万5000円を支払え。
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての要旨

 相手方は、申立人に対し、婚姻費用分担金として、毎月相当額を支払え。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 本件記録によれば、次の事実が認められる。
(1)本件申立てに至る経緯等
ア 申立人(平成4年生)と相手方(平成3年生)は、平成30年1月1日、婚姻し、同年×月×日、長男であるAが、令和3年×月×日、二男であるB(以下、長男及び二男をあわせて「未成年者ら」という。)がそれぞれ出生した。
イ 申立人は、同年8月21日、未成年者らを連れて別居し、申立人代理人は、同年12月、相手方に対して受任通知を送付し、その中で婚姻費用を請求した。
 申立人は、令和4年5月12日、福岡家庭裁判所に対し、婚姻費用分担金の支払を求める調停(令和4年(家イ)第888号。以下「本件調停」という。)を申し立てた。

ウ 相手方は、同年3月28日、自宅を売却すると、同年5月24日、抑うつ気分、不眠、不安等を訴えて病院を受診し、抑うつ状態で、就労は困難であるとの診断を受けて、同年6月末、それまで勤務していた銀行を退職した。
エ 本件調停は,同年11月25日、不成立となって、本件審判に移行した。
 なお、両当事者間の夫婦関係調整(離婚)調停事件(福岡家庭裁判所令和4年(家イ)第889号)において、離婚等を認める調停に代わる審判(以下「別件離婚審判」という。)が、令和5年2月16日に確定し、申立人と相手方は離婚している。 

(2)当事者の生活及び収入状況等
 申立人は、実家で、長男及び二男とともに暮らしているが、現在は無職で収入はない。
 相手方は、以前は銀行に勤めて、令和3年の年収は678万6334円であったが、令和4年6月末に退職してその後は就職しておらず、現在無職で収入はない。出生地である大分県中津市で暮らしている。退職後に雇用保険受給の申請を行ったが、就労可能でないことを理由に支給を受けられなかった。

2 婚姻費用分担額等について
(1)夫婦は、互いに協力し扶助しなければならないところ(民法752条)、別居しあるいは婚姻関係が破綻している場合でも、影響を受けるものではなく、自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務を負う。

 そして、婚姻費用分担額は、各総収入に対応して税法等により算出された公租公課の標準的な割合並びに統計資料に基づいて推計された職業費及び特別経費の標準的割合から基礎収入を推計して、その合計額を世帯収入とみなし、これを生活保護基準等から導き出される標準的な生活費指数によって算出された生活費で按分して算定する方式を用いることが相当である(司法研究報告書「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」。以下、同報告書の算定方式を「改定標準算定方式」という。)。

(2)上記認定を基に、改定標準算定方式に基づいて、相手方が負担すべき婚姻費用の分担額を算定する。
ア 基礎収入額
(ア)申立人については、2歳未満の二男を養育していること等を考えると、収入は0として扱うのが相当である(申立人が実家の援助を受けていたとしても、直ちに婚姻費用の算定に影響を与えるものではない。)。


イ(相手方については、令和4年6月までは、令和3年の収入の41%にあたる278万2000円(千円未満切捨て。以下同じ。)と認めるのが相当である。
 相手方は、令和4年5月に抑うつ症状の診断を受け、同年6月末で退職しているものの、診断書及び相手方の主張によっても、申立人の別居以前には特に症状はなく、別居後の長男及び二男との面会交流等を巡って発症し悪化したというもので、受診及び退職の経緯、本件調停への対応状況等を考慮すると、相手方の症状が就労不可能な程に重篤なものかについては疑いが残る。

 相手方の提出する診断書には、就労は困難との記載があるものの、令和4年5月24日付け診断書は、初診当日に作成されたものであり、また、同年10月25日付け及び令和5年1月31日付け診断書もSDS(自己評価式抑うつ性尺度=患者が質問に答えていく心理検査)の数値の記載はあるが、症状の具体的内容及び程度、通院の頻度、投薬内容等は明らかではなく、直ちに就労不可能と判断できるものではない。

 申立人が具体的診療内容等を明らかにするよう求めるのに対して、相手方はこれ以上の立証を拒否していること、相手方が直ちに退職せずに休職の申請等を行うことで相応の収入が得られたことなどを考慮すると、令和4年7月以降も、婚姻費用の算定にあたっては少なくとも従前の収入の約4割である270万円の収入があるものと扱った上で、その43%にあたる116万1000円と認めるのが相当である。

イ 生活費指数に基づく婚姻費用分担額
 生活費指数について、申立人及び相手方を各100、長男及び二男を各62として、相手方の婚姻費用分担金を算定すると、相手方の婚姻費用分担金は、令和4年6月までは、月額16万円、同年7月以降は、月額6万6000円と算定され、これに本件に顕れた一切の事情を考慮して、相手方が負担すべき婚姻費用分担金は、上記算定結果のとおりと認めるのが相当である。
(計算式)
(令和4年6月まで)
2,782,000×(100+62+62)/(100+100+62+62)=約1,923,000
1,923,000/12=約160,000

(令和4年7月以降)
1,161,000×(100+62+62)/(100+100+62+62)=約802,000
802,000/12=約66,000

(3)上記1(1)で認定した事実に照らすと、本件審判において婚姻費用分担金を定めるべき始期は、申立人代理人が相手方に対して受任通知を送付した令和3年12月とするのが相当であり、また、離婚が確定した令和5年2月については、月額の半分である3万3000円とするのが相当であるから、令和5年2月までの婚姻費用分担金は、161万5000円となる。
(計算式)160,000×7+66,000×7+33,000=1,615,000
 なお、相手方の既払金についての主張は、別件離婚審判において撤回されている。

第3 結論
 以上によれば、相手方は、申立人に対し、161万5000円を直ちに支払うべきである。
 よって、主文のとおり審判する。
(裁判官 小田島靖人)
以上:3,125文字
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R 7-11-25(火):不貞慰謝料150万円と探偵費用15万円の支払を認めた地裁判決紹介
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〇被告は原告の配偶者であるCと不貞関係を持った等主張する原告が、被告に対し、不法行為に基づき慰謝料300万円・探偵費用約123万円・弁護士費用30万円の合計約453万円の損害賠償等の支払を求めました。

○これに対し、令和2年11月以降おそらく現在まで続く不貞行為により婚姻関係は破綻し離婚調停に至ったことから慰謝料150万円と探偵費用15万円・弁護士費用15万円の合計180万円の支払を認めた令和6年1月11日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

********************************************

主   文
1 被告は、原告に対し、180万円及びこれに対する令和5年7月29日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを5分し、その2を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、452万7853円及びこれに対する令和5年7月29日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 当事者の主張
1 原告の主張

(1)原告は、C(以下「C」という。)と平成22年6月12日に婚姻し、原告とCとの間には、平成24年○月に長女が、平成29年○○月に二女が出生した。

(2)被告は、Cに妻子があることを知りながら、遅くとも令和2年11月頃以降、Cと一緒にラブホテルに行くなどして交際を重ね、不貞関係を持った。仮に、Cが、被告に対し、自身に妻子はいないと発言していたとしても、Cの年齢、被告とCの会う曜日や時間に鑑みれば、かかる発言が虚偽であることは容易に推認でき、被告がかかる発言を誤信したとしても、重大な過失があることは明らかである。


(3)原告は、Cとの婚姻後16年以上にわたり、仕事をしながら家事育児の多くを担ってCを支え、家族4人での平穏な生活を築いてきたが、被告の不貞行為により原告とCとの婚姻関係は破綻し、原告は、令和3年8月に幼い子ども達を連れて別居し、Cとの間では、現在、離婚調停が係属している。これらにより原告が被った精神的苦痛は非常に大きく、その精神的損害を慰謝するに足りる金額は300万円を下らない。

 また、原告が、被告の氏名・住所を特定し、不貞の客観的証拠を確保するためには、探偵業者を使って、密会の様子を複数回確認する以外に方法がなかった。かかる被告の特定及び交際内容の確認に要した調査費用は、122万7853円であり、被告による不法行為と相当因果関係のある損害に当たる。
 さらに、本件訴訟の提起に要した弁護士費用のうち30万円は、被告による不法行為と相当因果関係のある損害に当たる。

(4)よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、452万7853円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2 被告の主張
 妻子がいることは一切知らなかった。本人からはいないと聞いていた。

第3 当裁判所の判断
1 証拠(甲1。以下、証拠番号については、特に明記しない限り、枝番号を含む。)によれば、第2の1(1)の事実が認められ、また、証拠(甲2ないし5)によれば、被告は、令和2年12月以降、Cと複数回にわたり肉体関係を持ったことが認められる。被告は、Cに妻子がいるとは知らなかった旨主張するものの、証拠(甲4)によれば、被告は、Cが会社員であることを認識した上で、多くの会社員が休日である土曜日及び日曜日をあえて避けて密会の日程調整をしていたことが認められるから、Cに妻子がいることを知っていたか、もしくは、少なくともこれを知らなかったことにつき過失があったと認められる。

 そして、本件で提出された全ての証拠に照らしても、被告との不貞関係が発覚するまでの間に、原告とCとの婚姻関係が破綻していたとは認められず、むしろ、被告との不貞行為により、原告とCとの婚姻関係は修復できない程度に破綻したと認められる。これに加え,原告とCとの婚姻期間や両者間に未成熟子がいることその他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、被告の不貞行為により原告に生じた精神的苦痛に対する慰謝料は、150万円と認めるのが相当である。

また、被告とCは、LINE上で密会の日程調整等をしており(甲4)、そのアカウント及び両者間のやり取りから、被告の特定や不貞行為の有力な証拠・情報を得ることはできず、探偵の調査以外にこれらの収集のための合理的な手段方法がなかったと認められることからすれば、原告が支出した探偵費用(甲7、8)の全てにつき上記収集のため必要であるとはいえないにしても、上記事情に鑑みれば、15万円の限度で相当因果関係を有する損害に当たると認められる。

さらに、原告は本件訴訟の追行を弁護士に委任しているところ、その弁護士費用については、15万円の限度で被告の不法行為と相当因果関係を有する損害に当たると認められる。

2 以上によれば、原告の請求は、180万円及びこれに対する訴状送達日(令和5年7月28日。当裁判所に顕著な事実。)の翌日以降の民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却した上で、主文のとおり判決する。 
東京地方裁判所民事第25部
裁判官 堀田喜公衣
以上:2,229文字
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R 7-11-24(月):存立危機事態等安全保障関連法(平和安全法制)の基礎の基礎備忘録
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○「令和7年11月7日予算委委員会岡田克也議員高市首相質疑紹介」の続きで、その質疑内容の存立危機事態についての備忘録です。

存立危機事態についての高市首相の答弁で「例えば台湾を完全に中国北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。まぁそれは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それからまぁ偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それは色んなケースが考えられると思いますよ。だけれども、それがやはり戦艦を使ってですね、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。」との回答が大問題となっています。

○「台湾有事に関する原口一博議員と岸田元首相の質問・答弁国会記録紹介」記載のとおり、「岸田政権は、台湾有事が日本有事となる可能性があると認識しているか。」との質問に対し、「いかなる事態が武力攻撃事態、存立危機事態又は重要影響事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府がその持ち得る全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。」と回答をはぐらかしています。ところが高市首相は、ズバリ「存立危機事態になり得る」として台湾有事が存立危機事態になる可能性を認め、中国を激怒させました。

○この存立危機事態について、言葉としては聞きますが、その法律根拠等は不勉強でした。以下、備忘録です。

存立危機事態とは、平成27年に成立した安全保障関連法(平和安全法制)で導入された概念で、集団的自衛権を行使し、自衛隊による武力行使を可能にするための具体的な要件の一つ
・「武力の行使の新三要件」を満たせば、必要最小限度の実力行使(集団的自衛権の行使)が可能となる
「新三要件」
①我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(存立危機事態の認定)
②この事態を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
第2条(定義)
四 存立危機事態 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。


○内閣官房HPでの「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答の一部を紹介します。私には言い訳にしか聞こえませんが、中国との軋轢を避けるためには問い21に対する回答のように抽象的に表現すべきだったのでしょう。

【問1】 集団的自衛権とは何か?
【答】 集団的自衛権とは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利です。しかし、政府としては、憲法がこのような活動の全てを許しているとは考えていません。今回の閣議決定は、あくまでも国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置を認めるだけです。他国の防衛それ自体を目的とするものではありません。

【問12】 憲法解釈を変え、平和主義を放棄するのか?
【答】 憲法の平和主義を、いささかも変えるものではありません。大量破壊兵器、弾道ミサイル、サイバー攻撃などの脅威等により、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中で「争いを未然に防ぎ、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために、いかにすべきか」が基点です。

【問21】 国会で議論されている「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」の有無は、どのような基準で判断するのか?
【答】 現実に発生した事態の個別・具体的な状況に即して、主に、攻撃国の意思・能力・事態の発生場所、その規模・態様・推移などの要素を総合的に考えて、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから、「新三要件」を満たすか否か客観的、合理的に判断します。

【問30】 米国から戦争への協力を要請された場合に、断れなくなるのではないか?
【答】 武力行使を目的として、イラク戦争や湾岸戦争のような戦闘に参加することは、これからもありません。我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がない場合、他に適当な手段がある場合、必要最小限の範囲を超える場合は、「新三要件」を満たさず、「できない」と答えるのは当然のことです。
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R 7-11-23(日):映画”スカーフェイス”を観て-アメリカの大豪邸に圧倒される
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○令和7年11月22日(土)は、フラメンコアンサンブル練習日でしたが、練習後夕食を取りながら、最近購入した4KUHDソフトで1983(昭和58年)製作映画「スカーフェイス」を鑑賞しました。映画コムでは「1980年、キューバからアメリカ・マイアミへ渡ったトニーはコカインの取り引きに携わる。その働きが認められたトニーはマフィア組織の配下に収まった後、ボスを殺害。無一文の身からマイアミ暗黒街の頂点へと上りつめ、さらにはボスの愛人エルビラも手に入れることに。しかしその栄光は長く続かなかった……。」と説明されています。

○「映画”アメリカン・ギャングスター”を観て-アメリカ無法地帯に驚く」で紹介した2007年製作映画「アメリカン・ギャングスター」は、ベトナム戦争当時の1960年代末から70年代初頭にかけての麻薬王国の映画です。この映画の24年も前の映画「スカーフェイス」は、映画「アメリカン・ギャングスター」の舞台の10数年後、1980年代のコカイン取引で財をなしマイアミ暗黒街のトップに上り詰め破滅するまでのストーリーで、いずれも麻薬取引を題材とする映画です。1940年生まれ名優アル・パチーノ氏が43歳時の作品ですが、名優と呼ばれる演技力の凄さがよく判る映画です。

映画「アメリカン・ギャングスター」は、実話に基づく映画で、60年代当時のアメリカ捜査官とマフィアや麻薬取引者との癒着ぶりが良く判りましたが、その10数年後もまだ麻薬取引者と麻薬捜査官の癒着ぶりが描かれアメリカでは、1980年代当時でも麻薬捜査官には問題があったようです。いずれの映画でも主人公は麻薬取引でボロ儲けして財をなしますが、アル・パチーノ氏演ずる映画「スカーフェイス」主人公トニーが財をなした後に居住する豪邸の凄さには圧倒されました。日本映画でも日本の豪邸が出てくる映画はありますが、アメリカの豪邸は日本とはまるで規模が違うと感じます。狭いマンション住まいの私には正に夢のまた夢のお城です。

○そのストーリーの最後で大豪邸で展開される凄まじい銃撃戦でのアル・パチーノ氏の狂気の演技は見ものでした。麻薬取引を扱った「アメリカン・ギャングスター」、映画「スカーフェイス」いずれも麻薬取引でのボロ儲けぶりが露わにされます。現在のアメリカではどうなっているか知りませんが、アメリカは麻薬王国とも感じました。カーター政権では厳しく麻薬撲滅運動に取り組むと語られていました。

○現在のトランプ大統領もコロンビアやベネズエラから麻薬流入を防ぐため麻薬搬送船舶を爆撃している報道が繰り返しなされています。現在のアメリカもまだ麻薬王国なのかも知れません。主人公が大量の麻薬を鼻から激しく吸うことを繰り返し、次第に精神を病み、支離滅裂な状況となって肉親や親友を失いたった1人に追い詰められる状況も描かれており、麻薬の恐ろしさを知らせてその撲滅を意図した映画なのかも知れません。
なお、スカーフェイスとは「顔に傷跡(scar)がある人(face)」という意味とのことです。

映画「スカーフェイス」劇場予告

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