○原告らが、弁護士である被告から事務作業等の委託を受け、受託した事務作業を履行し、その結果、原告らそれぞれに業務委託料が発生したと主張し、上記委託契約に係る業務委託料支払請求権に基づき、被告に対し、それぞれ同委託料として約3192万円の支払を求めました。
○これに対し、原告らが請求原因として主張する本件業務委託契約の内容には、弁護士法27条,72条本文前段によって禁止される非弁提携を目的としたもので、公序良俗違反の事実が現れているということになるから、請求原因は主張自体失当と言わざるを得ないとして、原告の請求を全て棄却した令和4年1月13日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。
○原告の請求原因は、本件業務委託契約においては,原告S社が,原告Y社が参加後は原告らが,被告の弁護士名義を借用し,被告事務所に従業員を派遣して,債務整理,自己破産等の依頼者の集客のための広告宣伝,依頼者との連絡,顧客管理,提出書面の作成など法律事務全般の処理等ほとんど全ての業務を行い,被告が,名義貸しの対価として売上から2割を得,原告らが残りの8割を業務委託手数料として受領することとされていたとしており、明白な弁護士法27条の禁止する非弁護士との提携です。
○東京にはこのような事案が多数あると思われますが、名義だけ貸して売上の2割を取得する弁護士の責任も問題になる事案と思われます。
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主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告らに対し,それぞれ,3192万3093円及びこれに対する令和3年1月14日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告らが,弁護士である被告から事務作業等の委託を受け,受託した事務作業を履行し,その結果,原告らそれぞれに3192万3093円の業務委託料が発生したと主張し,上記委託契約に係る業務委託料支払請求権に基づき,被告に対し,それぞれ3192万3093円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和3年1月14日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実
当裁判所に顕著な事実,当事者間に争いがない事実に加え,後掲証拠によれば,以下の事実が認められる。
(中略)
2 争点
(1)原告らが請求原因において主張する本件業務委託契約の内容が,弁護士法27条の禁止する非弁護士との提携に該当し,公序良俗に反するものであり,その結果,上記請求原因が,主張自体失当となるか。
(2)原告らが請求原因において主張する本件業務提携契約の内容が,暴利行為に該当し,公序良俗に反するものであり,その結果,上記請求原因が主張自体失当となるか。
(3)原告らが被告に対して本件業務委託契約に基づいて請求し得る業務委託料の金額。
第3 当事者の主張
1 請求原因とこれに関連する原告の主張
(1)請求原因
ア 本件業務委託契約においては,原告S社が,原告Y社が参加後は原告らが,被告の弁護士名義を借用し,被告事務所に従業員を派遣して,債務整理,自己破産等の依頼者の集客のための広告宣伝,依頼者との連絡,顧客管理,提出書面の作成など法律事務全般の処理等ほとんど全ての業務を行い,被告が,名義貸しの対価として売上から2割を得,原告らが残りの8割を業務委託手数料として受領することとされていた。
イ 原告らと被告は,本件業務委託契約の実態が,上記アのようなものであったことから,依頼者との間で契約が成立すれば,着手金等の報酬の支払が分割払であっても,その時点で着手金等の報酬が発生したものとして,これを原告らと被告との間で分配していた。
ウ 原告らは,本件業務委託契約に基づき,上記アの業務を提供し,本件業務委託契約が終了した令和2年6月までの間,多くの依頼者らから契約を取り付けた。ところが,同年7月以降令和5年12月までの間に上記依頼者らから入金されるはずの着手金等の報酬については,原告らと被告との間で精算がされていない。その入金予定額は,別紙「業務委託手数料一覧表」「入金予定額」欄記載のとおりであり,このうち原告らが本件業務委託契約に基づいて得ることのできる業務委託手数料は,別紙「業務委託手数料一覧表」「業務委託手数料」欄記載のとおりである。
エ 原告らが被告から支払を得ることのできる業務委託手数料の分配割合は等分であるから,原告らは被告に対し,別紙「業務委託手数料一覧表」「業務委託手数料」欄記載の業務委託手数料合計5852万9555円の各2分の1の支払を受ける権利を有する。
(2)請求原因に関連する原告らの主張
本件業務委託契約の内容は,弁護士法27条との関係で非常にグレーと言うほかないものであるが,法律すれすれ,もしくは乗り越えてしまうことを承知で,原告らを利用して,収入を増大させて利益を得ておきながら,金銭の支払の段になると、四の五の言ってこれを拒む被告の行為は甚だ信義に悖るものというほかない。
2 請求原因に対する被告の主張
(1)争点(1)及び争点(2)に関する主張
ア 本件業務委託契約における原告らの業務が原告ら主張のとおりのものであるとすれば,弁護士法27条が禁止する非弁提携そのものであり,本件業務委託契約は,公序良俗に反したものであったということになる。
イ また,原告らが主張するところによれば,本件業務委託契約における業務委託手数料の算定の基礎には,発生するかどうか未定の依頼者からの成功報酬が含まれることになるが,そのような性質のものを含めて算定した業務委託手数料の支払を強いる内容の契約は,暴利行為として公序良俗に違反するものである。
ウ 結局,原告らが請求原因として主張する本件業務委託契約の内容は,公序良俗に反するものであるから,原告らの主張する請求原因は主張自体失当である。
(2)争点(3)についての主張
原告らと被告との間で精算の対象となるのは,本件業務委託契約が終了した令和2年6月末までに発生した着手金及び成功報酬であり,これを基に算定した業務委託手数料については,東京法務局に供託済みである。
原告らが業務委託手数料の算定の基礎とする別紙「業務委託手数料」「入金予定額」欄記載の金額は,発生するかどうか未定の成功報酬にすぎず,業務委託手数料の算定の基礎となるものではない。
第4 当裁判所の判断
1 原告らが請求原因として主張するところからすると,本件業務委託契約の内容は,要するに,原告らが,弁護士又は弁護士法人でないにもかかわらず,報酬を得る目的で,弁護士である被告の名義を借りて,業として法律事務を扱い,個々の依頼者からの着手金や報酬等から名義を貸した被告に対する対価を控除した部分を自身の利益として取得するというものであり,端的に,弁護士法27条,72条本文前段によって禁止される非弁提携を目的としたものであったと言わざるを得ない(原告らの主張する表現を借りれば,弁護士法27条との関係は,グレーとか,すれすれとかいう程度のものではなく,それを乗り越えたものである。)。
また,弁護士法72条が弁護士又は弁護士法人でない者が法律事務を取扱い又はこれを斡旋することを刑罰をもって禁止している趣旨が,弁護士資格を有せず,何らの規律にも服さない者が他人の法律事件に介入することで当事者や関係人の利益を損ね,法律生活の公正円滑な営みを妨げ,ひいては法律秩序を害する結果となることを防止する点にあり,弁護士法27条の趣旨が,弁護士法72条ないし74条の規定に違反する者の行為を,直接又は間接に助長する弁護士の行為を禁止し,上記各条の違反行為を防止しようとする点にあることからすると,弁護士法27条,72条は,いずれも公益的規定と解され,これに違反する事項を目的とする契約は,公の秩序に反する事項を内容とするもので,民法90条によって無効となると解するのが相当である。
そうすると,原告らが請求原因として主張する本件業務委託契約の内容には,それ自体に公序良俗違反の事実が現れているということになるから,請求原因は主張自体失当と言わざるを得ない。
2 原告らは,被告が原告らが請求原因として主張する本件業務委託契約の内容が公序良俗に反すると主張することが信義に悖るとの主張をするが,仮に請求原因事実が認められた場合には,原告らも非弁行為によって多額の利益を得ていたことになるのであるから,被告の主張が信義に悖るなどと評価することは相当ではないし,弁護士法27条,72条が維持しようとする法的秩序の公益性の高さに鑑みれば,被告の主張の有無や内容にかかわらず,原告らが請求原因として主張する本件業務委託契約の効力は否定されるべき筋合いのものである。したがって,原告らの主張は失当である。
3 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由がない。
よって,原告らの請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第49部 裁判官 渡邉充昭
別紙 業務委託手数料一覧表
以上:3,792文字
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