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不法行為損害賠償債務遅延損害金民法405条適用否認高裁判決紹介

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令和 4年 8月26日(金):初稿
○「不法行為損害賠償債務遅延損害金民法405条適用肯定地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和2年5月20日東京高裁判決(LEX/DB)の民法第405条の適用に関する部分を紹介します。

○一審は、理由の説明なく当然のごとく民法第405条を適用しましたが、控訴審判決は、民法405条の趣旨は,金銭債権の利息(遅延損害金)を支払わない怠慢な債務者を責め,債権者を保護することにあり、不法行為に基づく損害賠償債権は債務不履行に基づくものと異なり履行すべき債権の額が債務者にとって必ずしも明らかとはいえないことに加え,不法行為に基づく損害賠償債権については催告なしに不法行為の時から遅延損害金が発生し相応の債務者保護が図られていることも併せ考慮すると,第1審原告の不法行為に基づく損害賠償債権については民法405条の適用(類推適用)があると解することはできないとしています。

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主   文
1 第1審被告らの控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1)第1審被告らは,第1審原告に対し,連帯して,3億9998万5814円及びこれに対する平成25年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)第1審原告のその余の請求をいずれも棄却する。
(3)上記(1)項は,仮に執行することができる。
2 第1審原告の控訴をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を第1審原告の負担とし,その余を第1審被告らの負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 第1審被告らの控訴の趣旨
(1)原判決中第1審被告ら敗訴部分を取り消す。
(2)上記部分につき,第1審原告の請求をいずれも棄却する。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも第1審原告の負担とする。

2 第1審原告の控訴の趣旨
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)第1審被告らは,第1審原告に対し,連帯して,7億8543万2784円並びに内金7億2063万8352円に対する平成27年6月26日から,内金6479万4432円に対する平成25年3月28日から各支払済みまで5分の割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも第1審被告らの負担とする。
(4)上記(2)項につき仮執行宣言


第2 事案の概要等
1 事案の概要


         (中略)

3 当審における第1審被告らの主張

         (中略)

(7)原判決は,不法行為に基づく損害賠償金について発生する遅延損害金を民法405条により損害賠償金の元本に組み入れているが,同条は利息について1年分以上の延滞があった場合に催告を要件とした上で元本組入れを認めることにより,利息を支払わない怠慢な債務者を責め,債権者を保護するものであるところ,不法行為に基づく損害賠償金については催告を経ることなく不法行為時から直ちに遅延損害金が発生するからこれを重利とすることは債務者の負担を著しく増大させるし,損害賠償の額は裁判所の公権的判断があるまで確定的には分からないものが大部分であるから,不法行為に基づく損害賠償請求権の遅延損害金については民法405条の適用ないし類推適用は否定されるべきである。

         (中略)

4 当審における第1審原告の主張

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実


         (中略)

3 争点(5)(損害の発生及び額)について

         (中略)

(6)第1審原告の弁護士費用については,上記(5)の第1審原告の損害額及び本件に現れた諸般の事情を考慮し,2600万円を本件新株発行と相当因果関係がある損害であるものと認める。 

(7)なお,前記前提事実(8)のとおり,第1審原告は,平成27年6月25日,第1審被告らに対し,弁護士費用を除く損害賠償請求権につき発生した遅延損害金を元本に組み入れる意思表示をしているが,民法405条の趣旨は,金銭債権の利息(遅延損害金)を支払わない怠慢な債務者を責め,債権者を保護することにあるところ,不法行為に基づく損害賠償債権は債務不履行に基づくものと異なり履行すべき債権の額が債務者にとって必ずしも明らかとはいえないことに加え,不法行為に基づく損害賠償債権については催告なしに不法行為の時から遅延損害金が発生すると解されており(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁),相応の債務者保護が図られていることも併せ考慮すると,第1審原告の不法行為に基づく損害賠償債権については民法405条の適用(類推適用)があると解することはできないから,第1審原告の本件新株発行(不法行為)に基づく損害賠償金の遅延損害金を元本に組み入れるべきである旨の主張を採用することはできない(第1審被告らの前記第2の3(7)の主張には理由がある。)

(8)したがって,第1審被告Aは,第1審原告に対し,民法709条に基づき,損害賠償金3億9998万5814円及びこれに対する平成25年3月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負い,第1審被告会社は,第1審原告に対し,会社法350条に基づき,これと同額の支払義務を負うことになる。

4 第1審被告らの損害賠償責任について
 以上によると,第1審被告Aは,第1審被告会社の代表取締役として行った違法な本件新株発行により,第1審原告に対して第1審原告保有株式の経済的価値の希釈化という前記の損害を与えたものであるから,不法行為(民法709条)に基づく責任を負い(第1審被告Aは,前記のとおり,会社法429条1項の責任も負うことになるが,第1審原告が本件新株発行の日からの遅延損害金を求めているため,不法行為に基づく請求を認容することとする。),第1審被告会社も,第1審原告に対し,会社法350条に基づき,本件新株発行による損害を賠償する責任を負い,第1審被告Aの損害賠償責任とは不真正連帯の関係になる。

5 結論
 よって,第1審原告の請求は,第1審被告らに対し損害賠償金3億9998万5814円及びこれに対する平成25年3月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を命ずる限度で理由があり,その余は理由がないから,第1審被告らの控訴に基づき原判決を上記のとおり変更し,第1審原告の控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第17民事部 裁判長裁判官 川神裕 裁判官武藤真紀子,同中辻雄一朗は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 川神裕

以上:2,749文字

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