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共有物分割訴訟で全面的価格賠償による分割を認めた地裁判決紹介2

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令和 4年 9月22日(木):初稿
○「共有物分割訴訟で全面的価格賠償による分割を認めた地裁判決紹介」の続きで、この判決は、共有物分割方法として、被告の単独所有として、被告から原告に対し賠償金の支払を求める事案でした。

○今回は、逆に、原告が被告に対し、共有物分割方法として、原告の単独所有として、被告に対し賠償金の支払と引換に被告の共有持分権移転登記手続を認めた令和3年2月26日東京地裁判決(LEX/DB)を紹介します。

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主   文
1 別紙物件目録記載の土地を次のとおり分割する。
(1)別紙物件目録記載の土地を原告の単独所有とする。
(2)原告は,被告に対し,2100万円を支払う。
2 被告は,原告に対し,原告から前項(2)の金員の支払を受けるのと引換えに,別紙物件目録記載の土地の共有持分9140分の3305について,共有物分割を原因とする共有持分移転登記手続をせよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
(令和2年12月15日付け訴えの変更申立書による変更後のもの)
 主文同旨

第2 事案の概要
1 本件は,原告が,別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を原告と共に共有する被告との間で,全面的価格賠償の方法による共有物分割を求めるとともに,被告に対し,賠償金の支払と引換えに被告の共有持分の移転登記手続を求める事案である。

2 原告は,請求原因として別紙訴状写しのとおり主張した。

3 これに対し,被告は,本件土地の面積が違うと主張するほか,原告の前主で本件土地を共有していた他の相続人との間で種々の紛争があったこと,これら相続人との間の遺産分割に関する家庭裁判所の手続において不備があったことなどを主張し,共有関係の解消をするとしても,家庭裁判所の手続における問題を解決してからにすべきであるなどと主張する。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 証拠(甲1~3)及び弁論の全趣旨によれば,(1)原告は不動産の売買等を目的とする株式会社であること,(2)本件土地については,Cの所有であったが,平成9年3月12日に同人につき相続が発生し,被告のほか,D,E,Fの4名の相続人が相続を原因として共有するようになり,その後,被告以外の相続人(ただし,D共有持分については同人を相続したG)が,いずれも令和2年10月21日に原告に対し各自の共有持分を売却した結果,現在は原告と被告との共有となったこと,(3)現在の原告の共有持分は9140分の5835,被告の共有持分は9145分の3305であること,(4)原告と被告との間で本件土地の分割につき協議が整わないことがそれぞれ認められる(なお,被告は,本件土地の面積が違うと主張するが,不動産登記記録上,本件土地は平成15年12月2日に××番×から分筆され,分筆後の地積が91.40平方メートルであることが認められる。)。

2 共有物分割請求の可否について
 共有者はいつでも共有物の分割を請求することができ(民法256条1項本文),共有物の分割について共有者間に協議が整わないときは,その分割を裁判所に請求することができる(民法258条1項)。なお,本件土地は,もとは相続を原因とする親族間の遺産共有状態にあったことがうかがわれるが,被告以外の相続人がすべて共有持分を第三者である原告に譲渡し,共有関係から離脱したため,共有関係の解消は共有物分割の方法によることになる。したがって,原告は本件土地につき共有物の分割を求めることができる。

3 分割方法について
(1)共有物分割の申立てを受けた裁判所は,当該共有物の性質及び形状,共有関係の発生原因,共有者の数及び持分の割合,共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値,分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し,当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ,かつ,その価格が適正に評価され,当該共有物を取得する者に支払能力があって,他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは,共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法,すなわち,全面的価格賠償の方法による分割をすることも許される(最高裁平成8年10月31日第一小法廷判決・民集50巻9号2563頁)。

(2)これを本件についてみると,前記1でみたとおり,本件土地は,もとは相続を原因とする親族間の遺産共有状態にあったことがうかがわれるが,被告以外の相続人が共有持分を原告に譲渡した結果,現在は,不動産業者である原告と被告との共有となっており,原告の持分割合は全体の63.8%に及んでいる。本件土地の地積は91.40平方メートルと比較的小規模であり,現物分割による場合,分割後の土地は狭小になり,価値が下がることが見込まれる。

また,本件土地は二方向が道路に接する角地であること(甲4)によりその価値を高めているが,現物分割の場合に分割後のいずれの土地についても二方向の接道を維持することは困難であり,土地の価値はおのずと下落することが見込まれる。これらの事情に加え,被告は平成9年3月12日に発生した相続により本件土地の共有持分を取得したが,その後,本件土地を使用収益しておらず,本件訴訟においても,前記第2の3のとおり主張するものの,分割方法については特段の意見を述べていないこと(弁論の全趣旨),原告は不動産業を営む株式会社で,賠償金の支払を行うに十分な支払能力を有すると認められること(甲5)なども考慮すると,本件土地の価格が適正に評価される限り,本件土地を原告の単独所有とし,被告にはその持分の価格を取得させることとしても,共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるというべきである。

(3)不動産鑑定士Hの不動産鑑定評価(甲4)によれば,本件土地の価額は5801万5000円であり,被告の共有持分(9140分の3305)に対応するのは2100万円であると評価されるところ,同鑑定評価は,評価の手法及び内容に照らし適正なものと認められる。

4 小括
 以上によれば,本件土地の分割については,原告の単独所有とした上で,原告から被告に対し持分の賠償として2100万円を支払うよう定めるのが相当である。また,かかる共有物分割を前提として,賠償金2100万円の支払と引換えに,被告から原告に共有持分の移転登記手続をするよう求める原告の請求には理由がある。

5 被告の主張について
 被告は,原告の前主である本件土地の共有者(共同相続人)との間で種々の紛争があったこと,遺産分割に関する家庭裁判所における手続において不備があったことなどを主張する。

しかし,前記2のとおり,共有者はいつでも共有物の分割を請求することができるのであり(民法256条1項本文),被告の主張する事情によっても,原告の共有物分割請求が妨げられるものではない。また,被告以外の相続人が既に本件土地の共有持分を第三者である原告に譲渡して共有関係から離脱した本件で,原告と被告との間の共有物分割を行うに当たり,原告の前主である共同相続人に関する事情が影響するものとはいえない。その他,被告のるる主張するところを踏まえても,前記結論は左右されない。

第4 結論
 よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第25部 裁判官 石田佳世子
以上:3,109文字

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