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脳梗塞既往症による後遺障害発症後のむち打ち症事例5

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平成21年 9月27日(日):初稿
○本件の最大の争点は,Xさんの後遺障害の有無とその程度でした。保険会社側は、顧問医の意見書を元に本件事故による後遺障害は存在しないことと執拗に主張しました。現在の症状は、あくまで3年前に発症した脳梗塞によるものであり,本件交通事故とは無関係であるとの主張です。しかし、判決は、保険会社顧問医の意見を一蹴し、ほぼXさんの主張通り認定してくれました。そのポイントは後日説明しますが,先ずは後遺障害の有無と程度についての判決文を紹介します。

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争点(3)について
(1)上記基礎となる事実に証拠(甲7,乙3,24ないし28,30,X本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
ア Xには,平成11年3月に脳梗塞で倒れ,また,平成15年初めころから,右肩上部が痛み,首から右肩にかけてしびれが走るようになった。この症状は,上記の脳梗塞とは関係がなかったが,第6,7頚椎の椎間板の膨隆があり,それを原因として頚椎症性神経根症が発症し,両肩から肩甲骨の痛み,南側の上肢から前腕,手指にかけての痛みとしびれが発症していた。

 Xは,これらについて,本件事故以前に継続して治療を受け,筋力低下は正常に回復し,頚部,肩甲上部各所の痛み等が残っていたが,「局部に神経症状を残す」程度に回復していた。

イ Xは,本件事故により,腰椎捻挫,頚椎捻挫,胸背部挫傷等の傷害を受けた。

ウ Xは,本件事故後,右肩上部の痛みが以前よりも激しくなり,首から右肩にかけてのしびれもひどくなった。そのため,平成16年7月16日から同年8月20日までB病院に入院し,退院後も,症状固定の診断を受けた平成17年12月13 日までの間に,B病院に79日間,C整形外科に239日間,D整形外科に35日間通院した。

 B病院の入院は,Xの希望もあったが,最終的には主治医の判断で行われたものであり,その後C整形外科に通院したのは,B病院にレーザー治療,低周波治療等のリハビリ設備がないため,B病院の医師からの紹介で通院したものである。

エ このような治療により,本件事故後に生じた上肢痛,しびれは軽快したが,後頚部痛,両側肩甲上部痛は,後記オの症状固定の診断後も残っており,「頑固な神経症状を残す」程度に悪化した。

オ B病院のG医師は,平成17年12月13 日,Xには,類推捻挫,腰背部挫傷の傷病があり,頚部痛,南側肩甲上部痛,右上肢痛の症状が認められ,同日症状固定した旨,Xには,左片麻庫,頚部神経根症,頚部痛の既存障害があり,上記の症状は,本件事故以前は落ち着いていたが,本件事故により再燃したと思われる旨の後遺障害診断書(乙24)を作成した。

力 Xは,平成18年3月30日,Xには,本件事故以前から中枢神経系の障害に伴う左片麻庫及び頚部神経根症に伴う頚部痛が認められており,本件事故後の現存する神経系統の機能障害として,本件事故の傷害による頚部痛,両側肩甲上部痛,右上肢痛は所見されるものの,画像上,頚椎に脱臼,骨折等の器質的損傷は認められず,頭椎捻挫後の頚部痛,両側肩甲上部痛,右上肢痛の裏付けとなる上腕二頭筋反射,上腕三頭筋反射,上肢筋力等の神経学的異常は所見されておらず,当該神経症状が加わった結果,本件事故前における神経系統の障害が加重したものと捉えうる所見に乏しいとして,後遺障害非該当の認定を受けた(乙2 5)。

キ Xは,住宅のリフォーム関係の設計やプランニング等を行う会社を経営していたが,平成11年3月に脳梗塞で倒れた後,一時期仕事を休んだが,同年中には徐々に仕事を再開し,本件事故前には,脳梗塞で倒れる以前の8割程度の仕事をする程度に回復していたが,本件事故の後は全く仕事をしていない。

(2)以上認定の事実によれば,Xは,本件事故により,腰椎捻挫,頚椎捻挫,胸背部挫傷等の傷害を負い,その後の治療を経て,平成17年12月13日症状固定し,頚部痛,両側肩甲上部痛の症状の後遺障害が残り,その後遺障害の程度は,「頑固な神経症状を残す」程度のものと認められる。

 また,Xには,上記認定のとおり,本件事故以前から,第6,7頚椎の椎間板の膨隆を原因とする頭樵症性神経根症による両肩から肩甲骨の痛み,南側の上肢から前腕,手指にかけての痛みとしびれが発症しており,この症状は,本件事故前には,「局部に神経症状を残す」程度に回復していたものと認められ,本件事故により,上記の程度に加重したものと認められる。

 なお,Xの後遺障害については,上記のとおり,本件事故前の既存の障害を加重したものと認められ,加重の程度の判断においては既存の障害の程度を考慮すべきものであるから,それに加えて,既存の障害を素因とみて減額をすべきものではない。

(3)上記第2の1(3)イのとおり,Xは,本件事故前における神経系統の障害が加重したものと捉えうる所見に乏しいとして,後遺障害非該当の認定を受けたものである。しかし,Xを診察し治療に当たっているG医師らの回答書(甲7,乙26,30)によれば,Xには,画像所見上本件事故による骨傷や変性所見がみられないとしても,肩甲上部痛につき,本件事故以前よりも悪化した症状があることが認められるというべきである。

(4)また,甲13(H医師の意見書)には,Xの症状と所見の推移から,新たな障害は発生しておらず,後遺障害はないと考えられる旨の記載がある。しかし,そのうち,末梢神経障害には本件事故による症状の悪化がみられないとする点については,乙26,30(いずれもG医師の回答書)に照らして採用できず,局所損傷があったとしても軟部組織に限られるとする部分については,軟部組織は椎間板や神経も含むものであるところ(乙30),甲13の指摘する軟部組織が何を意味するのか明らかとはいい難いことに照らして採用できない。また,甲13は,Xに本件事故以前から頚髄症があったことを前提としているが,Xには頚髄症はみられなかったにもかかわらず(乙30),その存在を前提としており,頚髄症と神経根症を混同している疑いもあるものである。以上によれば,甲13の上記記載は,採用することができないというべきである。


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