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他車運転危険補償特約に基づく保険金請求を棄却した高裁判決紹介

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令和 5年 6月 9日(金):初稿
○「他車運転危険補償特約に基づく保険金請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和4年10月13日東京高裁判決(判時2550号30頁)全文を紹介します。

○他車運転特約とは、「記名被保険者、もしくはその家族が所有している車以外の車を臨時に借りて運転し、事故を起こした場合に、その車にかけている自動車保険ではなく自分の自動車保険を使って保険金を支払われる特約で、自動車を貸した友人には迷惑をかけることなく、自分の自動車保険で事故の対応ができるわけです。」と解説されています。

○本件では、事故車両を貸した訴外Aもその車両のため任意保険に加入しているはずで、その保険を適用することも可能ですが、そうすると訴外Aの次年度保険料がアップして訴外Aに迷惑をかけることになるので、他車運転危険補償特約を使いたかったと思われます。

○東京海上の他車運転危険補償特約は以下のように説明されています。
記名被保険者やそのご家族等が一時的に借りたお車を運転中(駐車または停車中を除きます。)の事故でも、借りたお車の保険に優先して、ご契約のお車の保険からそのご契約内容に応じて保険金をお支払いします。
借りたお車が、主な自家用車の場合に保険金をお支払いします。ただし、借りたお車には以下のお車を含みません。
●記名被保険者、記名被保険者の配偶者またはそれらの方の同居の親族が所有または常時使用するお車
●別居の未婚の子が所有または常時使用するお車を自ら運転中の場合、そのお車


○本件では、「常時使用するお車」かどうかが争いになりましたが、修理のための代車であれば、常時使用車に該当しないところ、本件は、「証拠から認定できる経過に照らせば、本件車両は控訴人が自動車を購入するまでとして訴外Aから個人的に借りたものであり、契約車両の修理を依頼してその期間の代車として借りたとは認められない」と認定されました。

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主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、41万1693円及びこれに対する令和2年1月10日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第1、2番とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要(略語は、新たに定義しない限り原判決の例による。)
1 本件は、被控訴人と自動車保険契約を締結していた控訴人が、保険契約車両と異なる自動車を運転中に交通事故を起こし、それにより生じた損害(控訴人の修理費用23万円、被害者の修理費用11万8333円及び代車費用6万3360円の合計41万1693円)について、上記保険契約の他車運転危険補償特約に基づき、保険金41万1693円及びこれに対する保険金請求日の翌日である令和2年1月10日から支払済みまで商事法定利率年6%(平成29年法律第45号による削除前の商法514条)の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 原審は、控訴人が事故当時運転していた自動車は、上記特約で対象として定める「常時使用する自動車以外」の自動車に当たらないとして、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
 控訴人は、これを不服として本件控訴を提起した。

2 争いのない事実等、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決2頁4行目から同6頁4行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。
(1)原判決2頁8行目の「本件契約」を「総合自動車保険契約(以下「本件契約」という。)」に,同24行目の「本件車両」を「控訴人運転車両(以下「本件車両」という。)」に、同3頁2行目の「本件事故」を「交通事故の発生(以下「本件事故」という。)」にそれぞれ改める。
(2)同2頁26行目の「という。」の次に「経営者は訴外A」を加える。 
(3)同3頁1行目の「番号略》)」の次に「、所有者は訴外A」を、同行目の「《証拠略》」の次に「《証拠略》」をそれぞれ加える。
(4)同頁16行目の「(山梨県甲斐市《番地等略》)」を削る。
(5)同4頁13行目の「《略》」を削る。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人が運転して事故を起こした本件車両は、本件契約の他車運転危険補償特約にいう「常時使用する自動車以外の自動車」に当たらないと判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは原判決の「第3 争点に対する判断」の1及び2(原判決6頁6行目から同11頁16行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。

(1)原判決6頁9行目の「されていた」を「されており、契約車両の初年度登録は平成19年1月であり、本件契約当時の走行距離は21万kmを超えていた」加える。

(2)同9頁1行目の「一定の」から同6行目末尾までを「被保険者が、たまたま被保険自動車に代えて他の自動車を運転した場合に、その使用が被保険自動車の使用と同一視できるようなもので、事故発生の危険性が被保険自動車について想定された危険の範囲内にとどまるような場合について一定の合理的範囲に補償の対象を拡張する趣旨と解されるところ、被契約者が常時使用する自動車は上記の範囲を超えるために同特約の対象外とされていると解される。」に改める。

(3)同頁10行目及び同10頁3行目の「逸脱した」をそれぞれ「超える」に改める。

(4)同9頁14行目の「その借用期間」の前に「訴外Aは「確認書」において、板金修理の仕事上の貸借ではない等と述べており、」を加える。

(5)同頁24行目の「訴外A」の前に「控訴人が、」を、同頁25行目の冒頭に「控訴人が訴外Aに修理等を依頼して代車として借りたものではなく、別の自動車を購入するまでの間などとして個人的に借りたもので、」をそれぞれ加える。

(6)同10頁11行目の「確かに、」の次に「原審において、」を加える。

(7)同頁18行目の「矛盾しており、」から19行目末尾までを「矛盾している。」に改める。

(8)同頁25行目の「考え難いこと」の次に「、訴外Aも確認書に署名押印後に付け加えられた部分があると明確には主張しないこと」を加える。

(9)同11頁5行目の「しかし、」の次に「調査会社の調査時の訴外Aからの聞き取り内容及び控訴人が事故時の保険会社の担当者や調査会社に述べたこと等と齟齬することに加え、」を加える。

(10)同頁13行目末尾に改行の上、次のとおり加える。
 「以上のとおり、本件車両は、控訴人が購入する別の自動車が見つかるまでとして期限等も定めず、訴外Aから仕事と別に借り受けたものであり、一時的な使用が予定されていたとは認められない。
(4)控訴人は、当審において、本件車両を借りる際に、自動車を購入する話はあったが、実際に購入してはいないと主張するが、それは自動車の購入の話は本件車両の貸借とは無関係で、本件車両は契約車両の修理を依頼してその代車として借りたものであるから、一時的に借りたものであると主張するものと解される。

しかし、補正の上引用する原判決に説示のとおり、証拠から認定できる経過に照らせば、本件車両は控訴人が自動車を購入するまでとして訴外Aから個人的に借りたものであり、契約車両の修理を依頼してその期間の代車として借りたとは認められない。上記の経過からすれば、本件車両を借りた後に控訴人がBショップに契約車両の修理を依頼したとみられるところ、上記修理依頼により本件車両の貸借の性質が変わるということはできない。」

(11)同14行目の「(4)」を「(5)」に改める。

2 よって、控訴人の本件控訴は、理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 三角比呂 裁判官 岡野典章 知野明)
以上:3,233文字

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