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販売会社名義では自動車所有権留保特約の対抗要件にならず

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平成23年 1月11日(火):初稿
○「個人再生手続での所有権留保付き自動車ローンの扱い」で、「クレジットで購入したマイカーは、所有権留保付き自動車ローンが普通です。この自動車ローンは別除権付き債権となり、個人再生となれば当初の約定通りの返済をしないことになりますから、所有権留保という別除権を実行されて自動車を引き上げられるのが原則です(民事再生法第53条)。」と解説しておりました。

○この所有権留保付自動車ローンでは、通常、登録上の自動車所有者は、クレジット会社ではなく販売会社名義になっています。例えばAさんが、B自動車販売会社から代金150万円の自動車を購入し、Cクレジット会社との間で立替払契約を締結し手数料30万円を加えた合計金180万円を毎月3万円の60回分割支払の約定をし、自動車所有権はCに留保して、登録名義はBのままにしていることがよくあります。私はこの場合でもCの所有権留保者としての権利が対抗できると思っていました。

○ところが平成22年6月4日最高裁判決は、個人再生手続では、Aから委託されてBに売買代金の立替払をしたCが、A及びBとの間で、登録上Bに留保されている自動車の所有権につき、これが、立替払によりCに移転し、Aが立替金及び手数料の支払債務を完済するまでC留保される旨の合意をしていた場合に、Aに係る再生手続が開始した時点で自動車につき立替払をしたCを所有者とする登録がされていない限り、Bを所有者とする登録がされていても、立替払をしたCに留保した所有権を別除権として行使することは許されないとしました。

○この最高裁の理屈ではAがこのクレジット債務残金150万円の時点で個人再生手続をとった場合、Cは別除権者にはならないので自動車所有権はAにあることになり、この債務は一般再生債権に過ぎずまた自動車返還義務もなく使用継続可能で、例えば150万円の内2割相当額の30万円を3年乃至5年の分割支払で完済すればAのCに対するクレジット債務は消滅し、Aは登録名義者Bに対し、所有名義移転請求が出来ることになります。

果たしてこの考え方で良いのかどうかちと疑問が残り自信がありませんが、以下、平成22年6月4日最高裁判決全文を紹介します。

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主文 
 原判決を破棄する。 
 被上告人の控訴を棄却する。 
 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 
 
理由 

 上告代理人竹間寛ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除された部分は除く。)について 
1 本件は,上告人がA(以下「販売会社」という。)から購入した原判決別紙物件目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)の代金を立替払した被上告人が,その後,上告人が小規模個人再生による再生手続開始の決定を受けたことから,本件自動車について留保した所有権に基づき,別除権の行使としてその引渡しを求める事案である。上告人は,本件自動車の所有者として登録されているのは販売会社であり,被上告人は,本件自動車について留保した所有権につき登録を得ていないから,上記別除権の行使は許されないとして争っている。 

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 
(1) 上告人,販売会社及び被上告人は,平成18年3月29日,三者間において,上告人が,販売会社から本件自動車を買い受けるとともに,売買代金から下取車の価格を控除した残額(以下「本件残代金」という。)を自己に代わって販売会社に立替払することを被上告人に委託すること,本件自動車の所有権が上告人に対する債権の担保を目的として留保されることなどを内容とする契約(以下「本件三者契約」という。)を締結し,同契約において,要旨次のとおり合意した。 

ア 上告人は,被上告人に対し,本件残代金相当額に手数料額を加算した金員を分割して支払う(以下,この支払債務を「本件立替金等債務」といい,これに対応する債権を「本件立替金等債権」という。)。 

イ 上告人は,本件自動車の登録名義のいかんを問わず(登録名義が販売会社となっている場合を含む。),販売会社に留保されている本件自動車の所有権が,被上告人が販売会社に本件残代金を立替払することにより被上告人に移転し,上告人が本件立替金等債務を完済するまで被上告人に留保されることを承諾する。 

ウ 上告人は,支払を停止したときは,本件立替金等債務について期限の利益を失う。 

エ 上告人は,期限の利益を失ったときは,被上告人に対する債務の支払のため,直ちに本件自動車を被上告人に引き渡す。 

オ 被上告人は,上記エにより引渡しを受けた本件自動車について,その評価額をもって,本件立替金等債務に充当することができる。 

(2) 本件自動車について,平成18年3月31日,所有者を販売会社,使用者を上告人とする新規登録がされた。 

(3) 被上告人は,平成18年4月14日,販売会社に対し,本件三者契約に基づき,本件残代金を立替払した。 

(4) 上告人は,平成18年12月25日,本件立替金等債務について支払を停止し期限の利益を喪失した。 

(5) 上告人は,平成19年5月23日,小規模個人再生による再生手続開始の決定を受けた。 

3 原審は,次のとおり判断して,被上告人の請求を認容した。 
 被上告人が販売会社に立替払することにより,弁済による代位が生ずる結果,販売会社が本件残代金債権を担保するために留保していた所有権は,販売会社の上告人に対する本件残代金債権と共に法律上当然に被上告人に移転するのであり,本件三者契約はそのことを確認したものであって,被上告人が立替払によって取得した上記の留保所有権を主張するについては,販売会社において対抗要件を具備している以上,自らの取得について対抗要件を具備することを要しないというべきである。 

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 
 前記事実関係によれば,本件三者契約は,販売会社において留保していた所有権が代位により被上告人に移転することを確認したものではなく,被上告人が,本件立替金等債権を担保するために,販売会社から本件自動車の所有権の移転を受け,これを留保することを合意したものと解するのが相当であり,被上告人が別除権として行使し得るのは,本件立替金等債権を担保するために留保された上記所有権であると解すべきである。

すなわち,被上告人は,本件三者契約により,上告人に対して本件残代金相当額にとどまらず手数料額をも含む本件立替金等債権を取得するところ,同契約においては,本件立替金等債務が完済されるまで本件自動車の所有権が被上告人に留保されることや,上告人が本件立替金等債務につき期限の利益を失い,本件自動車を被上告人に引き渡したときは,被上告人は,その評価額をもって,本件立替金等債務に充当することが合意されているのであって,被上告人が販売会社から移転を受けて留保する所有権が,本件立替金等債権を担保するためのものであることは明らかである。立替払の結果,販売会社が留保していた所有権が代位により被上告人に移転するというのみでは,本件残代金相当額の限度で債権が担保されるにすぎないことになり,本件三者契約における当事者の合理的意思に反するものといわざるを得ない。 

 そして,再生手続が開始した場合において再生債務者の財産について特定の担保権を有する者の別除権の行使が認められるためには,個別の権利行使が禁止される一般債権者と再生手続によらないで別除権を行使することができる債権者との衡平を図るなどの趣旨から,原則として再生手続開始の時点で当該特定の担保権につき登記,登録等を具備している必要があるのであって(民事再生法45条参照),本件自動車につき,再生手続開始の時点で被上告人を所有者とする登録がされていない限り,販売会社を所有者とする登録がされていても,被上告人が,本件立替金等債権を担保するために本件三者契約に基づき留保した所有権を別除権として行使することは許されない。 

5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人の請求は理由がなく,これを棄却した第1審判決は結論において是認することができるから,被上告人の控訴を棄却することとする。 
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 
 (裁判長裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美) 
以上:3,538文字

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