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夫と42年間不貞関係を継続した女性への損害賠償請求例5

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平成20年 1月15日(火):初稿
「夫と42年間不貞関係を継続した女性への損害賠償請求例1」の話を続けます。原告Xは夫Cと42年間不貞関係を続けCから退職金内金1000万円を含め3000万円以上の贈与を受けていた被告Yに対し5000万円の損害賠償請求の訴えを提起しましたが、300万円しか請求は認められず、弁護士費用等を考慮すれば実質は敗訴に近い結果に終わりました。

○その判決での理由は以下の通りでした。
ところで、同種事案、すなわち、不貞の被害者となった配偶者が不貞行為の第三者に対する損害賠償請求を認める場合の賠償金額を算定するに際しては、次のことを留意する必要がある。
 すなわち、貞操義務(民法752条)は、婚姻の基本であるが、それは、本来、夫婦間の問題であり、価値観の多様化した今日にあっては、性という勝れて私的な事柄については法の介入をできるだけ抑制して、個人の判断、決定に任せるべきであるし、その貞操義務は婚姻契約によって生じ、一方配偶者の他方配偶者に対する一種の債務不履行の問題であって、貞操請求権は対人的、相対的な性格を有し、夫婦の一方の他方に対する貞操請求権を侵害するか否かは、他方の自由意思に依存するものであるから、ここで問題となるような一方配偶者の護られるべき利益は、他方配偶者によって護られたり害されたりするものであり、法によって第三者の侵害から上記利益を護るべきであるというのは、些か筋違いと謂うべきである。そして、価値観の多様化等をふまえ、学説上も、一方配偶者から、不貞の第三者に対する賠償請求は制限すべきであるというのが多数説となっている。


○私はこの判決理由は大変画期的なものであると評価しています。
日本では、配偶者の不貞行為の相手方即ち間男・間女?に対し損害賠償請求が認められるのは当然の如く思われてきました。しかし長年男女紛争実務を直接・間接に体験してきた私は、家庭学校論家庭(夫婦関係)戦場論を思いつき、この結果、不貞行為問題は約束違反説を取り、間男・間女?原則無責任説を唱えてきました。

○この考えの中核は夫婦関係の維持は結局心の問題であり、法や経済力等の力による維持は、本物ではなく長続きしないということです。法や経済力等の力に頼ることなく、夫婦相互に相手が自分と生涯連れ添いたい、そして操を尽くしたいと自発的に思い続けるように相互にコントロールする関係が夫婦関係であると思えば、お互いに相手が何を考え何を求めているかについて常に関心を持ち緊張感を保つことが出来ます。

○この判決は、このことを「貞操義務は婚姻契約によって生じ、一方配偶者の他方配偶者に対する一種の債務不履行の問題であって、貞操請求権は対人的、相対的な性格を有し、夫婦の一方の他方に対する貞操請求権を侵害するか否かは、他方の自由意思に依存するものであるから、ここで問題となるような一方配偶者の護られるべき利益は、他方配偶者によって護られたり害されたりするものであり、法によって第三者の侵害から上記利益を護るべきであるというのは、些か筋違い」と言い切っています。

○またその前提として「貞操義務(民法752条)は、婚姻の基本であるが、それは、本来、夫婦間の問題であり、価値観の多様化した今日にあっては、性という勝れて私的な事柄については法の介入をできるだけ抑制して、個人の判断、決定に任せるべき」との表現されてますが、私も全く同感です。

○インターネットと携帯電話の普及による男女の出会い情報と機会が爆発的に増え通信技術も向上した結果、これらを利用した不倫事例相談が日常的に弁護士事務所にも来ています。お父ちゃんもお母ちゃんも、相手をないがしろに不満を持たれると忽ち出会い系サイト等に走り間男・間女?が登場する機会が増えています。夫婦は相互に相手に関心を持って大事にし続ける努力が一層必要な時代になりました。
以上:1,582文字

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