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なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 2- 1-29(水):婚姻費用請求権は離婚後も消滅消滅しないとした最高裁決定紹介
ホーム > 男女問題 > 判例紹介 > 「婚姻費用請求権は離婚…」←リンクはこちらでお願いします
○別居中の夫婦の一方が、生活費に充てる婚姻費用の未払い分の請求を申し立てている間に離婚が成立した場合、請求権が失われるかどうかが争われた裁判で、「権利は失われず、請求できる」とする初めての判断を示した令和2年1月23日最高裁判所第一小法廷決定(裁判例情報)全文を紹介します。 令和2年1月27日日経新聞報道は以下の通りです。

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婚姻費請求権「消滅せず」 申し立て後に離婚でも
社会・くらし2020/1/27 18:37


別居中の夫婦の一方が、生活費に充てる婚姻費用の未払い分の請求を申し立てている間に離婚が成立した場合、請求権が失われるかどうかが争われた裁判で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は23日付の決定で「権利は失われず、請求できる」とする初めての判断を示した。裁判官5人全員一致の意見。

「請求権はなくなり、離婚後の財産分与で未払い分も申し立てる必要がある」との学説もあったが、今回の決定で解釈が整理され、離婚を巡る家裁の実務に影響しそうだ。

決定などによると、北海道在住の女性は、別居状態だった元夫から月15万円の婚姻費用を受け取っていたが、途中から滞るようになり、2018年5月、釧路家裁北見支部に婚姻費用分担の調停を申し立てた。同7月に離婚が成立したため、調停は不成立となり審判に移行した。

家裁支部は同9月、離婚前日までの未払い分約74万円を支払うよう元夫に命令。しかし元夫の即時抗告を受けた札幌高裁は同11月の決定で「婚姻費用の請求権は婚姻の存続が前提。離婚で請求権は消滅した」として、家裁支部の審判を取り消し、申し立てを退けた。

これに対し第1小法廷は「婚姻費用の分担を申し立てている間に離婚しても、離婚前の婚姻費用の請求権まで消滅する理由はない」と判断。高裁決定を破棄し、審理を高裁に差し戻した。

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主   文
原決定を破棄する。
本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

理 由
抗告代理人○○○○,同○○○○,同○○○○の抗告理由について
1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1) 妻である抗告人は,平成30年5月,夫である相手方に対し,婚姻費用分担調停の申立てをした。

(2) 抗告人と相手方との間では,平成30年7月,離婚の調停が成立した。同調停においては,財産分与に関する合意はされず,いわゆる清算条項も定められなかった。

(3) 上記(1)の婚姻費用分担調停事件は,上記(2)の離婚調停成立の日と同日,不成立により終了したため,上記(1)の申立ての時に婚姻費用分担審判の申立て(以下「本件申立て」という。)があったものとみなされて(家事事件手続法272条4項),審判に移行した。

2 原審は,要旨次のとおり判断し,抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求権は消滅したから,離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であるとして,これを却下した。

 婚姻費用分担請求権は婚姻の存続を前提とするものであり,家庭裁判所の審判によって具体的に婚姻費用分担請求権の内容等が形成されないうちに夫婦が離婚した場合には,将来に向かって婚姻費用の分担の内容等を形成することはもちろん,原則として,過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等につき婚姻費用の分担の内容等を形成することもできないというべきである。そして,当事者間で財産分与に関する合意がされず,清算条項も定められなかったときには,離婚により,婚姻費用分担請求権は消滅する。

3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 民法760条に基づく婚姻費用分担請求権は,夫婦の協議のほか,家事事件手続法別表第2の2の項所定の婚姻費用の分担に関する処分についての家庭裁判所の審判により,その具体的な分担額が形成決定されるものである(最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁参照)。また,同条は,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないことは明らかである。

 しかし,上記の場合に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから(前掲最高裁昭和40年6月30日大法廷決定参照),夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解するのが相当である。このことは,当事者が婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の請求をすることができる場合であっても,異なるものではない。

 したがって,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない


4 以上と異なる見解の下に,本件申立てを却下した原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口 厚)
以上:2,382文字
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R 2- 1-28(火):がん専門医師が教える”がんにならない習慣10”紹介
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○週刊ポスト令和2年2月7日号にがんを発症した「東大病院がん専門医」だからこそ教えられる「がんにならない習慣10」と題する記事が掲載されています。東京大学医学部附属病院放射線科准教授中川恵一医師が上梓した『知っておきたい「がん講座」リスクを減らす行動学』の要約記事です。

○以下、その要約記事のさらに要約備忘録です。
現在、日本は「がん到来時代」でがん死亡患者数は増加の一途だが、欧米は減少に転じており、この差は健康や医療の知識の差による。米国では高校卒業までに病気予防・健康リスク管理術を学ぶが、日本ではがんに関する知識を習う機会は殆どない。大切なことは「がんに関する正しい知識」を身につけること。

◆1日2回以上の「歯みがき」
口腔内で発がん性物質を作る細菌を含む志向を歯みがきで除去する

◆「貧乏ゆすり」も運動
運動不足はがん発症リスクを高めるので、運動する時間が取れない人は「貧乏ゆすり」だけでもすべき

◆「1日10分の日光浴」の意外な効果
血液中ビタミンD濃度が高いと肝臓がん予防となり、日光浴で紫外線を浴びると体内でビタミンDを生成できる、意識的に毎日の日光浴を心がけるべき

◆睡眠時間は長すぎても短すぎても×
睡眠時間6時間以下で前立腺がん、睡眠時間が長すぎると大腸がんのリスクが高まる

◆夜勤は「前立腺がん」リスク
夜勤の人は日中勤務に比べて前立腺がんリスクが2・3倍に高まる

◆高齢者こそ「タンパク質」を摂る
66歳以上の高齢者は高たんぱく質の食事を摂る人は低タンパク質の人に比べてがん死亡率が60%低い、高齢者こそ肉を食べるべき

◆同じ食品を「食べ続ける弊害」
身体に良いと言われる食品も摂りすぎは禁物

◆野菜・果物は「ジュースだと逆効果」
フルーツジュースは2型糖尿病リスクを高め、糖尿病は膵臓がん・肝臓がん・大腸がんリスクを高める

◆「サプリで栄養補給」の落とし穴
がん予防となる緑黄色野菜に含まれるβカロテンをサプリとして服用すると肺がんリスクが高まる、ナッツ類に含まれるビタミンEもサプリで摂り過ぎると死亡率が高まる

◆コーヒーは「1日5杯以上」
コーヒーを1日5杯以上飲む人は肝臓がんリスクが4分の1に低下、中川医師はブラックで1日5杯のコーヒーを飲んでいる
以上:920文字
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R 2- 1-27(月):お酒を飲んで顔が赤くなる人、ならない人は何が違う?
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○「アルコール体質検査・飲酒習慣スクリーニングテスト(AUDIT)結果通知書」で、私のアルコール体質検査・飲酒習慣スクリーニングテスト(AUDIT)の結果は、アルコール体質はタイプD、AUDITスコアは4点と報告していました。

○私は、お酒は下戸ですが、好きで、夜は毎晩、土日は昼も、食事にビール又はワインを欠かせません。但し、ビールは中ジョッキ一杯、ワインは多くてもツーグラス程度で十二分で、晩酌でこれ以上飲むことはありません。しかし、飲み会等では、その2,3倍は飲みますが、途中でこれ以上飲むと具合が悪くなる感覚が分かり、一定時点で飲むのをピタリと止めます。

○酒を飲んでも顔に出ない強い人は、飲めば飲むほど飲みたくなるようで、よく飲むのに感心する人も居ます。しかし、お酒は適量で百薬の長ですが、飲み過ぎると身体に悪いは明らかで、酒が弱く、途中で飲めなくなるのは、酒に弱い体質の利点でもあると思っています。

「酒好き医師が教える最高の飲み方」の「顔が赤くなる人、ならない人は何が違う?」に成増厚生病院東京アルコール医療総合センター長垣渕洋一医師の解説があり、「お酒を飲んで顔が赤くなり、さらに血圧が上がったり、冷や汗をかく、動悸がするなど、複合的な症状をフラッシャーと呼び、」それは、「アセトアルデヒドの作用で、顔などの毛細血管が拡張され、さらに交感神経が強力に刺激され、脈拍が上がり、冷や汗が出て、筋肉が緊張するなどの症状が引き起こされ、アルコール本来の血流を促す作用も手伝い顔の赤さが助長される」と解説されています。

○体内に入ったアルコールの9割は肝臓で代謝され、その際、アルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに分解され、その後、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により、アセトアルデヒドは無毒な酢酸になり肝臓から排出されます。このALDHには、1・2・3の3つの型があり、ALDH1と3は個人差が少なく、ALDH2が個人差が非常に大きく、その差が酒に強いか弱いかを決めるカギを握っているとのことです。以下、アルコール体質一覧復習です。私は、32%のDタイプです。
たくさん飲むと咽頭ガン・食道ガンになる危険が高いので飲み過ぎに注意!」を肝に銘じます。

以上:927文字
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R 2- 1-26(日):第40回南三陸地方出身者在仙交流会出席-ILC特別講演に注目
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○令和2年1月25日(土)は、南三陸ふるさと連合会第40回令和元年度総会・交流会に2年ぶりに出席してきました。「郷里気仙沼・南三陸地方出身者在仙交流会出席-20年先輩女性に感嘆」に「私は、基本的にシャイな性格なためこのような団体に所属する気にはなれず、到底、自前ビルなど持てないで数年後には弁護士を引退しますが、せめて、昔懐かしい方々との交流を求めてこれからも参加したいと思いました。」と記載していましたが、昨年は、行事が重なり出席できませんでした。

○南三陸ふるさと連合会は、昭和29年頃、旧本吉郡・気仙沼市の郷土人を中心に組織され、昭和54年7月、本吉連合ふるさと会と名称変更し、昭和55年6月、1市5町在仙連合同窓会の組織として南三陸六高会を結成し、平成7年6月、両者が事実上合同して南三陸ふるさと連合会と名称変更したとのパンフレット説明があります。

○私も弁護士に成り立ての昭和56年頃南三陸六高会に参加したことがありますが、100名を軽く超える多数の出席者が居たように記憶してしますが、第40回令和元年度総会・交流会の参加者は71名で、平成30年1月の参加者80名をさらに下回っており、会場の広さの割りに人数が少なくちと寂しい感じもしました。

○記念講演として、高エネルギー加速器研究機校名誉教授吉岡正和氏の「国際リニアコライダープロジェクトILCとわたしたち」と題する講演がありました。以下、これに関する令和2年1月17日河北新報記事抜粋です。

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ILC誘致計画動くか 科学技術研究の指針、日本と欧州で公表へ

岩手、宮城両県境の北上山地が有力候補地の超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」を巡り、今年は構想実現の鍵を握る二つの局面がある。今月には国内、5月には欧州で、それぞれ科学技術研究の方向性に関する見解が公表される。誘致に向け前進する可能性は残されており、関係者が注視する。(東京支社・山形聡子)

 国内の議論は日本学術会議が1月中に公表予定のマスタープラン。欧州での議論は次期欧州素粒子物理戦略で、5月に策定される見通し。
 2019年3月、文部科学省はILC計画に関し「誘致の表明には至らない」と発表。一方で「関心を持って国際的な意見交換を継続する」と指摘した。萩生田光一文部科学相は「それぞれの議論の推移を見守る」と語り、政府の誘致判断を左右する材料となりそうだ。

 学術会議のマスタープランは科学的に意義が高い大型施設や大規模研究計画を示すリスト。国の科学技術政策の在り方に一定の影響を与えるとされる。
 学術会議は18年12月、巨額の建設費用などを背景に「誘致を支持するには至らない」との見解を示した経緯があり、プランに載るかどうかは不透明だ。
 次期欧州素粒子物理戦略は、スイスの欧州合同原子核研究所(CERN)を中心に策定する。国際協力が欠かせないILC計画を、どう位置付けるのかが焦点となる。

 最大の課題となるのは、7355億~8033億円と見込まれる巨額事業費の費用負担だ。
 研究者サイドは高エネルギー加速器研究機構(KEK、つくば市)が中心となって19年10月、負担の在り方を文科省に提言。加速器を設置するトンネルなどの土木は日本、加速器本体は参加する各国の分担とする内容で、政府間交渉の参考としてもらう狙い。
 20年度政府予算案には加速器のコスト削減に関し、従来の米国との協議に加え、フランス、ドイツとも個別に議論を始める費用が新たに盛り込まれた。

 誘致を求める研究者らは、政府判断の遅れで国際的な関心が低下することを懸念する。中国が先端加速器の整備計画に乗り出すとの見方が強まっていることも気掛かりだ。
 東大素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授(素粒子物理学)は「ILC計画はこれまで、世界各国の専門家の高い支持を受けてきた。中国が先行するようなことになれば、日本の求心力は一気に低下する」と危惧する。
 20年の見通しに関し「国内と欧州双方で前向きな結論を期待している。現地での設計や施設運営の準備にはいつでも動ける。海外への情報発信を含め、政府の強力なリーダーシップが不可欠だ」と強調する。


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ILCとは



国際リニアコライダー(InternationalLinearCollider:ILC)は、国際協力によって設計開発が推進されている次世代の直線型衝突加速器です。電子とその反粒子である陽電子の素粒子を、電気や磁気の力で光速近くまで加速して超高エネルギーで正面衝突させる実験を行います。ILCによって、宇宙の始まりである「ビッグバン」から1兆分の1秒後の状態を、人為的に再現することで、未知なる素粒子を探索し宇宙誕生の謎を探求します。

1993年の国際将来加速器委員会(ICFA)による推進決定を受けて、ILC計画は欧州・北米・アジアの研究者を中心とした国際共同チームにより研究が進められてきました。日本の素粒子物理学コミュニティはこの世界に唯一のILCを日本に建設する準備を進め、2013年以降、世界の研究者からも日本におけるILC計画実現は熱望されている状況にあります。

世界の素粒子物理学における”国際プロジェクト”としてILCが完成すると、世界中から多くの研究者や技術者が集い、学び、働く、国際研究都市が日本に生まれ、科学界において世界をリードする日本になることが期待されます。

以上:2,290文字
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R 2- 1-25(土):共同遺言無効の主張を排斥し夫婦連名遺言を有効とした最高裁判例紹介
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○「共同遺言無効の主張を排斥し夫婦連名遺言を有効とした高裁判例紹介」の続きで、その上告審である平成5年10月19日最高裁判決(判時1477号52頁、判タ832号78頁)と上告理由書全文を紹介します。

○事案を復習すると、被相続人の遺言書について,相続人である原告(控訴人,上告人)が,本件遺言書は,その全文が被相続人により自書されたものではない,カーボン紙による複写であるが,複写はいわゆる自書に当たらない,罫紙4枚を合綴したもので,各葉ごとに被相続人の印章による契印がされているが,その1枚目から3枚目までと4枚目とでは名義が異なるから,共同遺言であると主張して,他の相続人を被告(被控訴人,被上告人)として,遺言の無効確認を求めたものです。

○一審の仙台地裁気仙沼支部、控訴審仙台高裁のいずれでも請求が棄却されたため,原告が上告しました。しかし、原告の主張は、いずれの主張も排斥され、控訴審の判断は正当であるとして,上告を棄却されました。カーボン紙を用いて複写の方法で記載した自筆証書遺言が民法968条1項の「自書」の要件を充たしているとされ、作成名義の異なる2つの遺言書が別葉に記載され、契印がほどこされた上、合綴されていても、容易に切り離すことができる自筆証書遺言について、民法975条により禁止された共同遺言には当たらないとの判断が確定しました。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
上告代理人○○○○、同○○○○の上告理由第一点について

 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程にも所論の違法は認められない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第二点について
 原審の適法に確定した事実によると、本件遺言書は、Aが遺言の全文、日付及び氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載したものであるというのであるが、カーボン紙を用いることも自書の方法として許されないものではないから、本件遺言書は、民法968条1項の自書の要件に欠けるところはない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第三点について
 原審の適法に確定した事実関係は、本件遺言書はB5判の罫紙4枚を合綴したもので、各葉ごとにAの印章による契印がされているが、その1枚目から3枚目までは、A名義の遺言書の形式のものであり、4枚目は被上告人AR花子名義の遺言書の形式のものであって、両者は容易に切り離すことができる、というものである。右事実関係の下において、本件遺言は、民法975条によって禁止された共同遺言に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 可部恒雄 裁判官 園部逸夫 佐藤庄市郎 大野正男)

上告代理人○○○○、同○○○○の上告理由
第一点

 本件遺言書には、次のように真筆であること疑わせる多くの間接事実があるにもかかわらず、これを看過して、本件遺言書全部につき亡AR太郎が自書したものと認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな経験則違背がある。

 原判決は、本件遺言書全部が、直接筆記具で書かれたものではなく、カーボン紙によって複写されたものであることを認めた外、上告人が指摘する事実のうち、
ア、本件遺言書の一枚目は、「遺言書」の表題と文章及び日付、AR太郎の署名、押印ある同遺言書の本文に当る重要な部分であるにもかかわらず、表題の「遺言書」の「遺」字に不自然ななぞり書があること、

イ、右一枚目の「雄」、「と」の各字上に押捺してある「AR」の印影は,AR太郎の氏名のあと及び契印にある角印とはまったく別の長円形の印章によって顕出されたものであること、

ウ、本件遺言書は、仙台家庭裁判所気仙沼支部において検認される前に既に開封されていたこと(ちなみに、第一審における被告AR三郎本人は、検認のために持参する際には開封されていなかったが、母(被上告人AR花子)が具合が悪くなって遺言書を入れていた袋を枕にしたために封が開いたと、その開封の経過につき極めて不自然な供述を行なっている)

エ、亡AR太郎には10名と多くの相続人がいるにもかかわらず本件遺言書はそのうち被上告人AR一郎、同AR春子に対してのみ遺言者のめぼしい財産を与えるというものとなっていること
をそれぞれ認定しており、

オ、本件遺言書(AR花子名義の部分も含む)により被上告人AR一郎、同AR春子に「贈与」した土地上には被相続人であるAR太郎所有の未登記建物が存するにも関わらず、本件遺言書は右建物の帰趨についてはなんら触れていないこと
は明らかである。

 原判決は、右の各事実があっても、「そのことから直ちに偽造の疑いがあるということはできない」と、判示するが、右各事実は、いずれも被相続人が正常に遺言書を作成したとすることに、少なからず疑問を抱かせ得る事実である上、そのような事実が右のとおり数多く存在することからすれば、社会通念上、本件遺言書が偽造にかかるものであることを強く推認すべきである。

もっとも、本件遺言書の筆跡が自書したものであることに揺るぎがないのであれば偽造を疑わせる間接事実が存在しても原判決のようにいい得る余地はあるかもしれない。しかし、本件遺言書はその全部がカーボン紙による複写であって、筆跡の異同の判定には重大な制約があることに照せば(重大な処分証書である遺言書を直接筆記したものではなく複写したものとすること自体極めて不自然である)、原判決の前記判示は、筆跡鑑定の結果に安易に依拠して、経験則の適用を誤ったものとの非難は免れない。

第二点
 原判決には、民法968条1項の解釈適用を誤った違法があり、その違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかである。
 原判決は、本件遺言書全部(四葉よりなる)がカーボン紙を用いた複写によって作成された事実を認定したうえ、「カーボン紙を用いることも自書の一つの手段方法と認められるというべきであり……カーボン紙により複写した場合も自書に当たるものと解するのが相当である。」と判示する。

 民法が自筆証書遺言について遺言者による全文の自書を要件とした趣旨は、自書による筆跡は容易に模倣しにくく、遺言が遺言者の真意に出るものであることが比較的容易に判別できるというところにある。

 電子複写機によるコピーが、自書と解することができないことはほぼ異論がないところであろう(加藤永一・新版注釈民法28巻46頁、久貴忠彦・右同書83頁)。右コピーは、筆記具で書いた原本と同一の配字、字画構成、字形となるが、筆圧、筆勢、筆記具の相違はほとんど捨象されてしまい、原本に様々な作為を入れる余地が大きいため偽造しやすく、偽造文章であっても容易にはそれと判別できないことが、コーピを自書とはなしがたい所以と考えられる。

ところで、カーボン紙による複写は、真筆ないしそのコピーのような手本となるものをなぞれば、容易に真筆と配字構成、字画構成、運筆において同一の筆跡を顕出することができることになり、真筆の模倣が容易で、偽造の危険が定形的につきまとうといえる。又、カーボン紙による複写は、例外なく筆圧、筆勢、筆記具の相違が分からない平板な筆跡になってしまい、後で真正な筆跡であるか判別がきわめて困難である。

右のとおりカーボン紙による複写にも、電子複写機によるコピーが自書といいがたい根拠となる事柄がそのまま当てはまるのであり、右コピーが民法968条1項の「自書」といい得ないのと同様にカーボン紙による複写も同条項の「自書」ということはできない(なお久貴忠彦教授(「自筆証書遺言の方式をめぐる諸問題」現代実族法大系5、221頁)は、「カーボン紙による複写による場合は自書の概念からはずれることはいうまでもない。」とされる。)

 このように解しても、作為がなく真にカーボン紙で複写したものであれば、その複写したものと同一の原本に当るものが常に存在するのであるから、複写したものを自筆文書でないとしてもなんら不都合はないはずである。
 したがって、カーボン紙による複写である本件遺言書を自書によるものとした原判決には民法968条1項の解釈適用に誤りがあり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

第三点
 原判決は、民法975条の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。
 原判決は、本件遺言書が共同遺言には当たらないとした第一審判決を全面的に引用する。

 しかし、本件遺言書の4枚目はその作成名義からしてAR太郎の妻の被上告人AR花子の遺言書となっており、これが1ないし3枚目のAR太郎の遺言書部分と契印され一体の文書となっている。また、内容的にみても、被上告人AR花子の遺言部分は、AR太郎が被上告人AR花子に生前贈与した宅地、そしてAR太郎が所有する建物の敷地である宅地を同被上告人が死亡したときAR春子に贈与するという太郎の意思(考え)を含ませているものである。したがって、本件遺言書はその形式、内容とも民法975条が禁止する共同遺言に該当し無効とすべきである。

 以上いずれの点よりも原判決は違法であり、破棄されるべきである。

以上:3,991文字
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R 2- 1-24(金):共同遺言無効の主張を排斥し夫婦連名遺言を有効とした高裁判例紹介
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○「共同遺言無効の主張を排斥し夫婦連名遺言を有効とした地裁判例紹介2」の続きでその控訴審である平成4年1月31日仙台高裁判決(金融・商事判例938号30頁、家庭裁判月報46巻4号32頁)全文を紹介します。

○控訴審も、カーボン紙を用いて複写の方法で記載した本件自筆証書遺言は、本人の筆跡が残り、筆跡鑑定によって真筆かどうかを判定することが可能であって自書に当たり、かつ共同遺言の禁止規定にも違反しないから、遺言無効確認請求は認められないとして、控訴を棄却しました。

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主   文
一、本件控訴を棄却する。
二、控訴費用は控訴人の負担とする。

事   実
 控訴人は「原判決を取り消す。原判決別紙遺言書目録記載の遺言書による亡Aの遺言は無効であることを確認する。訴訟費用は第1、2審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは主文同旨の判決を求めた。
 当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほかは原判決の事実摘示及び本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人の補足的主張)
一、本件遺言書には、以下のとおり偽造を疑わせる不自然な点が多々存するから、亡Aの自書したものとは認められない。
1.本件遺言書の重要な部分である1枚目の表題の「遺言書」の「遺」の字に不自然ななぞり書きが見受けられる。
2.右一枚目の本文末行「雄と」の箇所に、亡A名下や契印として押捺されている角印と全く異なる長円型の「齋藤」の印影が押捺されている。
3.本件遺言書は直接ボールペンで書かれたものでなく,カーボン紙によって複写されたものである。
4.本件遺言書の4枚目はその内容及び作成名義からして亡Aの妻である被控訴人Cの遺言書であるのに、1ないし3枚目の亡Aの遺言書部分と契印され一体のものとなっている。
5.本件遺言書の3枚目表の契印が2箇所あるのに、これに対応する2枚目裏面の契印は1箇所しかなく、しかもそれらは同一の印章によるものではない。またその3枚目裏と4枚目表の契印がずれている。
6.本件遺言書は、仙台家庭裁判所気仙沼支部において検認される前に既に開封されていた。
7.亡Aは、明治31年生まれのため度量衡はもっぱら尺貫法を用い、メートル法でしかも「平方メートル」などと表記することはなかったのに、本件遺言書では土地の面積につきすべて「平方メートル」により表記されている。
8.本件遺言書の1枚目の「気仙沼市字岩月台ノ沢」は、同2枚目9行目の同一記載とほとんど重なり合う配字、字画構成となっており、用いられている用紙が薄手であることと照らし合わせ、手本となる記載に重ね書きした形跡がある。
9.本件遺言書で亡Aは、被控訴人齋藤清重と同齋藤良子に対してのみ同人のめぼしい財産を遺贈しているが、同人には10名と多くの相続人がいるし、それら相続人との生前の交際状況などからすると、本件遺言書のような内容の遺言がなされるとは考えられない。

二、原判決は、本件遺言書を亡Aの筆跡と同一と判断しているが、本件遺言書について検討すべきなのは、遺言者以外の者が自分の筆跡を隠して遺言者の筆跡に似せて書いた偽造筆跡(いわゆる偽筆)か否かについてであって、作為のない筆跡の同一性についてではない。

偽造筆跡である場合には真正の筆跡と配字、字画構成、運筆が酷似するのは当然のことであるから、偽造筆跡の場合でも違いが生ずる始終筆部、転折部などの細やかな部分について顕微鏡的検討をなし、さらに書面全体の外形、内容等を総合的に検討してその真否が判定されなければならない。しかるに、これらの検討をせずになされている原判決には重大な事実誤認がある。

三、民法が自筆証書遺言について、遺言者による全文の自筆を要件とした趣旨は、自筆による筆跡は偽造しにくく、遺言が遺言者の真意に出るものであることが比較的容易に判別できるところにあるが、カーボン紙による複写では、真筆ないしコピーのような手本となるものをなぞれば、容易に真筆と配字構成、字画構成、運筆が同一の筆跡を顕出することができるばかりか、筆記具によって直接書いた時には明確になる筆圧、筆勢が不明になってしまうため、後で真正な筆跡であるかどうかを判別することは極めて困難となることが明らかである。

その意味で、カーボン紙による複写には偽造の危険が大きく、その危険が定型的につきまとうということができる。そうすると、自筆証書遺言につき、遺言者の全文自筆を要件とした前記趣旨に照らし、カーボン紙による複写は自書に当たらないと解すべきである。

理   由
 当裁判所も本訴請求を認容すべきものと判断するが、その理由は次のとおり付加訂正し、削除するほかは原判決の理由と同一であるから、これを引用する。

1.原判決7枚目裏1行目の「3枚目」から同2行目の「記載」までを、「1枚目から4枚目までいずれもカーボン紙により複写」と改め、同4行目の「尋問の結果」の次に「、当審における鑑定の結果」を加える。
2.同8枚目表10行目から11行目にかけての「していこと」を「していること」と、同裏10行目の「本件遺言書」から「複写であるが、」までを「本件遺言書は、前記のとおり全部カーボン紙を用いての複写によって作成されたものであると認められるところ、」
と、それぞれ改める。
3.同9枚目表4行目から5行目にかけての「本件遺言書3枚目も」を削除する。
4.当審における控訴人本人の供述によるも、本件遺言書は亡Aの自書であるとする原判決の認定判断を覆すに足りない。
5.ところで、控訴人は、本件遺言書には偽造を疑わせる不自然な点が多々あり、亡Aの自書したものではないと主張する。

 しかしながら、その主張の一4の本件遺言書の4枚目は、確かに作成名義が被控訴人Cであり、その内容も同女作成の遺言書のごとくであるが、それは乙第3号証、原審被控訴人齋藤善三郎、同C各本人尋問の結果並びに当審鑑定の結果によれば、原判決認定のとおり(9枚目表7行目から同裏3行目まで)亡Aの自書と認められるのであって、被控訴人Cはその作成に全く関与していないことが認められる。同5についての控訴人の主張は、表面の契印がその裏面にまで表れている乙第3号証の写しだけを見ての主張であって、原本によればその主張事実は認められない。

同7については、その主張のとおり本件遺言書に「平方メートル」の表記が用いられているが、原判決説示のとおり、亡Aが従前「平方メートル」の単位記号を使用することはなかったとしても、遺言書の作成に当たって、不動産登記簿謄本の表示のとおり記載したということも十分考えられるのであるから、本件遺言書に「平方メートル」の単位記号が使用されていたからといって、亡Aの作成と認める妨げになるものではない。

同8については、相互の筆跡を対照すると、その主張のように、本件遺言書の1枚目の「気仙沼市字岩月台ノ沢」と、同2枚目9行目の同一記載とがほとんど重なり合うとは認められない。同9については、その主張のように亡Aには10名の相続人がいるのに被控訴人齋藤清重と同齋藤良子に対してのみめぼしい財産を遺贈したことになるが、右被控訴人夫婦は、控訴人らや亡Aの長男らが同人のもとを離れていわゆる跡継ぎがなくなったので、その跡継ぎとして昭和55年9月ころ東京から同人と被控訴人C夫婦のもとに移り住んだなどの原判決認定(7枚目裏5行目から10行目まで)の事情に照らすと、この点も特に不自然であるということはできない。

その他の同1ないし3、6についてはその主張の事実が認められるが、そのことから直ちに偽造の疑いがあるということはできず、それらの事実の存在は、本件遺言書が亡Aの自書であるとする原判決の認定判断を覆すに足りない。

 したがって、控訴人の前記主張は採用できない。

6.次に、控訴人は、本件遺言書で問題となるのは偽造筆跡か否かであるから、始終筆部、転折部などの細やかな部分について顕微鏡的検討をなし、さらに書面全体の外形、内容等を総合的に検討してその真否を判定しなければならないと主張するけれども、原審及び当審鑑定の結果を合わせると、その主張の顕微鏡的検討の結果によるも本件遺言書の1ないし4枚目はいずれも同一筆跡で、本件遺言書は亡Aの自書したものと認められるのであり、前項の諸点を考慮しても右認定を覆すに足りず、原判決にその主張の事実誤認が存するとは認められない。したがって、また右主張も採用できない。

7.次に、控訴人は、カーボン紙による複写は容易に真筆と配字構成、運筆等が同一の筆跡を顕出できるし、筆圧、筆勢が不明になって筆跡により真筆かどうか判別することが極めて困難であり、偽造の危険も大きいから、この複写による場合は自書に当たらないと解すべきであると主張する。

 しかしながら、カーボン紙を用いることも自書の一つの手段方法と認められるというべきであり、原審及び当審鑑定の結果に照らすと、カーボン紙による複写であっても本人の筆跡が残り筆跡鑑定によって真筆かどうかを判定することが可能であって、偽造の危険性はそれほど大きくないことが認められるのであるから、原判決説示(8枚目裏10行目から9枚目表5行目まで)の諸点とも照らし合わせると、カーボン紙により複写した場合も自書に当たるものと解するのが相当である。

 したがって、この点の控訴人の主張も採用できない。
 よって、本件控訴は理由がないので、主文のとおり判決する。

以上:3,924文字
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R 2- 1-23(木):共同遺言無効の主張を排斥し夫婦連名遺言を有効とした地裁判例紹介2
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○「夫婦共同作成名義遺言書を夫単独遺言として有効とした高裁決定紹介」に続けて共同遺言に関する判例の紹介です。現在取扱中の、共同遺言に関する事例を集めています。この事案は最高裁まで争われましたので、別コンテンツで仙台高裁、最高裁判決まで紹介します。

○原告は、本件遺言書は筆跡が全文同一ではなく全文自書が欠けていること、カーボン紙の複写は自書に当たらないこと、妻との共同遺言であることを理由に無効と主張して提訴しました。

○平成2年10月4日仙台地裁気仙沼支部判決(家庭裁判月報46巻4号37頁)は、本件遺言書のうち、3枚目がカーボン紙による複写であるが、これが偽造と結びつくような状況が存在しない場合には、カーボン紙には本人の筆跡が残り、その意思に基づく記載かどうかの判定は比較的容易であると考えられ、かつ、加除変更の危険も少ないと考えられるから、被相続人の自筆証書遺書として有効であるとし、4枚目は後妻名義の遺言となっているが、被相続人の遺言書の配字形態や字画構成が極めて類似しており、これも被相続人の自書と認められ、後妻は本件遺言書の作成に関与せず、被相続人が本件遺言書を作成したことは同人の死亡まで知らなかった等の事情があるから、本件遺言書は実質的には被相続人の単独遺言であって、後妻との共同遺言ということはできないとして、原告の請求を棄却しました。

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主   文
一、原告の請求を棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。

事   実
一、原告の請求の趣旨

1. 原告と被告らとの間において、別紙遺言書目録記載の遺言書による亡Aの遺言が無効であることを確認する。
2. 訴訟費用は被告らの負担とする。

二、原告の請求原因
1. 訴外A(以下「亡A」という。)は、昭和58年12月10日死亡し、原告及び被告らが相続人となった。
 亡Aと亡齋藤Bの子が原告、被告E及び同Fであり、亡Aの後妻が被告齋藤C(以下「被告C」という。)であり、亡Aと被告Cの子が被告齋藤G、同齋藤H(以下「被告H」という。)、同齋藤I、J及び同齋藤K(以下「被告K」という。)であり、亡Aと被告Cの養子が被告齋藤L(以下「被告L」という。)である。

2. 仙台家庭裁判所気仙沼支部昭和59年家第3号遺言書検認事件にかかる昭和56年8月30日付の別紙遺言書目録記載の遺言書(以下「本件遺言書」という。)が存在する。

3. そして、被告らは原告に対し、本件遺言書による亡Aの遺言(以下「本件遺言」という。)が有効であると主張している。

4. しかしながら本件遺言は、次の理由により無効である。
(1) 本件遺言書は、その全文が亡Aにより自書されたものではなく、自筆証書遺言の法定要件である「全文について自書」の要件が欠けており、本件遺言は、無効である。

 すなわち、本件遺言書の1枚目と2枚目及び3枚目は同一人の筆跡ではなく、同一人によって記載されたものではない。

(2) 本件遺言書3枚目は、カーボン紙による複写であるが、複写はいわゆる自書にあたらず、自筆証書遺言の法定要件である「自書」の要件が欠けており、本件遺言は、無効である。

(3) 仮に本件遺言書の全文が亡Aの自書であったとしても、本件遺言は、民法975条の共同遺言にあたり、無効である。
 すなわち、本件遺言書は、各葉毎に割印した一通の遺言書であるが、その1枚目には遺言書なる文言及び遺言者として亡A名義の署名押印、4枚目には遺言書なる文言及び遺言者として被告C名義の署名押印があり、遺言が右両者によってなされた形式をとっており、また、被告C名義の遺言の内容は、亡Aが被告Cに贈与した宅地並びに亡Aが所有する建物の敷地である宅地を被告Cが死亡したときに被告Kに贈与するというAの意思を含ませているから、形式及び内容ともに共同遺言となっている。

三、請求原因に対する被告らの認否(被告E及び同Fを除く)
1. 請求原因1ないし3の事実は認める。

2. 請求原因4(1)の事実は否認する。
 本件遺言書は、亡Aによって全文自書されたものである。
 亡Aが生前書いた字を調べてみるとこれが同一人の字かと思われる程、例えば同人が書いた齋藤家の事跡ともいうべき書類(乙第1号証)や家業であった樽屋の取引のために振出した手形(乙第2号証)のように、その筆跡の形は実に様々であり、原告提出の鑑定書(甲第20号証)が、亡Aが原告に宛てた手紙(甲第21号証の5)の筆跡のみをもって本件遺言書と比較しても必ずしも妥当とはいいがたい。例えば、右乙第1号証の27、29の「L」の筆跡と本件遺言書2枚目の「L」の筆跡は、同じであることは明白である。また、乙第1号証の27、29の「K」の筆跡と本件遺言書1枚目及び3枚目の「K」の筆跡は、同じであることは明白である。

3. 請求原因4(2)の事実は否認する。
 仮に、本件遺言書3枚目がカーボン紙による複写であるとしても、「自書」については記載される材料、記載する方法手段は特に制限はなく、カーボン紙による複写は、タイプライター、電子コピーなどの複写版と異なり、本人の真意に基づくものかどうかの判定は容易であり、加除変更の危険は少ないから、「自書」として有効である。

4. 請求原因4(3)の事実は否認する。
 本件遺言書は、形式的には一通の自筆証書に亡A及び被告C名義の署名押印があって、2つの遺言がなされた形となっているが、亡Aは、本件遺言については被告Cと一切話し合ったことがなく、本件遺言書の全文、日付、氏名のすべてを自書し、自ら押印し、一人ですべて作成したものであるし、被告Cは、亡Aが本件遺言書を作成したことを同人の死後まで知らなかったのであるから、本件遺言は、実質的にみると亡Aの単独の遺言であるし、遺言の内容も、被告Cが同人所有の土地を処分したり、遺言を撤回したりすると、亡Aの遺言はなかったであろうとの関係、すなわち、一方の遺言が他方の遺言によって効力が左右される関係にはなっておらず、共同遺言の禁止の法意に触れることはなく、単独の遺言として有効である。

四、証拠〈略〉

理   由
一、亡Aと原告及び被告らとの関係、本件遺言書(乙第3号証)の存在等並びに本件遺言の効力についての争いの存在に関する請求原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない(被告E及び同Fについては、弁論の全趣旨によりこれを認める。)。

二、本件遺言の効力について
1. 本件遺言書は、自筆証書であるか否かについて検討する。

(1) 本件遺言書の1枚目と2枚目及び3枚目のそれぞれの筆跡を比較対照すると、その配字形態(文字間の大小、間隔、行や文字の傾斜)や字画構成(字画の位置、傾斜、曲直、比率)が一見類似しているし、個々の同一字画の字画構成や筆勢、運筆などの点をみても偶然とは思われない共通した個性が多くみられ、例えば、「気、仙、沼、市、字、岩、月、台、沢、斉、清、重、良」の各文字をみると(「台」「沢」「清」「重」の各字は、1枚目及び2枚目に、「良」の字は、1枚目及び3枚目に、他の各字は、1枚目ないし3枚目に共通して記載されている。)、顕著にあるいは良く共通している点がみられる。(乙第3号証及び鑑定の結果)

(2) 本件遺言書1枚目が亡Aの自書であることは、原告も、「1枚目は全部父が書いたと思います。」と供述しており、ほとんどの相続人の認識がほぼ一致している。(原告、被告C及び被告H各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨)

(3) 亡Aからの原告宛ての郵便はがき二通(甲第21号証の5、6)の宛名の住所、氏名の記載は、亡Aの自書であるが(原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨)、これらと本件遺言書のそれぞれの筆跡を比較対照すると、同一字画の「仙、台、市、斉、藤、子、番」の各字において字画、構成、筆勢、運筆などに多くの共通性がみられ、特に「斉」の字における右共通性は、顕著である。(甲第21号証の5、6、乙第3号証及び鑑定の結果)

(4) 齋藤家の事跡(乙第1号証の1ないし40)の全文、約束手形(乙第2号証の1ないし13)の亡Aの住所、氏名、貯金払戻請求書(甲第21号証の1ないし3)の亡Aの氏名、昭和48年4月1日付契約書住所氏名欄(甲第21号証の四)の亡Aの住所、氏名は、いずれも亡Aの自書であるが(被告H本人尋問の結果、鑑定の結果及び弁論の全趣旨)、これらと本件遺言書のそれぞれの筆跡を比較対照すると、本件遺言書と右各書類中の同一字画である、右事跡中の「地、清、重、良、子、字、年、台、番、」の各字、右事跡及び右約束手形中の行書体の「藤」の字、右事跡、右約束手形、右貯金払戻請求書及び右契約書住所氏名欄中の「斉、景」の各字、右の事跡、右約束手形及び右契約書住所氏名欄中の「気、仙、沼、岩、沢」の各字、右事跡、右貯金払戻請求書及び右契約書住所氏名欄中の草書体の「藤」の字、右約束手形及び右契約書住所氏名欄の「市」の字、以上の同一字画において字画構成、筆勢、運筆などに多くの共通性がみられる。(甲第21号証の1ないし4、乙第1号証の1ないし40、第2号証の1ないし13、第3号証及び鑑定の結果)

(5) 昭和56年8月30日付の本件遺言書は、亡Aの死亡後(昭和58年12月10日死亡)、約1か月後に亡A宅の手提金庫の中から昭和56年8月11日付の亡Aの印鑑登録証明書と共に郵便封筒に入った状態で被告Cに発見され、昭和59年1月23日に仙台家庭裁判所気仙沼支部において検認されたものであり、その物理的状態は同種のB五版罫紙4枚を合綴したもので、3枚目のカーボン紙による複写を除いて1枚目、2枚目、4枚目は黒色ボールぺンで記載され、右印鑑登録された亡Aの印鑑が亡A名下に押され、更に各葉毎の割印として押されている。(甲第9号証、乙第3、第4号証、被告H及び被告C各本人尋問の結果)

(6) 本件遺言によって亡A所有の土地を贈与されることとなった被告L及び同Kは、原告を含めて亡Aの長男らが亡Aのもとを離れて跡継ぎがいなかったために、その跡継ぎとして、昭和55年9月ころ、東京から亡A及び被告Cのもとに移り住み、さらに被告Lは、同年10月31日付で亡A及び被告Cと養子縁組を結んでいる。(甲第8号証、乙第1号証の26、27、30、34、37及び被告H本人尋問の結果)

 以上の認定事実を総合すると、本件遺言書(1枚目ないし3枚目)は、そのすべてを亡Aが自書したものと認められ、亡Aの自筆証書ということができ、これと結論を異にする甲第20号証(原告提出の私的な鑑定書)は、筆跡対照文書がはがき一通(甲第21号証の5)に限定されている上、筆跡対照以外の本件遺言書の形態的特徴だけから本件遺言書の作成者に作為欺罔の意思が存在していると即断するなど臆測や先入観念にとらわれ、筆跡鑑定の本来の姿勢から逸脱している傾向がみられ、採用することはできない。

 なお、本件遺言書2枚目及び3枚目には、1枚目の草書体の「藤」の字と相違している行書体の「藤」の字が記載されているが、斉藤家の事跡(乙第1号証の4、5、21、34)や約束手形(乙第2号証の2、6、7)には行書体の「藤」の字も記載されており、亡Aは右両用の書き方をしていることが認められるし、本件遺言書2枚目、3枚目の記載は、1枚目の遺言本文に対する目録と位置づけられるものであるから、「藤」の字の書体に相違があることをもって亡Aの自書ではないとの疑いをいれる理由とはならない。又、本件遺言書2枚目及び3枚目に土地の面積の単位記号として「平方メートル」の記載があり、これについて原告は、「父は尺貫法で生活してきており、平方メートルというのはほとんど使っていないと思います。」と供述しているが、亡Aがどのような状況においても「平方メートル」の単位記号を使用しないとの事実を裏付ける証拠はなく、贈与する土地の表示を不動産登記簿謄本の表示どおりに記載したのであれば、「平方メートル」の単位記号を記載しても何ら不可解ではないから、この点も亡Aの自書ではないとの疑いをいれる理由とはならない。

 なお、本件遺言書3枚目は、カーボン紙による複写であるが、その経緯は不明であるものの、これが偽造と結びつくような状況はうかがわれないし、右複写の筆跡が亡Aのものであることは認められるところ、自書については記載する方法手段に特別の制限はなく、カーボン紙による複写は本人の筆跡が残り、その意思に基づく記載かどうかの判定は比較的容易であると考えられ、かつ、加除変更の危険も少ないと考えられるから、本件遺言書3枚目も亡Aの自書にあたるということができる。

2. 次に、本件遺言は共同遺言であるか否かについて検討する。
(1) 本件遺言書4枚目は、被告C名義の遺言となっているが、これと亡Aの自書である本件遺言書1枚目の双方の筆跡を比較対照すると、その配字形態や字画構成が極めて類似しており、本件遺言書4枚目もそのすべてが亡Aの自書である。(乙第3号証、被告H及び被告C各本人尋問の結果)

(2) 被告Cは,本件遺言書の作成に全く関与せず、亡Aが本件遺言書を作成したことを同人の死亡後まで知らなかった。(被告C本人尋問の結果)

(3) 本件遺言の内容をみると、亡A名義の遺言は、亡A所有の土地を被告L及び同Kに贈与するというもの、被告C名義の遺言は、被告C所有の土地を被告Kに贈与するというものであって、一方の遺言が他方の遺言によって効力が左右される関係にはなく、直接的な関連性はない。(乙第3号証)

(4) 本件遺言書は、1枚目ないし4枚目まで各葉毎に亡Aの印鑑で割印されているが、4枚目は容易に切り離すことができ、切り離せば亡A名義の遺言書とは別個独立の被告C名義の遺言書となりうる。(甲第九号証及び乙第3号証)

 以上の認定事実によれば、本件遺言書には、形式的には1通の遺言書に2人の遺言がなされている形となっているが、実質的には亡Aの単独の遺言であり、被告C名義の遺言は無効で、亡A名義の遺言が有効に存在するにすぎず、遺言の内容においても、被告C名義の遺言によって影響を受ける関係にはないから、共同遺言禁止の法意(共同遺言は、他の遺言者の意思によって制約を受けやすく、遺言者の自由意思を保障し難い、又、他方の遺言との関係においてその効力が問題となり、法律関係が混乱しやすいなどの理由から禁止されている。)に触れることはなく、したがって、本件遺言は、共同遺言にはあたらず、亡Aの単独の遺言であるということができる。

三、結論
 前記認定のとおり、本件遺言は、亡Aが全文、日付、氏名を自書し、押印して作成した単独の自筆証書遺言であり、法定の方式を具備したものであるから有効である。
 したがって、原告の本訴請求は、理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条を適用して、本文のとおり判決する。

遺言書目録
(1枚目)
遺言書
私所有の左記の土地を私死後斉藤Lと妻Kに贈与します
遺言執行人を気仙沼市字赤岩水梨子斉藤政雄とします

昭和56年8月30日

気仙沼市字岩月台ノ沢20
斉藤A
(2枚目)
気仙沼市字岩月台ノ沢18番の1 1289平方メートル

斉藤L
気仙沼市字岩月台ノ沢18番の2 364平方メートル

斉藤L
気仙沼市字岩月台ノ沢18番の2 991平方メートル

斉藤L
気仙沼市字岩月台ノ沢19番の1 162平方メートル

斉藤L
気仙沼市字岩月台ノ沢20番の1 99平方メートル
斉藤L

(3枚目)
気仙沼市字最知北最知44番の1 1604平方メートル
斉藤K

186番 340平方メートル
斉藤K

230番の1 399平方メートル
斉藤K

気仙沼市字岩月星谷37番の2 165平方メートル
斉藤K

山林155の3 694平方メートル
斉藤K

(4枚目)
遺言書
私所有の左記の土地を私の死後斉藤Kに贈与します
遺言執行人を気仙沼市字赤岩水梨子斉藤政雄とする

昭和56年8月30日

気仙沼市字岩月台ノ沢20
斉藤C

気仙沼市字最知森合24ノ1番地宅地 236・00平方メートル
斉藤K

気仙沼市字最知森合25ノ1番地宅地 62・0平方メートル
斉藤K
以上:6,622文字
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R 2- 1-22(水):夫婦共同作成名義遺言書を夫単独遺言として有効とした高裁決定紹介
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○「共同遺言無効の主張を排斥し夫婦連名遺言を有効とした地裁判例紹介」の続きで、夫婦共同作成名義の遺言書について夫の自筆証書遺言として有効とした昭和57年8月27日東京高裁決定(判タ483号155頁、判時1055号60頁)を紹介します。

○夫婦共同遺言の形式があつても、妻は夫が本件遺言書を作成したことを同人の死後まで全く知らず、本件遺言書に自らの氏名が記載されていることも知らなかつたこと、本件遺言書に記載された不動産はすべて夫の所有であり、妻が所有あるいは共有持分を有するものはないことから、夫単独の自筆証書遺言であると認定されました。

***********************************************

主    文
本件抗告を棄却する。 

理    由
 抗告人は、「原審判を取り消し、その事件を長野家庭裁判所諏訪支部に差し戻す。」との裁判を求め、抗告の理由として、別紙一のとおり主張した。

 一件記録によると、本件においては、別紙二のとおりの内容が記載された「遺言状」と題する書面(以下「本件遺言書」という。)が作成されており、その被相続人A(以下「被相続人」という。)の署名の下及びその左横には「A」と刻された丸形の印章による押印があり、右署名の下部に記載された「母C(※母Bの姓)」の名の下及びその左横には「C」と刻された小判形の印章による押印があること、被相続人は、生前、つねづね、相手方Bとの間で、被相続人と相手方Bのいずれかが死亡したときは、本件遺言書の冒頭部分記載の土地建物は、それぞれの子らに分与し、残余の財産は、相手方Bが取得し、又は被相続人に留保するようにしようという趣旨のことを話し合つていたこと、しかし、これを被相続人と相手方Bの共同の遺言書に作成するということは格別話し合つたことはないこと、本件遺言書は、これを作成することについて、相手方Bには何ら話をせずに、被控訴人がすべて単独で作成したものであり、被控訴人が全文、日附及び自らの氏名を自書して自己名義の押印をし、相手方Bの氏名も同人が書き、「C」名義の押印も同人がしたものであること、相手方Bは、被相続人が本件遺言書を作成したことを同人の死後まで全く知らず、本件遺言書に自らの氏名が記載されていることも知らなかつたこと、本件遺言書に記載された不動産はすべて被相続人の所有であり、相手方Bが所有あるいは共有持分を有するものはないことが認められる。

 そして、遺言は法律行為の一つであつて、一定の法律効果を伴うものであるが、右のような本件遺言書の内容は、被相続人所有の財産の処分に関するもののみであつて、相手方Bの遺言としては何ら法律上の意義をもたないものであることからすると、本件遺言は、一見、被相続人と相手方Bとの共同遺言であるかのような形式となつてはいるが、その内容からすれば、被相続人のみの単独の遺言であり、被相続人が自己の氏名の下に、相手方Bの氏名を書き加えたのは、前記のように、それぞれの子に対する財産の配分について、相手方Bとの間でつねづね話し合つていたという経緯からしてその遺言における財産の配分については、相手方Bと相談の上、決めたものであり、その内容については、相手方Bも同じ意思である旨示す趣旨から書き加えたものと解するのが相当であつて、本件遺言書は、被相続人の自筆証書による単独の遺言として有効であるというべきである。

 したがつて、抗告人の抗告の理由とするところは失当であり、一件記録を精査しても、原審判には、他に何ら取り消すべき事由は見当らないから、本件抗告は理由がない。
 よつて、主文のとおり決定する。
(香川保一 菊池信男 吉崎直彌) 

抗告の理由
一 原審判は、被相続人Aの遺言書を有効と認定し、遺言書の内容は相続分の指定を伴う遺産分割方法の指定であると認定した。
 しかしながら、本件遺言書は被相続人Aと相手方Bとの共同遺言であつて、民法975条により無効のものであり、これを有効として遺産分割をした原審判は違法である。

二 原審判が本件遺言書を有効と認定している理由は、被相続人夫婦は遺言書を作ること、およびその内容を本件遺言書の如きものとすることを常々話し合つていたが、本件遺言書は数人の者が相談の上各自の財産の処分につき一通の遺言書で遺言をしたものではなく、共同名義人となつている妻には本件遺言書の作成の意思はなかつたのであるから本件遺言書は共同遺言とは解されない、ということのようである。

 ところで、遺言は民法の定める方式に従わなければ効力がないことになつており、自筆遺言証書においては遺言書の全文・日付・氏名とを自署して捺印しなければその効力はないことになつている。このように遺言は要式行為であつて、共同遺言であるか否かの判断も客観的になされなければならないというべきである。そして本件遺言書が共同遺言であることはその形態からみて疑問の余地はない。

 共同遺言の形態には種々のものが考えられるが、たとえば、自筆遺言証書において数人の共同遺言者の内の一人が他の遺言者全員から委されて遺言書の全文・日付・氏名等を全て書いてしまう場合も十分あり有ることである。このような場合、共同遺言者を実際に書いた者が死亡してしまえば共同遺言書の作成を委せたのか否かは生存している共同遺言者の意思一つで、共同遺言であるか否かが左右されてしまうことになる。

 本件遺言書においても共同遺言者である相手方Bは被相続人と、遺言書を作成すること、および遺言書の内容は本件遺言書の如きものとすることを常々話し合つてきたというのであるから、相手方Bは遺言書の作成を被相続人に委任していたものと推測し得るところであり、そう解するのが合理的であるが、被相続人が死亡している現在においてはその真相を知ることは極めて困難である。

 このように遺言書の形態が共同遺言になつていること自体が紛争を招き、法律関係を複雑にすることになるために共同遺言であるか否かの判断は客観的にその形態からなされなければならないのである。
 
以上:2,498文字
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R 2- 1-21(火):共同遺言無効の主張を排斥し夫婦連名遺言を有効とした地裁判例紹介
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○民法第975条の共同遺言かどうかが問題になる事案を扱っています。民法第975条についての判例は余り見当たりませんが、亡Aの子である原告らが、同じくAの子である被告に対し、主位的には遺言書の無効に基づき、予備的には遺留分減殺請求権に基づき、本件不動産の移転登記手続を求めた事案において、本件遺言はAとAの妻Bとの共同遺言であるので無効である旨の原告らの主張を排斥し、本件遺言は有効であると認定した上で、本件不動産がAの遺産であるとすると同不動産上の登記は原告らの遺留分を侵害していると判断して、予備的請求を認容した平成24年11月16日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)を紹介します。

○民法第975条(共同遺言の禁止)で「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。」と規定されています。

○共同遺言が禁止される趣旨は、
①共同遺言を認める実際上の必要性はなく、慣習もない、
②共同遺言を認めると遺言の独立行為としての性質を害し、各遺言者の意思が相互に制約され、各遺言者の自由意思を保障し難い、
③各遺言者は、同時に死亡しないのが通例であるから、遺言の効力発生時期につき問題を生ずる、
④各遺言者の遺言の取消しについても問題を生ずる、
⑤各遺言の効力の牽連関係につき問題を生ずる
ことにあると説明されています(和田干一・遺言法162頁、久貴忠彦「共同遺言に対する一考察」曹時39巻3号429頁等)。

○一つの書面に2人の遺言が記載されていても切り離せば2つの遺言となり得るものは民法975条にいう共同遺言に当たらないとするのが通説です(中川善之助篇・註釋相続法下62頁〔山畠正男〕、我妻栄=唄孝一・相続法(判例コンメンタールⅧ)260頁、泉久雄ほか・民法講義8相続285頁〔泉久雄〕等)。

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主    文
1 原告らの主位的請求をいずれも棄却する。
2 被告は,原告らに対し,別紙物件目録1記載の土地及び同目録2記載の建物について,それぞれ平成23年4月2日遺留分減殺を原因とする持分各6分の1の所有権移転登記手続をせよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

1 主位的請求
 被告は,原告らに対し,別紙物件目録1記載の土地及び同目録2記載の建物について,東京法務局新宿出張所平成23年2月2日受付第2512号の所有権移転登記を,それぞれ被告の持分を3分の1,原告らの持分を各3分の1とする所有権移転登記に更正する登記手続をせよ。

2 予備的請求
 主文同旨

第2 事案の概要
 本件は,原告らが,被告に対し,遺言書の無効及び遺留分減殺請求に基づき,不動産の移転登記手続を求める事案であり,被告は,遺言書の有効性を前提として,原告らの特別受益や遺言者の債務などを主張している。
1 前提事実(争いがない事実以外は,各項掲記の証拠等により認める。)
(1) AとB(平成21年12月27日死亡)は,昭和11年6月4日に婚姻し,両名の間に原告X2(昭和11年○月○日生),原告X1(昭和17年○月○日生)及び被告(昭和22年○月○日生)が生まれた(甲2ないし8)。
(2) Aは,別紙物件目録1記載の土地(本件土地)及び同目録2記載の建物(本件建物)を所有していた(甲10,11・本件土地及び本件建物を併せて,「本件不動産」と呼ぶ。)。
(3) Aは,平成22年10月1日に死亡した(甲1)。
(4) Aは,平成13年10月2日付け自筆証書遺言(本件遺言)により,本件不動産を被告に相続させた(甲9・東京家庭裁判所平成22年(家)第11452号で検認済み)。
(5) 被告は,本件遺言に基づき,本件不動産について,相続を原因とする所有権移転登記手続(本件登記)を経由した(甲10,11)。
(6) 原告らは,本件登記は原告らの遺留分を侵害しているとの理由で,被告に対し,平成23年4月2日到達の書面により,遺留分減殺請求をする旨の意思表示をした(甲12の1,2)

2 原告らの主張
(1) 本件遺言は,AとBとの共同でなされた共同遺言であるので,民法975条により無効である。よって,原告らは,被告に対し,本件登記についてなされた東京法務局新宿出張所平成23年2月2日受付第2512号の所有権移転登記を,被告の持分3分の1,原告らの持分を各3分の1とする更正登記手続を求める。

(2) 仮に,本件遺言が有効であるとしても,本件登記は原告らの遺留分を侵害しているので,原告らは,被告に対し,予備的に,本件登記についてなされた東京法務局新宿出張所平成23年2月2日受付第2512号の所有権移転登記を被告の持分6分の4,原告らの持分を各6分の1とする更正登記手続を求める。

(3) 原告X2は,居住している千葉県野田市の土地(野田土地・甲13)について,昭和45年5月17日,Cから,225万円で購入している(甲14,15の1,2)。原告X2は,その当時,マツダ株式会社の株式1万4000株を所有しており(甲16),同株式を298万2000円で売却し(甲17)して,野田土地の購入資金に充てたものである。Aから原告X2に買い与えられたものではない。

(4) 原告X2は,被告が娘と一緒に旅行に行く際には,Aの食事の介助や排泄物の処理などを手伝っていた。旅行の前後を含めると約1週間は泊まり込みで両親の介護を手伝っていた。
 原告X2は,被告に対し,Aの入院費として15万円を2回,リフォーム代として100万円を渡している。更に,平成21年9月18日に20万円,同年11月9日に10万円を送金している(乙6)。Aが他界した後,被告の依頼でAの病院費用の残金15万円も送金している。原告X2はAの葬儀費用のうち,被告の負担する約20万円を立て替えている。
 原告X1は,平成22年1月14日,Bの葬儀代として37万9950円を送金した。また,原告X1は,通夜の際にも現金を支出しており,葬儀代としての合計は40万9950円となる。以上から,被告の権利濫用の主張は失当である。

(5) 本件土地の価格は4826万円,本件建物の価格は515万8600円である(甲18,平成23年固定資産評価額)。

(6) 被告は,Aより,500万円の贈与を2回,700万円の贈与を2回の合計2400万円の贈与を受けている。

(7) 被告にAからの相続債務がある旨の主張は,時機に遅れたものであり,訴訟の完結を遅延させるものであるので,却下すべきである。

3 被告の主張
(1) 本件遺言は,Aの単独遺言である。確かに,本件遺言中には,Aの他にBの記載がある。しかし,共同遺言が無効とされる趣旨は,各遺言者の意思表示の自由が妨げられること,単独に自由に遺言を撤回する自由が制限されること,一部無効原因がある場合の処理など法律関係が複雑になる危険があるなどの理由による。
 しかるに,本件遺言は,対象としている遺産はAの単独所有であり,Bは何ら権限を有しておらず,本件不動産に関して,遺言したり,その撤回をしたりするなど無効原因を生じる余地はなく,その内容は,Aの単独遺言に過ぎない。

(2) 原告X2の所有する野田土地(甲13)は,Aが,原告X2に対し,昭和45年5月17日に買い与えたものである。Aは,原告X2に対し,現金を渡していたもので,領収証は証拠にならない。また,原告X2は,Aの経営する印刷業の中で印刷工として稼働していたに過ぎず,原告X2の給料で野田土地の支払いが可能であったとは思われない。したがって,原告X2は,Aから生前贈与を受けていたことになるので,遺留分算定の基礎となる財産に加えるべきである。

 Aの相続開始時の本件土地の評価額は2384万9720円(乙1),本件建物の評価額は515万8600円(乙2)であり,合計2900万8320円である。
 他方,野田土地の評価額は1464万3604円である(乙3)。したがって,遺留分算定の基礎となる財産総額は4365万1924円であり,原告X2の遺留分は727万5320円であるので,遺留分の侵害はない。

(3) 権利濫用
ア 被告は,平成3年頃より,両親の面倒を見るため,千葉県我孫子市から,月に2回の頻度で両親の元に通っていたが,次第に毎日のように通うようになり,平成13年には,家族全員で本件不動産に引っ越した。
イ ところが,平成14年5月,Aは,硬膜下出血で倒れ,入退院を繰り返した。Bも排泄機能が弱まっていた。Aは要介護5,Bは要介護4と判定され,介護生活は壮絶であった。
ウ 原告らは,被告や両親に対し,金銭的援助すらなく,1年に1度顔を見せる程度であった。原告X1が両親の生前に被告宅を訪れたのは10年間で8回に過ぎない。
エ 被告は,介護に限界を感じて,ショートステイやデイサービスなどの力を借りたが,出費も嵩んで,最後の一年は被告らの家族の食費を削って凌いでいた。Aは,平成19年6月以降,療養型の病院や施設に入所していたため,Bを介護施設に預けるお金は捻出できず,週1回のデイサービスのみを利用した。
オ 被告が葬儀費用を原告X2に立て替えて貰ったことは認めるが,被告は,葬式当日の住職への心付け,食事代,おみやげ代などを負担している。
カ このような中で,本件遺言がなされたものである。したがって,原告らが,被告に対し,遺留分減殺を行うことは権利濫用である。

(4) 被告は,A夫婦のため,別紙一覧表(乙8)のとおり,出捐したものであって,これらは本来Aが負担すべきものであるので,Aの被告に対する債務である。したがって,原告らの遺留分額は減額される。

4 争点
 双方の主張を踏まえると,本件における主要な争点は,本件遺言の有効性の有無,原告ら及び被告の特別受益の有無である。

第3 争点に対する判断
 証拠(甲1ないし22,乙1ないし8,原告ら及び被告各本人尋問の結果)並びに弁論の全趣旨に基づき,以下のとおり,認定判断する。
1 本件遺言の有効性の有無
(1) 本件遺言(甲9)は,Aの自筆により作成され,平成13年10月2日の日付,署名及び押印がなされているが,遺言者Aの署名押印の左側に「B」との署名及び押印がなされているので,共同遺言(民法975条)として無効ではないか検討する。

(2) 同条が共同遺言を禁止した趣旨は,遺言者の自由な撤回ができなくなり,最終意思の確保という遺言の趣旨が阻害されたり,一方の遺言について無効原因がある場合に他の遺言の効力がどうなるかについて複雑な法律関係が発生するおそれがあるからである。

(3) ところが,本件遺言は,その内容をみると,Aがその所有する不動産について,長女Yに相続させるものであって,Bの意思とは関係なく,その後に自由に相続内容を変更や撤回することができるので,遺言者の自由な撤回ができなくなり,最終意思の確保という遺言の趣旨が阻害されたりするとの弊害は生じていない。加えて,Bは何ら遺言の内容を記しておらず,Aの上記不動産の遺言相続を確認しているだけであり,上記の複雑な法律関係が発生するおそれはない。

(4) したがって,本件遺言は,同条の趣旨に反することはないので,Aの単独遺言と解釈し,Bが同遺言を確認のために添え書きしたものと理解し,同条に反するものではなく,有効であると認める。よって,原告らの本件遺言の無効の主張は採用しない。


2 Aの債務の有無
 被告は,A夫婦のため,別紙一覧表(乙8)のとおり,合計2320万円を出捐したものであって,これらは本来Aが負担すべきものであるので,Aの被告に対する債務であると主張している。
 しかし,上記主張は,弁論準備手続の結果を踏まえて,証拠調期日に初めてなされたものであり,弁論準備手続の終結の際には何ら予告もしなかったものであるので,原告らの指摘するとおり,時機に遅れたものであり,訴訟の完結を遅延させるものであるので,却下すべきである。

 仮に,被告が,Aのために上記のとおりの出捐をしたとしても,親子間の相互扶助に基づくものであって,Aに対し,立替金などを請求していなかったこと,原告らに対し,被告のAに対する債権を行使していなかったことなどを考慮すると,寄与分の性質はあるとしても,被告のAに対する債権とは認められず,したがって,Aの債務の相続も観念できない。したがって,いずれにしても,被告の上記主張は採用できない。

3 原告X2の特別受益の有無
 被告は,原告X2の所有する野田土地(甲13)について,Aが,原告X2に対し,昭和45年10月7日に買い与えたものであると主張している。

 しかし,原告X2は,野田土地について,昭和45年5月17日,Cから,225万円で購入している(甲14,15の1,2)。その購入資金は,原告X2が当時所有していたマツダ株式会社の株式1万4000株を298万2000円で売却したものである(甲16,17)。更に,原告X2の供述によると,Aが,原告X2のために原告X2の給料を貯金し,その貯金していた金員を運用して原告X2名義で株式を運用していたものであり,その株式運用資金も実質的には原告X2のものである。
 したがって,原告X2がAから生前贈与を受けていたとの被告の上記主張は採用できない。

4 被告の特別受益の有無
 原告らは,被告がAから合計2400万円の贈与を受けていると主張しているが,その根拠はAから聴いたことに過ぎず,いつ頃のことなのか判然とせず,Aが日課としていたノートにもその旨の記載はない。
 被告は,原告らの上記供述内容を否定していることを考慮すると,原告らの上記主張はその証明がないと言わざるを得ない。

5 被告は,A夫婦の介護状況の中で,本件遺言がなされたことに照らすと,原告らの遺留分減殺の主張は権利濫用であると主張するが,原告らも可能な限りで,A夫婦の介護をしたこと,Aの入院費,A夫婦の葬儀費用の一部などを負担していることなどに照らすと,遺留分減殺の主張をすること自体が権利濫用と認めることはできない。

6 以上のとおり,本件不動産がAの遺産であるとすると,本件登記は原告らの遺留分を侵害しているので,原告らは,被告に対し,本件登記についてなされた東京法務局新宿出張所平成23年2月2日受付第2512号の所有権移転登記を被告の持分6分の4,原告らの持分を各6分の1とする限度で更正登記手続を求める権利があることになる。

第4 結論
 よって,原告らの主位的請求は理由がないが,予備的請求は理由がある。 (裁判官 杉本宏之)

 〈以下省略〉
以上:5,976文字
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R 2- 1-20(月):40代専業主婦の67歳まで逸失利益を認めた地裁判決紹介
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○「20代専業主婦の67歳まで逸失利益を認めた地裁判決紹介」の続きです。

○原告が運転する原告車と被告が保有し運転する被告車が正面衝突した交通事故について、原告が、被告に対し、損害賠償を請求した事案において、原告には、右大腿骨・脛骨骨折後の右膝関節の機能障害、右腓骨、右第3・4趾中足骨骨折後の右足関節機能障害(右下肢の機能障害9級)、 PTSD(14級9号)、左膝痛等(14級9号)の後遺障害が残存した(併合9級相当)と認められるところ、専業主婦である原告の後遺障害逸失利益につき、賃金センサス女性全年齢平均賃金を基礎とし、労働能力喪失率を35パーセント、労働能力喪失期間を21年として算出する等し、原告の請求の一部認容した平成26年12月19日名古屋地裁判決(自保ジャーナル1941号54頁)関連部分を紹介します。


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主    文
1 被告は原告に対し,3643万1314円及びこれに対する平成16年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は原告に対し,7166万4172円及びこれに対する平成16年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,平成16年10月16日,愛知県大府市内において,原告が運転する普通貨物自動車と被告が保有し運転する普通貨物自動車が正面衝突した交通事故について,不法行為(民法709条)または自動車損害賠償保障法3条(人的損害のみ)に基づく損害賠償請求権により,人的損害(付添看護費,入院雑費,休業損害,傷害慰謝料,後遺障害慰謝料,後遺障害逸失利益,弁護士費用相当損害金)及び物的損害(眼鏡,弁護士費用相当損害金)の賠償と,これに対する不法行為日(事故日)から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
         (中略)

第3 争点に対する判断(以下,当裁判所の計算では1円未満を切り捨てる。)
1 人的損害

(1) 付添看護費 83万3672円(請求:83万7872円)

         (中略)


(3) 休業損害 666万0892円(請求:1045万7600円)
ア 原告の主張
 原告は主婦であり,平成16年賃金センサス女44歳(年齢別)平均賃金392万1600円を基礎収入とする。本件事故日から平成19年5月17日まで32か月間休業を余儀なくされた(392万1600円÷12月×32月)。
イ 被告の主張
 原告の主張する全期間について完全に就労が制限されていたとは考えられない。
ウ 判断
 原告は専業主婦であり,平成16年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・女・全年齢平均賃金350万2200円を基礎収入とする。原告の傷害の内容や程度,後遺障害等級等に照らし,以下の就労制限を認める。
 H16.10.16~H17.4.17(184日):100%
 H17.4.18~H18.6.7(416日):平均70%
 H18.6.8~6.17(10日):100%
 H18.6.18~10.25(130日):平均60%
 H18.10.26~12.22(58日):100%
 H18.12.23~H19.5.17(146日):平均50%

 したがって,休業損害は666万0892円を認める。
 350万2200円÷365日×184日×100%=176万5492円
 350万2200円÷365日×416日×70%=279万4083円
 350万2200円÷365日×10日×100%=9万5950円
 350万2200円÷365日×130日×60%=74万8415円
 350万2200円÷365日×58日×100%=55万6513円
 350万2200円÷365日×146日×50%=70万0439円
 176万5492円+279万4083円+9万5950円+74万8415円+55万6513円+70万0439円=666万0892円

(4) 傷害慰謝料 314万円(請求:400万円)
ア 当事者の主張
 原告は400万円を請求し,被告は金額を争う。
イ 判断
 原告の傷害の内容や程度,入通院期間,実通院日数等を総合するに,傷害慰謝料は314万円が相当である。

(5) 後遺障害慰謝料 690万円(請求:1500万円)
ア 原告の主張
 原告には,①右大腿骨について癒合不全(常に硬性補装具を必要とする。7級10号)及び長管骨変形(12級8号),②右膝関節拘縮(10級11号。甲13),③右足関節拘縮(10級11号),④左膝関節偽関節(8級9号),⑤右膝・右足首周囲及び左膝の醜状(14級5号),⑥右下肢短縮(1cm,13級8号),⑦左中環指拘縮(12級10号),⑧腰部・下肢の激しい痛み(RSD。7級4号かそうでなくとも9級10号),⑨PTSD(12級)の後遺障害(併合5級)が残存した(甲11~16,43,48)。
 鑑定人Bは,本件事故により両下肢が挟まれたことによる骨折,筋肉や神経の圧挫,血流障害により原告がRSDを発症したと認定し,これにより立位や歩行の困難を来たし,労働能力が客観的にも相当程度制限されていることを認めている。
 後遺障害慰謝料は1500万円が相当である。

イ 被告の主張
 ③右足関節拘縮(10級11号)は認める。①右大腿骨変形は,骨癒合が完了し偽関節に当たらず,外部から想見できる程度の変形でもない(非該当)。②右膝関節拘縮は12級7号相当である(甲13は途中経過の調査結果である)。⑤右膝・右足首周囲及び左膝の醜状は非該当で,④左膝関節偽関節,⑥右下肢短縮の後遺障害は残存していない。歩行困難と本件事故との間に相当因果関係がないか,あるとしても上記後遺障害の派生症状であって,独立した評価を受けない。腰の痛みと本件事故とは相当因果関係を欠く。⑦左中環指拘縮は,遠位指節間関節の可動域制限に過ぎず,強直もしていない(非該当)。⑧腰部・下肢の激しい痛み(RSD)は,原告が主張する症状と,症状照会に対する担当医所見《甲14》に記載されている自覚症状は明らかに異なり,原告の主張に沿う症状は,伊東整形外科の診療録等に殆ど記載されておらず(乙8),一定していないなど,客観的な所見を欠く。

 RSDではなく,右下肢機能障害の派生症状と解され,独立した後遺障害としても14級9号にとどまる。⑨PTSDが認められるには,〈ア〉自分又は他人が死ぬ又は重傷を負う様な外傷的な出来事を体験したこと,〈イ〉外傷的な出来事が継続的に再体験されていること,〈ウ〉外傷と関連した刺激を持続的に回避すること,〈エ〉持続的な覚醒亢進症状があることの4要件をいずれも満たす必要があるところ,原告の症状は改善の傾向も見受けられ,身体症状の影響も否定できない(14級9号)。
 後遺障害の内容程度(併合9級相当)と,慰謝料額を争う。

ウ 判断
(ア) 原告には,〈a〉右大腿骨・脛骨骨折後の右膝関節の機能障害(右下肢の痛み・しびれ,冷感,歩行時痛等が派生。なお,原告は10級11号《関節の運動可能領域が,健側の運動可能領域の2分の1以下に制限されているもの》を主張するが,後遺障害診断書(甲2《枝番号を含む》)に照らし採用できない。12級7号が相当である),右腓骨,右第3・4趾中足骨骨折後の右足関節機能障害(右足関節拘縮。10級11号。これらを併せて右下肢の機能障害9級),〈b〉PTSD(14級9号),〈c〉左膝痛等(14級9号)の後遺障害が残存した(併合9級相当)と認められる(乙1,2,鑑定)。

(イ) ①右大腿骨変形,④左膝関節偽関節,⑤右膝・右足首周囲及び左膝の醜状,⑥右下肢短縮(0.6cm。鑑定),⑦左中環指拘縮については,自賠責保険の後遺障害等級に該当する程度の後遺障害の残存を認めるに足りる証拠がない。

(ウ) ⑧腰部・下肢の激しい痛みについては,原告はRSDの罹患を主張するが,RSDと診断するために必須とされる神経損傷,関節拘縮と骨の萎縮,皮膚の変化(皮膚温の変化,皮膚の萎縮)のいずれの要件の充足も認めるに足りる証拠はなく,採用できない。
 これらの痛みは,大腿骨及び脛骨骨折による受傷時の筋肉や神経の圧挫と血行障害を要因として,関節可動域制限の派生的症状として発生するものというべきである(鑑定)。

(エ) ⑨PTSD診断については,国際保健機関の国際疾病分類ICD-10診断ガイドラインやDSM-Ⅳ(アメリカ精神医学界の診断基準)等が用いられるべきであり,外傷体験の存在(生命を脅かされる驚異的体験により心的外傷が発生したこと),再体験(原因事故のフラッシュバックや関連性のある悪夢の存在),回避(外傷体験を想起させるような刺激を避けようとする精神活動の現れ),覚醒の亢進(入眠,睡眠困難)を必要とする。

 そうしたところ,原告について,PTSDの中核をなす再体験(フラッシュバック)に関し,原因事故発生状況と似た状況における恐怖感情や身体状況の変化,事故の再発を恐れる態度等は窺われ,その他の要件についても完全に否定することはできない。しかしながら,本件事故は「生命を脅かされる驚異的体験」とするほどに激烈なものではない。反復性(フラッシュバック)についても反復性や侵入性が顕著に認められるものではなく,車に乗ることはできるなど,回避の程度も強度ではない。心理的な感受性と覚醒の亢進による易怒性,集中困難,過度の警戒心や過剰な驚愕反応等の頑固な症状が明らかに認められるものでもない。
 これらを総合すると,原告は,本件事故によりPTSDとはいえないものの,非器質性精神障害に罹患したと認められ,14級が相当である。

(オ) そこで,後遺障害慰謝料については690万円を認める。

(6) 後遺障害逸失利益 1571万5597円(請求:3547万2347円)
ア 原告の主張
 平成16年賃金センサス女全年齢平均賃金350万2200円を基礎収入とし,労働能力喪失率79%,労働能力喪失期間21年(ライプニッツ係数12.821)が相当である(350万2200円×79%×12.821)。

イ 被告の主張
 後遺障害の内容程度を争う(併合9級相当)。

ウ 判断
 基礎収入は,平成16年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・女・全年齢平均賃金350万2200円とし,既述の後遺障害の内容や程度に照らし,労働能力喪失率は35%,労働能力喪失期間は21年(ライプニッツ係数12.821)とする。後遺障害逸失利益は1571万5597円となる(350万2200円×35%×12.821)。

2 物的損害―眼鏡 4万5600円(争いなし)

第4 結論
 原告の損害は3367万3761円(人的損害3362万8161円,物的損害4万5600円)であり,55万2447円を人的損害に充当すると(争いなし),残額は3312万1314円となる。さらに,本件事故と相当因果関係を有する弁護士費用相当損害金として331万円(請求:600万円)を認めるのが相当であるから,被告は原告に対し,3643万1314円と遅延損害金を支払うべきである。なお,被告は仮執行免脱宣言を申し立てるが,本件事案の性質に照らすとこれを付すのは相当でないから,同申立ては却下する。よって,主文のとおり判決する。
 (裁判官 藤野美子)
以上:4,752文字
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R 2- 1-19(日):ハーバード大の研究でわかったピーナッツで長生き!”紹介3
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○「ハーバード大の研究でわかったピーナッツで長生き!”紹介2」の続きで、第2章アンチ情報は間違いだらけ!ピーナッツ「常識のウソ」の紹介です。以下、その備忘録です。

ピーナッツ常識のウソ
①太る→× カロリーは高いが、コレステロールは含まれていない
ピーナッツの栄養素は大豆と似ている
成分は、大豆がタンパク質38%、脂肪18%、炭水化物15%、糖質15%、水分14%
ピーナッツは、タンパク質26%、脂肪49%、炭水化物19%、

ピーナッツは約半分が脂質だが、飽和脂肪酸約20%、不飽和脂肪酸約80%、で不飽和脂肪酸はオメガ6のリノール酸が約30%、残りの半分はオメガ9のオレイン酸、
ピーナッツにはオレイン酸がたっぷり含まれており、悪玉コレステロールのLDLコレステロールを減らしてくれる
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値が高いときは、肉や乳製品から魚や野菜中心の食生活に切り替えることが必要
食物繊維にはコレステロールが腸から吸収されるのを防ぎ、便として排出させる働きがあるところ、ピーナッツの脂質には、コレステロールは含まれず、不飽和脂肪酸や食物繊維が豊富

②ニキビ・吹き出物ができる→根拠無し
ニキビは肌の毛穴に皮脂が詰まって「アクネ菌」が増殖し毛穴の中で炎症を起こす病気-油が原因だがピーナッツは膨大な量を食べない限り無関係
ピーナッツには、ビタミンB1・B2・B6・E、オレイン酸、アミノ酸の一種の「アルギニン」、レスベラトロール等美肌効果成分がたくさん含まれている

③鼻血が出る→× 全く根拠無し
ピーナッツの脂質は不飽和脂肪酸が中心なので鼻血の心配は無用
但し、日本人ではピーナッツにアレルギー反応を起こす人の割合が2.8%居る
アレルギーは子供に多いが、大人でもこれまで全く食べていなかった人が毎日30粒も食べるようになったらアレルギー反応を起こす可能性がある

コラム
ピーナッツの産地は日本では千葉県が8割弱、1割が茨城県
日本でのピーナッツの本格的栽培は明治時代で、明治9年に千葉県山武市始まる
関東ローム層の火山灰土壌はピーナッツの子房が潜り込むのに適していてほかの野菜に比べて育てやすかったため栽培が盛んになった
以上:904文字
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R 2- 1-18(土):20代専業主婦の67歳まで逸失利益を認めた地裁判決紹介
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○「30代専業主婦の67歳まで逸失利益を認めた地裁判決紹介」の続きで専業主婦の逸失利益についての判例紹介で、今回は、20代専業主婦の後遺障害に伴う逸失利益を認めた平成30年5月29日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)関連部分を紹介します。

○原告は、左示指,左中指の2指の可動域が,健側(右示指,右中指)の可動域角度の2分の1以下に制限により「1手のおや指以外の2の手指の用を廃したもの」として自賠責後遺障害第10級7号に該当し、67歳まで41年間・労働能力喪失率27%での逸失利益として1740万3648円を請求し、被告側では原告に主婦性が認められないことや症状固定前の原告の生活状況からすれば,原告の労働能力喪失率が27%もあったと考えるのは不合理であると主張していました。

○判決は、原告は,夫や子らと同居する専業主婦であることから,基礎収入については,症状固定時である平成27年の賃金センサス・女・学歴系全年齢平均372万7100円とし原告の後遺障害は,10級7号に該当する左中手骨開放骨折による左手指の関節機能障害(甲13)で労働能力喪失率は27%,労働能力喪失期間は症状固定時の26歳から67歳までの41年間(ライプニッツ係数17.2944)とするのが相当として、原告主張金額をそのまま認めました。

○損害トータルで2788万0105円の請求のうち2526万0927円を認めた判例で、認容率は90%の原告側の大勝利と言える判決です。

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主   文
1 被告Y2は,原告に対し,2526万0927円及びこれに対する平成26年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告の被告Y2に対するその余の請求を棄却する。
3 原告の被告Y1に対する請求を棄却する。
4 訴訟費用は,これを10分し,その9を被告Y2の負担とし,その余は原告の負担とする。
5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告らは,原告に対し,連帯して,2788万0105円及びこれに対する平成26年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,被告Y2が運転し原告が後部座席に同乗する普通自動二輪車(以下「Y2車」という。)と被告Y1が運転する普通乗用自動車(以下「被告車」という。)との間の交通事故(以下「本件事故」という。)について,原告が,被告らに対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条に基づき,損害賠償金2788万0105円及びこれに対する平成26年1月21日(本件事故日)以降の遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
1 前提事実(争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

         (中略)

(4) 原告は,自賠責保険の後遺障害等級認定において,左示指,左中指の2指の可動域が,健側(右示指,右中指)の可動域角度の2分の1以下に制限されることになり,「1手のおや指以外の2の手指の用を廃したもの」として自賠法施行令別表第二第10級7号に該当し,左手痛,左示指から環指手背部のしびれについては前記等級に含めての評価となると判断された(甲13)。

         (中略)

(原告主張)
カ 休業損害 359万2317円
 原告は,本件事故当時,原告の子とともに2人暮らしをする専業主婦であった。入院中は家事労働はできず,退院後についても,原告の利き手が左手であったことから,平成26年9月までは左手で物を持つことすらできなかったため,入院時と同様家事労働はほとんどできなかった。同年10月以降も,かろうじて物を持てる程度で,料理をしたり,細かい作業をすることはできなかったため,家事労働に大きな支障がある状態だった。
 ・事故日~平成26年3月27日
 364万1200円(平成26年度・女・平均賃金)×66日÷365日=65万8408円
 ・同年3月28日~同年9月30日
 364万1200円×187日÷365日×80%=149万2393円
 ・同年10月1日~平成27年7月16日
 364万1200円×289÷365日×50%=144万1516円
 ・以上合計359万2317円

キ 後遺障害逸失利益 1740万3648円
 372万7100円(平成27年度・女・平均賃金)×27%(後遺障害等級10級)×17.2944(67歳-症状固定時26歳=41年)=1740万3648円

         (中略)

(被告主張)
カ 休業損害
 否認する。
 医療記録によれば,本件事故当時,原告は両親及び4人の子と同居中(配偶者は服役中)とされており,原告は,4人の子がいるのに被告Y2と友人のところに遊びに行ってそのまま外泊してしまうような生活を送っていたことからすると,原告宅の家事は両親により行われていたか,少なくとも原告のみで家事が行われていたとは到底考え難い。
 原告は入院中もたびたび外泊を繰り返すなどしており,原告の傷害からは左手が不自由であるにとどまることなどからすると,入院期間を除き休業の割合が100%であったとはみられず,医療記録によれば,平成26年4月頃にはほとんど就労できるようになっていたとみるのが自然である。

キ 後遺障害逸失利益
 原告に主婦性が認められないことや症状固定前の原告の生活状況からすれば,原告の労働能力喪失率が27%もあったと考えるのは不合理である。

         (中略)


第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(事故態様及び過失の有無・過失割合)について


         (中略)

2 争点(2)(原告の損害)について
(1) 治療費 245万6000円

         (中略)

(6) 休業損害 118万3139円
 証拠(甲27,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,本件事故当時,二男と2人で暮らしており,二男を託児所に預けて飲食店で仕事をしながら家事育児を行っていたこと,②原告は,入院中,家事労働ができず,退院後についても,利き手が左手であり,平成26年9月までは左手で物を持つことすらできなかったため,家事労働に一定の支障があったこと,③同年10月以降も,家事労働に一定の支障があったことが認められる。

 上記認定事実によれば,原告の基礎収入額は平成26年の賃金センサス・女・学歴系全年齢平均の364万1200円とするのが相当であり,入院期間(合計31日)は100%,入院期間を除いた平成27年7月16日(症状固定日)までの期間(合計146日)は平均して60%の休業損害を認めるのが相当である。
 (計算式)
 ・364万1200円÷365日×31日≒30万9252円
 ・364万1200円÷365日×146日×0.6≒87万3887円
 ・以上合計118万3139円

(7) 後遺障害逸失利益 1740万3648円
 原告は,夫や子らと同居する専業主婦であることから,基礎収入については,症状固定時である平成27年の賃金センサス・女・学歴系全年齢平均372万7100円とするのが相当である。
 また,原告の後遺障害は,10級7号に該当する左中手骨開放骨折による左手指の関節機能障害(甲13)であると認めるのが相当であるから,労働能力喪失率は27%,労働能力喪失期間は症状固定時の26歳から67歳までの41年間(ライプニッツ係数17.2944)とするのが相当である。

 (計算式)372万7100円×0.27×17.2944=1740万3648円

(8) 傷害慰謝料 195万円
 原告の傷害の内容・程度等によれば,入通院期間等によれば,障害慰謝料として195万円を認めるのが相当である。

(9) 後遺障害慰謝料 550万円
 原告の後遺障害の内容・程度等によれば,後遺障害慰謝料として550万円を認めるのが相当である。

(10) 小計 2862万5927円

(11) 既払金 -565万5000円

(12) 控除後 2297万0927円

(13) 弁護士費用 229万円
 本件事案の内容,認容額等に照らすと,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は229万円とするのが相当である。

(14) 損害額合計 2526万0927円

第4 結論
 以上によれば,原告の請求は,被告Y2に対し,自賠法3条に基づき,2526万0927円及びこれに対する平成26年1月21日(本件事故日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,被告Y2に対するその余の請求及び被告Y1に対する請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第27部 (裁判官 野々山優子)
以上:3,622文字
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