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R 7-12- 8(月):11年間継続不貞行為慰謝料請求を消滅時効と夫の弁済で棄却した地裁判決紹介
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○原告妻が、配偶者医師Cとの不貞相手である被告看護師に対し、平成23年から令和4年まで続き令和3年にはCの子を出産した不貞行為について、不法行為による損害賠償請求として慰謝料1100万円の支払を求めました。

○これに対し被告は、Cとの交際当初から原告・Cの婚姻関係は破綻しており、遅くても令和元年10月には破綻し、且つ、令和元年10月以前の不貞行為損害賠償債務は時効消滅している、その後の不貞行為については令和4年2月にCが原告に500万円を支払って損害賠償義務は消滅したと主張しました。

○この事案で、原告の被告に対する損害賠償請求権のうち、不貞行為に係るものは、被告による消滅時効の援用によって消滅しており、500万円の弁済までの不貞行為に係るものは、同弁済によって消滅しており、そして、被告が同弁済以降にCと不貞行為に及んだことを認めるに足りる証拠はないとして、原告の請求を棄却した令和6年9月9日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

*********************************************

主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する令和5年1月8日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は、原告が、配偶者との不貞相手である被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料1100万円及びこれに対する不法行為後である令和5年1月8日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実
 証拠(枝番のあるものについては特記なき限り全ての枝番を含む。以下同じ。)等を掲記していない事実は、当事者間に争いがない事実、当裁判所に顕著な事実及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実である。
(1)当事者等
 原告は看護師であり、平成12年1月1日、医師であるC(以下「C」という。)と婚姻した。原告とCとの間には、平成12年○月○日及び平成17年○○月○日に、それぞれ子が生まれている。(甲1)
 被告は看護師である。

(2)被告とCとの不貞行為
 被告は、平成23年7月頃から、Cと不貞行為に及ぶようになり、令和3年○月○○日、Cの子を出産した。

(3)本件訴訟の提起日
 原告は、令和4年12月13日、本件訴訟を提起した。

3 争点及びこれに対する当事者の主張

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 争点1(婚姻関係破綻の抗弁の成否及び故意過失の有無)について

 被告主張の婚姻関係破綻については、これを基礎付ける事実を認めるに足りる証拠がない。
 これに対し、被告は、Cが原告との婚姻関係は破綻していると述べた旨供述する。しかしながら、証拠(原告本人、被告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告が平成24年頃に被告に対しCとの関係を問いただす電話をかけた事実や、その際に1度会いたい旨伝えるなどした事実が認められる。そうすると、被告の前記供述どおりの事実が認められるとしても、婚姻関係破綻は認められず、被告に過失がないということもできない。したがって、争点1に係る被告の主張は採用することができない。

2 争点2から4まで(損害額並びに消滅時効及び弁済の抗弁の成否)について
(1)認定事実

前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

     (中略)

イ Cは、被告に対し、令和4年2月27日の原告に対する500万円の送金(前記ア(ア))が記帳された、C名義の口座通帳の写しを交付した(乙1、被告本人)。

ウ Cが令和4年2月27日に500万円を振り込んだ原告名義の口座の残高は、当該500万円が着金する直前の時点で、27万3631円であった。同口座には、前記500万円の着金後、同年3月1日及び同月22日にもCから100万円ずつの着金があったところ、原告は、同月4日から同月28日までにかけて、1回につき50万円を14回にわたり同口座から引き出した。同日の引出し後における同口座の残高は、その余の振込等による増減を含め、25万3631円であった。(甲5の2)

(2)検討
ア 被告は、令和元年12月10日以前の不貞行為に係る損害賠償請求権につき、消滅時効を援用している(第2の3(3))。
 そこで検討すると、証拠(原告本人)によれば、原告は、令和元年12月10日以前から、被告とCとの不貞行為を知っていたものと認められる。そして、被告とCとの不貞行為により原告が被る精神的苦痛は、不貞行為が終了するまで不可分一体のものとして把握しなければならないものではなく、原告は、被告とCとの不貞行為を知った時点で、被告に対し慰謝料の支払を求めることを妨げられるものではなかったというべきである。そうすると、同日以前の損害に係る損害賠償請求権については、同日から3年を経過した令和4年12月10日時点で消滅時効期間が満了している。

 したがって、令和元年12月10日以前の損害に係る損害賠償請求権は、被告による消滅時効の援用によって消滅している。

イ もっとも、被告は、令和元年12月11日以降も、Cとの不貞行為に及んでいたものと認められる。
 しかしながら、原告とCとの婚姻期間や、両者の間に2人の子がいること、被告が令和3年○月○○日にCの子を出産したことなど、本件における一切の事情を踏まえても、令和元年12月11日以降における被告とCとの不貞行為による原告の損害は、500万円を超えるものではない。なお、原告は、被告がCを脅迫して不倫関係を継続したとか、Cに避妊しないよう強要したなどと主張するが、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。

 そして、Cは、令和4年2月27日、原告に対し、500万円を送金した(認定事実ア(ア))ところ、被告及びCの不法行為責任は連帯責任であるから、前記500万円が被告とCとの不貞行為に係る慰謝料として支払われたものであれば、原告の被告に対する損害賠償請求権は消滅するものというべきである。

ウ そして、次の諸点に鑑みれば、令和4年2月27日に送金された前記500万円は、被告とCとの不貞行為に係る慰謝料として支払われたものと認められる。
(ア)すなわち、Cは、原告に対し、令和4年3月から令和5年2月にかけて、ほぼ毎月にわたり、合計960万4510円を送金している(認定事実ア)。また、原告は、これを生活費に充てた旨及び住宅ローンには充てていない旨供述している(原告本人)ところ、当該供述どおりの事実が認められる。さらに、Cは、前記送金とは別途学費を支払っていた旨証言する(証人C)ところ、当該証言どおりの事実が認められる。そして、前記960万4510円は、住宅ローン等を除く家族4人の1年間の生活費として十分なものであるところ、これと別途送金された前記500万円につき、生活費の使途で送金されたものとは認め難い。

 また、前記500万円は、1回当たりの送金額も他の送金と比較して高額であり、この点からも他の送金とは性質が異なるものであるとうかがわれる。
 以上によれば、前記500万円の送金は、その時期における特別な出来事を理由とするものと推認することができる。そして、令和3年○月○○日、被告がCとの子を出産するという出来事があった(前提事実(2))ところ、その出来事が原告に発覚したのは、同日の約半年後(令和4年2月19日頃)であり、かつ、令和4年2月27日以前であったと認められる(証人C)。そうすると、同日の前記500万円の送金は、前記出来事の発覚直後に行われたものと認められるところ、他に前記500万円の送金理由となるような特別な出来事は見当たらない。以上より、前記500万円は、被告との不貞行為に係る慰謝料の趣旨で送金されたものと推認することができ,この推認を覆す事実をうかがわせる証拠は見当たらない。

(イ)また、Cは、被告に対し、前記500万円の送金が記帳された通帳の写しを交付した(認定事実イ)。そして、被告は、前記写しの交付を受けた理由として、Cから慰謝料として原告に前記500万円を支払った旨聞いたため、その証拠を見せてほしいと依頼した際に交付された旨供述する(被告本人)ところ、Cが何の理由もなく被告に前記写しを交付するとは考え難いことや、被告供述の点以外にCが被告に前記写しを交付する理由が見当たらないことなどに鑑みれば、被告の前記供述は合理的なものとして信用することができる。したがって、Cは、被告に対し、前記500万円は慰謝料として支払ったものである旨説明したと認められる。 

(ウ)以上の諸点等に鑑みれば、前記500万円は、被告とCとの不貞行為に係る慰謝料として支払われたものと認められる。
 これに対し、原告は、前記500万円が交付される以前にも、Cから200万円から300万円程度の現金交付を受けたことがある旨供述する。しかしながら、そのことを裏付ける証拠はなく、原告の供述は採用することができない。この点を措いて、原告が過去にCから200万円から300万円程度の現金交付を受けたことがあるとしても、200万円から300万円と500万円との間には相当額の開きがあることや、前記(ア)から(ウ)までに述べた諸点に鑑みれば、前記認定判断は左右されない。

 また、原告は、前記500万円は生活費として送金されたものである旨主張する。しかしながら、既述の諸点に照らし採用することができない上、以下に述べるとおり原告の主張書面の記載が変遷していることからも、採用することができない。すなわち、前記500万円に係る原告の主張書面の記載をみると、原告は、当初は前記500万円の受領自体を否定する旨の主張書面を提出していた(準備書面(2)2頁参照)にもかかわらず、その後に前記500万円の受領に係る客観証拠(乙1)が提出されるや、前記500万円の受領自体は認める旨の主張書面を提出した(準備書面(3)2頁参照)。その後、原告は、前記500万円を受領する以前から数百万円単位の送金を受けていた旨の主張書面を提出した(準備書面(4)2頁以下参照)ものの、この点についても客観証拠(甲4、5)との不整合が明らかになるや、送金ではなく手渡しを受けた旨の主張書面を提出した(準備書面(5)1頁、準備書面(6)1頁以下参照)。

このように、前記500万円に係る原告の主張書面の記載は変遷を繰り返しているところ、そのことにつき合理的理由は見当たらない。これに対し、原告は、前記変遷の理由につき、前記500万円の送金を把握していなかったなどと主張するが、原告が送金後約1か月で前記500万円の全額を引出していること(認定事実ウ)に鑑みれば、原告の主張は不自然不合理であり、採用することができない。また、原告は、令和4年以前にもブランド品の購入費用として年間500万円程度を手渡しで受領していた旨供述し、これに沿う主張をするが、そのことを裏付ける証拠はない上、既述の変遷に鑑みても、採用することができない。

 さらに、Cは、前記500万円の送金が記帳された通帳の写しを被告へ交付した理由として、被告が新居へ転居する際に、収入証明として交付を求められた旨証言する。しかしながら、証拠(乙1)及び争いのない事実によれば、被告が新居へ転居したのは令和3年5月であるのに対し、前記写しには令和4年3月までの取引履歴が記載されていると認められる。そうすると、前記写しが交付されたのは、被告による転居から少なくとも10か月程度後であるところ、そのような時期に転居のための収入証明を求められるなどということは考え難く、Cの前記証言は採用することができない。

 加えて、Cは、前記500万円は生活費として送金したものである旨証言する。しかしながら、Cは、既述のとおり被告に対しては前記500万円を慰謝料として支払った旨述べる一方、原告に対しては前記500万円を生活費として支払った旨述べる(甲9)など、原告と被告の双方に対し場当たり的な発言を繰り返し、もって自身の保身を図っていたものと認められる。また、証拠(被告本人、証人C)によれば、Cは、尋問時点では被告との不貞関係を断ち切り、原告との関係修復を望んでいたものと認められる。以上によれば、Cが原告の期待に沿う内容であると知りながら行った証言は容易に信用することができないところ、証拠(甲9)によれば、Cは、尋問時点において、原告から前記500万円を生活費として送金した旨述べるよう期待されている旨認識していたと認められるから、Cの前記証言は採用することができない。
 以上のほか、原告がるる主張する点は、既述の諸点に照らし、いずれも採用することができない。

(3)まとめ
 以上より、原告の被告に対する損害賠償請求権のうち、令和元年12月10日以前の不貞行為に係るものは、被告による消滅時効の援用によって消滅しており、同月11日から前記500万円の弁済(令和4年2月27日)までの不貞行為に係るものは、同弁済によって消滅している。そして、被告が同弁済以降にCと不貞行為に及んだことを認めるに足りる証拠はない。

第4 結論
 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第5部 裁判官 関泰士
以上:5,507文字
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R 7-12- 7(日):映画”蜘蛛巣城”を観て-三船氏演技に感嘆するも何故か感動なし
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○令和7年12月6日(土)は、ツルカメフラメンコアンサンブルの練習日でしたが、練習終了後、夕食を取りながら、恒例の映画鑑賞で、最近購入したばかりの4KUHDソフトで1957(昭和32)年製作映画黒澤明監督作品映画「蜘蛛巣城」を鑑賞しました。これはLD・DVD・BDいずれも購入しておらずこれまで鑑賞したことがないと思っていましたが、ラストの矢が飛び交うシーンはかすかに記憶があり、昔、TV放映されたのを観ていたのかもしれません。

○映画コムでは、「シェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換え描いた、戦国武将の一大悲劇」と解説されています。が、「マクベス」を聞いたことがありますが、読んだことは無くネットでは、シェイクスピアの戯曲『マクベス』は、実在のスコットランド王マクベス(在位1040年 - 1057年)の生涯に基づいた悲劇で、「マクベスは、3人の魔女から自分が王になると予言されます。妻のレディ・マクベスにそそのかされた彼は、現国王ダンカンを暗殺し、王位を奪います。しかし、その座を守るために更なる悪事を重ね、妄想と罪悪感に苛まれ、最終的に破滅へと向かいます。」と解説されています。

○映画「蜘蛛巣城」は、上記解説のとおりのストーリーで、「マクベス」に当たる主人公鷲津武時役を三船敏郎氏が見事に演じています。3年後昭和35年製作映画「悪い奴ほどよく眠る」での淡々とした演技とは違って、目を剥いてのギラギラとした迫真の演技で狂気の世界を見事に演じ、ラストの夥しい矢に射られて滅するシーンの迫力は圧巻でした。三船敏郎氏は不器用との評価も聞いたことがありますが、その演技は、単なる技術を超えて、役柄の人間的な側面や感情を生々しく表現する力に満ちており、それが時代や国境を超えて高く評価され続けているとの評価を納得します。不器用とは、おそらく演技では無く自らの実際の生き方と思われます。

○この映画で三船敏郎氏の演技力の凄さは実感しましたが、感動したかと言われると首をかしげざるを得ません。残念ながら、後々の映画「乱」映画「影武者」に通じる、何か面白くない、という感想で終わりました。私の感性の低さのせいと思われますが、映画「七人の侍」・「用心棒」・「椿三十郎」・「赤ひげ」等に通じる痛快さから生じる感動がありませんでした。

『蜘蛛巣城』(1957)予告編 [HD]


以上:981文字
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R 7-12- 6(土):暴力団排除条項により暴力団員の死亡共済金請求を棄却した地裁判決紹介
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○原告の配偶者(昭和49年○月○日生、平成16年6月23日原告と婚姻)と被告とは、原告の配偶者を共済契約者・被共済者、被告を共済者とする、平成17年5月1日効力開始の定期生命共済・総合保障2型の共済契約を締結しました。原告の配偶者が18歳~60歳の間に病気で死亡した場合、死亡共済金400万円が原告に支払われるもので、掛金は月額2000円で、契約は1年毎に更新して継続してきました。原告の妻は、令和4年6月3日、病気で死亡し、原告(死亡時点において指定暴力団の暴力団員)は、被告に対し死亡共済金400万円の支払を求めました。

○被告は、平成26年10月、本件契約に関する約款を変更し、共済者は、共済金受取人が、暴力団員(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を含む。)に該当すると認められる場合、共済契約を解除することができる旨、解除した場合において、該当事由が生じた時から解除した時までに発生した支払事由については、共済金を支払わない旨を規定しました(本件暴力団排除条項)。

○そこで被告は原告に対し、令和4年7月25日付けで、原告に対し、本件暴力団排除条項に基づき、共済金受取人である原告が暴力団員であることを理由に、本件契約を解除する旨の意思表示をして共済保険金支払を拒否し、原告は支払を求めて提訴しました。

○これに対し、保険法の遡及適用の点からしても、定型約款の変更による契約の変更の点からしても、平成26年10月約款変更の本件暴力団排除条項は、平成17年5月1日効力開始の本件契約に適用されるとし、また、本件解除は、信義則違反とはいえないとして、原告の請求を棄却した令和6年3月26日広島地裁尾道支部判決(判時2632号○頁、参考収録)関連部分を紹介します。

○暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)第2条では、暴力団とはその団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいうとされ、暴力的不法行為等とは別表に掲げる罪のうち国家公安委員会規則で定めるものに当たる違法な行為をいうと定義され、別表には60個の犯罪が記載されています。

○指定暴力団は、暴対法3条で公安委員会が指定暴力団と指定した団体ですが、指定に至らない暴力団はどのように認定されるのかは、現時点では私の調査不足でハッキリしません。

○この判決では、暴力団員でいることは、保険金の不正請求を行わないことへの信頼を著しく損なう事情であり、金融機関はいかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には資金提供を行わないことを求められているとして、暴力団員は、死亡保険金(共済金)は受け取れないことになります。自業自得とは言え、気の毒だとの感もします。この判決は高裁でも維持されており別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求の趣旨

 被告は、原告に対し、400万円、及び、これに対する令和5年9月7日から支払済みまで年3%の割合による金銭、を支払え。
【請求の法的根拠】
主請求:原告の配偶者と被告との間の共済契約
附帯請求:遅延損害金(起算日は催告である訴状送達の翌日、利率は民法所定)

第2 事案の概要
1 前提事実

(1)原告の配偶者(昭和49年○月○日生、平成16年6月23日原告と婚姻)と被告とは、次の通り、平成17年5月1日効力開始、原告の配偶者を共済契約者・被共済者、被告を共済者とする、定期生命共済・総合保障2型の共済契約を締結した(以下「本件契約」という〔甲1~3〕。)。
ア 共済期間        1年(但し、初年度は、初めて迎える3月31日まで。その後は、制度の変更がない限り、満65歳になって初めて迎える3月31日まで、共済契約者の申出がない場合や共済掛金の滞納による失効がない場合、毎年更新される。)
イ 共済掛金        2000円/月

     (中略)

              死亡・重度障害:交通事故
                       18歳~60歳 1000万円
                       60歳~65歳 700万円
                      不慮の事故(交通事故を除く)
                       18歳~60歳 800万円
                       60歳~65歳 530万円
                      病気
                       18歳~60歳 400万円
                       60歳~65歳 230万円

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 主たる争点(1)(平成26年10月約款変更の本件暴力団排除条項は、平成17年5月1日効力開始の本件契約に適用されるか)について
(1)まず、保険法57条3号(保険者は、保険者の保険金受取人に対する信頼を損ない、生命保険契約の存続を困難とする重大な事由がある場合には、当該生命保険契約を解除することができる。)は、保険法施行日(平成22年4月1日)前に締結された生命共済契約についても適用されるから(保険法附則4条1項)、本件暴力団排除条項が同法同条号に該当するか検討する。

 確かに、死亡共済金受取人が暴力団員であること自体は、保険法57条1号(保険者は、保険金受取人が、保険者に保険給付を行わせることを目的として故意に被保険者を死亡させ、又は死亡させようとしたことがある場合には、生命保険契約を解約することができる。)及び2号(保険者は、保険金受取人が、生命保険に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたことがある場合には、当該生命保険契約を解除することができる。)と異なり、不正請求と直接結び付くものではない。

しかし、暴力団は、その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等(詐欺も含む。)を行うことを助長するおそれがある団体であり(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条2号、1号、別表2号)、暴力団員は、暴力団のために資金獲得活動を行っている。したがって、暴力団員でいることは、保険金の不正請求を行わないことへの信頼を著しく損なう事情である。

 加えて、被告は、消費生活協同組合法に基づき、厚生労働省の監督を受け、厚生労働省から、反社会的勢力を金融取引から排除していくこと(平成23年改正の共済事業向けの総合的な監督指針〈2〉-3-9-1本文)、いかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には資金提供を行わないこと(同〈2〉-3-9-2(1)〔2〕)を求められている。したがって、被告は、暴力団員との間で信頼関係を構築することが容認されていない。
 よって、本件暴力団排除条項は、保険法57条3号に該当すると認められるから、同法同条号は、本件契約に適用される。

(2)次に、民法548条の4第1項2号(定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき)の場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができるから、本件暴力団排除条項が、同法同条項号に該当するか検討する(ただし、本件暴力団排除条項は、同法同条項号の施行前の約款変更であるから、本件暴力団排除条項が同法同条項号に該当するか否かは、本件契約に適用されるか否かと直接結び付くわけではない。)。

ア 本件暴力団排除条項は、前記(1)の通り、保険法の規定に該当するから、本件契約の目的に反しないといえる。
イ 本件暴力団排除条項は、政府の犯罪対策閣僚会議幹事会が平成19年6月19日に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を申し合わせて、契約書や取引約款に暴力団排除条項を盛り込むことが望ましいとしたこと(同指針に関する解説(5))、地方自治体が暴力団排除条例を制定し(広島県は平成22年12月27日)、事業者に契約を締結するときは暴力団排除条例を定めるよう求めたこと(広島県暴力団排除条例は13条3項)を背景に、被告が、厚生労働省から、契約書等に暴力団排除条項を導入することを求められて(平成23年改正の共済事業向けの総合的な監督指針〈2〉-3-9-2(1)〔1〕)、規定したものである。したがって、変更の必要性がある。

 本件暴力団排除条項は、死亡共済金受取人が暴力団員(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を含む。)に該当すると認められる場合であり、不利益を被る相手方が限定され、不利益回避の方法がある。また、解除に伴う違約金が高額であるような規定を認める証拠はなく、不服のある相手方には契約離脱の機会がある。したがって、変更後の内容の相当性がある

 ところで、金融庁は、保険会社に対し、平成20年改正の保険会社向けの総合的な監督指針をもって、契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入を求め(同〈2〉-4-9-2(3))、保険会社各社は、保険契約において、本件暴力団排除条項と同様の暴力団排除条項を、契約書又は取引約款に規定している(顕著な事実)。したがって、本件暴力団排除条項は、同業他業者が同様の場面で顧客に課している負担の水準と同程度の負担を相手方に求めるものに過ぎない。

 よって、被告の約款に約款変更の要件や手続を定める条項の存在を認める証拠がないことを考慮しても、本件暴力団排除条項は合理的なものといえる。

ウ 以上の通り、本件暴力団排除条項は、民法548条の4第1項2号に該当すると認められるから、本件暴力団排除条項について、共済契約者である原告の配偶者の合意があったものとみなし、本件契約の内容を変更することができる。

(3)以上の通り、保険法の遡及適用の点からしても、定型約款の変更による契約の変更の点からしても、平成26年10月約款変更の本件暴力団排除条項は、平成17年5月1日効力開始の本件契約に適用される。

2 主たる争点(2)(本件解除は、信義則違反又は権利濫用か)について
(1)前記1(1)で判示したことに加えて、本件は、共済金受取人が暴力団員であること(共済契約者又は被共済者が暴力団員であり、共済金受取人が暴力団員ではない場合とは異なる。また、暴力団員ではない共済金受取人の地位を暴力団員が相続した場合とも異なる。)からすれば、本件解除は、信義則違反とはいえない。

(2)本件契約は、死亡だけではなく交通事故を含む不慮の事故による入通院や病気による入院も共済事故とし、その共済金受取人は、暴力団員ではない原告の配偶者であった。また、共済掛金はその対価でもある。したがって、共済契約者が共済金の給付を一切受けられないわけではないし、被告が共済金を給付する余地なく共済掛金を収受したわけではない。また、本件暴力団排除条項が平成26年10月に規定されてから令和4年6月3日に本件共済事故が発生するまで、原告が、本件暴力団排除条項の対象(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)を回避する時間は十分あった。したがって、本件解除は、権利濫用とはいえない。

3 結論
 以上の通り適法な本件解除により、被告は本件共済事故に関し共済給付を行う責任を負わないから(本件暴力団排除条項、保険法59条2項3号)、原告の請求は、認容されるべきではない。よって、主文のとおり判決する。
広島地方裁判所尾道支部 裁判官 永野公規

以上:4,894文字
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R 7-12- 5(金):貴金属・宝石類の生前贈与と特別受益の該当性について
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○遺産分割における民法第903条規定特別受益について相談を受けています。特別受益については「民法第903条特別受益制度の基礎の基礎-具体例考察」に基本的説明を記述しています。この説明時の特別受益規定に相続法改正によって「4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」が加えられており、この趣旨は、配偶者の居住財産の遺贈・贈与は、持ち戻し免除の意思表示があったと推定して配偶者の居住確保によりその地位を強化していることです。

○特別受益の相談では、持ち戻し免除の意思表示があったかどうかの相談が多く、これについては「持戻免除の意思表示概観」に基礎的説明を記述し、具体的な裁判例は「持戻免除の意思表示が認められた具体例紹介1」以下に説明を加えています。現在、貴金属・宝石類の生前贈与が特別受益に該当しないかどうかの相談を受けています。

○裁判例を探すと、不動産についての判断例は多くありますが、ズバリ貴金属・宝石類の生前贈与が特別受益に該当するかどうかを判断した裁判例は現時点では見つかっていません。しかし、貴金属・宝石類は相続税での遺産として評価されており、その価値は千差万別ですが、不動産同様重要な財産であり、理屈上は特別受益に該当することがあると考えられます。

○貴金属・宝石類の生前贈与が特別受益に該当する理由は以下の通りです。
生計の資本としての贈与: 高価な貴金属は金銭に見積もれる資産であり、その価格や性質から、通常の生活費の援助ではなく、生計の資本(生活や事業の基礎となる財産)として贈与されたと判断される可能性があります。
相続人間の公平性: 特別受益の制度は、相続人全員の公平を図るためのものです。特定の相続人だけが多額の財産を受け取っていると、他の相続人との間で不公平が生じるため、相続財産にその贈与分(特別受益分)を算入(持ち戻し)して計算される可能性が高くなります。
財産の価値: 宝石や貴金属は資産価値が高く、相続税の課税対象にもなるため、単なる装飾品や通常のプレゼントとは区別されます。

○貴金属・宝石類の生前贈与が特別受益に該当するかどうかの判断のポイントは以下の通りです。
先ず価格で、貴金属の価格がどれくらい高額かが重要な判断材料となり、社会通念上、通常の扶養義務の範囲内と考えられる程度であれば、特別受益には該当しませんが、贈与税が課税される110万円の価値を超えれば該当する可能性は出てくるでしょう。遺産総額とのバランスも考慮されます。
次に目的ですが、何の目的で贈与されたかも考慮され、例えば、単なる誕生日プレゼントや記念品としての性質が強い場合は、価値が高くても特別受益とされない可能性もあります。
最後に他の相続人とのバランスが考慮されるべきで、他の相続人が受けた生前贈与や援助との比較も必要です。
要するに被相続人の意思と相続の公平性のバランスを考慮した総合判断で、前記持ち戻し免除の意思の有無の判断を含めて、相当難しい判断になります。
以上:1,322文字
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R 7-12- 4(木):離婚しても離婚時までの婚姻費用請求権は消滅しないとした最高裁決定紹介
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○「離婚した元夫への離婚時までの婚姻費用支払申立を却下した高裁決定紹介」の続きでその許可抗告審令和2年1月23日最高裁決定(判タ1475号56頁、判時2454号18頁)全文を紹介します。

○妻である抗告人は、夫である相手方に対し、平成30年5月婚姻費用分担調停の申立てをし、平成30年7月離婚の調停が成立しました。しかし、離婚調停においては、財産分与に関する合意はされず、いわゆる清算条項も定められませんでした。おそらく離婚だけ早く成立させたい事情があったのでしょう。

○婚姻費用分担調停事件は、離婚調停成立の日と同日、不成立により終了したため、上記申立ての時に婚姻費用分担審判の申立てがあったものとみなされて、審判に移行し、札幌高裁は、抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求権は離婚によって消滅したから、離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であるとして、これを却下しました。そこで抗告人元妻が、そんなバカなことがあるかと、許可抗告をしました。

○最高裁は、婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても、これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえないとし、本件申立てを却下した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻しました。

○最高裁は、婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないが、婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができると当然の判断をしました。

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主   文
原決定を破棄する。
本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

理   由
 抗告代理人○○○○,同○○○○,同○○○○の抗告理由について
1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1)妻である抗告人は,平成30年5月,夫である相手方に対し,婚姻費用分担調停の申立てをした。

(2)抗告人と相手方との間では、平成30年7月,離婚の調停が成立した。同調停においては,財産分与に関する合意はされず,いわゆる清算条項も定められなかった。

(3)上記(1)の婚姻費用分担調停事件は,上記(2)の離婚調停成立の日と同日,不成立により終了したため,上記(1)の申立ての時に婚姻費用分担審判の申立て(以下「本件申立て」という。)があったものとみなされて(家事事件手続法272条4項),審判に移行した。 

2 原審は,要旨次のとおり判断し,抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求権は消滅したから,離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であるとして,これを却下した。
 婚姻費用分担請求権は婚姻の存続を前提とするものであり,家庭裁判所の審判によって具体的に婚姻費用分担請求権の内容等が形成されないうちに夫婦が離婚した場合には,将来に向かって婚姻費用の分担の内容等を形成することはもちろん,原則として,過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等につき婚姻費用の分担の内容等を形成することもできないというべきである。そして,当事者間で財産分与に関する合意がされず,清算条項も定められなかったときには,離婚により,婚姻費用分担請求権は消滅する。

3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 民法760条に基づく婚姻費用分担請求権は,夫婦の協議のほか,家事事件手続法別表第2の2の項所定の婚姻費用の分担に関する処分についての家庭裁判所の審判により,その具体的な分担額が形成決定されるものである(最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁参照)。

また,同条は,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないことは明らかである。

しかし,上記の場合に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから(前掲最高裁昭和40年6月30日大法廷決定参照),夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解するのが相当である。このことは,当事者が婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の請求をすることができる場合であっても,異なるものではない。

 したがって,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない。

4 以上と異なる見解の下に,本件申立てを却下した原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口厚)

以上:2,371文字
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R 7-12- 3(水):離婚した元夫への離婚時までの婚姻費用支払申立を却下した高裁決定紹介
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○「離婚した元夫に離婚時までの婚姻費用支払を命じた家裁審判紹介」の続きでその抗告審平成30年11月13日札幌高裁決定(家庭の法と裁判27号40頁、最高裁判所民事判例集74巻1号12頁)全文を紹介します。

○被抗告人元妻が、婚姻費用分担を申し立て、原審が、抗告人元夫に対して未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命ずる審判をしたところ、抗告人が即時抗告を申し立てしました。

○これに対し、札幌高裁は、被抗告人と抗告人との間では、既に調停離婚が成立し、同調停においては、財産分与については合意されず、また、いわゆる清算条項も定められなかったことが認められるから、上記調停離婚の成立をもって被抗告人の抗告人に対する婚姻費用分担請求権は消滅し、被抗告人が抗告人に対して未払の過去の婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法として許されないというべきであるとしました。

○その上で、未払の過去の婚姻費用の清算については、財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるので(最高裁判所昭和53年11月14日第三小法廷判決(民集32巻8号1529頁)参照)、本件において、被抗告人は抗告人に対して、財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付を求めるのが相当として、原審判を取り消し、被抗告人元妻のの婚姻費用分担申立てを却下しました。

○要するに財産分与申立をしてもう一度審理をやり直せというもので、被抗告人元妻としては到底納得できず最高裁に許可抗告をして、最高裁で再度覆されていますので、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 原審判を取り消す。
2 被抗告人の本件申立てを却下する。
3 手続の総費用は各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由等

 抗告人は,釧路家庭裁判所北見支部平成30年(家)第316号婚姻費用分担申立事件について,平成30年9月20日に同裁判所がした審判(抗告人に対して未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命じたもの)に対し,即時抗告を申し立てた。
 抗告の趣旨及び理由は,別紙「抗告状」(写し)に記載のとおりであり,被抗告人の反論及び当審における主張は,別紙「主張書面」(写し)に記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 以下のとおり補正するほか、原審判書「理由」欄の「第2 当裁判所の判断」の1(1)ないし(3)に記載のとおりであるから,これを引用する。 
(1)原審判書1頁23行目及び2頁1行目の各「当庁」をいずれも「釧路家庭裁判所北見支部」と改める。

(2)原審判書1頁23行目の末尾を改行して,以下のとおり加える。
「上記調停においては,被抗告人と抗告人が調停離婚すること,長男及び二男の親権者をいずれも被抗告人と定めること,被抗告人と抗告人との間の年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めること,が合意されたが,財産分与については合意されず,また,いわゆる清算条項も定められなかった。」

(3)原審判書1頁24行目から25行目までを削る。

(4)原審判書2頁2行目の「上記調停」を「同調停」と改める。

2 検討
(1)婚姻費用分担審判は,「夫婦の一方が婚姻から生ずる費用を負担すべき義務があることを前提として,その分担額を形成決定するものである」(最高裁判所昭和40年6月30日大法廷決定(民集19巻4号1114頁)参照)ところ,家庭裁判所の審判によって具体的に婚姻費用分担請求権の内容及び方法等が形成されないうちに夫婦が離婚したときは,婚姻の存続を前提とする婚姻費用分担請求権は消滅し,将来に向かって婚姻費用分担の内容及び方法等を形成することはもちろん,原則として,過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等を婚姻費用の分担としてその内容及び方法等を形成することもできないものというべきである。

(2)上記1のとおり,被抗告人と抗告人との間では,平成30年7月11日に調停離婚が成立し,同調停においては,財産分与については合意されず,また,いわゆる清算条項も定められなかったことが認められる。そうすると,上記調停離婚の成立をもって被抗告人の抗告人に対する婚姻費用分担請求権は消滅し,被抗告人が抗告人に対して未払の過去の婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法として許されないというべきである。

 未払の過去の婚姻費用の清算については,財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるのであり(最高裁判所昭和53年11月14日第三小法廷判決(民集32巻8号1529頁)参照),本件において,被抗告人は抗告人に対して,財産分与の裁判において未払の過去の婚姻費用の清算のための給付を求めることが可能であって,相当であるというべきである。

3 よって,被抗告人の本件申立ては不適法であり却下すべきところ,本件申立てが適法であることを前提に抗告人に対し未払の過去の婚姻費用分担金として74万5161円を被抗告人に支払うよう命じた原審判は相当ではないから,原審判を取消し,被抗告人の本件申立てを却下することとして,主文のとおり決定する。
平成30年11月13日 札幌高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 草野真人 裁判官 飯淵健司 裁判官 下澤良太
以上:2,278文字
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R 7-12- 2(火):2025年12月01日発行第402号”弁護士のワーク・ライフ・バランス”
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○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年12月1日発行第402号「弁護士のワーク・ライフ・バランス」をお届けします。

○「ワーク・ライフ・バランス」とは、「仕事」と「仕事以外の生活(育児、介護、自己啓発、趣味など)」の調和が取れている状態を指すと説明されています。私はこの言葉を聞いたことはありますが、これを意識したことは全くありませんでした。それが高市早苗新総裁就任時に「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」「働いて働いて働いて働いて参ります!」とやったものだから、一躍脚光を浴びました。令和7年流行語大賞は、高市早苗内閣総理大臣の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」に決まったとのことです。

○穏健保守派を自称する私は、高市氏の過激保守ぶりに首相になるのは困ったものだと思っていました。しかし、実際なってみるとその支持率の高いのには驚きました。台湾有事について余計なことを言って中国を激怒させ、日中関係を悪化させても支持率が下がらないのには更に驚きました。世のため人のために一生懸命尽くそうとする姿勢を好意的に見る国民が多いようです。「世のため人のためになろうなんてだいそれた気持はこれっぽっちもない」と言い続けてきた私も、少しは高市首相を見習うべきとは思うのですが。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士のワーク・ライフ・バランス

少し前に高市総理が、「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」「働いて働いて働いて働いて参ります!」などと所信表明したことが話題になってました。これに対して、「働き過ぎを容認する」みたいに批判する人もいましたけど、私は素直に「凄いな。健康に気を付けて頑張ってください」と思ったのです。ただそうは言いましても、生活や家族まで犠牲にして何かに夢中になるというの、あまり良くないと思うのも事実です。安倍総理を暗殺した犯人の裁判が行われていますよね。被告人の母親が熱心な統一教会信者で、家庭や子供を犠牲にしていたなんて事実が明らかにされています。「宗教ライフ バランス」を考えるべきだと思うのは私だけではないはずです。

もっとも、統一教会に限らず、宗教っていうのはこんな風にバランスを欠いてしまうものかもしれません。お釈迦様の教団に入った子供達を「救い出す」為に、親たちが王様に歎願したなんて話があったはずです。これなんか今ならさしずめ、カルト教団に入った子供を救う親の立派な活動と言われそうです。キリストも金持ちの青年に、「神の国に行きたいなら、全てを捨てて私に従え」と言いました。お金や家族といった「ライフ」を捨てられない青年が断ると、キリストは「金持ちが天国に行くのは、ラクダが針の穴を通るより難しい」と有名な決めゼリフを言います。現代社会でこんな勧誘している新興宗教は厳しく非難されちゃいそうです。

宗教だけでなく、どの分野でも超一流と言われ人はワーク・ライフ・バランスなんて言葉は無視している気がします。オバマ大統領といった政治家や、有名な実業家も無視していたはずです。稲盛和夫といえば日本を代表する大実業家でしたが、こんな凄いエピソードがあります。年商100億円規模の会社創業者が稲盛さんに、「そんなに仕事一辺倒でなくて、もっと人生を楽しんだ方が良くないか?」と聞いたそうです。それに対する稲盛さんの回答が凄い。「そんなことを言っているから、あなたの会社は年商100億程度しか稼げないんだ!」 ひゃ、100億稼げれば十分すぎるのでは。。。 まあ、雲の上にいるような凄い人たちは「ワーク・ライフ・バランス」なんて気にしないで頑張ってもらって良いのでしょう。

しかし、普通の人たちに関して言うと、「ただひたすら仕事を頑張っているなんて人が優秀だった例はほとんど無いな」というのが私の正直な感想です。生活を犠牲にして仕事しても、結局は非効率なだけに思えてしまうのです。ということで、弁護士のワーク・ライフ・バランスです。弁護士の就職先として人気なのは何と言っても大手渉外事務所です。若くて優秀な人しか入れてもらえませんから、入れるだけでステータスになるんです。ただ、こういう事務所の仕事はかなりキツイと言われています。夜は終電後にタクシーで帰って、朝からまた事務所に出るなんてことがざらにあるんですね。こういう環境下で競争して、生き残った人だけが事務所に残れるという方式です。

これなんか完全にワーク・ライフ・バランスを壊しています。だから家庭を持つと、大手を辞めて比較的業務量の調整が利く社内弁護士などに転身する人がいるわけです。私が勤務していた法律事務所は、オバマ大統領が働いていた米国の事務所です。このときはかなり忙しくて、終電後にタクシーで帰ることなどよくありました。これは長く勤めていられないなと思って、独立開業したわけです。今の事務所ではワーク・ライフ・バランスを考えて働くようにしていますが、お客様のためならば、高市総理を見習って「働いて働いて働いて働いて参ります!」

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◇ 弁護士より一言

ダイエットを始めると、ついつい頑張りすぎてしまいます。今回、一月ほどでかなり痩せたんですが、誰も何も言ってくれない。「みんな気が付かないのかな?」と娘に言ったら、教えてくれました。「みんな、怖い病気が原因かもしれないと思って、口に出せないんだと思うよ」 ほ、ホントですか。気を使わせてしまったなら済まなく思います。今後は、ダイエット ライフ バランスを考えて、減量するようにします。

以上:2,395文字
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R 7-12- 1(月):離婚した元夫に離婚時までの婚姻費用支払を命じた家裁審判紹介
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○申立人と相手方は、平成13年6月27日に婚姻した夫婦で、両名の間には長男(平成14年生)及び二男(平成24年生)がいるところ、両名は平成26頃から別居状態となり、以降、申立人が長男及び二男とともに生活していました。

○申立人と相手方は、平成30年7月11日に調停により離婚しました。相手方は、申立人に対し、婚姻費用として1か月あたり15万円を支払っていたましたが、平成30年2月から支払がとまったため、申立人が、離婚時までの未払婚姻費用として約93万円の支払を求めて婚姻費用分担調停を申し立て、調停は不成立となり、審判手続に移行しました。

○婚姻費用の分担額については、義務者世帯及び権利者世帯が同居していると仮定し、義務者及び権利者の各総収入から税法等に基づく標準的な割合による公租公課並びに統計資料に基づいて推計された標準的な割合による職業費及び特別経費を控除して得られた各基礎収入の合計額を世帯収入とみなし、この世帯収入を生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって推計された権利者世帯及び義務者世帯の各生活費で按分して権利者世帯に割り振られる婚姻費用から、権利者の上記基礎収入を控除し、義務者が分担すべき婚姻費用の額を算定するとの方式に基づき検討するのが相当であるとして、申立人に対し、74万5161円を支払うよう相手方に命じた平成30年9月20日釧路家裁北見支部審判(家庭の法と裁判27号41頁、最高裁判所民事判例集74巻1号8頁)全文を紹介します。

○この審判は相手方が抗告し、抗告審札幌高裁で、離婚の成立をもって被抗告人の抗告人に対する婚姻費用分担請求権は消滅したとして取り消されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 相手方は,申立人に対し,74万5161円を支払え。
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨

 相手方は,申立人に対し,婚姻費用分担金として,93万2488円を支払え。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 本件記録によれば,次の事実が認められる。
(1)申立人(昭和51年■月■日生)と相手方(昭和50年■月■日生)は,平成13年6月27日に婚姻した夫婦であり,申立人と相手方との間には,長男(平成14年■月■日生)及び二男(平成24年■月■日生)がいる。

(2)申立人及び相手方は,平成26年頃から別居状態にあり,以降,申立人が長男及び二男と共に生活していたが,平成30年7月11日,調停により,離婚した(当庁平成29年(家イ)第166号)。
 なお,相手方は,平成30年1月までは,申立人に対し,婚姻費用として1か月当たり15万円を支払っていた。

(3)申立人は,平成30年5月21日,平成30年2月からの未払婚姻費用の支払を求めて婚姻費用分担調停を申し立てた(当庁平成30年(家イ)第76号)が,同年7月11日,上記調停は,不成立となり,本件審判手続に移行した。

(4)申立人は,医療法人に勤務しており,平成29年の給与収入は,241万2763円である。
 他方,相手方は,2つの会社に勤務しており,平成29年の給与収入は,合計720万円である。また,相手方は,焼肉店も営んでいるもので,平成29年の確定申告書の事業所得は-161万8085円で,この事業所得を計算するに当たって差し引かれた経費のうち,旅費交通費は15万3670円,通信費は3万8966円,接待交際費は80万4996円である。なお,この確定申告書の課税される所得金額を算定する過程においては,上記給与収入も考慮されている。

(5)長男は,平成30年4月,高等学校に進学し,野球部に入部をした。その入学時学校諸納金は合計2万5000円,第1学年の授業料及び学校諸費は合計20万0100円,制服代は5万3784円,教科書その他の教材費は合計4万7048円,野球部のユニフォーム代,グローブ代等は合計20万1560円,通学定期代は12万9430円である。

2 検討
(1)夫婦は,互いに協力し扶助しなければならず(民法752条),別居した場合でも,自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務を負うもので,別居中の婚姻費用は,この義務の履行として支払われるものである。

(2)婚姻費用の分担額については,義務者世帯及び権利者世帯が同居していると仮定し,義務者及び権利者の各総収入から税法等に基づく標準的な割合による公租公課並びに統計資料に基づいて推計された標準的な割合による職業費及び特別経費を控除して得られた各基礎収入の合計額を世帯収入とみなし,この世帯収入を生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって推計された権利者世帯及び義務者世帯の各生活費で按分して権利者世帯に割り振られる婚姻費用から,権利者の上記基礎収入を控除し,義務者が分担すべき婚姻費用の額を算定するとの方式に基づき検討するのが相当である。

(3)
ア 申立人の給与収入並びに相手方の給与収入及び事業収入は,前記1(4)のとおりであるが,婚姻費用の算定に当たっては,異なる種類の収入がある場合には,一方の収入を他方の収入に換算する必要があり,相手方の給与収入がその事業収入より多い本件では,後者を前者に換算するのが相当である。そして,事業収入については,確定申告書の課税される所得金額によるのが原則であるが,本件では,この所得金額を算定する過程において給与収入も考慮されていることから,この所得金額により事業収入を認定することができない。そこで,次善の策として,確定申告書の事業所得に,給与所得の職業費に相当する交通・通信費,交際費等を加えることにより,事業収入を給与収入に換算したものとすることとする。

 以上の結果,申立人の給与収入は241万2763円となり,上記換算後の相手方の給与収入は合計657万9547円となる(なお,申立人は,相手方の事業が趣味に過ぎず,事業所得の赤字分を考慮すべきではない旨主張するが,相手方の事業が趣味に過ぎないものと認めるに足りる証拠はなく,その主張は採り得ない。)。そして,それぞれの給与収入に対する基礎収入の割合は,申立人については39%,相手方については37%であり(顕著な事実),成人1人当たりに必要な生活費に対する未成年の子1人当たりに必要な生活費の割合(生活費指数)は,14歳未満が55%,15歳以上が90%である(顕著な事実)から,前記(2)の算定方式によれば,相手方が申立人に対して負担すべき婚姻費用分担額は,1か月当たり12万1337円と試算される。

〔計算式〕
A:申立人の基礎収入=¥2,412,763/年×39%=約¥940,977/年
B:相手方の基礎収入=¥6,579,547/年×37%=約¥2,434,432/年
C:前記(2)の方式による婚姻費用分担額=(A+B)×{(100+90+55)
(100+100+90+55)}-A=約¥1,456,052/年=約¥121,337/月

イ 前記(2)の算定方式では,1年当たり33万3844円の公立高等学校の学校教育費が15歳以上の未成年の子の生活費指数の中で考慮されているが,この額を上回る教育費についても,義務者の収入等から不合理なものでない限り,義務者において,それぞれの基礎収入に応じて按分した額を負担するのが相当である。
 前記1(5)の教育費合計65万6922円(この額は1年間に必要な額と認めるのが相当である。)は,義務者の収入等からして不合理なものではないから,上述した上回る教育費として義務者が負担すべき額は,1か月当たり1万9752円と試算される。
〔計算式〕(¥656、922/年-¥333,844/年)×B/(A+B)=約¥233,012/年=約¥19,417/月

ウ 前記ア及びイの試算結果に加え,本件記録に現れた一切の諸事情を考慮すると,相手方が申立人に対して負担すべき婚姻費用の分担額は,1か月当たり14万円とするのが相当であり,平成30年2月1日から離婚した前日の同年7月10日までの未払婚姻費用は,74万5161円となる。 
〔計算式〕¥140,000/月×(5か月+10日/31日/月)=約¥745,161

3 結論
 よって,相手方は,申立人に対し,未払婚姻費用分担金74万5161円を支払うべきである。そこで,手続費用については家事事件手続法28条1項を適用し,主文のとおり審判する。
平成30年9月20日
釧路家庭裁判所北見支部 裁判官 安木進

以上:3,541文字
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R 7-11-30(日):映画”悪い奴ほどよく眠る”を観て-爽快感無く興業成績不振納得
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○令和7年11月29日(土)は、夕方、数年前に購入していた黒澤明監督作品1960(昭和35)年製作映画「悪い奴ほどよく眠る」を鑑賞しました。黒澤映画は大好きで映画「七人の侍」等有名映画は、ハイビジョンLDから4KUHDまで発売された作品は全て購入しています。しかし映画「悪い奴ほどよく眠る」は、DVD・BDでは発売されていますが、ハイビジョンLD・4KUHDいずれも発売されていません。この作品は、興行成績が悪く発売しても売れないと評価されていたので高価なハイビジョンLD・4KUHD版は発売されなかったと思われます。

○令和7年からは65年も前の昭和35年製作で私が小学3年生時の作品ですが、私には映画館でもBDでも鑑賞したことは無く、全く初めての鑑賞でした。映画コムでは「黒澤プロ設立第1作として監督が選んだテーマは、当時社会問題となっていた政治汚職。汚職事件の隠蔽工作により自殺に追い込まれた男の息子による復讐劇を通して、政界に根深くはびこる腐敗の構造にメスを入れた意欲作。」と解説されています。「極めて社会性の強いテーマでありながら、スリルとサスペンスを盛り込むことで十二分に娯楽映画として通用する作品。」とも解説されていますが、確かに鑑賞中は「次はどうなるかと」固唾をのんで、鑑賞に没頭しました。しかし、最後の結論が極めて後味の悪いもので、不快感の残る映画で、興行成績が悪かった理由も納得できるものでした。

○1920年生まれの主人公三船敏郎氏40歳時の作品で、映画黒澤組の常連志村喬(当時55歳)・西村晃(当時37歳)・藤原鎌足(当時55歳)各氏が重要な役どころで登場します。主人公の盟友役加藤武氏(当時31歳)は最後の絶望感を良く表現しており、主人公の妻役香川京子氏(当時29歳)も映画に花を添えています。三船敏郎氏は、映画「七人の侍」や「用心棒」等での派手で豪快な演技を押さえて淡々とした演技に徹していました。確かにスリルとサスペンスの連続には、流石黒澤映画と感じましたが、最後の結末には、映画の爽快感皆無で、スカッと爽やかにはほど遠い映画でした。それが黒澤監督の狙いだとの感想もありましたが、気の滅入ることこの上なく終わりました。

○田中邦衛氏(当時28歳)もホンの僅か殺し屋役で登場し、僅かの時間でこのような殺し屋を手配できる役人の闇の力の大きさを感じさせます。映画表題のよく眠る「悪い奴」は、映画には出てきませんが、「悪い奴」らの頂点には悪徳政治家が居る設定のようです。戦後大きな汚職事件が次々と発生し、大物政治家の関与が取り沙汰され、その都度小物役人の課長補佐などが自殺して闇に葬られていたことに憤激して闇を暴こうとした作品でもあるとのことですが、暴けず終わる結論が不思議なところです。

○近時でも記録改ざんを命じられ、それを苦に自殺した財務省の役員もいるところ、それを命じた上司はなんのお咎めもなく、さらにその上の大物政治家は全く無関係と言い張り、映画「悪い奴ほどよく眠る」のような状況は今でも続いているのかも知れません。

The Bad Sleep Well (1960) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]


以上:1,318文字
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R 7-11-29(土):オンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」紹介-料金
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○「オンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」紹介」の続きで、具体的事件で費用がどのくらいかかるのかHP「OneNegotiation(ワンネゴ)」の記述から探ってみました。

○具体的な事案としてアパート賃借人Aさんが賃貸人Bさんから月額賃料7万円で借り受け、敷金2か月分14万円を支払っていたところ、期間満了で退去・明渡をして、敷金の返還を求めたところ、Bさんはクリーニング代として14万円以上かかるとの理由で返還を拒否され、その返還を求めると場合とします。弁護士に相談したらそのような低額の案件は、裁判所の少額訴訟制度を利用して自分で訴えを出すことを勧められました。しかし、裁判所利用は敷居が高くもっと簡単な方法として、オンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」の利用を考えました。

HP「OneNegotiation(ワンネゴ)」で最も気にかかるのは利用料金です。「OneNegotiation(ワンネゴ)」料金プランによるとトライアルプランを利用した場合、基本料金・申立通知手数料・「システム調停 (※2) 」申立手数料は無料となっています。「※2 システム調停とは、債権者と債務者が、チャットのような画面で選択肢をタップして交渉する方法です。」と説明されており、申立人AさんとBさんが直接チャット画面で遣り取りをする仕組みです。しかし、Bさんは、たとえ申立に応諾したとしても、従前の主張を繰り返し、支払に応じることはないはずです。

○そうなると「債権者と債務者の双方が必要と判断した場合、Web会議にて調停人を介して交渉する方法です。」と説明されているオンライン弁護士調停になります。債務者Bさんがオンライン弁護士調停に応諾すれば、Aさんは申立手数料として2万7500円を支払い、弁護士による調停を受けることができます。このオンライン弁護士調停は、
・「システム調停」では折り合わず、債権者と債務者が希望する場合には、債権者と債務者の間に「弁護士資格を持つ調停人」を介する形で、Web会議形式(Zoom)でやりとりする「オンライン弁護士調停」に移行できます。

・ここでは、債権者、債務者が同時に会議に参加することがないよう、調停人が管理して協議を進めますので、画面上で相手方と顔を合わせて会話する必要はありません。

※各者のスケジュール調整のため、平均2週間後の実施となります。
と説明されています。

○AさんとBさんは、オンラインですから、パソコン或いはスマホ画面で、調停員弁護士に双方の主張を述べ、調停員弁護士が、調停案としてBさんがAさんに10万円支払うとの調停案が出されて、双方に合意が出来て、AさんがBさんから10万円を受領したとします。この場合、合意成功報酬として34.848%の成功報酬が発生しますので、Aさんには10万円×0.34848=3万4848円の支払義務が発生します。Aさんは、10万円を回収するためにオンライン弁護士調停申立費用2万7500円と合意成功報酬3万4848円の合計6万2348円の費用を負担し、手取りは3万7652円となります。

○Aさんが裁判所の少額訴訟制度を利用して訴えを提起し、裁判所に出頭して全て自分で行い、裁判官による和解が成立して10万円全額を回収する場合は、Aさんにとっては相当な手間暇がかかります。「OneNegotiation(ワンネゴ)」を利用して余り手間暇をかけず少しでも回収できる方がよいかどうかは、Aさんの判断になります。なお、日本の裁判所では、少額訴訟の手続き全体をオンラインで完結できるシステムは、現状、提供されていないとのことです。
以上:1,516文字
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R 7-11-28(金):オンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」紹介
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○先日、従前のお客様から身内の問題として敷金返還請求の相談を受けました。アパートを退去する際に、仲介不動産業者に預けた敷金返還請求をしたらクリーニング費用等で返還する分は無いと拒否されたとのことでした。当HPの「建物賃貸借での退去時の原状回復義務」を紹介して敷金からクリーニング代を控除することは原則としてできないので返還請求できますと回答し、相手は応じないと思われるので、裁判所の少額訴訟制度を利用する方法がありますと回答しました。

○しかし、素人の方には少額訴訟制度の利用も大変だろうなと思っていたら、弁護士ドットコムニュースの「少額未払い「泣き寝入り」に終止符…利用増えるオンライン調停、日本でもODRじわり」という記事を見つけて驚きました。記事では、
弁護士が開発した、少額の未払い解決に特化したオンライン調停サービス「OneNegotiation(ワンネゴ)」の累計申立て件数が、このほど1万8000件を突破した。年内には2万件を超えそうな勢いだ。
ワンネゴのようなオンライン調停サービスは「ODR(Online Dispute Resolution )」と呼ばれる。トラブル解決でイメージされやすいのは裁判だが、時間や費用がかかるため、費用対効果で泣き寝入りになることも珍しくない。一方、ODRは、公正な手続きでありながら、費用負担が少なく、比較的軽微なトラブルの解決方法として注目されている。
と記載されて居ます。

○「OneNegotiation(ワンネゴ)」とは、現役の弁護士か開発したお金のトラブルを解決する新時代のデジタルサービスで、ワンネゴと読んで下さいとのYouTube動画もありました。

トップランナー認定事業プレゼンテーション【株式会社AtoJ】


○令和7年11月28日午前4時30分現在、2023/09/08にアップして152回視聴とのことで余り、視聴されていないようですが、前述の通り、「累計申立て件数が、このほど1万8000件を突破した。年内には2万件を超えそうな勢いだ。」とのことで結構利用者が増えているようです。

○詳しい仕組みは、HP「OneNegotiation(ワンネゴ)」に解説されています。基本的には、少額督促案件を多数抱える事業者向けのシステムのようですが、先の敷金返還請求のような個別の案件でも利用できるようです。料金プランを見るとトライアルは、債権者と債務者が、チャットのような画面で選択肢をタップして交渉するシステム調停までは、無料で利用できますが、債権者と債務者の双方が必要と判断した場合、Web会議にて調停人を介して交渉するオンライン弁護士調停まで行くには2万7500円かかり、1期日増す毎に1万1000円かかるようです。敷金返還請求のような個別の案件での利用にはコストが高すぎるような気もしますが、少額訴訟を自分で出すよりは手間が省けます。今後どこまで利用されるかは見ものですが、このようなシステムが普及すると益々弁護士需要が狭まります。
以上:1,238文字
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R 7-11-27(木):抑うつ病退職夫に退職後4割収入ありと扱い婚姻費用支払を命じた高裁決定紹介
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○「抑うつ病退職夫に退職後4割収入ありと扱い婚姻費用支払を命じた家裁審判紹介」の続きで、その抗告審令和5年5月8日福岡高裁決定(判時2631号5頁)全文を紹介します。161万5000円の支払を命じた夫が、就労不能で収入が無いのに収入があると認めるのは不当と主張して抗告していました。

○大阪高裁決定も、原審と同様、抗告人が抑うつ状態であることは認められるものの、相手方との別居以前には症状がなく、長男及び二男との面会交流等を巡ってその症状が発現し、その後、従前の勤務先を退職するに至ったという経緯等や、抗告人の指摘する診断書によっても具体的な症状の内容や程度、通院の頻度、投薬内容等が明らかでないことなどに照らすと、直ちに就労することが不可能と判断することはできないとして、原審審判を維持して抗告を棄却しました。

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主   文
1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。

理   由
第1 本件抗告の趣旨及び理由

 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「抗告状」(写し)《略》に記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所も、原審判と同様、抗告人に対し、婚姻費用分担金として、161万5000円の支払を命じるのが相当と判断する。その理由は、2のとおり判断を補足するほかは、原審判の「理由」欄の「第2 当裁判所の判断」の1及び2(原審判1頁17行目から同5頁3行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

2 判断の補足
 抗告人は、抑うつ状態のため就労困難と診断され、その状態は令和3年8月以降悪化傾向にあり就労不能な状態が継続していることが明らかであり、今後、その症状が改善する見込みがないにもかかわらず、令和4年7月以降の抗告人の収入を270万円として婚姻費用分担金を算定した原審判は不当である旨主張する。

 しかし、原審判が認定説示するとおり、抗告人が抑うつ状態であることは認められるものの、相手方との別居以前には症状がなく、長男及び二男との面会交流等を巡ってその症状が発現し、その後、従前の勤務先を退職するに至ったという経緯等や、抗告人の指摘する診断書によっても具体的な症状の内容や程度、通院の頻度、投薬内容等が明らかでないことなどに照らすと、直ちに就労することが不可能と判断することはできない。また、上記診断書には抗告人において就労が困難である旨記載があるものの、いかなる仕事についても就労することができないのか、あるいは、何らかの条件を付したとしても就労することができないのかといった点については明らかでない。

 以上によれば、上記診断書をもってしても、抗告人において就労が不可能であり、全く稼働能力がないといえるかについては疑問が残るといわざるを得ず、相手方の求めがあったにもかかわらず、抗告人が具体的な診療内容等を明らかにすることを拒否していることなどを考慮すれば、令和4年7月以降の抗告人の収入について,従前の収入の約4割である270万円の収入があるものとして婚姻費用分担金を算定した原審判は相当である。
 したがって、抗告人の上記主張は採用できない。 

3 よって、本件抗告は理由がないから棄却することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 岡田健 裁判官 佐藤道恵 阿閉正則)

別紙 抗告状《略》
以上:1,404文字
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