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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 7-11-25(火):不貞慰謝料150万円と探偵費用15万円の支払を認めた地裁判決紹介
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〇被告は原告の配偶者であるCと不貞関係を持った等主張する原告が、被告に対し、不法行為に基づき慰謝料300万円・探偵費用約123万円・弁護士費用30万円の合計約453万円の損害賠償等の支払を求めました。

○これに対し、令和2年11月以降おそらく現在まで続く不貞行為により婚姻関係は破綻し離婚調停に至ったことから慰謝料150万円と探偵費用15万円・弁護士費用15万円の合計180万円の支払を認めた令和6年1月11日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

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主   文
1 被告は、原告に対し、180万円及びこれに対する令和5年7月29日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを5分し、その2を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、452万7853円及びこれに対する令和5年7月29日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 当事者の主張
1 原告の主張

(1)原告は、C(以下「C」という。)と平成22年6月12日に婚姻し、原告とCとの間には、平成24年○月に長女が、平成29年○○月に二女が出生した。

(2)被告は、Cに妻子があることを知りながら、遅くとも令和2年11月頃以降、Cと一緒にラブホテルに行くなどして交際を重ね、不貞関係を持った。仮に、Cが、被告に対し、自身に妻子はいないと発言していたとしても、Cの年齢、被告とCの会う曜日や時間に鑑みれば、かかる発言が虚偽であることは容易に推認でき、被告がかかる発言を誤信したとしても、重大な過失があることは明らかである。


(3)原告は、Cとの婚姻後16年以上にわたり、仕事をしながら家事育児の多くを担ってCを支え、家族4人での平穏な生活を築いてきたが、被告の不貞行為により原告とCとの婚姻関係は破綻し、原告は、令和3年8月に幼い子ども達を連れて別居し、Cとの間では、現在、離婚調停が係属している。これらにより原告が被った精神的苦痛は非常に大きく、その精神的損害を慰謝するに足りる金額は300万円を下らない。

 また、原告が、被告の氏名・住所を特定し、不貞の客観的証拠を確保するためには、探偵業者を使って、密会の様子を複数回確認する以外に方法がなかった。かかる被告の特定及び交際内容の確認に要した調査費用は、122万7853円であり、被告による不法行為と相当因果関係のある損害に当たる。
 さらに、本件訴訟の提起に要した弁護士費用のうち30万円は、被告による不法行為と相当因果関係のある損害に当たる。

(4)よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、452万7853円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2 被告の主張
 妻子がいることは一切知らなかった。本人からはいないと聞いていた。

第3 当裁判所の判断
1 証拠(甲1。以下、証拠番号については、特に明記しない限り、枝番号を含む。)によれば、第2の1(1)の事実が認められ、また、証拠(甲2ないし5)によれば、被告は、令和2年12月以降、Cと複数回にわたり肉体関係を持ったことが認められる。被告は、Cに妻子がいるとは知らなかった旨主張するものの、証拠(甲4)によれば、被告は、Cが会社員であることを認識した上で、多くの会社員が休日である土曜日及び日曜日をあえて避けて密会の日程調整をしていたことが認められるから、Cに妻子がいることを知っていたか、もしくは、少なくともこれを知らなかったことにつき過失があったと認められる。

 そして、本件で提出された全ての証拠に照らしても、被告との不貞関係が発覚するまでの間に、原告とCとの婚姻関係が破綻していたとは認められず、むしろ、被告との不貞行為により、原告とCとの婚姻関係は修復できない程度に破綻したと認められる。これに加え,原告とCとの婚姻期間や両者間に未成熟子がいることその他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、被告の不貞行為により原告に生じた精神的苦痛に対する慰謝料は、150万円と認めるのが相当である。

また、被告とCは、LINE上で密会の日程調整等をしており(甲4)、そのアカウント及び両者間のやり取りから、被告の特定や不貞行為の有力な証拠・情報を得ることはできず、探偵の調査以外にこれらの収集のための合理的な手段方法がなかったと認められることからすれば、原告が支出した探偵費用(甲7、8)の全てにつき上記収集のため必要であるとはいえないにしても、上記事情に鑑みれば、15万円の限度で相当因果関係を有する損害に当たると認められる。

さらに、原告は本件訴訟の追行を弁護士に委任しているところ、その弁護士費用については、15万円の限度で被告の不法行為と相当因果関係を有する損害に当たると認められる。

2 以上によれば、原告の請求は、180万円及びこれに対する訴状送達日(令和5年7月28日。当裁判所に顕著な事実。)の翌日以降の民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却した上で、主文のとおり判決する。 
東京地方裁判所民事第25部
裁判官 堀田喜公衣
以上:2,229文字
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R 7-11-24(月):存立危機事態等安全保障関連法(平和安全法制)の基礎の基礎備忘録
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○「令和7年11月7日予算委委員会岡田克也議員高市首相質疑紹介」の続きで、その質疑内容の存立危機事態についての備忘録です。

存立危機事態についての高市首相の答弁で「例えば台湾を完全に中国北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。まぁそれは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それからまぁ偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それは色んなケースが考えられると思いますよ。だけれども、それがやはり戦艦を使ってですね、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。」との回答が大問題となっています。

○「台湾有事に関する原口一博議員と岸田元首相の質問・答弁国会記録紹介」記載のとおり、「岸田政権は、台湾有事が日本有事となる可能性があると認識しているか。」との質問に対し、「いかなる事態が武力攻撃事態、存立危機事態又は重要影響事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府がその持ち得る全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。」と回答をはぐらかしています。ところが高市首相は、ズバリ「存立危機事態になり得る」として台湾有事が存立危機事態になる可能性を認め、中国を激怒させました。

○この存立危機事態について、言葉としては聞きますが、その法律根拠等は不勉強でした。以下、備忘録です。

存立危機事態とは、平成27年に成立した安全保障関連法(平和安全法制)で導入された概念で、集団的自衛権を行使し、自衛隊による武力行使を可能にするための具体的な要件の一つ
・「武力の行使の新三要件」を満たせば、必要最小限度の実力行使(集団的自衛権の行使)が可能となる
「新三要件」
①我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(存立危機事態の認定)
②この事態を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
第2条(定義)
四 存立危機事態 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。


○内閣官房HPでの「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答の一部を紹介します。私には言い訳にしか聞こえませんが、中国との軋轢を避けるためには問い21に対する回答のように抽象的に表現すべきだったのでしょう。

【問1】 集団的自衛権とは何か?
【答】 集団的自衛権とは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利です。しかし、政府としては、憲法がこのような活動の全てを許しているとは考えていません。今回の閣議決定は、あくまでも国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置を認めるだけです。他国の防衛それ自体を目的とするものではありません。

【問12】 憲法解釈を変え、平和主義を放棄するのか?
【答】 憲法の平和主義を、いささかも変えるものではありません。大量破壊兵器、弾道ミサイル、サイバー攻撃などの脅威等により、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中で「争いを未然に防ぎ、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために、いかにすべきか」が基点です。

【問21】 国会で議論されている「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」の有無は、どのような基準で判断するのか?
【答】 現実に発生した事態の個別・具体的な状況に即して、主に、攻撃国の意思・能力・事態の発生場所、その規模・態様・推移などの要素を総合的に考えて、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから、「新三要件」を満たすか否か客観的、合理的に判断します。

【問30】 米国から戦争への協力を要請された場合に、断れなくなるのではないか?
【答】 武力行使を目的として、イラク戦争や湾岸戦争のような戦闘に参加することは、これからもありません。我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がない場合、他に適当な手段がある場合、必要最小限の範囲を超える場合は、「新三要件」を満たさず、「できない」と答えるのは当然のことです。
以上:2,045文字
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R 7-11-23(日):映画”スカーフェイス”を観て-アメリカの大豪邸に圧倒される
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○令和7年11月22日(土)は、フラメンコアンサンブル練習日でしたが、練習後夕食を取りながら、最近購入した4KUHDソフトで1983(昭和58年)製作映画「スカーフェイス」を鑑賞しました。映画コムでは「1980年、キューバからアメリカ・マイアミへ渡ったトニーはコカインの取り引きに携わる。その働きが認められたトニーはマフィア組織の配下に収まった後、ボスを殺害。無一文の身からマイアミ暗黒街の頂点へと上りつめ、さらにはボスの愛人エルビラも手に入れることに。しかしその栄光は長く続かなかった……。」と説明されています。

○「映画”アメリカン・ギャングスター”を観て-アメリカ無法地帯に驚く」で紹介した2007年製作映画「アメリカン・ギャングスター」は、ベトナム戦争当時の1960年代末から70年代初頭にかけての麻薬王国の映画です。この映画の24年も前の映画「スカーフェイス」は、映画「アメリカン・ギャングスター」の舞台の10数年後、1980年代のコカイン取引で財をなしマイアミ暗黒街のトップに上り詰め破滅するまでのストーリーで、いずれも麻薬取引を題材とする映画です。1940年生まれ名優アル・パチーノ氏が43歳時の作品ですが、名優と呼ばれる演技力の凄さがよく判る映画です。

映画「アメリカン・ギャングスター」は、実話に基づく映画で、60年代当時のアメリカ捜査官とマフィアや麻薬取引者との癒着ぶりが良く判りましたが、その10数年後もまだ麻薬取引者と麻薬捜査官の癒着ぶりが描かれアメリカでは、1980年代当時でも麻薬捜査官には問題があったようです。いずれの映画でも主人公は麻薬取引でボロ儲けして財をなしますが、アル・パチーノ氏演ずる映画「スカーフェイス」主人公トニーが財をなした後に居住する豪邸の凄さには圧倒されました。日本映画でも日本の豪邸が出てくる映画はありますが、アメリカの豪邸は日本とはまるで規模が違うと感じます。狭いマンション住まいの私には正に夢のまた夢のお城です。

○そのストーリーの最後で大豪邸で展開される凄まじい銃撃戦でのアル・パチーノ氏の狂気の演技は見ものでした。麻薬取引を扱った「アメリカン・ギャングスター」、映画「スカーフェイス」いずれも麻薬取引でのボロ儲けぶりが露わにされます。現在のアメリカではどうなっているか知りませんが、アメリカは麻薬王国とも感じました。カーター政権では厳しく麻薬撲滅運動に取り組むと語られていました。

○現在のトランプ大統領もコロンビアやベネズエラから麻薬流入を防ぐため麻薬搬送船舶を爆撃している報道が繰り返しなされています。現在のアメリカもまだ麻薬王国なのかも知れません。主人公が大量の麻薬を鼻から激しく吸うことを繰り返し、次第に精神を病み、支離滅裂な状況となって肉親や親友を失いたった1人に追い詰められる状況も描かれており、麻薬の恐ろしさを知らせてその撲滅を意図した映画なのかも知れません。
なお、スカーフェイスとは「顔に傷跡(scar)がある人(face)」という意味とのことです。

映画「スカーフェイス」劇場予告

以上:1,270文字
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R 7-11-22(土):令和7年11月7日予算委委員会岡田克也議員高市首相質疑紹介
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○「台湾有事に関する原口一博議員と岸田元首相の質問・答弁国会記録紹介」で、令和5年の岸田元首相答弁が衆議院HP第211国会質問答弁情報での質問者原口議員と回答者岸田元首相との実際の遣り取りを紹介していました。現在大問題となっている令和7年11月7日予算委委員会での質問者岡田克也議員と高市首相の遣り取りの実際データは、衆議院HPでは見当たらず、どこかにないか探していたら、以下のYouTube動画がありました。

【国会中継】衆院予算委員会 高市首相と全閣僚出席で質疑(2025年11月7日)


全8時間25分21秒に及ぶ超長編ですが、5時間8分54秒から岡田氏の質問が始まっています。5時間18分50秒あたりから問題の存立危機事態の質問が始まり、高市首相の台湾問題に関する答弁は5時間28分4秒頃から始まり、問題発言は、5時間33分20秒当たりから始まりました。問題発言の部分を文字化すると以下の通りです。5時間47分10秒当たりまで存立危機事態に関する質疑が続きました。岡田議員の質問が全て終了したのは5時間56分00秒でおよそ47分の質疑でした。

8時間以上も質疑応答をする政治家、特に首相の激務がよく判りました。

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岡田「一年前の総裁選挙でこう述べておられるんですよ。中国による台湾の海上封鎖が発生した場合を問われて、"存立危機事態になるかもしれない"と発言されました。私も絶対ないと言うつもりはないんです。だけどこれどう言う場合に存立危機事態になるというふうにお考えだったんですか?お聞かせください。」

高市首相「(略)」

岡田「まぁあの海上封鎖した場合存立危機事態になるかもしれないというふうにおっしゃってるわけですね。まぁ例えば台湾とフィリピンの間のバシー海峡、これを封鎖されたという場合に、でもそれは迂回をすれば何日間か余分にかかるかもしれませんが、別に日本に対してエネルギーや食料が基本的に途絶えることはありませんよね?だからどういう場合に存立危機事態になるのかっていうことをお聞きしたいんですよね。いかがですか?」

高市首相「(略)」

岡田「まぁ今の答弁ではとてもですね、存立危機事態について限定的に考えるということにはならないですよね。非常に幅広い裁量の余地を政府に与えてしまうことになる。だから私は懸念するわけですよ。日本の艦船が攻撃を受けてない時に、少しこう回り道をしないといけなくなるという状況の中で、存立危機事態になるってこと私はなかなか想定しがたいんですよね。そういうことをあまり考えらしく言うべきではないと思うんですよ。

例えば自民党副総裁の麻生さんが昨年一月にワシントンで中国が台湾に侵攻した場合には存立危機事態と日本政府が判断する可能性が極めて高いという言い方をされてます。安倍さん自身も台湾有事は日本有事と、まぁここで有事ということの意味がよく分かりませんけども、何か非常に軽々しく私は問題を扱っているんじゃないかというふうに思うんですよね。で、もちろん存立危機事態ということになれば日本も武力行使するということになりますから、それは当然反撃も受けると。そうするとまぁウクライナやガザの状況を見ても分かるように極めて厳しい状況が国民にもたらされるということになります。そういう事態を極力力を尽くして避けていかなきゃいけない。それが政治家の最大の役割だというふうに思うんですね。」

高市首相「ただあらゆる事態を想定していく、最悪な事態を想定しておくということは非常に重要だと思います。先ほど有事という言葉がございました。まぁそれは色んなかたちがございましょう。まぁ例えば台湾を完全に中国北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。まぁそれは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それからまぁ偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それは色んなケースが考えられると思いますよ。

だけれども、それがやはり戦艦を使ってですね、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府が全ての情報を総合して判断するということでございます。実に武力行使が発生したら、これは存立危機事態に当たる可能性が高いというものでございます。法律の条文通りであるかと思っております。」

岡田「最後の表現よく分からなかったんですけども、武力攻撃が発生したら存立危機事態に当たる(誇張)、どういう意味ですか?武力攻撃が誰に発生することを言っておられるのですか?」

高市首相「まぁあの武力攻撃が発生してこれにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、という条文通りでございます。」


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岡田克也議員と高市首相の質疑応答部分だけを切り取ったYouTube動画もありました。

【令和7年11月7日】衆議院 予算委員会 立憲民主党・岡田克也


以上:2,153文字
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R 7-11-21(金):RU令和7年11月例会インド映画”RRR(アールアールアール)”鑑賞会報告
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恐れ入りますが、本ページは、会員限定です。

以上:21文字
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R 7-11-20(木):台湾有事に関する原口一博議員と岸田元首相の質問・答弁国会記録紹介
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○「1972年田中角栄・周恩来両首相による日中共同声明に至る経緯と事情復習」の続きです。高市首相の台湾有事に関する国会答弁に中国が猛反発して、日本への渡航自粛・日本水産品輸入停止等の措置を取り、日本の右派は歓迎し、左派は高市首相への非難の応酬で日本国内も揺れている如くです。中国人の日本渡航自粛で年間2兆2000億円の損失が出るとの試算に、国民1人当たり僅か1万8000円程度の損失であり、その程度で中国人が日本に来なくなるなら大いに結構などの保守派意見が報道されています。しかし中国人日本渡航自粛で何ら損害を蒙らない人の意見に対し、実際損害を蒙るのは旅行・観光業者等であり、では、日本人1人当たり1万8000円を負担して旅行・観光業者の損害を賠償してくれるのかと反発するはずです。

○高市首相の台湾有事に関する国会答弁についてネット検索していたら、令和5年の岸田元首相答弁が衆議院HP第211国会質問答弁情報に掲載されていました。以下、その備忘録です。

質問者原口一博衆議院議員・岸田元首相「いわゆる一つの中国と台湾有事に関する質問主意書」と答弁

(質問)一 中華人民共和国政府が自らの立場について表明し、これに対し日本政府が「十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」と述べた日中共同声明は、台湾が中国の領土の不可分の一部であるという、いわゆる「一つの中国」を日本政府が認めたものであるとの認識は正しいか。正しくないのであれば、日本政府が「一つの中国」を認めない理由は何か。

(回答)一
 台湾に関する我が国政府の立場は、昭和四十七年の日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明第三項にあるとおり、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」との中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するというものである。

(質問)二 中華人民共和国が台湾に対し武力の行使を行った場合、政府は、それが内戦、国際紛争のいずれに該当すると認識しているか。

(回答)二 仮定に基づくお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。いずれにせよ、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが我が国の一貫した立場である。

(質問)三 台湾と中華人民共和国の間の武力紛争に米国が参戦する場合、その行動の国際法上の根拠は何か。集団的自衛権か、個別的自衛権か。
 なお、米国の台湾関係法は国際法上の合法性の根拠にならないと考えるが、この点についても答弁されたい。

(回答)三 仮定に基づくお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。

(質問)四 一般に、日本有事という場合、武力攻撃事態、存立危機事態、重要影響事態などの事態がこれに該当すると考えられる。事態の認定は様々な状況を踏まえて個別具体的になされるものと思われるが、岸田政権は、台湾有事が日本有事となる可能性があると認識しているか。

(回答)四 お尋ねの「台湾有事」及び「日本有事」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般に、いかなる事態が武力攻撃事態、存立危機事態又は重要影響事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府がその持ち得る全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。


○岡田克也議員と高市首相の質問・回答の実際記事を探しているのですが、見つかりません。岸田元首相の回答は「仮定に基づくお尋ねについてお答えすることは差し控えたい」、「一概にお答えすることは困難」と回答を逃げており、対中国との関係では、これが摩擦を起こさない知恵であるところ、高市首相はズバリ回答したと思われ、これが中国の反発を予想しての故意とすれば、日本の国益を考えないとんでもない首相です。
以上:1,603文字
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R 7-11-19(水):1972年田中角栄・周恩来両首相による日中共同声明に至る経緯と事情復習
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○高市首相就任直後の中国習近平主席との直接会談で日本と中国が共通の利益を追求しながら協力する成熟した国家関係を目指すとの日中戦略的互恵関係の確認がなされ先ずは無難なスタートを切ったと安心したのもつかの間、その後の台湾有事に関する国会答弁で日中間に深刻な対立が生じて、困ったものです。高市答弁について、右派から当然との擁護意見、左派からとんでもないとの批判意見が出されています。日中国交回復は、昭和47年田中首相が就任直後に右翼から暗殺も覚悟して断行されたもので、今でも一部右翼からは世紀の蛮行と非難されています。

○この問題について、東洋経済ONLINEで九州大学准教授前原志保氏の「新聞ですら間違えた「台湾問題」に対する日本政府の立場。「日本は台湾を中国の一部と認めている」と思い込む人たちの課題」という大変参考になる記事が出ました。以下、日本現代史をスッカリ忘れていた私の備忘録です。田中首相・周恩来首相による日中共同声明の内容で「「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」というのはあくまで中国側の主張であって、日本はそれを「尊重(respects)」するが、「承認(recognize)」しているわけではない」と言う点はスッカリ忘れていました。

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新聞ですら間違えた「台湾問題」に対する日本政府の立場。「日本は台湾を中国の一部と認めている」と思い込む人たちの課題
東洋経済ONLINE2025/11/18 5:30九州大学准教授前原志保氏


・1943年;カイロ宣言アメリカのルーズベルト大統領、イギリスのチャーチル首相、中華民国の蔣介石主席が共同声明。「日本が中国から奪った領土(満州、台湾、澎湖諸島)は中華民国に返還されるべき」とした。これは戦後処理の方針表明であり、条約ではない。

・1945年;日本は、日本の降伏条件を定めた文書ポツダム宣言を受諾。連合国が日本に対して「カイロ宣言の条項は履行される」「日本の主権の範囲は、本州、北海道、九州、四国と小さな島々に限定」と明記。これにより日本の台湾統治は終了。台湾の地位に関しては「将来の平和条約によって最終的に決定される」と、台湾の法的地位は日本と連合国間の講和条約まで保留された。

・1951年;サンフランシスコ平和条締結。同条約には中華民国政府と中華人民共和国政府の双方ともに出席していない。国民党と共産党の内戦によって中華民国政府は台湾に撤退し、中国大陸では中華人民共和国政府が樹立され、どちらを正統な中国政府とするか連合国内でも意見が割れて、両方とも招かれなかった。そのため、サンフランシスコ平和条約は日本政府が台湾を「放棄する」とだけして、帰属先を明言しない形で結ばれた。

・1952年;日本と中華民国との間に日華平和条約が締結され、この条約によって両国間の戦争状態は正式に終結し、2国間の外交関係が樹立。ただ、この条約の適用範囲は、中華民国の実効支配地域(台湾・澎湖)にのみに限定された。そして中華民国政府が台湾を統治する実態は認めているものの、台湾の帰属先は明言されなかった。

・1972年;日華平和条約が終了し、日本と中華人民共和国との間で日中共同声明が出される。その時の重要な確認事項は
第2項:「日本国政府は、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認する」
第3項:「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し(fully understands and respects)、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」
「ポツダム宣言第8項」とは上記にも提示した「カイロ宣言の条項は履行される」「日本の主権の範囲は、本州、北海道、九州、四国と小さな島々に限定」という部分
「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」というのはあくまで中国側の主張であって、日本はそれを「尊重(respects)」するが、「承認(recognize)」しているわけではない

尊重(respects)は、「否定はしないが、賛同もしない」、「相手の立場を踏まえているが距離をとる」というニュアンス
中国語で「充分理解和尊重」とは、相手の立場を否定はしないが、同意も承認もしていない”という中立的な距離感

台湾は、2300万人の生身の人間が暮らす場所だ。台湾人は、自らが獲得した自由と民主主義と人権を守るために、中国からの武力威嚇に備えざるを得ない状況に置かれている。
以上:1,905文字
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R 7-11-18(火):立退料90万円での賃貸人解約申入賃貸借終了を認めた地裁判決紹介
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○「立退料50万円での賃貸人解約申入賃貸借終了を認めた地裁判決紹介」の続きで、立退料90万円の支払で賃貸借終了による明渡請求を認めた令和6年4月11日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○本件建物の賃貸人である原告が、賃借人である被告に対し、昭和42年5月に建築され築55年以上経過し本件建物が老朽化しており建替えの必要があるなどとして、賃貸借契約の解約を申し入れ、本件建物の明渡を求めました。

○これに対し、建物の劣化状況から立替の必要性は高いが、外観上、直ちに倒壊や部材の崩落などが生じて居住者や周辺住民の生命、身体、財産に損害を及ぼすほどの状態にあるとまでは認められず、平成9年に入居して25年以上更新を重ね、長年にわたり本件建物で生活を続けてきたことからすると、退去するには、相当な負担が伴うとして、賃料等の約1年分90万円の支払があれば借地借家法28条の定める正当事由が認められるとして明渡請求を認めました。

○「建物老朽化・建替必要性を理由に解約正当理由を認めた地裁判決紹介2」で紹介した判例の事案の様に建物の「朽廃」が認められれば立退料無しでの賃貸借終了・明渡請求が認められます。しかし、この建物「朽廃」の認定は、ハードルが相当高いのが賃貸人にとって辛いところです。

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主   文
1 被告は、原告に対し、原告から90万円の支払を受けるのと引換えに、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ。
2 被告は、原告に対し、令和5年10月20日から前項の建物の明渡済みまで1か月7万4500円の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用はこれを2分し、その1を原告の、その余を被告の負担とする。
5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 被告は,原告に対し、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を明け渡せ。 
2 主文第2項と同旨

第2 請求原因
1 原告は、被告に対し、令和3年3月8日、本件建物を、次の約定で賃貸し、これを引き渡した(以下「本件賃貸借契約」という。ただし、更新契約である。)。
(1)期間 令和3年4月20日から令和5年4月19日まで
(2)賃料 1か月7万2000円
(3)共益費 1か月2500円

2 原告は、被告に対し、借地借家法26条1項の定める期間内(上記1の期間満了の1年前から6か月前まで)に不更新の通知をしなかった(したがって、本件賃貸借契約は、従前と同一の条件で、期間の定めがないものとして更新された。)。

3 原告は、令和5年3月21日、本件賃貸借契約の解約を申入れた。(甲6の2の通知書。なお、同通知書は、期間満了後の更新を拒絶する旨通知するものであるが、仮に従前と同一の条件で更新された場合には、改めて解約を申し入れる趣旨を含むものである。)

4 令和5年9月21日(借地借家法27条1項の定める解約申入れの後6か月)は経過した。

5 本件建物は、昭和42年5月19日に新築され、すでに55年以上が経過している。外観上も老朽化は甚だしく、躯体部分の劣化や損傷も想定される上、新耐震基準も満たしていない。
 したがって、首都直下型地震その他の災害により倒壊の危険、居住者の生命身体の危険、隣接家屋への損害発生などを想定すると、可能な限り早期に建替え等が必要であり、こうした建物の現況を考慮すると、(少なくとも相当な退去費用の提供があれば)借地借家法28条の定める正当な事由がある。

第3 当裁判所の判断
1 被告は、答弁書において縷々主張するものの、本件賃貸借契約の成立について争う趣旨の主張はしておらず、むしろこれを前提としている。
 そこで、請求原因1及び2については、争うことを明らかにしないものとして、これを自白したものとみなす。

2 請求原因3については、甲6の1・2により認められる。

3 請求原因4は、当裁判所に顕著である。

4 請求原因5の正当事由については、次のとおり判断した。
 本件建物(賃借部分のみならず全体)は、昭和42年5月に建築された建物であり、築55年以上経過している。外観だけを見ても、外壁表面の至るところに亀裂が入り、被告が賃借する×××号室は、台所、浴室、トイレなどの設備の劣化が激しく、他室の床、柱、天井、内壁などにも経年によるとみられる損傷が多々見られる。(甲3)このような劣化状況を見ると、建替えの必要性は相応に高いといえる。いわゆる旧耐震基準下で建築されていることに加えて、上記の劣化状況から推察するに、震度5程度を超える地震に対して、十分な耐震性を備えているとは考え難い。

 もっとも、外観上、直ちに倒壊や部材の崩落などが生じて居住者や周辺住民の生命、身体、財産に損害を及ぼすほどの状態にあるとまでは認められないし、そのような耐震診断の結果が出ているものでもない。
 他方、被告側の事情についてみると、近隣には、類似する築年数、間取り、賃料の賃貸物件が存在し(甲7)、転居先も確保できそうであり、本件建物の使用継続を必要とする事情があるかどうかは明らかでない。

 もっとも、被告の主張によれば、平成9年に入居して25年以上更新を重ねてきたようである。長年にわたり本件建物で生活を続けてきたことからすると、退去するには、相当な負担が伴うと考えられる。
 以上を総合すると、相当の立退料の提供があれば、正当事由が認められるというべきである。
 そして、その額としては、賃料等の約1年分、90万円が相当である。


5 その他、被告の主張には、本件賃貸借契約に際し、何らかの欺罔行為があったかのようにいう部分もあるが、趣旨不明瞭であり、的確な抗弁足りえない。

6 よって、原告の請求は、立退料90万円の支払と引換えに本件建物の明渡しを求め、かつ、本件賃貸借契約終了後の令和5年10月20日から明け渡し済みまで1か月7万4500円の賃料相当損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部 裁判官 池田幸司

物件目録
1 所在   杉並区α×丁目×××番地××
2 家屋番号 ×××番××
3 種類   共同住宅作業所
4 構造   軽量鉄骨造陸屋根3階建
5 床面積  1階 105.27平方メートル
       2階 105.27平方メートル
       3階  70.87平方メートル
 上記建物の3階のうち、×××号室部分

以上:2,697文字
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R 7-11-17(月):2025年11月16日発行第401号”弁護士の値札”
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○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年11月16日発行第401号「弁護士の値札」をお届けします。

○人間収益機械説と言う言葉は聞いたことがありませんでした。GoogleのAI解説では、「「人間収益機械説」という言葉は一般的な学術用語や広く認知された概念ではありません。文脈から推測すると、「人間を収益を生み出す機械」として捉える考え方を指していると考えられます。」とされています。人的資本論と人間機械論に関連している可能性があるとのことですが、「この言葉自体は広く定着した学術用語ではありません。」と結論づけています。GoogleAI解説はホントに便利です。法律上の論点の解説も、良く勉強しており、下手な弁護士に聞くよりズッと正確に解説してくれます。AIの普及で、弁護士の値札は益々下がるだろうと実感しています。

○その弁護士の値札ですが、弁護士個人では無く資格としての価値をGoogleAIで検索すると司法試験塾で有名な伊藤真弁護士が主催する伊藤塾HPの「統計データで実証!士業の将来性ランキングTOP10|2025年版」では、弁護士は、社会保険労務士・行政書士に次いで3位でした。以下、税理士・公認会計士・土地家屋調査士・司法書士と続いています。「士業資格の難易度・年収ランキング!8士業・10士業にて比較【2025年最新」の「8士業・10士業の難易度ランキング:合格率より」によると司法書士が1位で弁護士はなんと10位でした。

○私が司法試験を受験した昭和50年代は受験者が3万人前後のところ合格者は500人前後、合格率は1.○%で国家試験ではダントツの難関でした。従って弁護士値札もダントツに高かったのですが、平成に入ってからの司法改革で合格者も増え、合格率も上がったことで、弁護士値札は激減しています。さらに近時のAIの普及で弁護士値札は下がる一方と思われます。弁護士個人として値札を上げる努力が必要で、その努力の賜の大山先生の値札はダントツに高く付くでしょう(^^)。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の値札

資本主義というのは、全てのものに「値札」が付いている社会だそうです。何でもかんでもお金で評価できてしまう。このようなお金万能の考えに対して、お金では評価できないものが存在するという考えも有力です。例えば「人間」は、お金では評価できないというわけです。それについては、こんな話があります。立派な衣装を身につけた王様が、一人の賢者に「今の私の価値はどのくらいだと思うか?」と質問しました。これに対して賢者はある金額を言うのですが、それを聞いた王様は「この服だけでも、お前が答えた金額くらいの価値があるぞ!」怒ります。それに対して賢者は、「ですから、その服の値段を申し上げました」と言い返したという話です。人間の価値はお金では測れないということでしょう。

確かにもっともな意見ですが、それでは話が面白くなりません。というわけで、「人間」にはどのような「値札」が付けられているのかを考えてみます。まず、就職のときには、その人の値札は、「年収」という形で表示されることになりそうです。定年後の再就職先を探すのに、今まで1000万円を貰っていた人が、その「値札」のままではどの会社も買ってくれなかったなんて話をよく聞きます。終身雇用の中、今まで勤務していた会社では、世間相場よりも高い金額を、「値札」として付けて貰えていたのかもしれません。そういえば、就活だけでなく婚活の場合でも、人間に値札が付くという話を聞きました。結婚相談所では年収、学歴、職業、容姿といった様々な要素が数値化され、男女それぞれに「値札」を付けるそうです。そして、その数値に基づいて「釣り合いの取れる相手」が紹介されるのです。もっとも相談所の利用者たちは、誰もが自分の価値を実際よりも高く見積もるので、いわゆる「高望み」をしてしまうそうです。わ、私も他人のことは言えませんけど。

ということで、法律の話です。実は法律の世界では、もっともシビアに人間に「値札」を付けているのです。例えば交通事故で亡くなった人に対する賠償金が幾らになるのかといった話です。これなんてもう、国家権力の一翼を担う裁判所が、真正面から人間の金銭価値を計算することになります。「人間の命に差をつけるのはけしからん」という考え方もありそうですが、そうはならないんですね。露骨に言うと、ここでも基本的には被害者の収入をもとに「命の値段」が計算されることになります。裁判にまで資本主義の論理が浸透しているのかという気もします。しかし例えば、現在稼いでいる一家の大黒柱が亡くなった場合と、高齢で収入のない方が亡くなった場合、前者の賠償金額を大きくした方が良いと考える国民の方が多数派のように思えます。

さらには「人間収益機械説」なんて学説もありました。人が亡くなったことを、収益を生む機械が壊れたのと同じように考えて、損失を計算しようということでしょう。ここまで行くと、かえって清々しい思いさえしてしまうのです。(おいおい。。。) ただ、お金を稼いでいない人間の「値段」は低いとなると、例えば専業主婦の場合はどう考えるのかみたいなことも議論されました。さらに言えば、男性に比べて女性の賃金は統計的に低いことは間違いありません。そうなると、「男性の値札」の方が、「女性の値札」よりも高くなってしまう。これは男女平等から見ると問題です。しかし、夫が亡くなったときの賠償金額の受け手は妻ですから、あまり問題視されてこなかったのでしょう。

というわけで最後に、弁護士の「値札」はどのように付ければよいのかも考えちゃいます。訴訟でどれだけ多額の賠償金を勝ち取ったかみたいな基準はありそうです。でも結局のところ、資本主義社会の中の弁護士は、自分たちに「値札」を付けたうえで、お客様の判断を待つしかないようです。お客様から、「大山弁護士のこの値札では安すぎる!」なんて言って貰える弁護士になれたら良いなと思うのです。

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◇ 弁護士より一言

妻は自分の誕生日には母親(94歳)に、メッセージを書いてもらいます。「今日は何の日でしょう?」と聞いても忘れていたけれど「今日は私の誕生日だから何か書いてね!」と頼むと、「 からだに気をつけていつまでも長生きしてね」と書いてくれたそうです。書く方と書かれる方が逆な気もしますが、親は有難いものです。プライスレスなプレゼントをもらえたと妻も喜んでいました。

以上:2,782文字
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R 7-11-16(日):特別受益制度の平成30年法改正と”生計の資本”の意義
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○民法第903条特別受益制度についての質問を受けました。
以下、平成30年改正についての備忘録です。

改正前903条1項
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

改正後903条1項
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

変更点は
改正前「前3条の規定により算定した相続分の中から」
改正後「第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中から」
で、
民法902条の2(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)追加されたことによる算定根拠条文表示が変わっただけで実質変更はありません。

903条2項は変更無し

改正前903条3項
被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

改正後903条3項
被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

「遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。」が単に「その意思に従う。」と変更されました。その理由は、遺留分制度自体が改正され、特別受益の「持ち戻し免除」と遺留分の関係が整理されたためと説明されています。遺留分制度の改正については別コンテンツで説明します。

改正後新設規定
903条4項

婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
この新設が改正の目玉で、配偶者を保護する目的で、これにより、生前贈与された自宅の価格を相続財産に持ち戻さなくて済むようになり、配偶者が遺産分割で不利益を被る事態を防ぎ、老後の生活保障を安定させることを目指しています。

○特別受益制度でやっかいなのは「生計の資本として贈与」 の意味です。
これは、相続人が自らの生活や職業、事業などの基盤を築くために受けた、扶養義務の範囲を超えるような多額の贈与を指し、被相続人からの「遺産の前渡し」とみなされます。

具体例は以下の通りです。
・住宅購入資金の援助:親が子のマイホーム購入のために提供した資金。
・事業資金の援助:子が新しく事業を始めたり、事業を拡大したりするための資金提供。
・不動産の贈与:土地や家屋そのものを贈与した場合。
・学費:通常の学費ではなく、特定の相続人のための多額の留学費用など、特に高額な教育費。
・独立開業のための資金:親元から独立して生活を始める際の経済的支援。

通常の生活費や一般的な教育費など、扶養義務の範囲内での援助は特別受益には当たらず、あくまで、個人の「生計の基盤」を形成するための、まとまった財産の移転が対象です。
以上:1,420文字
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R 7-11-15(土):死亡による人身傷害保険金請求権の請求権の帰属等についての地裁判決紹介2
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○「死亡による人身傷害保険金請求権の請求権の帰属等についての地裁判決紹介1」の続きで、令和5年2月27日東京地裁判決(LEX/DB)理由部分を紹介します。

○関連条文は保険法第2条(定義)の六号「損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう」、七号「傷害疾病損害保険契約 損害保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病によって生ずることのある損害(当該傷害疾病が生じた者が受けるものに限る。)をてん補することを約するものをいう。」、九号「傷害疾病定額保険契約 保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病に基づき一定の保険給付を行うことを約するものをいう。」です。

○被告保険会社の主張について判決は、
・当該被保険者の法定相続人がその順序により固有の権利として原始的に取得するので、亡Aの法定相続人であるFらが保険金請求権を取得し、Bがこれを取得することはない
→(判決)被保険者の相続人が、被保険者が取得した保険金請求権を、相続により承継的に取得するというべき

・賠償義務者の有無を問わず、民法711条に定める固有の慰謝料請求権を対象とする趣旨ではなく、Fらも保険金請求権を取得するのであって、原告らのみが保険金請求権を取得することはない
→(判決)保険契約者及び保険者において、このような事態を想定して、人身傷害保険に係る契約を締結したとはにわかに考え難い。

・父母、配偶者、子等の遺族が受けた精神的苦痛等による精神的損害の上限額が1500万円であって、原告らがこれを全額請求できるわけではない
→(判決)保険金請求権者以外の遺族の有無に応じて、精神的損害に係る死亡保険金について、その請求額を制限した定めは見当たらない


と被告保険会社主張を悉く否認しました。

○これに対し被告保険会社が控訴し、最高裁判決によれば控訴審も第一審と同じ結論と思われます。最高裁判決も同じ結論で、別コンテンツで解説します。

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第3 争点に対する判断
1 争点1(本件事故により生ずる亡Eの収入に係る逸失利益の額)について


     (中略)

2 争点2(被保険者が死亡した場合の保険金請求権の帰属する主体)について
(1)
ア 人身傷害保険は、保険者が、人身傷害事故によって、被保険者又はその父母、配偶者若しくは子が被る損害に対して、人身傷害条項及び基本条項に従い、被保険者を含む保険金請求権者に人身傷害保険金を支払うとされていることからすると(前提事実(1)ア(ア)、(ウ))、被保険者との関係では、人身傷害事故によって被保険者に生ずることのある損害を填補することを目的としているというべきであって、損害保険契約(保険法2条6号)に当たると解される。

また、人身傷害事故によって被保険者が傷害を被ったことの直接の結果として死亡したことによる損害が発生した場合に、保険者が死亡保険金として支払うべき損害の額は、人身傷害条項損害額基準により算定された葬儀費、逸失利益、精神的損害及びその他の損害の合計額とされており(前提事実(1)ア(カ)、イ(ア))、一定の上限の範囲内で、人身傷害条項損害額基準に従って算定される損害額に応じて定まるものとされていることからすると、人身傷害保険のうち上記の死亡保険金に関する部分については、損害保険契約の一類型である傷害疾病損害保険契約(同条7号)に当たると解される。

 そして、傷害疾病損害保険契約については、被保険者の死亡によって生ずる損害を填補するものが存在することを前提に、損害保険契約の規定の適用に係る読替規定を置いている(保険法35条)ものの、同法上、損害保険契約において、被保険者以外の者が保険金請求権者となることは想定されていない。また、ある者が死亡したことによって生ずる損害については、当該損害の発生について責任を負う加害者が存在する場合には、死亡した被害者は加害者に対し、死亡によって生ずる当該損害に係る損害賠償請求権を取得するものと解されていることに照らすと(最高裁昭和38年(オ)第1408号同42年11月1日大法廷判決・民集21巻9号2249頁参照)、法的には、当該損害は、被害者本人に生ずるものと観念されているとみることができる。

 そうすると、被保険者が人身傷害事故によって死亡した場合、人身傷害保険の死亡保険金は、被保険者が被る損害を填補するために被保険者に支払われることになるのであって、被保険者の相続人が、被保険者が取得した保険金請求権を、相続により承継的に取得するというべきである。人身傷害条項3条〔1〕(前提事実(1)ア(ウ)〔1〕)のただし書の定めは、この趣旨を注意的に定めたものと解するのが相当である。

イ 被告は、
〔1〕損害保険契約における被保険者は、人身傷害事故の客体であると同時に保険給付を受ける者でもあるのに対し、人身傷害保険は、被保険者と保険金請求権者を区別しており(前提事実(1)ア(ア))、人身傷害保険における被保険者は、生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約と同様に、人身傷害事故の客体ではあるが保険給付を受ける者ではないこと、
〔2〕人身傷害条項3条〔1〕(前提事実(1)ア(ウ)〔1〕)が「相続人」ではなくあえて「法定相続人」と規定しているのは、読替規定(保険法35条)が適用される傷害疾病損害保険契約でないことを確認するためであること、
〔3〕人身傷害保険が、損害を被った被保険者のほか、父母、配偶者、子といった遺族の損害も填補すること(前提事実(1)ア(ウ))からすると、
人身傷害保険は、典型契約である損害保険契約ではない旨主張する。

(ア)上記〔1〕についてみると、人身傷害条項3条〔1〕において、保険金請求権者として被保険者が掲げられていることに照らすと、人身傷害保険が損害保険契約であることを否定する根拠となるものとはいえない。

(イ)上記〔2〕についてみると、相続人の範囲及び順位は全て民法上法定されており(民法第5編第2章参照)、その意味では相続人はいずれも「法定相続人」ということができるのであるから、人身傷害条項3条〔1〕のただし書と保険法35条との用語の違いをもって、人身傷害保険が傷害疾病損害保険契約でないことを確認するものということはできない。

(ウ)上記〔3〕についてみると、人身傷害保険においては、被保険者のほか、父母、配偶者、子等の遺族も保険金請求権者とされているところ(人身傷害条項3条〔2〕(前提事実(1)ア(ウ)〔2〕))、保険法2条7号かっこ書が、傷害疾病損害保険契約により填補される損害は、「当該傷害疾病が生じた者が受けるものに限る。」と定めていることからすると、身体に直接傷害を被ったわけではない被保険者の配偶者、父母又は子に発生した損害部分は、傷害疾病損害保険契約に含まれるものではない。しかし、この点は、被保険者に生じた損害を填補する傷害疾病損害保険契約に、被保険者が人身傷害事故に遭った場合に父母、配偶者又は子に固有の損害が生じた場合にこれを填補する特約を付したものと考えることもできるのであって、このような特約が保険法上の強行規定に反して無効とすべき理由もないことに照らすと、人身傷害条項3条〔2〕の規定が存在することをもって、人身傷害保険が損害保険契約や傷害疾病損害保険契約に当たらないということはできない。

(エ)以上に照らせば、被告の上記主張は採用できない。

(2)被告は、人身傷害保険金を支払うべき損害の額が、人身傷害条項損害額基準に基づき算定されていることをもって、定額給付の定額性が満たされているとみて,人身傷害保険は傷害疾病定額保険契約(保険法2条9号)に当たると解するべきであるとの主張を前提として、人身傷害保険において被保険者が死亡した場合には、被保険者の法定相続人が死亡保険金を固有の権利として原始的に取得する旨主張する。

 しかし、人身傷害条項損害額基準では、死亡保険金について、葬儀費については、60万円を超える場合には、120万円を限度に必要かつ妥当な実費としており(前提事実(1)イ(イ))、その他の損害については、事故と相当因果関係のある範囲内で、社会通念上必要かつ相当な実費としており(前提事実(1)イ(オ))、実損を填補することを企図していることが明らかである。また、逸失利益についてもその計算方法は訴訟における逸失利益の算定方法とほぼ同様であり(前提事実(1)イ(ウ))、精神的損害についても金額は訴訟の場合よりも低廉ではあるものの、被保険者の属性ごとにその額を算定するという点で訴訟における精神的損害の算定方法と類似している(前提事実(1)イ(エ))。

そうすると、人身傷害条項損害額基準は、被保険者に生じた実損を填補することを企図してその上限及び算定方法を定めたものというべきであって、被保険者に生じた損害の程度によって保険金の給付額が異なるのであるから、定額による給付を定めたものとみることはできない。このことは、労働者災害補償制度等から給付を受けた場合は、これを除いた額が保険金となる(前提事実(1)ア(オ))ことからも裏付けられる。 
 したがって、人身傷害保険を保険者が人の傷害疾病に基づき一定の保険給付を行うことを約する傷害疾病定額保険契約と解することはできず、被告の主張はその前提を欠く。


(3)被告は、保険法2条は、同条1号の要件を満たす保険契約であれば、同条が規定する類型に該当しない非典型契約であっても、許容されるのであり、人身傷害保険は、社会のニーズに対応した合理的な保険契約であって、非典型契約と解するべきであるとの主張を前提として、人身傷害保険において被保険者が死亡した場合には、被保険者の法定相続人が死亡保険金を固有の権利として原始的に取得する旨主張する。

被告は、そのように解する論拠として、
〔1〕一般的な保険契約者(被保険者)の合理的意思としては、被保険者が死亡した場合に発生する保険金請求権が相続債権者の引当財産となるよりも相続人に取得されることを期待するはずであって、そのような合理的意思を考慮して、約款が作成されている一方で、被保険者の債権者による被保険者の死亡保険金を債権の引当てとすることへの期待は法的保護に値しないのであるから、人身傷害保険を損害保険契約と解して、死亡保険金を被保険者の相続債権者の引当てとすべきではない、
〔2〕人身傷害保険は、その発売当時、損害保険契約でも生命保険契約でもない第三分野として位置付けられており、保険金請求権者が人保険の特殊性としてその権利を原始取得すると解釈・運用されていたのであって、保険法が施行された後も、従前どおりの解釈・運用が続けられていたのであるから、保険法が施行されたことのみによって、同じ文言、規定でありながら、人身傷害保険の法的性格を変えるほどの転換をすべきでない
などと主張する。

ア 上記〔1〕についてみると、人身傷害保険においては、生命保険契約における保険法43条のような保険金受取人の指定・変更ができる旨の定めがないこと、上記(1)イ(イ)説示のとおり、「相続人」と「法定相続人」の語義に差異があるとはにわかに見いだし難く、まして、一般の保険契約者においてその差異を十分に理解しているとはいえないことからすると、人身傷害条項3条〔1〕において、被保険者が死亡した場合にはその法定相続人が保険金請求権者となる旨記載されていることのみをもって、保険契約者において、自らが死亡した場合に、保険金が自己の債権者よりも法定相続人に配分されることを期待するはずであると直ちにいうことはできない。

そして、被保険者が、人身傷害事故によって、傷害を被ったが死亡しなかった場合においては、被保険者が保険金を取得し、これが被保険者の債権者の引当てとなることからすると、被保険者の債権者において、死亡保険金をその債権の引当てとすることについての期待が法的保護に値しないものと断ずることはできないし、被保険者においても、自らが死亡した場合のみ、保険金を自らの債権者の引当てとせず、法定相続人に帰属させるとの合理的意思があったということはできない。かえって、保険契約者ないし被保険者において、相続放棄により自らの債務を負担しない法定相続人よりも、自らの債務を負担する相続人に死亡保険金を取得することを期待するとみることもできるのであって、人身傷害条項3条〔1〕の定めから、一般的な保険契約上の合理的意思を確定することは困難である。

 また、被告が主張するように、被保険者が死亡した場合の保険金請求権者がその法定相続人に原始的に帰属すると考えると、被保険者に対する賠償義務者がある場合に、相続放棄した法定相続人が保険金請求権を取得し、相続人が賠償義務者に対する損害賠償請求権を取得することになる一方で、保険金を支払った保険者は賠償義務者に対して代位できない結果、一つの損害について保険者と賠償義務者が請求権に応じて各支払を行うと二重に損害を填補するという事態が生じるのであって、保険契約者及び保険者において、このような事態を想定して、人身傷害保険に係る契約を締結したとはにわかに考え難い。
 したがって、被告の上記〔1〕の主張は採用できない。


イ 上記〔2〕についてみると、証拠中(乙7)には、人身傷害保険の設計・解釈・運用について、被告の主張に沿う保険実務家の意見を記載した部分が存在する。

 しかし、証拠(甲7)によれば、本件と類似する事案において、保険会社側が人身傷害保険は傷害疾病損害保険契約であって、死亡保険金の部分も被保険者が取得し、これが相続人に承継されると主張していることが認められる。このことからすれば、上記の保険実務家の意見をもって、人身傷害保険に関する実務において、被保険者が死亡した場合の保険金請求権を被保険者の法定相続人が原始取得すると解釈・運用されていたというには疑問がある。

その上、保険実務上、上記のような解釈・運用がされていたことをもって、当然に人身傷害保険の法的性質についての解釈が定まるということはできない。かえって、上記のような解釈・運用がされていたとして、保険保護を受けられていた潜在的、抽象的な保険金請求権者が想定されているにもかかわらず、平成22年4月に施行された現行保険法が保険契約を損害保険契約、生命保険契約、傷害疾病定額保険契約という類型化をしたことを踏まえると、同法施行後に締結された人身傷害条項を含む保険契約については、できる限り上記のような類型の中で、人身傷害保険を捉えるべきである。
 したがって、被告の上記〔2〕の主張は採用できない。

(4)以上によれば、亡Aが本件事故によって生じた保険金請求権を取得し、その相続人であるAがこれを相続により承継取得したと認められる。

3 争点3(原告らが精神的損害に係る保険金請求権を全額行使できるか)について
(1)被告は、人身傷害保険は、「被保険者の死亡により本人のほか、父母、配偶者、子等の遺族が受けた精神的損害等による損害」を「精神的損害」とした上、被保険者の属性別の定額給付を規定したことから、原告らが、精神的損害についての保険金請求権全額を取得できない旨主張する。
 しかし、上記2(2)のとおり、精神的損害に係る死亡保険金についても定額給付を定めたものとみることはできないのであって、これを前提とする被告の主張は採用できない。

(2)また、被告は、被保険者の死亡により被保険者のほか、父母、配偶者、子等の遺族が受けた精神的苦痛等による精神的損害の上限額が1500万円であって、原告らがこれを全額請求できない旨主張する。
 しかし、人身傷害条項及び人身傷害条項損害額基準によれば、被告が人身傷害保険金を支払うべき損害の額は、人身傷害事故によって被保険者に傷害を被った直接の結果として死亡したことによる損害が発生した場合に、人身傷害条項損害額基準により算定された金額の合計額とされ(前提事実(1)ア(カ))、精神的損害の額は、被保険者が一家の支柱でない場合で65歳以上のときは、1500万円とするとされており(前提事実(1)イ(エ))、保険金請求権者以外の遺族の有無に応じて、精神的損害に係る死亡保険金について、その請求額を制限した定めは見当たらないのであるから、被告の主張は採用できない。

(3)したがって、原告らは、被告に対し、亡Eの精神的損害に係る死亡保険金を全額請求できる。


第4 結論
 以上によれば、Aが亡Eから相続により取得した保険金請求権を、原告らがAの相続により、その法定相続分に応じて取得したと認められるところ、その保険金の額は、争点(1)において説示した収入に係る逸失利益1066万2000円のほか、葬祭費120万円(前提事実(1)イ(イ))、年金に係る逸失利益26万7545円(同(ウ))及び争点(3)において説示した精神的損害1500万円の合計2712万9545円から遺族一時金合計471万7100円(前提事実(4))を控除した2241万2445円となる。
 よって、原告らの請求は、主文第1項の限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部
裁判長裁判官 成田晋司 裁判官 吉田祈代 裁判官 池口弘樹
以上:7,148文字
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R 7-11-14(金):死亡による人身傷害保険金請求権の請求権の帰属等についての地裁判決紹介1
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○「死亡による人身傷害保険金請求権の請求権の帰属等についての最高裁判決紹介」の続きで、その第一審令和5年2月27日東京地裁判決(LEX/DB)を2回に分けて紹介します。

○前記最高裁判決の事案を解明するための第一審令和5年2月27日東京地裁判決(LEX/DB)ですが、判決文が大変長いので、先ず請求部分を紹介し、判決理由部分は別コンテンツで紹介します。
事案は次のとおりです。
・亡Aが、被告保険会社との間で人身傷害特約を含む自動車保険契約を締結し、令和2年1月、自損事故によって死亡
・亡Aの相続人である子F・G・H3名が相続放棄し(Aは妻とは離婚済み)、Aの母Bが相続人となる
・Bが亡A相続人として、被告保険会社に対し、亡Aの死亡での人身傷害特約による損害保険金(「死亡保険金」)3000万円の支払を求めて提訴
・Bが死亡し、B相続人X1,X2が訴訟承継して、各1500万円ずつを被告保険会社に請求


○これに対し被告保険会社は、人身傷害特約死亡保険金請求権は
・当該被保険者の法定相続人がその順序により固有の権利として原始的に取得するので、亡Aの法定相続人であるFらが保険金請求権を取得し、Bがこれを取得することはない
・賠償義務者の有無を問わず、民法711条に定める固有の慰謝料請求権を対象とする趣旨ではなく、Fらも保険金請求権を取得するのであって、原告らのみが保険金請求権を取得することはない
・父母、配偶者、子等の遺族が受けた精神的苦痛等による精神的損害の上限額が1500万円であって、原告らがこれを全額請求できるわけではない
と主張しました。

○これに対する東京地裁判決理由は、別コンテンツで紹介した上で、最高裁判決を解説します。

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主   文
1 被告は、原告らに対し、2241万2445円及びこれに対する令和4年2月4日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告らのその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その7を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告らに対し、各自1500万円及びこれに対する令和4年2月4日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 A(以下「亡A」という。)は、被告との間で、人身傷害条項を含む総合自動車保険契約を締結した後、被保険車両の操作中の事故により死亡した。亡Aは、配偶者と離婚しており、その第一順位の相続人は、子であるF、G及びHの3名(以下、この3名を併せて「Fら」という。)であったが、Fらは亡Aの相続放棄をしたため、亡Aの母であるB(以下「B」という。)が亡Aの相続人となった。
 Bは、上記事故によって亡Aが被告に対し上記保険契約に基づく保険金請求権を取得し、これをBが相続により承継取得した旨主張して、被告に対し、同請求権に基づき、亡Aの死亡に伴う損害保険金(以下「死亡保険金」ということがある。)3000万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である令和4年2月4日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めて、本件訴訟を提起した。
 本件訴訟の係属中、Bが死亡し、Bの子である原告らが、本件訴訟を承継し、被告に対し、各自上記死亡保険金の法定相続分に当たる1500万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている。

2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)本件保険契約の締結
 亡Aが代表取締役の地位にあった有限会社武石建設(以下「武石建設」という。)は、損害保険会社である被告との間で、平成31年2月6日頃、同月9日午後4時から令和2年2月9日までを保険期間とし、除雪構内専用車を被保険車両として、以下の内容を含む総合自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。(甲1、2、乙12)

ア 人身傷害条項(以下、人身傷害条項を含む保険契約を「人身傷害保険」という。)
(ア)保険金を支払う場合(1条)
 被告は、急激かつ偶然な外来の事故(被保険車両の運行に起因する事故又は被保険車両の運行中の、飛来中・落下中の他物との衝突、火災、爆発若しくは被保険車両の落下に限る。)により被保険者が身体に傷害を被ること(以下「人身傷害事故」という。)によって、被保険者又はその父母、配偶者若しくは子が被る損害(6条(後記(カ))に定める損害の額)に対して、人身傷害条項及び基本条項に従い、保険金請求権者に人身傷害保険金を支払う。

(イ)被保険者(2条(1))
 人身傷害条項における被保険者は、被保険車両の正規の乗車装置若しくはその装置のある室内に搭乗中の者、被保険車両の保有者又は被保険車両の運転者に該当する者をいう。

(ウ)保険金請求権者(3条)
 「この人身傷害条項における保険金請求権者は、人身傷害事故によって損害を被った次のいずれかに該当する者とします。
〔1〕被保険者。ただし、被保険者が死亡した場合は、その法定相続人とします。
〔2〕被保険者の父母、配偶者または子」

(エ)保険金を支払わない場合(4条(2)〔6〕)
 被告は、被保険者の自殺行為によって、被保険者に発生した傷害による損害に対しては、保険金を支払わない。

(オ)支払保険金の計算(5条(1)、(2))
 1回の人身傷害事故につき被告の支払う人身傷害保険金の額は、6条(1)(後記(カ))の規定により決定される損害の額と損害防止費用及び権利保全行使費用の合計額とする(5条(1))。
 労働者災害補償保険法を含む労働者災害補償制度によって既に給付が決定し又は支払われた額等がある場合において、その合計額が保険金請求権者の自己負担額(6条(1)(後記(カ))の規定により決定される損害の額並びに損害防止費用及び権利保全行使費用の合計額から5条(1)に定める人身傷害保険金の額を差し引いた額をいう。)を超過するときは、被告は、5条(1)に定める人身傷害保険金の額からその超過額を差し引いて人身傷害保険金を支払う(5条(2))。

(カ)損害の額の決定(6条(1))
 被告が人身傷害保険金を支払うべき損害の額は、人身傷害事故によって被保険者に、傷害を被った直接の結果として、〔1〕治療を要したことによる損害、〔2〕後遺障害が発生したことによる損害又は〔3〕死亡したことによる損害が発生した場合に、その区分ごとに、それぞれ人身傷害条項損害額基準により算定された金額の合計額とする。

イ 人身傷害条項損害額基準(死亡による損害に関する部分に限る。)
(ア)死亡による損害は、葬儀費、逸失利益、精神的損害及びその他の損害とする(第3の柱書)。

(イ)葬儀費(第3の1参照。甲25の1及び2)
 葬儀費は60万円とする。ただし、立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合には、120万円を限度に必要かつ妥当な実費とする。なお、亡Aの葬儀費用は120万円を超えており、同額が損害とされることとなる。

(ウ)逸失利益(第3の2)
 逸失利益が認められる場合は、原則として、収入額から生活費を控除した額に就労可能年数に対応するライプニッツ係数を掛けて算出する。
 ただし、被保険者が年金等の受給者である場合には、年金等の額から生活費を控除した額に、平均余命に対応するライプニッツ係数から就労可能年数に対応するライプニッツ係数を控除した係数を掛けて算出された額を加算する。
 なお、亡Aの年金に係る逸失利益は26万7545円である。

a 家事従事者以外の有職者の収入額は、現実収入額(原則として、事故前1年間に労働の対価として得た収入額とし、事故前年の確定申告書、市区町村による課税証明書等の公的な税務資料により確認された額とする。)、18歳に対応する年齢別平均給与額又は年齢別平均給与額の50パーセントに相当する額のいずれか高い額とする。
 現実収入額の立証が困難な者については、18歳に対応する年齢別平均給与額又は年齢別平均給与額の50パーセントに相当する額のいずれか高い額とする。(第3の2(1)〔1〕)
b 生活費は、被扶養者(被保険者に現実に扶養されていた者)がいない場合、収入額に対する50パーセントの割合とする(第3の2(2)〔1〕)。
c 就労可能年数に対応するライプニッツ係数は、被保険者の死亡時の年齢別就労可能年数及びライプニッツ係数により、67歳の就労可能年数は9年であり、そのライプニッツ係数は7.108である(第3の2(2)〔2〕)。

(エ)精神的損害(第3の3)
 精神的損害とは、被保険者の死亡により本人のほか、父母、配偶者、子等の遺族が受けた精神的苦痛等による損害をいう。精神的損害の額は、被保険者が一家の支柱でない場合で65歳以上のときは、1500万円とする。

(オ)その他の損害(第3の4)
 上記(イ)から(エ)まで以外の死亡による損害は、事故との相当因果関係のある範囲内で、社会通念上必要かつ妥当な実費とする。

(2)保険事故の発生
 亡A(昭和27年○○月○○日生まれ)は、令和2年1月28日、秋田市内において、住宅解体作業のため本件保険契約上の被保険車両であった除雪構内専用車を操作中に、重機に挟まれて胸腔内臓器破裂により死亡した(甲3。以下、この保険事故による亡Aの死亡を「本件事故」という。)。

(3)Fらによる相続の放棄
 亡Aの子であるFらによる相続放棄の申述が、令和2年3月10日、受理された(甲5の1から6の3まで)。

(4)遺族一時金の支払
 亡Aの母であるBは、労働者災害補償保険一時金として令和3年6月頃に350万円、また国民年金遺族一時金として同年10月頃に121万7100円を受領した(甲4、乙10、11)。

(5)本件訴えの提起及び訴訟の承継
 Bは、令和3年12月28日、本件訴えを提起したが、令和4年9月23日に死亡し、Bの子(亡Aの兄)である原告らが本件訴訟を承継した(甲5の1から6まで)。

3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1)本件事故により生ずる亡Aの収入に係る逸失利益の額

(原告らの主張)
 亡Aは、本件事故当時、武石建設の役員として稼働し報酬を得ていたのであるから、亡Aの本件事故前1年間の現実収入である年額300万円の50パーセントに就労可能年数に対応するライプニッツ係数7.108を掛けた1066万2000円を、収入に係る逸失利益として算定すべきである。

(被告の主張)
 武石建設の借入金は平成29年3月以降増加しているが利息すら払えておらず、外注費及び労務費が売上高の半分を超えている上、亡Aに対する家賃も未払の状態であったこと(甲22〔17頁〕、23〔26頁〕、24〔14、24、27頁〕)、亡Aに対する現実の支払実績が明らかでないこと(乙8)、亡Aが障害者控除を受けていること(乙9)、労災補償の給付日額が3500円であり(乙10)、労働の対価部分も明らかでないことなどからすると、亡Aが武石建設から役員報酬として年額300万円を現実に得ていると立証できているとはいえない。そうすると、18歳に対応する年齢別平均給与額224万8800円と年齢別平均給与額の50パーセントに相当する額193万0800円のうち、最も高額な224万8800円を収入額として、逸失利益を算定すべきであり(前提事実(1)イ(ウ)(a))、逸失利益は、799万2235円となる。

(2)保険金請求権の帰属する主体(人身傷害保険の被保険者が人身傷害事故により死亡した場合の保険金請求権が、被保険者に帰属し、その相続人がこれを承継取得するのか、被保険者の法定相続人に該当する者がその順序により固有の権利として原始的に取得するのか。)

(原告らの主張)
 人身傷害保険の被保険者が人身傷害事故により死亡した場合の保険金請求権は、当該被保険者に帰属し、その相続人がこれを承継取得するものと解すべきであるから、本件事故によって亡Aが保険金請求権を取得し、その相続人であるBが承継取得する。その理由は、別紙1のとおりである。

(被告の主張)
 人身傷害保険の被保険者が人身傷害事故により死亡した場合の保険金請求権は、当該被保険者の法定相続人がその順序により固有の権利として原始的に取得すると解すべきであるから、本件事故によって亡Aの法定相続人であるFらが保険金請求権を取得し、Bがこれを取得することはない。その理由は、別紙2のとおりである。

(3)原告らが精神的損害に係る保険金請求権を全額行使できるか
(原告らの主張)
 人身傷害条項3条柱書からすると、同条〔2〕は民法711条に定める固有の慰謝料請求権のみを対象とする趣旨の約款であって、被保険者の損害とは別個のものであるから、本件請求とは重複するものではない。

 そして、本件のような自損事故の場合には被保険者の生命を侵害した加害者が存在しないのであるから、第三者の不法行為によって被保険者が死亡した場合の慰謝料を認めた人身傷害条項3条〔2〕の要件には該当しない。
 したがって、本件では人身傷害条項3条〔2〕が適用されない。

(被告の主張)
ア 被保険者の父母、配偶者及び子が保険金請求権者となるのは、人身傷害保険の「死亡による損害」として、「被保険者の死亡により本人のほか、父母、配偶者、子等の遺族が受けた精神的損害等による損害」を精神的損害とした上、被保険者の属性別の定額給付を規定したことによる(人身傷害条項損害額基準第3の3)ものであって、賠償義務者の有無を問わず、民法711条に定める固有の慰謝料請求権を対象とする趣旨ではない。
 そして、人身傷害条項3条〔2〕によれば、Fらも保険金請求権を取得するのであって、原告らのみが保険金請求権を取得することはない。

イ また、被保険者の死亡により被保険者のほか、父母、配偶者、子等の遺族が受けた精神的苦痛等による精神的損害の上限額が1500万円であって、原告らがこれを全額請求できるわけではない。

以上:5,790文字
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