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なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
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R 2-10- 1(木):家事事件手続法で財産分与当事者に明渡命令可能とした最高裁判決紹介
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○「元夫財産分与取得不動産から居住者元妻に退去を否認した高裁決定紹介」の続きで、その許可抗告審の令和2年8月6日最高裁決定(裁判所時報1749号1頁)を紹介します。

○抗告人元夫が、相手方元妻に対し、財産の分与に関する処分の審判を申し立てました。第一審平成31年3月28日横浜家裁審判(LEX/DB)は、抗告人夫に209万円の支払を命じ、相手方元妻に審判確定の日から3ヶ月以内に本件建物を明け渡せと命じました。

○これに対し、元妻が抗告しましたが、抗告審令和元年6月28日東京高裁決定(LEX/DB)は、本件不動産は相手方の名義で、相手方に分与される財産であること、その場合、自己の所有建物について、占有者に対して明渡しを求める請求は民事訴訟ですべきものであって、これを家事審判手続で行うことはできないとして、原審判を変更し、相手方に対し、抗告人への209万9341円支払のみを命じました。

○これに対し元夫が、許可抗告をして、令和2年8月6日最高裁決定(裁判所時報1749号1頁)は、家庭裁判所は、財産分与の審判において、当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき、当該他方当事者に分与しないものと判断した場合、その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは、家事事件手続法154条2項4号に基づき、当該他方当事者に対し、当該一方当事者にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当であり、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すとしました。

○関係家事事件手続法の規定は以下の通りです。家事事件手続法は、従前の家事審判法が廃止されて、平成25年1月1日から施行されていますが、その内容・解釈等シッカリ勉強しておく必要があります。最高裁は、原審が明渡しを求める請求は民事訴訟ですべきとした点について、家事事件手続法154条2項4号は,このような迂遠な手続を避け,財産分与の審判を実効的なものとする趣旨から,家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者に対し,上記権利関係を実現するために必要な給付を命ずることができるとしました。

家事事件手続法154条(給付命令等)
 家庭裁判所は、夫婦間の協力扶助に関する処分の審判において、扶助の程度若しくは方法を定め、又はこれを変更することができる。
2 家庭裁判所は、次に掲げる審判において、当事者(第二号の審判にあっては、夫又は妻)に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
一 夫婦間の協力扶助に関する処分の審判
二 夫婦財産契約による財産の管理者の変更等の審判
三 婚姻費用の分担に関する処分の審判
四 財産の分与に関する処分の審判
3 家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判において、子の監護をすべき者の指定又は変更、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項の定めをする場合には、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。
4 家庭裁判所は、離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判において、当事者に対し、系譜、祭具及び墳墓の引渡しを命ずることができる。


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主   文
原決定を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理   由
抗告代理人○○○○,同○○○の抗告理由について
1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1)抗告人と相手方は,平成12年に婚姻したが,平成29年に離婚した。

(2)抗告人と相手方が,婚姻中にその協力によって得た財産として,抗告人名義の原々審判別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)等があり,本件建物は現在相手方が占有している。

2 本件は,抗告人が,相手方に対し,財産の分与に関する処分の審判(以下「財産分与の審判」という。)を申し立てた事案である。家庭裁判所が,家事事件手続法154条2項4号に基づき,相手方に対し,抗告人に本件建物を明け渡すよう命ずることができるか否かが争われている。

3 原審は,抗告人名義の本件建物等の財産を相手方に分与しないものと判断した上で,抗告人に対し相手方への209万9341円の支払を命じたが,要旨次のとおり判断して,家事事件手続法154条2項4号に基づき相手方に対し抗告人への本件建物の明渡しを命ずることはしなかった。

 財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産を他方当事者が占有する場合に当該不動産を当該他方当事者に分与しないものとされたときは,当該一方当事者が当該他方当事者に対し当該不動産の明渡しを求める請求は,所有権に基づくものとして民事訴訟の手続において審理判断されるべきものであり,家庭裁判所は,家事審判の手続において上記明渡しを命ずることはできない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 財産分与の審判において,家庭裁判所は,当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して,分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めることとされている(民法768条3項)。もっとも,財産分与の審判がこれらの事項を定めるものにとどまるとすると,当事者は,財産分与の審判の内容に沿った権利関係を実現するため,審判後に改めて給付を求める訴えを提起する等の手続をとらなければならないこととなる。

そこで,家事事件手続法154条2項4号は,このような迂遠な手続を避け,財産分与の審判を実効的なものとする趣旨から,家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者に対し,上記権利関係を実現するために必要な給付を命ずることができることとしたものと解される。

そして,同号は,財産分与の審判の内容と当該審判において命ずることができる給付との関係について特段の限定をしていないところ、家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の財産につき,他方当事者に分与する場合はもとより,分与しないものと判断した場合であっても,その判断に沿った権利関係を実現するため,必要な給付を命ずることができると解することが上記の趣旨にかなうというべきである。

 そうすると,家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき,当該他方当事者に分与しないものと判断した場合,その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは,家事事件手続法154条2項4号に基づき,当該他方当事者に対し,当該一方当事者にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当である。 

5 以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 木澤克之 裁判官 池上政幸 裁判官 小池裕 裁判官 山口厚 裁判官 深山卓也)

以上:3,073文字
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R 2- 9-30(水):別居妻から子らを監護中夫への子の引渡等申立を却下した高裁決定紹介
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○別居中の妻である相手方が、相手方との別居後にその監護を続けている夫である抗告人に対し、当事者間の子である未成年者らの監護者の指定及び引渡しを求めました。

○原審平成31年2月22日福岡家庭裁判所大牟田支部審判は、当事者双方の監護能力、監護環境等については、いずれが特に優位にあるとまではいえないが、従前の監護については主として妻により行われた時期も比較的長期間あるほか、本件子らの心情を踏まえ、母親による監護が実施されることが、本件子らの福祉によりかなうとして、監護者を妻と指定して、現在監護中の父に対し、母への子の引渡を命じました。

○父が、これを不服として抗告しましたが、抗告審である令和元年10月29日福岡高裁決定(判時2450・2451号合併号9頁)は、これまでの監護実績に明らかな差はないところ、未成年者らが、父母の同居中の住居と同じ校区内で就学するなど従前からの生活環境によく適応していること、抗告人の監護能力と未成年者らとの関係に問題は見受けられず、未成年者らと相手方との面会交流も安定的に実施されていること等の事情を考慮すれば、未成年者らにとっては、現状の生活環境を維持した上で、県外の実家に転居した相手方との面会交流の充実を図ることが最もその利益に適うなどとして、相手方の申立てをいずれも却下しました。

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主   文
1 原審判を取り消す。
2 相手方の本件申立てをいずれも却下する。
3 手続費用は、原審、当審とも各自の負担とする。

理   由
第1 本件抗告の趣旨及び理由

 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「抗告状」《略》及び「抗告理由書」《略》(いずれも写し)に記載のとおりである。

第2 事案の概要
 本件は、未成年者らの母である相手方が、未成年者らの父であり、相手方との別居後にその監護を続けている抗告人に対し、未成年者らの監護者の指定及び引渡しを求めた事案である。
 原審判は、当事者双方の監護能力、監護環境等については、いずれが特に優位にあるとまではいえないものの、従前の監護については主として相手方により行われた時期も比較的長期間あるほか、未成年者らの心情を踏まえ、母親による監護が実施されることが、未成年者らの福祉によりかなうとして、相手方の申立てをいずれも認容した。
 そのため、抗告人がこれを不服として即時抗告した。

1 認定事実
(1)身分関係等

 抗告人(昭和60年×月×日生)と相手方(昭和56年×月×日生)は、平成21年×月×日に婚姻し、平成22年×月×日に長女である未成年者C、平成24年×月×日に二女である未成年者Dをもうけた。

(2)同居中の生活状況及び未成年者らの監護状況等
ア 抗告人と相手方は、婚姻当初、G内に居住し、抗告人は会社員として就労し、相手方は看護師として老人保健施設で就労していた。その頃は、抗告人の帰宅が深夜であったことから、家事や長女の育児はほとんど相手方が担っていた。


         (中略)


エ ところで、相手方は、抗告人の就労が不安定で収入が少ない中、パチンコでかなりの出費をしていたほか、貴金属をローンで購入したり、副業サイトで債務を負ったりしており、これらのことも一因となって生活費としての借入が増大していった。その結果、最終的に借入額が約480万円に膨らんでしまい、平成27年10月頃、父方祖父母にその大半を肩代わりしてもらったことがあった。しかし、相手方にはその後も借金問題が発生したことから、平成28年6月以降、抗告人が家計を管理するようになった。

 また、相手方は、平成26年3月にP保育園を退職した後、同年4月にQ(介護施設)、同年6月にR(介護施設)、平成27年8月にS、同年11月にT、平成28年8月にU(特別養護老人ホーム)、平成29年12月頃にV、平成30年3月にWと、就労先を頻繁に変えており、この間、体調不良から欠勤や早退をすることも多く、平成28年7月6日には、自己の実家のあるE内のXを受診し、抑うつ神経症と診断され、翌月にも受診していた。

 なお、相手方には喫煙の習慣があり、未成年者らの妊娠中や出産後も喫煙を続けていたほか、高血圧の症状もあり、平成29年8月頃には深夜に救急搬送されて入院したこともあった。

オ 一方、抗告人は、平成27年度から保育園の保護者会の役員となり、その頃には、相手方が体調不良を訴えることが多くなっていたこともあって、抗告人が未成年者らの監護に相当程度関与しており、平成27年11月にY(リサイクル関係)に入社してからは就労時間も安定したため、保育園の送迎や連絡帳の記載などはほぼ抗告人が担っていた。また、抗告人は、相手方名義の借入金の返済のため、平成28年6月からコンビニエンスストアで深夜のアルバイトをしていた。

         (中略)

(3)別居に至る経緯
ア 平成30年3月、相手方がLINEで男性と親密なやり取りをしていることが抗告人に発覚し、同月17日にそのことについて双方で話合いを行い、相手方において、当該男性とは連絡しないことを約束した。

イ 同年4月2日、相手方が上記とは別の男性とラブホテルに行ったことが抗告人に判明した。
 そのため、抗告人は激怒し、相手方に対して別居を求めたが、相手方が行く当てがなかったことから、抗告人が未成年者らを連れて父方実家に行くこととなった。これについて、相手方が異議を述べることはなかった。

ウ こうして、抗告人は、同月6日以降、相手方と別居して、未成年者らとともに父方実家で生活するようになった。

(4)別居後の抗告人の生活状況及び子らの監護状況
ア 父方実家は5LDKの一戸建てであり、父方祖父母のほか、抗告人の祖母(以下「父方曾祖母」という。)、抗告人の妹(以下「父方叔母」という。)が同居している(ただし、父方叔母は月2、3回週末に帰宅する程度である。)。抗告人と未成年者らは、1階の二間続きの部屋を使用している。

イ 抗告人は、上記のとおり、平成27年11月以降、Yに勤務している。勤務時間は午前8時から午後5時までであり、概ね週に2日30分程度の残業がある。休みは土日祝日である。月収は手取りで18万円程度であり、父方実家の生活費のうち、光熱費は父方祖父母が負担し、それ以外は抗告人が負担している。

ウ 別居後の平均的な1日の過ごし方を見ると、子らは、午前6時45分頃起床し、午前7時頃、父方祖母が作った朝食を抗告人と一緒に食べ、二女が保育園通園中は、二女の身支度を抗告人が手伝い、午前7時15分頃、抗告人が二女を車で保育園に送ってそのまま出勤していた。二女が平成31年4月にZ小学校に入学した後は、子らは午前7時30分頃、一緒に登校している。そして、抗告人は、勤務終了後、二女が通園中は帰宅途中に保育園に寄って二女を迎え、一緒に午後6時頃帰宅していたが、二女が入学した後は、長女の下校時刻が遅い火曜日と木曜日以外は、子らが一緒に午後3時10分から20分頃に下校し、その後は父方実家でおやつを食べたり宿題をしたり、遊びに行くなどして過ごしている。

また、長女は、平成30年10月に小学校のフットベースチームに入部し、月・火・木曜日は、午後5時から午後7時まで小学校で行われる練習に参加しており、二女も入学後すぐに同じチームに入部して練習に参加するようになった。抗告人の帰宅時間に大きな変更はないが、長女がフットベースチームに入部した後、抗告人も帰宅後に練習の手伝いに参加するようになった。なお、夕飯は、父方祖母が作ったものを皆で一緒に食べ、子らは午後9時頃には就寝している。

 また、土曜日は、午後3時から午後5時ないし午後7時までフットベースの練習があり、日曜日は、抗告人が子らを連れてショッピングモールに遊びに行ったり、子らが友達と遊びに行くなどしている。なお、休日にフットベースの試合や行事があるときは、それに参加しており、長期の休みに行われる合宿にも参加している。

         (中略)

(5)別居後の相手方の生活状況
ア 相手方は、抗告人が未成年者らを連れて父方実家に行った後、勤務していたWを辞め、Iのアパートも解約し、E内の自己の実家(以下「母方実家」という。)に転居した。

         (中略)


(6)相手方と子らとの面会交流状況
ア 抗告人と相手方は、別居後、相手方と未成年者らとの面会交流について話し合い、平成30年5月13日から同月17日までと、同月20日から同月24日まで、母方実家で宿泊付きの面会交流が実施された。そのため、平成30年5月は、小学校及び保育園を休むことが多く、長女については担任教諭から抗告人に対し、学習が遅れる可能性を指摘され、二女についても、担任保育士から相手方に対し、お遊戯会の練習が遅れているとして、できるだけ欠席しないように依頼があった。

 なお、同年4月中、相手方がまだIのアパートで生活していた頃、長女が一時的に相手方の下で生活した時期があり、長女の担任教諭によると、その間2回ほど、長女が学校を無断欠席したことがあった。その際、担任教諭が相手方に電話をしてもつながらず、抗告人に電話をするとつながり、「相手方はきつくて寝ていたらしい。」との返事を受けたほか(寝坊であったことは相手方も認めている。)、校納金の支払もないことを抗告人に伝えたところ、同人からすぐに支払があったとのことである。

 その後、夫婦関係調整調停の期日において、調停委員から面会交流の在り方について提案を受け、面会交流は学校や保育園が休みのときに実施することとなった。そのため、上記のように頻繁に学校や保育園を欠席する状態は解消された。

         (中略)


(7)子らの心情等
ア 平成30年9月14日に実施された家庭裁判所調査官との面接において、長女は、面接の冒頭に、質問を受ける前から、「Cね、あんまりママと電話できなくて、ママと住みたいって言いたいけど、大人が周りにいるからできない。」と述べ、その後のやり取りの中でも「EでママとCとDと一緒に住みたい。」と述べた。また、相手方を慕う理由については「ママはいつもぎゅーってしてくれたり、夜一緒に寝てくれたり、髪をきれいにしてくれたり、ママは可愛いから。パパができんことをしてくれる。」などと表現した。

 なお、転校のことを尋ねられた際には、Eの小学校には生徒が800人以上いて、1学年に5クラスあることなども話しており、相手方からそうした話を聞いていることが窺われた。

 しかし、令和元年7月に行われた調査官による担任教諭との面接では、長女は同年6月頃、一時的に不安定になり、担任教諭に対して、「Eに行ったらどうなるのかな。学校には友達もいるし、こっちにおりたいな。」と話し、「先生や友達のおかげで学校が楽しい。ずっとZ小学校にいたい。」などと書いた手紙を渡すなどしたとのことであり、こうした長女の言動は、相手方との面会交流をした直後の月曜日に顕著に見られたとのことであった。

令和元年8月に行われた調査官との面接では、長女は落ち着きを取り戻しており、現在の生活状況に不満はなく、フットベースも気に入っていることを話したが、相手方との面会交流の頻度をもう少し増やしてほしいとの希望を述べ、さらに、家族の和合を今でも願っている心情を吐露し、「このままパパとママが離れ離れになって、C(長女)とD(二女)も別々になりそう。」という不安を漏らしていた。

イ 二女は、平成30年9月の面接において、調査官から今後の希望を尋ねられると、「ママがいい。」、「ママに会えん。」などと述べたが、その理由や意味について質問されても、それ以上の回答は返ってこなかった。表情シートを用いた質問では、抗告人、相手方、長女及び父方祖父母と遊んでいるときの気持ちは、いずれも好きな食べ物を食べているときと同じものを選択した。

 また、令和元年8月の調査官との面接において、二女は、学校は楽しいと述べたが、長女と異なり、フットベースは「監督に怒られるから辞めたい。」と話し、調査官の質問とは関係なく、「Eでは水泳とピアノを習いたいって言ってる。」などと述べた。さらに、二女は、「Eに行くのは好き。HよりもEの方が好きになった。」、「ママはあんまり怒らんし、パパがおらん。」、「パパはいっぱい怒る。」とも述べたが、他方で、好きなままごと遊びは父方実家で長女や抗告人とするとも述べていた。面接の間、二女は調査官の手控えに落書きをすることに集中してしまい、質問に対応しない答えが散見され、その口調や表情からは、深刻な様子は窺えなかった。

2 判断
(1)前記認定事実によれば、相手方は、G内に居住していた頃は、看護師として勤務しながら、家事と育児を全面的に担っており、平成23年9月にH内に転居した後も、抗告人の求職期間中の相手方の就労時間を除けば、抗告人がYに就職する平成27年11月頃までは、家事と育児を主として担っていたと認められる。

しかし、相手方は、平成26年3月にP保育園を退職した後、頻繁に転職を繰り返すようになり、平成28年7月には抑うつ神経症の診断を受け、パチンコや貴金属の割賦購入、借入金の増加、他の男性との密接なやり取りもこうした時期に重なっていることからすると、抗告人がYに就職して安定的に育児に関与できるようになった頃には、相手方の精神状態は極めて不安定となっており、その監護能力も相当低下していたと考えられる。そのため、別居に至るまでの3年程度は、食事の準備を除けば、子らの監護を主として担っていたのは抗告人であったと推認される。

 このような経緯からすると、同居中の子らの監護についての時間的ないし量的な実績は、相手方と抗告人とで明らかな差があるとはいえず、その時々の生活事情を踏まえて相補って監護していたのが実情と考えられるが、子らの乳児期に主として監護をしていたのが相手方であることや、子らの発言の中に、相手方への強い思慕を示す言葉が見られることからすると、子らは、相手方に対してより強い親和性を有していることが窺われる。

 もっとも、相対的な親和性の強さをこのように理解したとしても、子らは抗告人とも良く親和していることに加え、物心ついた頃からHで生活し、原審判後には、二女もZ小学校に入学するとともに、フットベースチームにも入り、いずれについてもよく適応している。そして、抗告人は、相手方との別居後、子らの生活や学習の細部にわたって配慮し、その心身の安定に寄与していることから、抗告人の監護能力と子らとの関係に問題は見受けられないことに加え、現在は、相手方との宿泊付きの面会交流も安定的に実施されている状況にある。

就学後の子らについて監護者を定めるに当たっては、従前からの安定した監護環境ないし生活環境を維持することによる利益を十分考慮する必要があり、乳幼児期の主たる監護者であった相手方との親和性を直ちに優先すべきとまではいえない。さらに、長女は、相手方との面会交流時にはEで相手方と暮らしたいと繰り返し発言しているが、担任教諭に対してはZ小学校や友人と離別することへの強い不安を訴えているのであって、相手方への上記発言が長女の相手方への思慕を示す表現であるとしても、本件監護者指定における位置付けについては慎重に評価・判断する必要がある(なお、二女は、調査官との面接時に、抗告人から怒られることやフットベースに参加することに不満を漏らしているが、その口調や表情から深刻さは感じ取れなかったとの調査官の意見もあることに加え、二女は、抗告人への親和性を示す発言もしており、現在もフットベースを継続していることからすると、その個々の発言に結論的な意味を持たせるべきではない。)。

 以上の事情を考慮すれば、子らにとっては、現状の生活環境を維持した上で、相手方との面会交流の充実を図ることが最もその利益に適うというべきであるから、子らの転居・転校を伴う相手方への監護者指定と子らの引渡しは相当ではない。

(2)これに対し、相手方は、子らが明示的に相手方との生活を希望していることや、抗告人から抑圧されて言いたいことが言えない状況にあること、抗告人が面会交流を妨害するような行動をしていることを指摘するが、前記のとおり、子らの年齢からすると、相手方と暮らしたいという発言は相手方への思慕を示す表現と解するにとどめるのが相当であり、その意思を考慮する際には、日常生活から窺われる現状への肯定的な心情をも含めて判断する必要がある。

また、調査官調査の結果によれば、抗告人と子らの父子関係は良好に形成されており、子らが抑圧された環境に置かれているとは認められないし、面会交流については、当事者双方に感情的な対立はありながら、H・E間の宿泊付きの面会交流を任意に実施することができており、子らも後ろめたさを感じることなく楽しんで過ごしていることからすると、抗告人の対応が監護者として不適切ということはない。
 したがって、相手方の指摘する事情を考慮しても、前記の判断を覆すには至らない。

3 結論
 よって、当裁判所の上記判断と異なる原審判を取消し,相手方の申立てをいずれも却下することとして、主文のとおり決定する。 
(裁判長裁判官 山之内紀行 裁判官 川崎聡子 矢崎豊)

別紙 抗告状《略》
別紙 抗告理由書《略》
以上:7,139文字
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R 2- 9-29(火):元夫財産分与取得不動産から居住者元妻に退去を否認した高裁決定紹介
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○「元夫財産分与取得不動産から居住者元妻に退去を命じた家裁審判紹介」の続きで、その抗告審の令和元年6月28日東京高裁決定(LEX/DB)を紹介します。

○離婚した元夫婦間において、元夫である相手方が、元妻である抗告人に対し、財産分与を請求し、原審が、本件不動産は、相手方名義の財産であり、本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、相手方に分与するのが相当とし、抗告人が居住していることから、抗告人は相手方に対し、財産分与として、本件建物を明け渡すのが相当としました。

○しかし、原審は、抗告人がただちに明け渡すのは困難であり、本審判確定の日から3か月以内に本件建物を明け渡すのが相当と認められるとして、相手方は、抗告人に対し、209万9341円を支払えと命じるとともに、抗告人は、相手方に対し、財産分与として、本審判確定の日から3か月以内に、本件建物を明け渡せと命じていました。

○抗告人元妻が抗告しましたが、本件建物には抗告人が居住していて、相手方は、抗告人に対し、本件建物の明渡しを求めるところ、本件不動産は相手方の名義で、相手方に分与される財産であること、その場合、自己の所有建物について、占有者に対して明渡しを求める請求は民事訴訟ですべきものであって、これを家事審判手続で行うことはできないとして、原審判を変更し、相手方に対し、抗告人への209万9341円支払のみを命じました。

○この決定は、家事事件手続法154条2項4号に基づき,建物明渡しを命ずることができるとの理由で、許可抗告審令和2年8月6日最高裁決定で覆されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 原審判を次のとおり変更する。
2 相手方は,抗告人に対し,209万9341円を支払え。
3 手続費用は,第1,2審を通じて各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

1 原審判を次のとおり変更する。
2 相手方は,抗告人に対し,657万5282円を支払え。

第2 事案の概要(略語は,新たに定義しない限り,原審判の例による。以下,本決定において同じ。)

         (中略)


第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,財産分与については原審の判断を相当と考えるが,本件建物の明け渡しについては,財産分与としては求めることはできないと考える。その理由は,次のとおり付加訂正し,後記2において抗告理由に対する判断を示すほかは,原審判の「理由」中の「第2 事案の概要」の2(原審判1頁25行目から2頁24行目まで)及び「第2 当裁判所の判断」の1ないし4(2)(原審判7頁8行目から11頁19行目まで。別紙含む。なお,上記「第2 当裁判所の判断」に係る部分を指す時には,以下「第3」という。)に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)原審判2頁3行目の「中国」を「中華人民共和国(以下「中国」という。)」と改め,4行目末尾に改行の上,次のとおり加える。
「(2)抗告人は,平成21年7月22日,長男を連れて抗告人の実家がある中国に帰省した上,同年8月18日,相手方に対し,電話で,「このまま長男と中国で生活する」などと告げた。
 なお,相手方は,上記連絡に驚いて直ぐに抗告人を訪問し,抗告人に対し,長男と帰国するよう説得するなどしたが,抗告人はこれに応じなかった。」

(2)原審判2頁5行目の「(2)」を「(3)」と,6行目以下の「当庁」をいずれも「横浜家庭裁判所」と,それぞれ改める。

(3)原審判2頁9行目の「及び長男の引渡しを命ずる判決」を「及び長男の親権者を相手方とし,長男を相手方に引き渡すことを命ずる判決」と改め,12行目の「同年4月に」を削り,13行目の「帰国させ,」の次に「同年4月以降,」を加える。

(4)原審判2頁16行目末尾に改行の上,次のとおり加える。
「(4)抗告人は,平成25年5月に日本に帰国し,肩書住所地(本件建物のこと)で,相手方及び長男と同居を始めた。相手方と長男は、平成26年4月,本件建物を出て相手方の実家に移り,以後,抗告人と別居している。」

(5)原審判2頁17行目の「(3)」を「(5)」と,19行目の「審判をした」を「審判をし,同審判は確定した」と,21行目の「(4)」を「(6)」と,それぞれ改め,24行目末尾に改行の上,次のとおり加える。
「(7)相手方は,平成29年10月12日,抗告人を相手とし,横浜家庭裁判所に対し,財産分与調停を申し立てた(同裁判所平成29年(家イ)
第4368号)が,同調停は,平成30年9月20日に不成立で終了し,本件審判手続に移行した。」

(6)原審判8頁11行目の「本件審判期日のおける」を「原審審判期日における」と,それぞれ改める。

(7)原審判9頁3,4行目の「合意していること」の次に「(原審第5回期日調書)」を加え,4,5行目の「を考慮しても」を「によっても,本件不動産の価額が上記2770万円を上回るとは認められないことからすれば」と改める。

(8)原審判9頁10,11行目の「購入され新築された」を「新築されたものを購入された」と,11行目の「その頃,申立人が」から12行目の「証拠はないし」までを「相手方のゆうちょ銀行の通常貯金に平成24年5月17日に100万円が入金されたことは認められる(甲21)ものの,それが相手方の両親から贈与されたものと認めるに足りる証拠はなく,」と,それぞれ改める。

(9)原審判10頁6行目の「甲5」を「甲4,5」と改める。

(10)原審判10頁22,23行目の「主張するものの,」を「主張し,他方で,抗告人は,平成21年8月から平成24年3月まで抗告人と長男とが中国に滞在していた時の生活費等を問題にするかのような主張をするが,」と,24行目の「対象とならない。」を「対象とならないと解するのが相当である。」と,それぞれ改める。

(11)原審判11頁14行目から19行目までを次のとおり改める。
「(2)また,本件不動産は相手方名義の財産であり,本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,これを相手方に分与するのが相当である。
 なお,本件建物には抗告人が居住していて,相手方は,抗告人に対し,本件建物の明け渡しを求めるところ,上記のとおり,本件不動産は相手方の名義で,相手方に分与される財産であること,その場合,自己の所有建物について,占有者に対して明渡しを求める請求は民事訴訟ですべきものであって,これを家事審判手続で行うことはできないといわざるを得ない。

2 抗告理由に対する判断
(1)抗告人は,〔1〕抗告人が中国で長男を監護養育していた平成21年8月から平成24年3月までの間,相手方は,本来月額10万円の婚姻費用を負担すべきであったのに,平成24年2月から月額2万円送金してきたにすぎず,その間,支払を免れた分等で資産形成をしており,その後,平成25年5月から平成26年4月までの間,抗告人,相手方及び長男は同居していたことなども踏まえれば,抗告人と相手方の夫婦としての経済的協力が終了したのは同月1日であり,財産分与の基準時は同日とすべきこと,〔2〕抗告人は,本件不動産の購入に係る住宅ローンについて,平成17年3月31日に繰上返済に充てた300万円は,抗告人の両親から贈与された抗告人の特有財産であること,〔3〕仮に財産分与の基準時が原審認定の平成21年8月18日であるとしても,同日時点の本件不動産価額は2770万円で,残ローンが2437万6858円であるから(したがって,差は332万3142円),相手方が本件不動産を単独取得するのであれば,相手方は抗告人に対し,財産分与の額に,上記差額の2分の1相当額(166万1571円)を支払うべきであること,〔4〕相手方は,審問期日で暴言・暴力を認めているから,慰謝料的財産分与が認められるべきこと,などを主張する。

(2)しかしながら,抗告人及び長男が中国で過ごしていた期間の抗告人及び相手方の収入や長男を含めたそれぞれの生活状況等が明らかでない上,むしろ,本件和解においては,抗告人と相手方との間で婚姻費用として月額2万円を支払う旨の合意がされていること(本決定で付加訂正の上で引用する原審判〔以下「原審判」という。〕第2・2の前提事実)などからすれば,抗告人が主張する上記期間の婚姻費用相当額は明らかではなく,したがって,その間,相手方が本来払うべき婚姻費用の支払を免れ,資産形成をしていたなどということはできず,また,平成25年5月に抗告人が日本に帰国した後の生活状況について,相手方は,抗告人とは家庭内で別に生活していたなどの内容を記載した陳述書(甲13)を提出し,抗告人も,互いに自分の食費を支払っていて,それぞれが働き,生活費を渡し合うようなことはなかった旨述べていること(原審における抗告人審問の結果)からすれば,抗告人が帰国した平成25年5月以降,抗告人と相手方の夫婦としての経済的協力が継続していて,財産分分与の基準時を平成26年4月1日であるとは解することはできず,抗告人の上記〔1〕の主張は採用できない。

そして,本件不動産の購入に係る住宅ローンについて,平成17年3月31日に繰上返済がされた300万円について,抗告人の特有財産とは認められないことは,原審判第3・2(1)ア(ア)cで判示したとおりであるから,抗告人の〔2〕の主張は採用できない。また,原審判第3・2で判示するとおり,本件不動産の価額及び基準時の住宅ローン残額を考慮しており,その結果,基準時の共有財産の価額が454万2643円となるのであり,これに加えて,本件不動産価額等を考慮し得ないことは明らかであって,抗告人の〔3〕の主張も採用できない。

さらに,抗告人は,原審審問期日において,「平成25年5月から相手方及び長男と同居し始めた後,長男が敵意をむき出しにしていたことがある」とか,「相手方から,『あなたが来てから,食費は倍に上がった。これからあなたは,自分の食料はあなたが買ってください。』と言われた。」などと述べたのみで,これをもって相手方による暴言・暴力があったとは認められず,他に相手方の暴言や暴力を認めるに足りる証拠はなく,抗告人の〔4〕の主張も採用できない。

3 その他,抗告人は種々主張するが,前記引用に係る原審判の認定,判断を左右するものはない。

第4 結論
 以上のとおり,財産分与として,抗告人に209万9341円を支払うよう相手方に認めた点で原審判は相当であるが,財産分与として,本件建物の明渡しを認めた点で原審判は相当ではないので,上記の範囲で原審判を変更することとして,主文のとおり決定する。
令和元年6月28日
東京高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官 深見敏正 裁判官 鈴木正弘 裁判官 餘多分宏聡

別紙
財産分与審判に対する抗告事件
(原審判:横浜家庭裁判所平成30年(家)第2368号財産分与申立事件)
抗告人 P9
相手方 P2
以上:4,509文字
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R 2- 9-28(月):元夫財産分与取得不動産から居住者元妻に退去を命じた家裁審判紹介
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○財産分与対象財産として、居住者は妻で、名義人が夫の住宅ローン付不動産がある場合の裁判例を探しています。

○離婚した元夫婦間において、元夫である申立人が、元妻である相手方に対し、財産分与を請求した事案で、本件不動産は、申立人名義の財産であり、本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、申立人に分与するのが相当であるものの、相手方が居住していることから、相手方は申立人に対し、財産分与として、本件建物を明け渡すのが相当であるが、相手方がただちに明け渡すのは困難であると推認されることから、本審判確定の日から3か月以内に本件建物を明け渡すのが相当と認められるとして、申立人は、相手方に対し、209万9341円を支払えと命じるとともに、相手方は、申立人に対し、財産分与として、本審判確定の日から3か月以内に、本件建物を明け渡せと命じた平成31年3月28日横浜家裁審判(LEX/DB)を紹介します。

○3ヶ月以内の明渡は居住者元妻にとって厳しいと思いましたが、抗告審令和元年6月28日東京高裁決定でこの部分が覆されており、別コンテンツで紹介します。但し許可抗告審最高裁でさらに覆されますので、これも別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 申立人は,相手方に対し,209万9341円を支払え。
2 相手方は,申立人に対し,財産分与として,本審判確定の日から3か月以内に,別紙物件目録2記載の建物を明け渡せ。
3 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 申立の趣旨

 相手方は,申立人に対し,財産分与として,別紙物件目録2記載の建物を明け渡せ。

第2 事案の概要等
1 本件は,離婚した元夫婦間において,元夫である申立人が,元妻である相手方に対し,財産分与を請求している事案である。

2 前提事実
 一件記録によれば,以下の事実が認められる。

         (中略)


第2 当裁判所の判断
1 財産分与の基準日について

(1)一件記録,甲13,30によれば,申立人と相手方とは,相手方が申立人に対して暴力や暴言による慰謝料の清算を求めていることからも明らかであるとおり,婚姻後,必ずしも円満な関係ではなかったところ,相手方は,平成21年7月22日に長男を連れて実家のある中国に帰省した後,同年8月18日に申立人に対して中国での生活を継続すると連絡し,その後長男を中国の学校に通わせたこと,他方,申立人は中国にいる相手方のもとを訪れて説得をしたものの,相手方が応じないため,同年10月に第1次訴訟を提起したこと,その間,婚姻費用の分担にかかわる話合いはなされていないことが認められる。したがって,相手方が平成21年8月18日に中国で生活を続ける旨申立人に連絡した以降,相手方が中国で,申立人が日本で生活をすることとなって,申立人と相手方とは,実質的に別居状態となり,上記同日に経済的協力関係は終了したというべきである。
 したがって,財産分与の基準日は平成21年8月18日とするのが相当である。

 これに対して相手方は,長男の監護費用を負担している一方申立人はその負担を免れているし,平成24年2月以降に支払われた婚姻費用は双方の収入に比して少なく,その分住宅ローンの支払に充てられたため,経済的協力関係はあった旨主張する。しかし,相手方は自ら長男を単独で監護することにしたのであるから,監護義務者として監護費用を負担する義務を履行したに過ぎず,それをもって申立人に対して経済的協力をしたとは認められないこと,また,上記婚姻費用は本件和解に基づき定められた金額であって,上記金額が少なかったため,相手方が申立人の住宅ローンの支払に寄与したと認めるに足りる証拠はない。その他,平成21年8月以降,双方が経済的に協力したと認めるに足りる証拠はない。したがって,相手方の主張は採用できない。

(2)平成25年5月に相手方が中国から戻り,同26年3月末に申立人及び長男が申立人の実家に転居するまでの間,本件建物で申立人及び長男と共に居住したことが,財産の形成に寄与したと認められるかが問題となる。
 一件記録,甲13,30,平成31年1月28日の本件審判期日のおける審問の結果によれば,相手方が日本に戻ったものの,申立人及び長男と相手方の寝室は別で,相手方も稼働収入を得て,家計も別で,食事も長男と共に摂ることはあっても,相手方と申立人はほぼ別であったこと,ただし,水道光熱費や住宅ローンは申立人が支払っていたこと,相手方も長男の授業参観に行き,教師との面談も行ったことが認められる。

 上記認定事実によれば,申立人及び長男が別居する平成26年3月末までの間,申立人が相手方に対して退去を求めるわけでもなく,同じ建物で生活をしたとしても,申立人と相手方は平成21年8月から別居しており,第1次訴訟や本件和解を経て相手方が戻ってきたという経緯や,家計も食事も別であった以上,申立人が負担した水道光熱費は,生活に必要な最低限の費用であって婚姻しているため義務として生じる婚姻費用の分担にすぎないし,住宅ローンの支払も債務者である申立人が義務を履行したにすぎないことを考慮すれば,経済的協力関係はなかったものというべきである。

2 対象財産について
(1)申立人名義の財産
ア 積極財産
(ア)本件不動産
a 価格については,当事者双方は2770万円であることに合意していること,不動産業者の査定書(甲3,18,19の1及び2)を考慮しても,本件不動産価格は2770万円と認めるのが相当である。

b 申立人の特有財産の主張について
 申立人は、平成16年5月31日に行われた住宅ローンの100万円の繰上返済(甲5)は,申立人の両親から新築祝として受け取った100万円を充てたものであると主張する。
 一件記録を検討すると,本件土地建物は,平成16年3月に購入され新築されたところ,その頃,申立人が申立人の両親から100万円の贈与を受けたと認めるに足りる証拠はないし,仮に贈与を受けたとしても,申立人及び相手方双方に対する祝い金とも考えられる。したがって,申立人の主張は認められない。 

c 相手方の特有財産の主張について
 相手方は,平成17年3月31日に行われた住宅ローンの300万円の繰上返済(甲5)は,相手方が相手方の両親に会った際に贈与を受けた350万円から充てたものであると主張する。
 しかし,婚姻後の申立人と相手方との収入や預貯金,家計の管理等の生活状況は明らかではないものの,一件記録を検討しても,相手方が相手方の両親から贈与を受けたと認めるに足りる具体的証拠はない。したがって,相手方の主張は認められない。

(イ)横浜銀行P8支店(普通預金,口座番号◎◎◎◎◎◎◎,甲6)
86万9148円

(ウ)ゆうちょ銀行
(通常貯金,記号番号◇◇◇◇◇-◇◇◇◇◇◇◇◇,甲7)
17万8373円

(エ)その他,申立人名義の財産で分与対象となる財産を認めるに足りる証拠はない。

イ 消極財産
(ア)基準時における本件不動産の住宅ローン残額は,2437万6858円(甲5)である。
(イ)なお,上記1(2)の認定のとおり,平成25年5月から同26年3月末までの間,申立人と相手方との経済的協力関係があったと認められない以上,その間の住宅ローン支払額も控除しないこととする。

ウ したがって,申立人名義の財産は,合計437万0663円となる。

(2)相手方名義の財産
ゆうちょ銀行通常貯金(口座番号不明) 17万1980円

(3)したがって,申立人及び相手方名義の分与対象財産の合計は454万2643円となる。

3 本件財産分与において考慮すべき事情について
(1)本件不動産の家賃相当額の清算について
 財産分与は,基準時における対象財産の清算であるところ,相手方が本件不動産に単独で居住を始めたのは基準時後である平成26年4月以降であるから,その清算は,本件においては対象とならない。

(2)長男の養育費の分担について
 申立人は,平成24年4月以降,申立人が一切の養育費を負担しているので,これを財産分与の判断における事情として考慮すべきであると主張するものの,上記(1)と同様,財産分与は基準時における財産の清算であるから,本件においては対象とならない。

(3)相手方の申立人に対する暴言等について
 相手方は,申立人から受けた暴力及び暴言により精神的苦痛を受けた旨主張する。この点,一件記録によれば,相手方が平成21年8月以降中国で生活を続け,それが婚姻関係破綻の原因となっていることから,申立人と相手方との婚姻生活は,平成21年8月以前も必ずしも円満ではなかったことが推認されるものの,かといって,申立人が相手方に対し,暴力を振るい,あるいは度々暴言を吐いた旨の具体的証拠はない。したがって,慰謝料的財産分与を考慮することはできない。

4 財産分与の方法等について
(1)婚姻後の財産に対する寄与は原則として同等であるところ,一件記録によれば,本件において寄与度を変更すべき特段の事情は認められない。したがって,分与割合は2分の1とすべきところ,申立人と相手方名義の対象財産の2分の1は227万1321円(円未満切捨て)であり,相手方の財産を控除すると,209万9341円となる。したがって,申立人は相手方に対し,209万9341円を支払うべきである。

(2)また,本件不動産は,申立人名義の財産であり,本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,申立人に分与するのが相当であるものの,相手方が居住していることから,相手方は申立人に対し,財産分与として,本件建物を明渡すのが相当である。ただし,相手方がただちに明渡すのは困難であると推認されるので,本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,本審判確定の日から3か月以内に本件建物を明渡すのが相当と認められる。

(3)よって,主文のとおり審判する。
平成31年3月28日
横浜家庭裁判所 裁判官 野本淑

(別紙)物件目録
1 土地
  所在   α市β△丁目
  地番   △△△△番△△
  地目   宅地
  地積   160.86平方メートル

2 建物
  所在   α市β△丁目 △△△△番地△△
  家屋番号 △△△△番△△
  種類   居宅
  構造   木造スレート葺2階建
  床面積  1階 59.62平方メートル
       2階 55.27平方メートル
以上
以上:4,276文字
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R 2- 9-27(日):映画”レッド・スパロー”を観て-大どんでん返しに驚く
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○令和2年9月25日(土)の夜は、フラメンコギター合奏練習後、恒例の4KUHDソフトによる85インチ大画面TVでの映画鑑賞で、今回は、「レッド・スパロー」を鑑賞しました。私自身、映画館では観ておらず初めての鑑賞でした。YAHOO!映画解説でのあらすじは、「事故によってバレリーナの道を諦めたドミニカ(ジェニファー・ローレンス)が、母親をめぐるやむを得ない事情から、ロシア政府直属の諜報機関の一員になり、美貌を生かした誘惑や心理操作で情報を入手する『スパロー』と呼ばれるスパイとして育成され、瞬く間に才能を発揮する。」というものです。

○主演のジェニファー・ローレンス氏、お顔もなかなかの美形ですが、大胆な脱ぎっぷりを見せてくれて、その裸身もさらに魅力的な女性です。私はよく知りませんでしたが、アメリカでは、「同世代の女優のなかでも抜群の演技力と称された女優、破格の出演料でトップに君臨する」大変有名な女優とのことです。

○ソ連崩壊後の、アメリカ・ロシア新冷戦下、主人公ドミニカは、優秀なスパイとして養成され、アメリカのCIA捜査官に接近し、ロシア政府内に潜むスパイの名を聞き出すという危険な任務を与えられ、解き放たれた美しき<スパロー>は、やがて大国間の陰謀と欲望が渦巻く闘いへと巻き込まれていくとの筋書きです。

○最後にアッと驚く大どんでん返しが待っていますが、そこに至るまでのスパイとしての養成期間、スパイに登用されてスパイ活動を開始する展開の間に、裸のシーンだけでなく、結構、残虐なシーンも多くR-15指定は納得でした。特にスパイとして成長した主人公の活動には、ハラハラドキドキと手に汗握る場面も結構多くあります。主人公の行動の意味をよく考えながら観ていないと最後の大どんでん返しまでの展開が理解出来ません。

○ロシア側で密かにアメリカに通じている「モグラ」と呼ばれる大物スパイは誰なのか、結末を判った上で、突き止める過程の一つ一つのシーンの意味を考えながら、もう1回、再鑑賞したいと思っています。
以上:843文字
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R 2- 9-26(土):久しぶりのフラメンコギター合奏練習曲録画挑戦-VR-4HD利用
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○「映画”シェイプ・オブ・ウォーター”を観て-R15指定に納得」に「令和2年9月13日(土)は、午後4時30分から、原則2週間に一度のフラメンコギター合奏練習を2時間程度行い」と記載していましたが、令和2年9月25日もそれから2週間目のフラメンコギター合奏練習日でした。

○令和2年9月13日の練習では初めてデジカメで練習曲を録画しましたが、デジカメ録画だとあとでPC再生するためには、デジカメ内のSDカードを取り外し、カードリーダーに入れてPCに録画ファイルをコピーしてPC再生をするとの手間がかかりました。そこでその後ヨドバシ仙台に行って直接PCに録画できるカメラがないか確認したところ、USBがついて、録画後、そのUSBをPCに差し込んでそのまま再生できるものはあるけれども、PCと繋いで直接PCに録画できるカメラはないとのことでした。

○そこで「当事務所702号室のAV(オーディオビジュアル)機能利用意欲昂進中6」に記載した「HDMI対応4chコンパクトスイッチャーVR-4HD」を導入していたことを思い出し、これで録画することにしました。ところが、これは平成29年11月東北スコットランド教会行事で使用して以来、3年程使用しておらず、スイッチが何処にあるかも忘れ、さらに使用方法もスッカリ忘却の彼方で使用方法を思い出すのに結構な時間がかかりました。

○カメラからPCに直接録画するにはそのためのソフトが必要で、「当事務所702号室のAV(オーディオビジュアル)機能利用意欲昂進中7」に記載した「Video Capture for VR Ver.2.2 for Windows (64ビット版)」を使わなければなりません。これも平成29年11月以来全く使ってなかったためその使用方法をスッカリ忘れており、思い出すのに結構な時間がかかりました。

○数時間かけて「HDMI対応4chコンパクトスイッチャーVR-4HD」「Video Capture for VR Ver.2.2 for Windows (64ビット版)」の使い方を思い出しましたが、これらを使えるようにしたら、今度は、PCからアンプに繋いだ音声が出なくなりました。ケーブル類の繋ぎがキチンとなっているか何度も確かめましたがハード的には問題がありません。

○さてどうして音が出ないのか色々思案し、ハタと、サウンドの再生・録画デバイス設定の変更をしなければならないことに気づいて、ようやく音も出るようになりました。このサウンドの再生・録画デバイス設定の変更については、「当事務所702号室のAV(オーディオビジュアル)機能利用意欲昂進中7」に記載していましたが、3年間の未使用でスッカリ忘れていました(^^;)。

○「当事務所702号室のAV(オーディオビジュアル)機能利用意欲昂進中8」には、702号室AV(オーディオビジュアル)機器について一応セッティングが完成し、今後の使用方法等について記載していましたが、これもスッカリ忘れていました。今後、シッカリ思い出して利用して行きたいと思っております。なお、「Video Capture for VR Ver.2.2 for Windows (64ビット版)」取扱説明書が掲載されていました。

○3年ぶりに「HDMI対応4chコンパクトスイッチャーVR-4HD」「Video Capture for VR Ver.2.2 for Windows (64ビット版)」を利用して録画した練習曲の一つを恥を忍んで披露します。




以上:1,456文字
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R 2- 9-25(金):熟慮期間経過後の相続放棄を状況詳細吟味して認めた高裁決定紹介
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○「熟慮期間経過を理由に相続放棄を認めなかった家裁審判紹介」の続きでその抗告審令和元年11月25日東京高裁決定(判時2450・2451号8頁)を紹介します。

○法定相続人である抗告人らが相続放棄の各申述をした事案において、抗告人らの各申述の遅れは、相続放棄手続が既に完了したとの誤解や被相続人の財産についての情報不足に起因しており、抗告人らの年齢や被相続人との従前の関係からして、やむを得ない面があったというべきであるから、本件における民法915条1項所定の熟慮期間は、抗告人らが、相続放棄手続や被相続人の財産に関する具体的説明を受けた時期から進行するとして、熟慮期間を経過しているとして本件各申述を却下した原審判を取り消し、各申述をいずれも受理する決定をしました。

○原審は形式的判断でしたが、抗告審は中身を詳細に吟味した実質的判断です。付言事項の、相続放棄の申述は、これが受理されても相続放棄の実体要件が具備されていることを確定させるものではない一方、これを却下した場合は、民法938条の要件を欠き、相続放棄したことがおよそ主張できなくなることに鑑みれば、家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合を除き、相続放棄の申述を受理するのが相当とした点が重要です。

********************************************

主   文
1 原審判をいずれも取り消す。
2 抗告人らの相続放棄の各申述をいずれも受理する。
3 手続費用は、第1、2審を通じ、抗告人らの負担とする。

理   由
第1 事案の概要等

1 本件は、被相続人の法定相続人である抗告人らにおいて、相続放棄の各申述(以下「本件各申述」という。)をした事案であり、原審が、本件各申述は相続放棄の熟慮期間を経過してされたものであるとして、いずれも却下したことから、抗告人らがこれを不服として即時抗告をした。

2 抗告の趣旨
 主文同旨

3 抗告の理由
 抗告人らは、約70年もの間、被相続人と会ったことはなく、消息も知らないといった関係にあったのであり、平成31年2月下旬ころ、同月18日付けのB市長作成の「亡A様に係る固定資産税の相続人代表者について」と題する書面(以下「本件文書」という。)を受領したものの、本件文書の記載内容のみによっては、被相続人の資産や債務の内容等は一切分からなかった。被相続人に係る債務の存在及びその金額を確定的に認識したのは、抗告人〈10〉2は早くとも同年6月10日、抗告人X1は同年7月14日であるから、民法915条1項所定の3か月の熟慮期間の起算日は、それ以後とすべきである。

 また、抗告人らは、同じく被相続人の法定相続人であるCが3人を代表して相続放棄の手続を行っているものと認識しており、実際に、Cは、3名分の収入印紙を添付して相続放棄の申述を行っていた。そもそも、家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合以外には、相続放棄の申述を受理すべきなのであるし、抗告人らが法律知識に乏しい高齢者であることを踏まえると、本件各申述を却下することは社会正義にも反する。

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所が判断に先立ち認定する事実は、以下のとおりである。
(1)抗告人X1(昭和7年生まれ)、C(昭和15年生まれ)及び抗告人X2(昭和19年生まれ)は、いずれもDとEとの間の子である。被相続人(昭和2年生まれ)は、Eの妹であり、平成29年×月×日死亡した。抗告人ら及びCは、被相続人の法定相続人である。

(2)抗告人らと生前の被相続人は、長い間、顔を合わせたり連絡を取り合ったりすることは一切なく、抗告人らは、被相続人の消息を全く知らなかった。そのため、被相続人の死亡の事実も知らなかったが、平成31年2月下旬ころに受領した本件文書に、抗告人らが知っている人物かは分からないが、B市に固定資産を所有する亡Fの妻である被相続人が死亡したので、その相続人の中から固定資産税に関する書類の受取についての代表者を決めてもらう必要があるとの趣旨が記載されていたことから、抗告人らは、その頃、被相続人の死亡の事実と、自分たちが被相続人の法定相続人に当たることを知った。

(3)その後、抗告人X2がB市役所に問合せを行って、被相続人の所有する不動産の所在地は判明したものの、当該不動産の価値等は一切わからなかった。抗告人らとCは、相談の結果、面倒な事態に巻き込まれたくないといった漠然とした思いから、相続放棄をすることを決意したが(なお、抗告人〈10〉1については、高齢であったこともあり、娘のGに対応を一任しており、Gが、抗告人X2やCとの協議を行った。)、代表者が相続放棄をすれば足りると誤解していたことから、令和元年5月18日頃、C1人のみが申述人として記載された相続放棄申述書を前橋家庭裁判所太田支部に宛てて郵送した。なお、当該申述書は、Cに代わって抗告人X2が記載したものであり、また、3人分の申立費用額に相当する収入印紙が添付されていた。

(4)令和元年6月上旬頃、B市役所からの問合せに対し、抗告人X2が、Cが代表して相続放棄を行った旨を述べたところ、市役所の担当者は、相続放棄は各人が手続を行う必要があることを指摘し、さらに、被相続人の平成30年分の固定資産税2万9000円が滞納になっていることや、今後、発生する固定資産税は相続人代表者に支払義務が生じることを説明した。これにより、抗告人X2は、家庭裁判所に自ら相続放棄の申述を行う必要があることや、被相続人に未払の固定資産税があることを初めて認識し、同月19日、前橋家庭裁判所太田支部に対し、相続放棄の申述をした。

(5)抗告人X2からの連絡を受けて、Gも、抗告人X1が相続放棄の申述を行うための準備に着手したが、その後、抗告人X2が家庭裁判所の職員から相続放棄の申述の取下げについて検討を促されたこと等を聞いて、手続をしばらく見合わせていた。
 しかし、Gは、令和元年7月14日頃、抗告人X2から、B市役所が抗告人X2に送付した同月8日付けの通知書面を見せられ、それによって、具体的に年間2万9000円の固定資産税・都市計画税が発生することを認識し、抗告人X1の年金収入で毎年の支払を行うことはできないと考えた。そして、Gからの説明を受けた抗告人X1は、改めて相続放棄の申述を行うことを決意し、同月16日、前橋家庭裁判所太田支部に対し、相続放棄の申述を行った。

2 前記1の認定事実に基づき、本件各申述を受理すべきか否かについて、検討する。
 前記認定の事実によれば、抗告人らは、本件文書を受領した平成31年2月下旬ころ、被相続人の死亡の事実及びこれにより自分たちが法律上相続人となった事実を知ったこと、本件各申述がされたのは、それから3か月以上が経過した後であったことが認められる。

 しかし、抗告人らが、本件文書を受領してから3か月以内に相続放棄の申述を行わなかったのは、前記認定のとおり、Cが代表者として申述を行うことによって、相続放棄の手続が完了したと信じていたためであり、そのことは、抗告人X2が相続放棄申述書を代筆した事実や、3人分の収入印紙が添付されていた事実によっても裏付けられている。

そして、抗告人らがそのように信じたことについては、軽率な面があったことは否めないものの、抗告人らが高齢であることや法律の専門家でもなかったこと等からすると、強い非難に値するとまでいうことはできないし、抗告人らも相続を放棄するとの認識の下、実際にCの相続放棄の手続が行われた以上、相続財産があることを知りながら漫然と放置していたといった事案と同視することはできない。

 また、抗告人らと被相続人とが生前、全く疎遠な間柄であった上、本件文書には、被相続人の資産や負債に関する具体的な情報は何ら記載されていなかったのであるから、本件文書を突然受領したからといって、被相続人を相続すべきか否かを適切に判断することは期待し得ず、高齢の抗告人らにおいて、その後、相続財産についての調査を迅速かつ的確に実施することができなかったというのも無理からぬところがある。

そして、その後、市役所の職員からの説明により、相続放棄の手続は各人が個別に行う必要があることのほか、滞納している固定資産税等の具体的な税額を認識するに至り、自ら相続放棄の申述を行うに至っているところ,このような経緯に照らしても、抗告人らの対応に格別不当とすべき点があるとはいえない(なお、抗告人X1は、これらの事実を知った後、相続放棄の申述を行うまでに1か月弱を要しているが、これも、先に相続放棄の申述を行った抗告人X2が、家庭裁判所の職員から取下げの検討を求められていることを知って申述を躊躇するなどした結果である。)。

 以上のとおり、抗告人らの本件各申述の時期が遅れたのは、自分たちの相続放棄の手続が既に完了したとの誤解や、被相続人の財産についての情報不足に起因しており、抗告人らの年齢や被相続人との従前の関係からして、やむを得ない面があったというべきであるから、このような特別の事情が認められる本件においては、民法915条1項所定の熟慮期間は、相続放棄は各自が手続を行う必要があることや滞納している固定資産税等の具体的な額についての説明を抗告人らが市役所の職員から受けた令和元年6月上旬頃から進行を開始するものと解するのが相当である。そして、前記認定のとおり、抗告人X2は同月19日に、抗告人X1は同年7月16日にそれぞれ相続放棄の申述をしたものであるから、本件各申述はいずれも適法なものとしてこれを受理すべきである。 

 なお、付言するに、相続放棄の申述は、これが受理されても相続放棄の実体要件が具備されていることを確定させるものではない一方、これを却下した場合は、民法938条の要件を欠き、相続放棄したことがおよそ主張できなくなることに鑑みれば、家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合を除き、相続放棄の申述を受理するのが相当であって、このような観点からしても、上記結論は妥当性を有するものと考えられる。

3 よって、本件各申述を却下した原審判は相当でなく、本件各抗告はいずれも理由があるから原審判を取消し、本件各申述をいずれも受理することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 今岡健 橋爪信)

以上:4,251文字
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R 2- 9-24(木):熟慮期間経過を理由に相続放棄を認めなかった家裁審判紹介
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○以下の民法の規定により、相続が開始した場合、相続開始を知った時から3ヶ月以内に相続放棄をしないと単純承認したものとみなされます。良く問題になるのは、被相続人死亡後数年を経て、被相続人の借金が判明したときです。3ヶ月以内に放棄していないと単純承認したものと見なされ、その借金を相続したことになるからです。
第921条(法定単純承認)
 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。


○この問題については、昭和59年4月27日最高裁判決「相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,このように信じるについて相当な理由がある場合には,熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算する」によって、借金の存在を知らないことについて相当な理由があれば、借金の存在を知った時(通常催告書が届いたとき)から起算して3ヶ月以内であれば相続放棄の申述ができるとされており、3ヶ月経過後の相続放棄申述を依頼されたことは結構な数あります。

○市長作成の「亡C様に係る固定資産税の相続人代表者について」と題する書面を受領したことで、相続財産の存在を認識していたと認められるから,熟慮期間もその頃から起算するのが相当として、3ヶ月経過後の相続放棄申述が却下された令和元年9月10日前橋家裁太田支部審判(判時2450・2451号8頁<参考収録>)全文を紹介します。

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主   文
1 申述人の相続放棄の申述を却下する。
2 手続費用は申述人の負担とする。
 
理   由
1 本件記録によると,申述人は,被相続人の姉(G。昭和62年○○月○○日死亡)の子であり,被相続人が平成29年○○月○○日に死亡したことにより,その相続人となったことが認められる。

2 民法915条1項に定める相続放棄の熟慮期間は,相続人が,相続開始の原因となった事実及びこれにより自己が相続人であることを知った時から起算すべきものであるが,相続人が上記事実を知った時から3か月以内に限定承認又は放棄をしなかったのが,相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,このように信じるについて相当な理由がある場合には,熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算するのが相当である(最高裁判所昭和57年(オ)第82号同59年4月27日第二小法廷判決・民集38巻6号698頁)。

3 本件記録によると,①申述人は,平成31年2月18日付けのD市長作成の「亡C様に係る固定資産税の相続人代表者について」と題する書面(以下「本件文書」という。)を同月下旬頃受領しているところ,本件文書には,被相続人はD市に固定資産を有していた者(被相続人の夫)の相続人である旨,申述人が被相続人の相続人の一人である旨,上記固定資産の固定資産税に関する書類の受け取りについて,被相続人の相続人の中から代表者を決めてほしい旨記載されていること,②申述人は令和元年7月16日に本件申述をしたことが認められる。

4 前記①によると,申述人は,遅くとも本件文書を受領した平成31年2月下旬頃には,本件文書により相続財産の存在を認識していたと認められるから,熟慮期間もその頃から起算するのが相当である。
 そうすると,本件申述は,前記②のとおり,令和元年7月16日に当庁に申述されたものであるから,その熟慮期間が既に経過していることは明らかである。

 なお,申述人の子(I)は,本件文書を読んで,被相続人の相続放棄申述受理申立ては相続人の代表者がすればよいと誤解し,被相続人の共同相続人であるEを代表者として相続放棄申述受理申立てをしたなどと主張しているが,そもそも,Eが共同相続人の代表者であることを明示して被相続人に係る相続放棄申述受理申立てをしたという事実はなく(なお,仮にそのような申立てがされていたとしても,有効であるとはいえない。),また,申述人が上記のような誤解をしたことなどは熟慮期間の起算点を後にする理由にならない。

5 よって,本件申述は不適法であるから,これを却下することとし,主文のとおり審判する。
 前橋家庭裁判所太田支部 (裁判官 奥山雅哉)
以上:2,012文字
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R 2- 9-23(水):唯一の財産である動産譲渡担保契約の詐害行為取消否認最高裁判決紹介
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○「唯一の財産である動産譲渡担保契約の詐害行為取消否認高裁判決紹介」の続きで、その上告審の昭和42年11月9日最高裁判決(判時505号34頁、判タ215号89頁)全文を紹介します。

○訴外B・A夫婦に対し売掛金債権を有する上告人が、訴外B・A夫婦が被上告人と本件各動産につき譲渡担保契約を締結した当時、被上告人及び訴外B・A夫婦は、上告人が訴外B・A夫婦に対し売掛金債権を有しており、訴外B・A夫婦が無資力で、本件各動産が唯一の財産であることを知っていたと主張して、詐害行為取消権に基づき譲渡担保契約の取消を求め、一審は詐害行為取消を認めましたが、控訴審は請求を棄却していました。

○最高裁判決は、訴外B・A夫婦による所有権移転行為は債権者の一般担保を減少し債権者間の平等弁済を妨げる行為ではあるが、他に資力のない債務者が生計費及び子女の教育費に充てるため、家財、衣料等を売却し、あるいは新たな金借のためこれを担保に供する等生活を維持するための財産処分行為をもって取消の対象とするのは行過ぎであるとして、一般財産の現象が不当であると認められるべき事情のない限り取消の対象とならないとして請求を棄却した控訴審判決を支持し、本件の事情の下では詐害行為は成立していないとして上告を棄却しました。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○の上告理由第一ないし第三について。

 原審が所論の点についてなした事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。そして、当事者間に争なき事実と右認定により原審の認定した事実によれば、被上告人は訴外B、同A夫妻に対し、昭和36年3月頃同人らの生計費として金10万円を貸与し、同年3月22日同夫妻はそれぞれその所有にかかる原判示の物件を被上告人に対して譲渡担保に供し、さらに、同37年2月被上告人は右B・A夫妻の長女の大学進学に必要な費用として金6万円を貸付け、同夫妻は同月13日被上告人に対し追加担保として原判示二回目の譲渡担保を供し、結局金16万円の借入れのため金10万円を出ない物件を譲渡担保に供したというのである。

 右のような事実関係に徴すれば、前記各譲渡担保による所有権移転行為は、当時B・A夫妻は他に資産を有していなかつたから、債権者の一般担保を減少せしめる行為であるけれども、前記のような原審の確定した事実の限度では、他に資力のない債務者が、生計費及び子女の教育費にあてるため、その所有の家財衣料等を売却処分し或は新たに借金のためこれを担保に供する等生活を営むためになした財産処分行為は、たとい共同担保が減少したとしても、その売買価格が不当に廉価であつたり、供与した担保物の価格が借入額を超過したり、または担保供与による借財が生活を営む以外の不必要な目的のためにする等特別の事情のない限り、詐害行為は成立しないと解するのが相当であり、右と同旨の見解に立つて本件詐害行為の成立を否定した原判決の判断は、正当として是認できる。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切ではなく、原判決には所論違法はない。論旨は、右と異なる見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用できない。
 よつて、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)

上告代理人○○○○の上告理由
第一、民法第424条の規定におけるいわゆる債権者取消権
は,申すまでもなく、同法第423条の規定するいわゆる債権者代位権と同じように、債務者が債権の共同担保が不足することを知りつつ財産減少行為をした場合に、債権者の最後のよりどころである債務者の一般財産の維持、回復を目的とするもので、債権者が自ら債務者の資力を維持して債権の満足を得ることを認めたものであり、『債権者ヲ害スルコトヲ知リテ為シタル債務者ノ法律行為ヲ取消シ、債務者ノ財産上ノ地位ヲ其法律行為ヲ為シタル以前ノ原状ニ復シ、以テ債権者ヲシテ其債権ノ正当ナル弁済ヲ受クルコトヲ得シメ其担保権ヲ確保スルヲ目的トスル』(大聯判明44、3、24、民録17・171頁参照)権利である。

このように、債権者取消権は、債務者がなした行為の効力を否認して第三者から担保財産を取戻してくるものであつて、債務者と第三者との間では本来あるべからざる状態を債権の共同担保の保全のためにつくり出すものであるから、債務者及び第三者に対して影響するところは極めて甚大である。従つて、これらの要件については、債権の共同担保保全の必要と債務者および第三者の利害関係とを比較考量して厳格に定めなければならないものとせられる。

第二、本件の事実関係
本件の事実関係の概要は、原判決の認定せられたところによるとおよそ次の通りである。

一、上告人の訴外債務者B、Aに対して有する債権
上告人が右訴外債務者両名に対し、広島地方裁判所福山支部昭和33年(ワ)第160号売買代金残額請求事件(同年11月24日言渡)の確定判決に基づき金62万5675円の売掛代金債権並びにに損害金債権を有しており、上告人は同確定判決に基づく債権について、昭和38年7月26日債務者両名に対し本訴物件について強制執行に着手するまで、両債務者から厘毛の弁済も受けておらなかつた。(成立に争のない甲第4、5号証参照。)

二、被上告人と訴外債務者両名との間における本訴物件に対する譲渡担保契約
(一) 本件一審判決添付の第一、第二目録記載物件については、被上告人が昭和36年3月25日訴外Aに金10万円を、弁済期を昭和39年5月9日、利息の定めをしないで貸付け、夫であるBは同借受債務について連帯保証人となり、貸付けてから約3ケ月を経過した昭和36年6月22日金銭債務弁済譲渡担保使用貸借公正証書によつてAからその所有の原判決添付第一目録記載、Bからその所有の原判決添付第二目録記載の各物件を右Aに対する10万円の貸金債権のための譲渡担保契約によつてその所有権の譲渡を受けたというのである。

しかし、成立に争のない甲第6号証(公正証書)の第一条によると、被上告人がAに金10万円を貸与したのは昭和36年5月10日であり、原判決が認定せられた昭和36年3月25日ではない。しかも、公正証書を作成したのが昭和36年6月22日であることは甲第6号証によつて明白で、被上告人は右公正証書を作成するまで借主Aから借用証を取つた形跡がない。昭和36年3月25日に金10万円を弁済期を3年以上も先の昭和39年5月9日とし、利息の定めをしないで目前の生活不安をうつたえたことによる生活費としての貸借であるとする場合、(この貸借の際には本訴物件の譲渡担保の約定はなかつたと認められる)借主は進んで借用証を差入れるであろうし、貸付も特別の事情のない限り借用証も取らないで貸与するということは常識上からあり得ない。

このように借用証の差入もしないで10万円の貸借が行われた間柄において、数ケ月を経過してから当時借主A、連帯保証人Bの残されていた全動産についてイキナリ譲渡担保契約公正証書を作成したと云うことは、その間にスッキリしない影があり、財産隠匿行為との疑念を抱かざるを得ない。

(二) 本件一審判決添付の第三目録記載物件については、被上告人が昭和37年2月13日訴外Aに子供の進学に必要な費用として金6万円を、弁済期及び利息の定めをしないで訴外Bが連帯保証人となつて貸付け、それから約5ケ月を経過した昭和37年7月13日追加契約書によつて前に貸付けた10万円とあとから貸付けた前記6万円とについて原判決添付の第三目録記載物件を譲渡担保契約がなされてその所有権の譲渡を受けたというのである。

しかし、この場合も前記(一)の場合と同様の疑念が生じるばかりでなく、甲第7号証の追加契約はその記載内容から、前になされた甲第六号証の公正証書第九条の目的物件を加、除する契約であり、同契約書中には前記貸付金6万円のことについては何等の記載がなされておらない。

三、詐害行為
原判決は、『A、Bの前記各譲渡担保契約による被上告人に対する所有権移転行為は、生計費、子女の教育費支出の必要に迫られてなしたものであるから、一般の債権者において右借入金により債権の弁済を受けることは至難であり、従つて、被上告人に対する右担保供与は債権者の一般担保を減少し債権者間の平等弁済を妨げる行為であることは否定しえないが、……生活を維持するための財産処分行為をもつて共同担保の減少行為として一律に取消の対象とするのは行きすぎであり、……一般財産の減少が不当であると認められるべき事情のない限り取消の対象とならないと解するのが相当であり……生活維持のための緊急の必要にせまられてなしたものであつて、不当な一般財産の減少とは認め難く、従つて、本件各譲渡担保契約は債権者取消権の対象とならないものというべきである』と認定された。

しかし、原判決において認定されているように、被上告人からの本件10万円の借入金は、B・A一家の目前の生活不安による生活費であり、6万円は子女の進学に必要な費用であつたとしても、被上告人はB・A一家の窮状に同情して好意的に金員を貸与したもので、その貸与に際しては本件の担保供与を条件としたものではない。金員貸与後数ケ月を経過してから改めて本件譲渡担保契約がなされたものである。

金員貸与の動機、原因はそれとして、上告人と被上告人の宇治田夫婦に対する債権者としての地位は、その間に優劣はなかつたに拘らず、後に至つて被上告人に改めて担保を供与することは資力の減少であるから詐害行為となるものと云わねばならない。

第三、判例違反、法令違反
一部の債権者のために改めて抵当権その他の物的担保を供与することは、担保債権者に優先弁済権を得させ、他の債権者の共同担保を減少せしめることになるとして、これは詐害行為となり得るとするのが判例(昭和32、11、1、最高民判、民集11巻1832頁、その他)であり、通説である。(法学全集、債権総論169頁)。

然るに原判決は、『被上告人に対する本件譲渡担保は、債権者の一般担保を減少し債権者間の平等弁済を妨げる行為であることは否定しえないが……供与した担保物の価額が借入額を超過したり、或は担保供与による借財が生活を維持する以外の不必要な目的のためになされる等一般財産の減少が不当であると認められるべき事情のないかぎり取消の対象とならないと解するのが相当である』と判示されるのであるが、本件の事実関係は前記の通りであり、叙上の判例に違反し、民法第424条の解釈を誤つている違法があると思料される。
以上:4,443文字
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R 2- 9-22(火):唯一の財産である動産譲渡担保契約の詐害行為取消否認高裁判決紹介
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○「唯一の財産である動産譲渡担保契約の詐害行為取消認容地裁判決紹介」の続きで、その控訴審である昭和40年9月1日広島高裁判決(判時433号36頁、判タ181号123頁)を紹介します。

○訴外B・A夫婦に対し売掛金債権を有する被控訴人が、訴B・Aらが控訴人と本件各動産につき譲渡担保契約を締結した当時、控訴人及び訴外人らは、被控訴人が訴外人らに対し売掛金債権を有しており、訴外人らが無資力であって、本件各動産が唯一の財産であることを知っていたと主張して、詐害行為取消権に基づき譲渡担保契約の取消を求めました。

○原審は、請求を認容しましたが、控訴審判決は、その原判決を取消し、訴外人らによる所有権移転行為は債権者の一般担保を減少し債権者間の平等弁済を妨げる行為ではあるが、他に資力のない債務者が生計費及び子女の教育費に充てるため、家財、衣料等を売却し、あるいは新たな金借のためこれを担保に供する等生活を維持するための財産処分行為をもって取消の対象とするのは行過ぎであるとして、一般財産の現象が不当であると認められるべき事情のない限り取消の対象とならないとして、被控訴人の請求を棄却しました。

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××

主   文
原判決を取消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

事   実
控訴人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は、控訴人において当審における証人Aの証言、控訴人本人尋問の結果を援用したほか原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

理   由
 被控訴人がB、Aに対し、広島地方裁判所福山支部が昭和33年11月24日言渡した同庁昭和33年(ワ)第160号売掛代金残額請求事件の確定判決に基づく売掛代金62万5675円の債権を有していること、控訴人が、昭和36年6月22日付広島法務局所属公証人藤田尹作成の新第22、198号金銭債務弁済譲渡担保使用貸借契約公正証書により、Bからその所有の原判決添付第一目録記載(但し五の着物ウールは2、7の女帯は四)の及びBからその所有の原判決添付第二目録記載の各物件をAに対する金10万円の貸金債権のための譲渡担保契約により各これが所有権の譲渡をうけ、昭和37年7月13日付追加担保契約により、Bからその所有の原判決添付第三目録記載の物件を前記貸金債権のための譲渡担保(追加)として、これが所有権譲渡をうけたことはいずれも当事者間に争いがない。

 そして、成立に争いのない甲第1、第2、第3、第6、第7号証、当審における証人Aの証言、控訴人本人尋問の結果によると、前記控訴人のAに対する貸金10万円は昭和36年3月25日、弁済期を昭和39年5月9日とし、利息の定めなく貸付けられ、Bは右債務につき連帯保証人となり、前記昭和36年6月22日付公正証書記載の譲渡担保契約の内容は、借主において前記債務を履行した場合には目的物の所有権は各担保提供者に復帰し、債務不履行の場合は債権者(控訴人)において目的物を売却し売得金を債務に充当し、或は第三者の評価した価額により代物弁済となすこと、債権者は目的物を弁済期まで各担保提供者に無償で使用を許すとの定めであり、右譲渡担保の目的物は前記各物件の外、Aの提供した鏡台外衣類等10数点、Bの提供した東芝扇風機1台外洋服等4点を含む(甲第6号証参照)ものであつたこと、前記の昭和37年7月13日付追加担保契約は、控訴人のAに対する前記の金10万円の貸金の外、控訴人がAに対し同年2月13日期限及び利息の定めなく貸付けた金6万円の貸金債権を担保する目的でなされ、その目的物は前記原判決添付第三目録記載の物件の外、Aの提供したウール着物二女帯一(右3点は被控訴人において昭和36年6月22日付の当初の契約の目的物であると主張するところ、右主張は甲第6、第7号証に照らし明白な誤まりであると認める。)を含むものであり、右追加担保契約のその余の内容はさきの譲渡担保契約におけるそれと同様であり、右契約に際しBがさきに提供していた東芝扇風機1台は目的物から除外することとの合意ができたことがそれぞれ認められる。

 そこで、右のA、Bが控訴人に対してなした右各物件の譲渡担保による所有権譲渡行為が、債権者取消権の要件である債権者を害する行為に該当するか否かを考える。
 前掲各証拠、成立に争いのない甲第4、第5号証及び弁論の全趣旨によるとつぎの事実を認めることができる。
 Bは電機器具商を営んでいたところ昭和33年倒産し、同人の妻Aの遠縁にあたる控訴人において右Bの負債整理にあたり、前記の被控訴人の債権の外は、担保物件の競売、或は弁済の猶予を得る等により一応の整理ができたが、被控訴人の債権については、被控訴人において控訴人の申出でた整理条件に不服であつたため未整理のままであつた。

ところで、B・A夫婦は右倒産、負債整理により営業継続不能となり、収入及び資力を失い4人の子女をかかえ、妻Aの内職と、身の廻り品、衣類等を売つて生活していたが、昭和36年3月頃には、前認定の控訴人に対し譲渡担保とした衣類、家具を残すだけとなり、右Aにおいて控訴人に対し目前の生活の不安をうつたえたところ、控訴人はB・A方の生活費として、前示のとおり金10万円を貸与し、右貸与にあたりB・A夫婦は右貸金の担保として、前記同年6月22日付公正証書記載の担保目的物を譲渡担保として控訴人に譲渡することを約し、右約旨に基づいて右公正証書が作成されるにいたったが、昭和37年2月にいたりB・A夫婦は、長女がいわゆるアルバイトをしてでも大学に進学したいと切望したので、その処置を控訴人に相談したところ、控訴人は進学を奨め、同月13日、右進学に必要な費用として前示のとおり金6万円を貸付け、追加担保として2回目の譲渡担保契約がなされたものであり、そして、被控訴人は昭和38年7月26日前記判決に基づく強制執行として原判決添付第一目録記載の物件をAに対する債権のため、同第二、第三目録記載の物件をBに対する債権のため各有体動産の差押をなしたが、控訴人は前記貸金の弁済をうけていなかつたので、右強制執行を争つて第三者異議の訴を提起し、ついで被控訴人から控訴人に対する本訴提起にいたつたものである。

 右のとおり認めることができ、右認定を左右するにたる証拠はない。
右によれば、A、Bのなした前記各譲渡担保による控訴人に対する所有権移転行為は、当時B・A夫婦が他になんらの資力を有せず,かつ、控訴人からの金員借入は生計費、子女の教育費支出の必要にせまられてなしたものであるから一般債権者において右借入金により債権の弁済をうけることは至難であり、したがつて、控訴人に対する右担保供与は債権者の一般担保を減少し債権者間の平等弁済を妨げる行為であることは否定しえないが、民法第424条の債権者取消権は、破産における否認権が債務者の財産の処分行為を禁じ債権者間の平等弁済をその目的とするのと異り、債権者のため、債務者によりなされる一般財産の不当な減少を防止することを目的とする制度であることからすると、他に資力のない債務者が生計費及び子女の教育費に充てるため、その所有の家財、衣料等を売却処分し、或は新たに金借のためこれを担保に供する等生活を維持するための財産処分行為をもつて共同担保の減少行為として一律に取消の対象とするのは行きすぎであり、右の如き行為は、その売買価額が不当に廉価であり、或は供与した担保物の価額が借入額を超過したり、或は担保供与による借財が生活を維持する以外の不必要な目的のためになされる等一般財産の減少が不当であると認められるべき事情のないかぎり取消の対象とならないと解するのが相当であり、本件では債務者B・A夫婦において計金16万円の借入のため控訴人に供与した譲渡担保物件の総価額は、弁論の全趣旨に徴し金10万円を出でないことが認められ、かつ、右借入は前示の如く生活維持のための緊急の必要にせまられてなしたものであつて、不当な一般財産の減少とは認めがたく、したがつて、本件各譲渡担保契約は債権者取消権の対象とならないものというべきである。

 以上によれば被控訴人の本訴請求は爾余の点につき判断するまでもなく失当であり棄却を免れない。
 よつて、被控訴人の請求を認容した原判決は不当であり、本件控訴は理由があるから、民事訴訟法第386条、第96条、第89条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松本冬樹 裁判官 浜田治 裁判官 長谷川茂治)
以上:3,592文字
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R 2- 9-21(月):民法第907条3項適用し遺産分割を2年間禁止した家裁審判紹介
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○判例時報最新号の令和2年9月11・21日合併号を見ていたら、被相続人がした複数の遺言の効力及び解釈について相続人間に争いがあり、これに関して民事訴訟の提起が予定されている遺産分割事件につき、遺産全部の分割を2年間禁止するとの珍しい審判例が掲載されていました。令和元年11月8日名古屋家裁審判(判時2450・2451号○頁)です。

○関連条文は次の通りです。
民法第907条(遺産の分割の協議又は審判等)
 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

家事事件手続法第197条(遺産の分割の禁止の審判の取消し及び変更)
 家庭裁判所は、事情の変更があるときは、相続人の申立てにより、いつでも、遺産の分割の禁止の審判を取り消し、又は変更する審判をすることができる。この申立てに係る審判事件は、別表第二に掲げる事項についての審判事件とみなす。


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主   文
1 被相続人の遺産の全部について,令和3年11月7日までその分割をすることを禁止する。
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由
 本件記録に基づく当裁判所の事実認定及び法律判断は,下記のとおりである。

第1 本件の経過
 本件記録によれば,下記の各事実が認められる。
1 被相続人(大正6年○○月○○日生の女性)は,昭和15年2月26日,Gと婚姻し,その後,両者の間には,同年○○月○○日に長男Hが誕生した。
2 Hは,昭和41年10月15日,Iと婚姻し,その後,両者の間には,昭和42年○○月○○日に長男として申立人Aが,昭和44年○○月○○日に二男として申立人Bが誕生した。
3 申立人Aは,平成7年12月25日,申立人Cと婚姻した。
4 Gは,平成10年○○月○○日に死亡した。
5 申立人Bは,平成13年7月5日,Jと婚姻した。

6 被相続人は,平成22年4月30日,被相続人の姪に当たる相手方と養子縁組した。この養子縁組に対して,申立人A及び申立人Bがその無効確認を求める訴訟を提起したが(名古屋家庭裁判所岡崎支部平成25年(家ホ)第67号,控訴審は名古屋高等裁判所平成28年(ネ)第335号。),平成28年9月14日,同訴訟の控訴審において請求棄却の判決が言い渡され,その後,同判決は確定した。

7 被相続人は,平成23年11月18日,全財産を相手方に相続させる旨の自筆証書遺言(以下「本件第1遺言」という。)をした。
8 被相続人は,平成23年12月10日,全財産をHに相続させるとともに,遺言執行者として申立人Aを指定する旨の自筆証書遺言(以下「本件第2遺言」という。)をした。

9 被相続人は,平成24年3月29日,申立人ら及びJとそれぞれ養子縁組した。このうち,申立人らと被相続人との養子縁組に対して,相手方がその無効確認を求める訴訟を提起したが(名古屋家庭裁判所平成28年(家ホ)第314号),平成30年11月29日,請求棄却の判決が言い渡され,その後,同判決は確定した。

10 Hは,平成25年○○月○○日に死亡した。
11 Jは,平成27年○○月○○日に死亡した。
12 被相続人は,平成28年○○月○○日に死亡した。
13 被相続人は,死亡した当時,別紙遺産目録記載の財産を保有していた。

14 申立人らは,平成29年12月15日,本件審判を申し立てた。これに対して,当裁判所は,平成30年3月28日,本件を名古屋家庭裁判所豊橋支部の調停に付するとともに(以下,この調停事件を「本件調停事件」という。),本件調停事件が終了するまで審判手続を中止する旨を決定した。

15 相手方は,平成30年4月7日,相手方の夫である当事者参加人に対し,自己の相続分の50分の1を無償で譲渡した。
16 当事者参加人は,平成30年4月10日,相手方から相続分の一部譲渡を受けたことにより,当事者となる資格を取得したとして,本件調停事件への当事者参加を申し出て,本件調停事件の担当裁判所からこれを認められた。
17 本件調停事件は,平成31年1月18日に調停不成立となり,本件審判手続が再開された。

18 現在,申立人らは,本件第1遺言は,これと抵触する本件第2遺言により撤回されており,かつ,本件第2遺言は,全財産を相続させるものとされたHが被相続人より前に死亡した場合には,Hの代襲者たる申立人A及び申立人Bに全財産を相続させる趣旨のものであるから,被相続人の遺産は,すべて申立人A及び申立人Bに相続されると主張している。

これに対して,相手方及び当事者参加人は,本件第2遺言は,全財産を相続させる対象とされたHが被相続人より前に死亡したことで失効しており,その結果,本件第1遺言は撤回されることなく効力を維持するから,被相続人の遺産は,すべて相手方及び相手方から相続分の一部譲渡を受けた当事者参加人に相続されると主張している。

19 申立人らは,本件審判手続において,本件第1遺言の無効確認等を求める訴訟を提起する旨の意向を表明しており,現在,その提訴を準備中である。

第2 当裁判所の判断
 前記のとおり,被相続人の遺産分割については,その前提となる本件第1遺言及び本件第2遺言の効力等に関して当事者間に争いがあり,その効力等の如何によって,相続人の範囲や各自の相続分が大きく左右される状況にある。また,申立人らは,これらの争いを民事訴訟により解決すべく,その提訴を準備中である。

このような状況下においては,当裁判所が本件第1遺言及び本件第2遺言の効力等について判断の上で遺産分割審判をしたとしても,その判断が提起予定の訴訟における判決等の内容と抵触するおそれがあり,そうなれば,既判力を有しない遺産分割審判の判断が根本から覆されてしまい,法的安定性を著しく害することとなるから,本件第1遺言及び本件第2遺言の効力等に関する訴訟の結論が確定するまでは,遺産の全部についてその分割をすべきではない。

 そして,当事者間の争い及び申立人らが提訴予定の訴訟の内容,申立人らの提訴の準備状況その他諸般の事情に鑑みると,本件第1遺言及び本件第2遺言の効力等に関する訴訟の結論が確定するまでには,向こう2年程度の期間を要することが見込まれるから,令和3年11月7日までの間,被相続人の遺産全部の分割を禁止することが相当である(なお,それより前に当該訴訟が解決に至った場合には,事情の変更があったものとして,分割禁止の審判を取り消し又は変更することが可能である(家事事件手続法197条)。)。

第3 結論
 したがって,被相続人の遺産全部の分割を令和3年11月7日まで禁止することとして,主文のとおり審判する。
 名古屋家庭裁判所家事第2部 (裁判官 山田哲也)
以上:2,993文字
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R 2- 9-20(日):映画”TENETテネット”を観て-正にチンプンカンプン
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○令和2年9月19日(土)は、「TOHOシネマズ仙台」「IMAX®デジタルシアター」で、封切り2日目上映中の話題の映画「TENETテネット」をレイトショーで家族で観てきました。クリストファー・ノーラン監督最新作で超難解映画との触れ込みどおり、ユーザーレビューにあった感想「『難解にも程があるだろう』と思うくらいに、難解。。。」で、正にチンプンカンプンの映画でした。

○午後8時開演のレイトショーを6時間前の午後2時頃ネット予約時には、前3列しか空きがなく、前3列の中央部分を家族分予約しました。話題の映画だけあって観客がよく入っています。「TOHOシネマズ仙台」「IMAX®デジタルシアター」は、ここ1年ほど難聴者用ヘッドホンが使えません。入り口で係員にまだ難聴者用ヘッドホンは利用できないのですかと確認すると、音響システム上使えないようなことを言います。しかし、1年以上以前は確かに使えていました。

○しかたなく聴力のより悪い右耳だけに補聴器をつけて鑑賞を始めましたが、「IMAX®デジタルシアター」の大音量に耐えられず、直ぐに外して、聴力損失土75~80dbの高度難聴の耳で生の音を聴きました。すると不思議なことにセリフも音として聞き取れ、バックの音楽も耳にシッカリ入ってきます。普通の生活の場では、聴力損失土75~80dbの高度難聴になると、補聴器を外した世界は沈黙の世界で、普通の会話は殆ど聞き取れないのに「IMAX®デジタルシアター」では聞き取れるのが不思議でした。補聴器なしでもそれなりに音を楽しめました。

○さて、映画は、正にチンプンカンプンで、内容が理解不能で、且つ、夕食後のアルコールの入った満腹状態のため、時に睡魔に襲われ、ハッと目が覚めて観ても、さらに何が何だか訳の判らない状態でした。その中で敵役の妻の容貌が強く印象に残りました。8頭身どころか、10頭身くらいではと思える程小さな顔に長い手足で、水着姿でその長い足がアップで映るのには、大変魅せられました(^^;)。あとで調べると身長、なんと191㎝です。短躯の私などは見上げる大きさです。

○名優デンゼル・ワシントン氏の息子が主人公でしたが、そう言われると確かにどこか親父に似ているかとも思えます。しかし、当然ですが、まだ親父のような凄みはまだまだ感じられません。役柄がそのような設定のためかも知れませんが、どこか物足りない感じがしました。この主人公のアクションに、時間を逆行する現象を視覚化して取り入れているとのことですが、時間逆行現象と普通の現象の区別がつきにくく、一体この画面は何だと思える展開が続き、正に訳が判らない展開でした。UHDが発売されたら、繰り返し鑑賞し、少しは理解できるよう努めます。
以上:1,133文字
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