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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 7- 2-16(日):研修所同期45周年記念祝賀会-94歳指導教官残念ながらメッセージ出席
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恐れ入りますが、本ページは、会員限定です。

以上:21文字
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R 7- 2-15(土):”睡眠の超基本”紹介-仮眠(パワーアップ)は3か条を守る
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○先日、丸善仙台店で山積みされていた柳沢正史氏著「今さら聞けない睡眠の超基本」を購入しました。柳沢正史氏は、睡眠法の権威としてTVで良く見かける方だったからです。自称健康オタクの私は、睡眠に関しては殆ど悩みはなく、睡眠解説の書籍は殆ど持っていなかったからです。ここ20年程、私の就寝時刻は午後9時前後で、起床時刻は午前3~4時でほぼ一定しています。1日の睡眠時間は6~7時間です。但し、昼は午前11時30分にいつも同じ店の日替わり定食をとり、午前12時までに事務所から徒歩数分の自宅に戻り、愛猫のトイレ掃除・エサと水交換をして、リクライニングシートに横たわりTVを鑑賞しながら15~20分程昼寝をして、午後1時30分から午後2時の間に事務所に戻ることが習慣になっています。

○この昼休みの15~20分の昼寝がこれで良いかどうかの確認をしたく、柳沢正史氏著「今さら聞けない睡眠の超基本」を購入しました。これに関し、同著202頁に日中の行動で快眠を招く仮眠(パワーアップ)は3か条を守るとの表題の記述があり、以下、その備忘録です。

1.20分で切り上げる
20分程度の仮眠は、中程度の深さの睡眠にとどまり、軽い刺激で起きることができる-午後のパフォーマンスが上がる
30~40分以上仮眠をとると、深い睡眠に入って目覚めが悪くなり、却って眠気が残る可能性がある-夜の睡眠にも影響する

2.体勢をきちんと確保してから仮眠する
パワーアップを行う際は、適切な体勢を確保することが重要、リクライニングチェア等

3.遅くても午後2時までに終わらせる
午後2時以降に仮眠すると、睡眠要求が一時的に満たされ、結果として夜更かしにつながり、翌日朝起きがつらくなり、日中パフォーマンスが上がらないという負のループに陥る


○私の昼休みの睡眠は、上記3か条にマッチしていることが確認できました。令和6年10月末に亡くなったオスの愛猫生存中は、私がリクライニングシートに横たわるとヒザに上に乗って、一緒に眠ってくれるのが大変有り難いものでした。その後、一緒に飼っていたメス猫が、短時間ヒザの上に乗ってくれるようになりましたが、一緒に眠ってくれるまでにはなりません。徐々に一緒に眠るまでなってくれることを期待しているところです。
以上:937文字
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R 7- 2-14(金):配偶者が補助参加しても不貞行為慰謝料200万円を認めた地裁判決紹介
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○原告(妻)は、補助参加人(夫)と婚姻し、長女をもうけていたが、元同僚である被告が補助参加人と交際して不貞行為に及び、これによって原告が精神的苦痛を受けた他、探偵費用及び弁護士費用の支出を余儀なくされたとして、慰謝料500万円と探偵費用220万円、弁護士費用72万円の合計792万円の損害賠償の支払いを請求しました。

○これに対し、原告が被告の不貞行為によって受けた精神的損害は大きく、その損害を慰謝する金額としては、200万円と認め、探偵費用は被告の不法行為と相当因果関係のある原告の損害とは認めるに足りないとして弁護士費用と合わせて220万円の支払を認めた令和5年5月16日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○興信所に依頼した探偵費用は、原則として損害には認められませんが、本件では、「原告は、220万円もの金額を支払って探偵に調査を依頼していること」を慰謝料査定理由に挙げており、200万円と比較的高く認定しているのは探偵費用を考慮したものと思われます。

○夫が被告を補助するため訴訟に参加して、不貞行為否認・婚姻破綻の主張をしています。最も責任がある配偶者が訴訟に何ら関与しないのは不当といつも感じていますが、本件は配偶者が補助参加人として訴訟に参加した珍しい事案です。残念ながらその効果はなかったようですが。

********************************************

主   文
1 被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する令和4年3月7日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを18分し、その13を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、792万円及びこれに対する令和4年3月7日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 原告と補助参加人は、夫婦である。本件は、原告が、被告に対し、補助参加人と不貞行為に及び、精神的損害を受けたと主張して、不法行為に基づき、慰謝料500万円、探偵費用220万円、弁護士費用72万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である令和4年3月7日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(後掲の証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実を含む。)

     (中略)

第3 争点に対する判断
1 認定事実
(以下「認定事実(1)」などと表記する。)

     (中略)

2 争点1(被告は補助参加人と不貞行為をしたか)について
(1)認定事実(1)オ、(2)ウによれば、被告と補助参加人は、平成27年11月の時点において、被告と補助参加人が生活をともにしているほか、性交渉の存在をうかがわせるようなLINEのやり取りをしていることが認められる。また、認定事実(2)エのとおりの被告と補助参加人が生活をともにしていることをうかがわせるLINEのやり取りが存在する。これらに加え、前提事実(1)イ、(2)のとおり、遅くとも令和2年の年末以降、交際関係にあることに照らせば、被告と補助参加人は、遅くとも平成27年頃から継続的に不貞関係にあったと認めるのが相当である。

(2)これに対し、被告及び補助参加人は、令和2年の年末より前は親しい友人関係に過ぎず、不貞行為は存在しないなどと供述、証言するが、認定事実(2)ウ、エのLINEのやり取りに関してわからないと述べるのみで合理的な弁解ができておらず、いずれも信用できない。

3 争点2(不貞行為当時、婚姻関係が破綻していたか)について
(1)補助参加人は、認定事実(1)イの長女の件に端を発し、認定事実(1)イのその余の事実も相まって、平成23年3月、家を出た旨を証言し、被告とともに、この時点以降、夫婦関係が破綻していたと主張する。

(2)そこで検討するに、まず、認定事実(1)イ、オのとおり、補助参加人において、夫婦関係について少なからず不満を抱えていたことが認められるものの、認定事実(1)オのとおり、補助参加人は、本件訴訟に至るまで、その不満を原告に一切話しておらず、原告においてその不満を理解できる状況になかったと認められる。むしろ、認定事実(1)オのとおり、補助参加人は、週1回程度は自宅に帰宅していた事実が認められるほか、認定事実(2)エ、オ、(3)アのとおり、補助参加人は、令和元年の年末や令和3年5月においてすら、原告、長女の3人で構成されるグループLINEでやり取りを継続したり、夫婦関係が円満であることを前提とするLINEのやり取りをしたりしていることが認められる。
 以上によれば、補助参加人が、原告に対する不満を抱え、平成23年3月以降、自宅に帰宅する機会が減ったことを前提としても、夫婦関係が破綻したとは認められない。

(3)したがって、原告と補助参加人は、平成27年当時、婚姻関係が破綻していたとは認められない。

4 争点3(原告の損害)について
(1)慰謝料

〔1〕前提事実(1)アのとおり、原告と補助参加人は、20年以上婚姻関係にあること、
〔2〕上記2のとおり、被告が補助参加人と平成27年頃以降不貞関係にあり、その期間が長期に及ぶなど、その対応が悪質であること、
〔3〕上記3のとおり、補助参加人が原告に対する不満を抱えつつ自宅に帰る頻度が減ったという側面はあるものの、婚姻関係は破綻していない状態であったのに対し、平成27年以降、被告が補助参加人との関係を継続したところ、前提事実(1)イ、認定事実(3)エのとおり、現在においては、補助参加人は原告との婚姻関係を継続する意思を完全に喪失し、客観的に婚姻関係の継続が困難な状況に陥っていることに照らせば、原告と補助参加人の婚姻関係がこのような状況に至ったのは、被告との不貞が主たる原因である認められること、
〔4〕前提事実(2)、(3)、認定事実(2)カのとおり、原告は、220万円もの金額を支払って探偵に調査を依頼していること、認定事実(3)イのとおり、原告はメンタルクリニックを受診し、うつ状態であるとの診断を受けたこと
が認められる。

イ 以上のとおり、原告が被告の不貞行為によって受けた精神的損害は大きく、その損害を慰謝する金額としては、200万円が相当である。

(2)調査費用
ア 前提事実(2)、(3)、認定事実(2)カのとおり、原告は、調査会社に調査を依頼して調査報告書を受領し、調査費用として220万円を支払っていることが認められるものの、認定事実(2)ア~エのとおり、補助参加人が被告と不貞関係にあることをうかがわせる事情が多く存在しており、上記の調査が被告に対する損害賠償請求に当たり不可欠の費用であるとは認め難い。

イ したがって、調査費用は、被告の不法行為と相当因果関係のある原告の損害とは認めるに足りない。

(3)原告は、本件訴訟追行を原告代理人に委任しているところ、上記(1)の慰謝料の1割に当たる20万円についても、被告の不法行為と相当因果関係のある原告の損害と認める。

5 以上のとおり、原告の請求は、主文掲記の限度で理由がある。
 よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第15部 裁判官 原雅基
以上:3,019文字
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R 7- 2-13(木):久しぶりに三橋美智也氏演歌・民謡を聞き惚れる
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○繰り返し記載していますが、「私の音楽経験-演歌が始まり」に「三橋、春日、村田のSPレコードを幼少時代から子守歌のように繰り返し聞かされて育った私は、小学校に入る頃にはすっかり演歌好きになりました。」と記載していたとおり、私は「演歌以外は音楽では無い」と言う程の演歌好きでした。

○令和7年2月12日(水)は、たまたま、YouTube動画で、「三橋美智也氏」の唄を聴いたら懐かしさが募り、午後7時頃から午後9時頃まで2時間ほど三橋演歌・民謡を聞き惚れました。「三橋美智也氏”情け無用の男”-妙に記憶に残っている曲紹介」に、「三橋・春日・村田各氏は3人とも好きでしたが、その中で一番好きなのは誰かと聞かれたら、三橋美智也氏」と記載したとおりで、昭和38年舟木一夫氏がデビューするまで一番好きな歌手は「三橋美智也氏」でした。

三橋美智也 哀愁列車


三橋美智也 おんな船頭唄


リンゴ村から 三橋美智也


「達者でナ」  三橋美智也  昭和35年(1960年)


三橋美智也 古城


三橋美智也 夕焼けとんび


三橋美智也 北海盆唄


三橋美智也 真室川音頭


三橋美智也 ソーラン節


三橋美智也 新相馬節


斎太郎節(宮城県) 三橋美智也【歌詞入り】作詞:藤間哲郎 編曲:山口俊郎


以上:516文字
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R 7- 2-12(水):映画”ローマの休日”を観て-オードリー・ヘップバーン氏美しさ堪能
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○令和7年2月11日(火)は夕方、最近、ヨドバシ仙台店安売りで購入した4KUHDソフト映画「ローマの休日」を鑑賞しました。1953(昭和28)年製作ですから、令和7年からは72年も前の作品です。映画コムでは「アメリカ映画初出演となるオードリー・ヘプバーンと名優グレゴリー・ペック共演によるロマンティックコメディの永遠の名作」と解説され、主演オードリー・ヘップバーン氏24歳、相手役グレゴリー・ペック氏37歳の時の作品です。

○72年も前の作品で白黒映画ですが、4KUHDリニューアル画面は鮮明に甦っており、心地よい映像でした。正に「永遠の名作」と言われる映画で、何度もTV放映がなされており、部分的に鑑賞したことはありますが、LD・DVDも購入しておらず、全編通しての鑑賞は初めてでした。オードリー・ヘップバーン氏演ずる某国の王女がローマで大使館を脱出して偶然出会ったグレゴリー・ペック氏演ずるアメリカ人新聞記者とローマの休日を楽しむとのストーリー概要は知っていましたが、その結論は全く知らず、一体どういう結論に落ち着くのかとハラハラしながらの鑑賞でした。

○白黒画面ですが鮮明化された映像のオードリー・ヘップバーン氏は、正にこの世の者かと、信じられないほどの美しさで、それを堪能するだけで価値のある映画です。イタリアは、16年前の平成21年秋の事務所旅行で1回だけ訪れたことがあり、「平成21年事務所旅行第3日目ーローマ市内観光」等にその旅行記録を残しています。72年前のこの映画でもトレビの泉等見覚えのある光景が出てきます。また事務所旅行でローマを訪れたくなりましたが、今の稼ぎでは到底無理な状況です(^^;)。

○王女様と記者のローマの休日は、てんやわんやの騒動も起こり、さて、最後はどうなるかと思いながらの鑑賞でした。その最後、身分をわきまえた王女様と記者の堂々たる振る舞いに感動しました。オードリー・ヘップバーン氏の気品は勿論のこと、グレゴリー・ペック氏の演技に器の大きさを感じました。何度でも鑑賞したくなる映画です。

【予告編】『ローマの休日 製作70周年 4Kレストア版』 8/25より全国ロードショー


以上:901文字
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R 7- 2-11(火):週刊ポスト令和7年2月21号名医13人”病気を防ぐ習慣”紹介
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○ここ数十年週刊ポストを定期購入し金港堂から配達して貰っています。最初に見るのがコミックで、ここ数年は永井豪氏作「柳生裸真剣」です。次に見るのがビートたけしの21世紀毒談で、その他は興味を引いた表題記事で各号によってアトランダムです。一週間前に発売された令和7年2月21日号では、名医13人がやっている「病気を防ぐ習慣」・絶対やらない「病気を招く習慣」との表題記事が役にたちました。以下、その私にとって勉強になった要点の備忘録です。フルーツジュース・加工肉ダメは肝に銘じます。

・東大病院特任教授がん専門医中川恵一氏
【やる】
がん予防のためブラックコーヒー1日5杯以上
※わたしもブラックコーヒーはドルチェグスト専用カプセルで一日1杯は飲んでいましたが、2杯以上に増やします。
酒と一緒にブロッコリーを食べる
【やらない】
100%でもフルーツジュース-糖分が多く糖尿病をまねきやすい

・秋津医院院長循環器専門医秋津壽男氏
【やる】
週2回夕食時にひきわり納豆
【やらない】
サウナと水風呂-血液がどろどろになって心筋梗塞・脳梗塞のおそれ

・高血圧専門医渡辺尚彦氏
【やる】
毎朝コップ1杯の無調整豆乳-大豆に含まれる植物性タンパク質が血圧上昇ホルモンを阻害する働き
身体を動かす習慣-貧乏揺すり等
【やらない】
排尿・排便の我慢-血圧を上げる

・糖尿病専門医矢野宏行氏
【やる】
食事はゆっくりし、食後15分以内に軽めのスクワット・ゆっくり散歩-血糖値乱高下防ぐ
【やらない】
食後1時間以内に寝る-糖質が消化されず血糖値があがるから

・北品川藤クリニック院長石原藤樹氏
【やる】
乳製品は牛乳よりチーズを積極的に摂る-発酵食品は中性脂肪によい
【やらない】
ウインナー・ハム等加工肉-脂質異常症のリスク

高齢者総合内科教授眞鍋雄太氏
【やる】
飲み会・サークル等人とのコミュニケーション
アジ・サバ等に含まれるDHA・EPAの摂取
【やらない】
もう年だからとの口癖

・腎臓専門医上月正博氏
【やる】
30分早歩き・腕立て伏せ100回を一日10セット
【やらない】
果物・野菜のジュース摂取

・泌尿器科医永井敦氏
【やる】
最低でも週1回の射精
【やらない】
41度以上の熱い風呂・サウナ

・歯学博士照山裕子氏
【やる】
就寝直前の小刻みに軽く動かす歯磨き
【やらない】
しゃかしゃか音が出る力の入った歯磨き

・耳鼻咽喉科医西山耕一郎氏
【やる】
キーの高い曲でのカラオケ
【やらない】
テレビやスマホを見ながらの「ながら食い」
以上:1,012文字
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R 7- 2-10(月):トランスジェンダー女性への認知請求を全部認容した最高裁判決紹介
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○「トランスジェンダー女性への認知請求を一部認容した高裁判決紹介」の続きで、その上告審令和6年6月21日最高裁判決(判タ1527号45頁)全文を紹介します。

○被上告人Y(身体は男で心は女性の性同一障害者)の提供精子により生まれた第一審原告A及び第一審原告B(上告審上告人)が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律によって性別が女性に変更されたYに対し、認知の訴えを提起しましたが、第一審は原告らと被告との間に法律上の親子関係を認めることは現行法制度と整合しないので本件各認知を認めることはできないとして原告らの請求をいずれも棄却され、第二審では、Yが性別変更前に生まれた長女Aについては認知を認め、性別変更後に生まれた二女Bについては棄却し、Bが上告してしました。

○私は、第二審判決について、いずれもYの精子に因って生まれ血縁関係があるのだから、性別変更前後で区別するのはおかしいとの感想を持っていました。最高裁判決は、この福祉の観点を全面的に打ち出して、嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し、その者の法的性別にかかわらず、認知を求めることができると解するのが相当であり、そして、本件事実関係等によれば、上告人Bは、被上告人に対し、認知を求めることができるとしました。極めて常識的で妥当な判決です。

*********************************************

主   文
原判決中、上告人に関する部分を破棄し、同部分につき第1審判決を取り消す。
上告人が被上告人の子であることを認知する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○ほかの上告受理申立て理由第4について
1 本件は、上告人が、被上告人に対し、認知を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
(1)被上告人(*年*月*日生まれ)は、*年又は*年頃、自己の精子を凍結保存した。

(2)被上告人は、平成*年、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」という。)3条1項に基づく性別の取扱いの変更の審判を受け、法令の規定の適用の前提となる性別(以下「法的性別」という。)を男性から女性へと変更した。

(3)上告人の母は、被上告人の同意の下で上記精子を用いた生殖補助医療により懐胎し、令和*年*月*日に上告人を出産した。上告人は、上告人の母の嫡出でない子である。

(4)被上告人は、*年*月、Aに上告人に係る胎児認知の届出をしたが、被上告人の法的性別が女性であることなどを理由に当該届出は不受理とされた。

3 原審は、要旨次のとおり判断して、上告人の請求を棄却すべきものとした。
 嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者の法的性別が当該子の出生時において男性である場合に限り、その者に対して認知請求権を行使し得る法的地位を取得するのであるから、当該子の出生時においてその者の法的性別が女性へと変更されていた場合には、その者に対し、認知を求めることができない。そして、上告人の出生時において被上告人の法的性別は女性へと変更されていたから、上告人は、被上告人に対し、認知を求めることができない。

4 しかしながら、原審の前記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 民法その他の法令には、認知の訴えに基づき子との間に法律上の父子関係が形成されることとなる父の法的性別についての規定はないところ、平成16年に特例法が施行されるまで、法律上の父となり得る者の性別が例外なく男性であることにつき疑義が生ずる状況にはなかった。

しかし、生殖補助医療の技術が進歩し、性別の取扱いの変更を認めることとした特例法が施行されるなどしたことで、法的性別が女性である者が自己の精子で生物学的な女性に子を懐胎させ、当該子との間に血縁上の父子関係を有するという事態が生じ得ることとなった。

そして、本件では、上告人との間に血縁上の父子関係を有しているものの、その法的性別が女性である被上告人に対し、上告人が認知を求めることができるか否かが問題となっている。以下、この点について検討する。

 民法の実親子に関する法制は、血縁上の親子関係をその基礎に置くものである。父に対する認知の訴えは、血縁上の父子関係の存在を要件として、判決により法律上の父子関係を形成するものであるところ、生物学的な男性が生物学的な女性に自己の精子で子を懐胎させることによって血縁上の父子関係が生ずるという点は、当該男性の法的性別が男性であるか女性であるかということによって異なるものではない。

 そして、実親子関係の存否は子の福祉に深く関わるものであり、父に対する認知の訴えは、子の福祉及び利益等のため、強制的に法律上の父子関係を形成するものであると解される。仮に子が、自己と血縁上の父子関係を有する者に対して認知を求めることについて、その者の法的性別が女性であることを理由に妨げられる場合があるとすると、血縁上の父子関係があるにもかかわらず、養子縁組によらない限り、その者が子の親権者となり得ることはなく、子は、その者から監護、養育、扶養を受けることのできる法的地位を取得したり、その相続人となったりすることができないという事態が生ずるが、このような事態が子の福祉及び利益に反するものであることは明らかである。

 また、特例法3条1項3号は、性別の取扱いの変更の審判をするための要件として「現に未成年の子がいないこと。」と規定しているが、特例法制定時の「現に子がいないこと。」という規定を平成20年法律第70号により改正したものであり、改正後の同号は、主として未成年の子の福祉に対する配慮に基づくものということができる。未成年の子が、自己と血縁上の父子関係を有する者に対して認知を求めることが、その者の法的性別が女性であることを理由に妨げられると解すると、かえって、当該子の福祉に反し、看過し難い結果となることは上記のとおりである。

そうすると、同号の存在が上記のように解することの根拠となるということはできず、むしろ、その規定内容からすると、同号は子が成年である場合について、その法律上の父は法的性別が男性である者に限られないことをも明らかにするものということができる。そして、他に、民法その他の法令において、法的性別が女性であることによって認知の訴えに基づく法律上の父子関係の形成が妨げられると解することの根拠となるべき規定は見当たらない。

 以上からすると、嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し、その者の法的性別にかかわらず、認知を求めることができると解するのが相当である。
 そして、前記事実関係等によれば、上告人は、被上告人に対し、認知を求めることができるというべきである。


5 以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決中、上告人に関する部分は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、上告人の請求は理由があるから、上記部分につき第1審判決を取消し、上告人の請求を認容すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官三浦守、同尾島明の各補足意見がある。


以上:3,027文字
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R 7- 2- 9(日):映画”カラーパープル”を観て-1900年代初頭米国黒人女性の苛酷さ実感
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○令和7年2月8日(土)は、夜、最近ヨドバシ仙台店の大安売りで購入したばかりの4KUHDソフトで映画「カラーパープル」を鑑賞しました。1985(昭和60)年製作ですから令和7年からは40年前の映画です。映像は4KUHD化によってまずまずのものでした。平成初めのLDの時代にLDを購入し、30数年前に一度は鑑賞しているはずの映画でしたが、内容は全く忘却の彼方で、全く初めて観る感覚で鑑賞できました。映画コムでは「スティーブン・スピルバーグ監督が、ピューリッツァー賞を受賞したアリス・ウォーカーの同名小説を実写映画化し、過酷な人生を歩む黒人姉妹の深い絆を壮大なスケールで描いたヒューマンドラマ。」と解説されています。

○時代は1900年代初めのアメリカですが、当時のアメリカでの黒人女性の置かれた状況に慄然としました。父親が母親がさせてくれない代わりとして、まだ10代の長女を犯し、二度も出産させ、出産した子供は、父親が他に売り飛ばしてお金にしています。二度目の出産のシーンがおぞましく印象に残りました。この父親は長女だけでなく、二女にまで手を出そうとしています。今ならこんな父親は、刑事被告人として実刑判決を受けて然るべきですが、当時は、当たり前のように彼方此方で行われていたと感じさせる演出でした。黒人は白人の奴隷ですが、黒人女性は黒人男性の奴隷でもあり、人間と評価されていない時代背景を実感しました。

○主人公セリーを演じたウーピー・ゴールドバーグ氏はこの映画がデビュー作ですが、その後、映画「ゴースト ニューヨークの幻」等数々の有名映画に出演し、有名女優となりました。どこかで見た顔だと思っていましたが、その後の出演作を何作か観ていたからでした。彼女は、この映画出演当時30歳でしたが、10代からおそらく50代以降までの成長過程を見事に演じています。苛酷な扱いを受けていた主人公黒人女性が、他の強く逞しい黒人女性との触れ合いを経て成長し、最後はハッピーエンドに終わります。ストーリー的には疑問を感じるところが数カ所ありましたが、私の時代背景認識不足に因ると思われ、もう一度じっくり鑑賞しようかと思っています。

『カラーパープル』日本版劇場予告編


The Color Purple (1985) | 4K Ultra HD Official Trailer | Warner Bros. Entertainment


以上:1,001文字
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R 7- 2- 8(土):トランスジェンダー女性への認知請求を一部認容した高裁判決紹介
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○「トランスジェンダー女性への認知請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和4年8月19日東京高裁判決(判時2560号51頁、判タ1511号144頁)関連部分を紹介します。

○控訴審判決は、いずれも提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた控訴人A(長女)及び控訴人B(二女)が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた被控訴人に対する認知請求について、同審判前に出生した控訴人Aの認知請求を認容し、同審判後に出生した控訴人Bの認知請求は棄却しました。

○長女は被控訴人Yが、性同一性障害者特例法に基づき男性から女性に変更される審判前の男性時代に生まれたから認知は認められ、二女は同法に基づく審判で女性に変更されてから生まれたので認知請求はできないとの理屈です。長女も二女も被控訴人Yの精子で生まれた子で血縁関係があることは同じなのだから、二女についても認知を認めて良いのではと思うのですが、最高裁判決は別コンテンツで紹介します。

*********************************************

主   文
1(1)控訴人長女の控訴に基づき、原判決中、控訴人長女の敗訴部分を取り消す。
(2)控訴人長女が被控訴人の子であることを認知する。
2 控訴人二女の控訴を棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを2分し、その1を控訴人二女の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 控訴人らがいずれも被控訴人の子であることを認知する。

第2 事案の概要等
1 本件は、いずれも凍結保存精子を用いた生殖補助医療により出生した控訴人らが、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」という。)に基づき男性から女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた被控訴人に対し、それぞれ認知を求める事案である。

 原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、これを不服とする控訴人らがいずれも控訴した。
 なお、被控訴人は、当審の第1回口頭弁論期日において、「控訴人らの控訴を全て認諾する」旨を記載した控訴答弁書を陳述しているが、人事訴訟である認知の訴えにおいては請求の認諾は認められない(人事訴訟法19条2項、民事訴訟法266条参照)。

2 前提事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実


     (中略)

2 判断の前提となる法律関係
 本件各認知の訴えは、いずれも被控訴人の凍結保存精子を用いた生殖補助医療により出生し、被控訴人との間に生物学的な父子関係が認められる控訴人らが、本件審判によって民法その他の法令の規定の適用についてその性別が女性に変わったものとみなされた被控訴人に対し、民法787条の訴えにより認知請求権を行使するものであるから、以下において、
〔1〕性交渉に由来しない生殖補助医療により出生した控訴人らが、精子提供者である被控訴人に対して、同条の「子」として認知請求権の行使をすることができるか、
〔2〕女性に性別が変更されている被控訴人が、同条(及び人事訴訟法42条1項前段)により被告となるべき「父」と認められるか
について検討する。

(1)法律上の実親子関係

     (中略)

 そうすると、民法779条及び同法787条の「子」及び「父」は、生物学的な父子関係が、母が父との間の性交渉に由来して懐胎した子を出産することによって形成されるもので、精子の形成や射精などの生殖機能は女性にはなく、男性にしか認められないことを前提として規定されているものであると解される。

(3)民法787条の認知請求権
ア 認知請求権の内容及び取得時期
 民法787条は、子が父に対して裁判による認知を請求できる旨を規定しているが、同条は、父が任意に子を認知しない場合において、子が、自分と生物学的な父子関係を有する「父」に対して、同人との間の法律上の父子関係(身分関係)の形成という法的効果を生じさせることを目的とする、子の福祉にとって重要な権利である認知請求権を認めるものであり、子は、「その出生の時から」同条に基づく認知請求権(形成権)を行使し得る法的地位を有するものと解される。

イ 民法787条の「子」
 ところで、民法787条にいう「子」は、前記(2)で説示した母と父との間の性交渉に由来して出生した子であり、父との間に生物学的な父子関係を有する者をいうと解される。そして、生殖補助医療により出生した子と凍結保存精子を提供した父との間の父子関係は、性交渉に由来する生物学的な父子関係であるとはいい難いところ、このような場合に、子の精子提供者である父に対する認知請求権が認められるか否かについては、これを明らかとする民法上の規定は存在しておらず、令和2年12月に制定された「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」においても、上記場合における父子関係に関する明文の定めはない。

 しかしながら、性交渉によっては生殖ができない夫が妻との間の子をもうけることを目的として自己の凍結保存精子を提供し、妻が生殖補助医療により夫との間の子を懐胎して出産する場合と同様に、性交渉によっては生殖ができない男性が特定の女性(例えば内縁関係にある妻)との間の子をもうけることを目的として自己の凍結保存精子を提供し、当該女性が生殖補助医療により当該男性との間の子を懐胎して出産したという場合においては、当該男性は子との父子関係の形成を目的として自己の凍結保存精子を提供しているもので、子にとっても、当該男性との間に法律上の父子関係の成立が認められることは、その福祉にとって重要なことであると認められる。

また、民法787条に基づく認知の訴えは、通常、被告となる父において任意の認知を拒んでいるだけでなく、子との間の法律上の父子関係の成立を争っている場合に提起されるものであるが、前記のような男性の場合は、子との父子関係の形成を目的として自己の凍結保存精子を特定の女性に対して提供しているものであり(本件の場合は、被控訴人と控訴人ら母とは、控訴人長女の出生後に婚姻関係にあった時期があり、その後、被控訴人において、控訴人らの父であるとして本件各認知届出をしている。)、このような場合においては、子が生殖補助医療により出生したことを理由に、生物学的な父子関係を有する男性に対して民法上の認知請求権を行使することを否定すべき理由はない。

したがって、同条が「子」に対して認知請求権を認めた趣旨に照らし、生殖補助医療により出生した子であっても、上記目的を持って凍結保存精子を提供した生物学的な父子関係を有する男性を「父」として、同条に基づき、民法上の認知請求権を行使し得る法的地位を有するものと解すべきである。

ウ 民法787条の認知請求の相手方となる「父」
(ア)次に、民法787条は、精子の形成や射精などの生殖機能が生物学的にみて男性にしか認められないことを前提として規定されたもので、前記(2)で説示したとおり、性同一性障害を有する者の存在やこれを前提とする特例法の制定を想定しておらず、男性不妊の場合の生殖補助医療が行われていない時期に全部改正されたものであるから、同条にいう「父」の解釈としては前記生殖機能を有する生物学的な意味での男性を「父」と規定しているものと解される。

(イ)この点、特例法3条1項は、家庭裁判所は、同項各号所定の要件を満たす者の請求により性別の取扱いの変更の審判をすることができる旨を規定し、特例法4条1項は、前記審判を受けた者は、民法その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす旨を規定していることから、成人した子がいる「父」(特例法3条1項3号参照)については、男性から女性への性別の取扱いの変更の審判を受けることによって、「父」の法律上の性別が女性に変更されることを認めている。このため、特例法によって、民法の規定する「父」についての前記(ア)の解釈が変更されたと解する余地があるのかが問題となる。

 しかしながら、特例法4条2項は、性別の取扱いの変更の審判が確定したとしても、審判前に生じた「身分関係」に影響を及ぼすものではない旨を規定していることから、成人した子がいる「父」については、法律上の性別が男性から女性に変わった後も、男性であった「父」との父子関係が法律上継続することを認めているものと解される。

 また、特例法3条1項3号は、性別の取扱いの変更の審判を受けるための要件として「現に未成年の子がいないこと」を定めているところ、事実上、婚姻していない男女間の性交渉によって子が出生した後に、その子が未成年者である間に、当該男性が性同一性障害を有する者として前記審判を受けて法律上の性別が女性に変わったという場合も想定されるが、このような場合も、特例法4条2項が、性別の取扱いの変更の審判前に生じた「身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない」旨を規定していることから、前記未成年の子が前記審判前に男性であった父に対して有していた権利義務(法的地位)が、父の性別の取扱いの変更後も法律上存続することを認めているものと解される。

(ウ)そうすると、特例法が4条2項を規定して、前記のような法律上の取扱いを認めていることからすれば、特例法は、民法による認知請求の相手方となる「父」が生物学的な意味での男性であるとする民法上の前記(ア)の解釈を前提として、同項の規定を置いたものと解することができる。したがって、特例法が制定されたことによって、民法が認知請求の相手方と規定する「父」に関する前記の解釈が変更されたものであるとは解されない。

(4)そこで、以上を前提に、控訴人らの本件各認知の訴えが認められるか否かについて検討する。

3 控訴人長女の被控訴人に対する認知請求権の存否
(1)前記認定事実(2)のとおり、控訴人長女は、被控訴人について特例法3条に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判(本件審判)が確定した**年*月*日より前である**年*月*日(当時の性別は男性)に、被控訴人の凍結保存精子を利用した生殖補助医療により懐胎した控訴人ら母から出生したことが認められる。

 そうすると、控訴人長女は、その出生時において、生物学的な父子関係を有する法律上「男性」である被控訴人に対し、民法787条に基づく認知請求権(形成権)を行使し得る法的地位を取得したものと認められる(前記2(3)ア)(なお、前記のとおり、控訴人長女は、生殖補助医療により出生した子であるが、性交渉によっては生殖ができない男性であった被控訴人が控訴人ら母との間の子をもうけることを目的として控訴人ら母に対して自己の凍結保存精子を提供し、控訴人ら母が生殖補助医療により懐胎して出産した子であるから、このような場合において、控訴人長女が、被控訴人に対して、同条に基づく認知請求権を行使し得る法的地位を取得することを妨げられないと解すべきことは前記2(3)イのとおりである。)。

 ところで,前記認定事実(2)のとおり、被控訴人は、本件審判が**年*月*日に確定したことで、特例法4条1項によって「民法その他の法令の規定の適用について」は、性別が男性から女性に変わったものとみなされたものであるが、控訴人長女がその出生時から有する前記認知請求権を行使し得る法的地位を、被控訴人が本件審判を受けたという自己とは関係のない事情によって失うものとすることは相当ではなく、同条2項は、「性別の取扱いの変更の審判前に生じた身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない」旨を規定していることからすれば、控訴人長女は、現時点においても、その出生時において取得した、生物学的な父子関係を有する被控訴人「父」に対する認知請求権を行使し得る法的地位を有するものと解される。

(2)なお、このように解すると、認知の遡及効(民法784条本文)によって本件審判がされた時点で被控訴人には未成年の子(控訴人長女)がいたことになり、特例法3条1項3号の要件を満たしていなかったことになるが、もともと被控訴人は、本件審判当時、認知をしていなかったものの、前記認定事実(2)のとおり、生物学的な父子関係にある控訴人長女が出生していることを認識していたものであって(むしろ、本件審判を得るために、控訴人長女に対する認知を遅らせていたともいえる。)、このことは、本件審判の効力に関して問題となることがあるとしても、控訴人長女の前記認知請求権の行使を妨げるべき理由となるものではないというべきである。

(3)以上のとおり、控訴人長女は、被控訴人に対し、現時点においても、被控訴人を父とする認知請求権を行使し得る法的地位を有すると解されるから、控訴人長女の本件認知の訴えは理由がある。

4 控訴人二女の被控訴人に対する認知請求権の存否
(1)前記認定事実(2)のとおり、控訴人二女は、被控訴人が、特例法3条に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判(本件審判)が確定した**年*月*日の後に、控訴人ら母との間の子をもうけることを目的として控訴人ら母に対して自己の凍結保存精子を提供し、これを利用した生殖補助医療により懐胎した控訴人ら母から出生した子で、被控訴人との間には生物学的な父子関係があることが認められる。

 もっとも、被控訴人は、控訴人二女の出生時において、本件審判により、民法の規定の適用において法律上の性別が「女性」に変更されていたもので、民法787条の「父」であるとは認められないから、控訴人二女と被控訴人との間に生物学的な父子関係が認められるとしても、控訴人二女が、その出生時において、同条に基づいて被控訴人に対する認知請求権(形成権)を行使し得る法的地位を取得したものであるとは認められない。

 これに対し、控訴人二女は、特例法4条2項を類推適用することにより、被控訴人に対して認知請求権を行使できる旨を主張するが、そもそも前記のとおり控訴人二女は、本件審判が確定したことによって、被控訴人が、民法その他の法令の適用について女性として扱われることになった後に出生したものであるから、同項を類推適用する前提を欠いているというほかない。

 したがって、控訴人二女の被控訴人に対する認知請求権の行使は、これを認めることができない。

(2)なお、控訴人二女は、民法787条により、被控訴人「母」に対する認知請求権が認められるべきであるとも主張するが、控訴人二女と被控訴人との間に生物学的な母子関係を認めるべき事由はないから、同条に基づいて、被控訴人「母」に対する認知請求権の行使を認めることもできないというほかはない。そうである以上、この点に関する控訴人二女の主張を採用することもできない。

5 結論
 以上によれば、控訴人長女の認知請求は理由があるから認容し、控訴人二女の同請求は理由がないから棄却すべきところ、これと異なる原判決は、控訴人長女に関する部分について失当であり、その余は相当であるから、控訴人長女の控訴に基づき、控訴人長女に関する部分を取消した上で同控訴人の認知請求を認容し、控訴人二女の控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官 木納敏和 裁判官 菊池憲久 裁判官 森剛
以上:6,374文字
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R 7- 2- 7(金):トランスジェンダー女性への認知請求を棄却した地裁判決紹介
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○判例タイムズ令和7年2月号に、嫡出でない子は,生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し,その者の法令の規定の適用の前提となる性別にかかわらず,認知を求めることができるかと争いになった令和6年6月21日最高裁判決が紹介されていました。

○事案は、身体は男で心は女性の性同一障害者Yが、男として提供した精子によって生まれた子供A・Bが、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律によって性別が女性に変更された後に、A・Bの認知届出をしたところ、Yの性別は女性に変更され「父」ではないとの理由で、不受理とされたため、訴訟手続で認知を認めることを求めたものです。関連法令は以下の通りです。

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
第3条(性別の取扱いの変更の審判)

 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 18歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
2 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。

第4条(性別の取扱いの変更の審判を受けた者に関する法令上の取扱い)
 性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、民法(明治29年法律第89号)その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす。
2 前項の規定は、法律に別段の定めがある場合を除き、性別の取扱いの変更の審判前に生じた身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない。


○事案がややこしくて良く理解出来ないため、先ず第一審令和4年2月28日東京家裁判決(判時2560号57頁)関連部分を紹介します。この判決では、原告らと被告との間に法律上の親子関係を認めることは現行法制度と整合しないから、本件各認知を認めることはできないとして原告らの請求をいずれも棄却しました。Yは性別は女性なので、父にはなれず、また子A・Bを出産していないので母にもなれず、血縁関係があるのに法律上親子関係は認められない不都合を認めています。控訴審・最高裁まで争われ判断が変更されていますので、別コンテンツで紹介します。

*********************************************

主   文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求

1 甲事件
 原告Aが被告の子であることを認知する。

2 乙事件
 原告Bが被告の子であることを認知する。

第2 事案の概要等
1 事案の概要

 本件は、いずれも提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた原告らが、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」という。)に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた被告に対し、認知を求める事案である。

2 前提事実(一件記録上明らかな事実及び証拠等により容易に認定することができる事実)
(1)原告ら母(昭和*年*生)は、*(省略)*、長女である原告*をもうけた。戸籍上、原告*の父の欄は空欄である。
 原告ら母と被告(昭和*年*生)は、*に婚姻をし、*(省略)*に離婚をした。
 被告は、特例法3条に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判を受け、同審判は、*(省略)*に確定した。
 原告ら母は、*(省略)*、二女である原告*をもうけた。戸籍上、原告*の父の欄は空欄である。
(以上、一件記録上明らかな事実)

(2)被告は、令和2年*、認知する父を被告、認知される子を原告A及び原告ら母の胎児とする認知の届出を*(省略)*(以下「*」という。)にした(以下、これらの認知を併せて「本件各認知」という。)ところ、*は、同年9月4日までに、本件各認知は無効であるとの理由で、認知届を不受理とした(甲2、3、弁論の全趣旨)。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前提事実に加え、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)被告は、性自認が女性で、身体的性が男性であるという、いわゆるトランスジェンダーの男性である(被告本人〔1頁〕、弁論の全趣旨)。

(2)原告ら母は、*(省略)*、被告の提供精子を用いた生殖補助医療により、長女である原告Aをもうけた。戸籍上、原告Aの父の欄は空欄である(前提事実(1)、甲1、被告本人〔2、3頁〕)。
 被告は、*(省略)*、性別適合手術を受け(被告本人〔2頁〕)、*(省略)*に原告ら母と婚姻をし、*(省略)*に離婚をした(前提事実(1))。
 被告は、特例法3条に基づき、女性への性別の取扱いの変更の審判を受け、同審判は、*(省略)*に確定した(前提事実(1))。
 原告ら母は、*(省略)*、被告の提供精子を用いた生殖補助医療により、二女である原告Bをもうけた。戸籍上、原告Bの父の欄は空欄である(前提事実(1)、甲1、被告本人〔2、3頁〕)。

(3)被告は、令和2年*、*に対し、本件各認知の届出をしたところ、*は、同年*までに、認知届を不受理とした(前提事実(2))。

2 本件各認知が認められるかどうかについて
(1)前提事実(4)によれば、被告は、原告らの生物学的父親であることが認められるから、原告らと被告には血縁上の親子関係があるといえる。また、被告は、原告らが被告の子であることを争わない。

 しかしながら、認知の訴えの制度は、血縁上の親子関係を前提に法律上の親子関係を形成するものではあるものの、民法が認知の訴えに出訴期間を定めたり(民法787条但書)、血縁上の親子関係がなくても嫡出の推定により法律上の親子関係を形成することを認めたりしている(民法772条、777条)ことなどを踏まえると、法律上の親子関係と血縁上の親子関係は必ずしも同義ではない。

また、法律上の親子関係は、民法における身分法秩序の中核をなすものであり、多数の関係者の利害に関わる社会一般の関心事でもあるという意味で公益的な性質を有しており、当事者間の自由な処分が認められるものではないから、血縁上の父が子の父となることを争っていないからといって、このことから、直ちに法律上の親子関係を成立させてよいということにもならない。そうすると、法律上の親子関係が認められるかどうかは、現行法制度との整合性など諸般の事情を考慮して決めざるを得ないのであって、法律上の親子関係を認めるのが相当であるといえない場合には認知の訴えを認めるべきではないと解される

(2)そこで、以下、現行法制度との整合性など諸般の事情を考慮して、原告らと被告との間で法律上の親子関係を認めることが相当であるといえない場合に当たるかどうかについて検討する。
ア 特例法4条1項は、性別の取扱いの変更の審判を受けた者は民法その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす旨を定めるところ、この規定によれば、特例法に基づき女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、以後、法令の規定の適用について女性とみなされることとなる。そして、民法は、「母」について、懐胎し出産することを前提とした規定を定めており(民法772条など)、「母」について、女性であることを前提にしていることが法文上から明らかであることからすれば、民法779条が規定する「父」は男性を、「母」は女性を、それぞれ前提としているものと解される。

 そうすると、特例法4条1項により法律上女性とみなされる者が、民法779条が規定する「父」に当たるとすることは、現行法制度と整合しないというべきである。

イ また、特例法4条1項の趣旨は、法の適用において、性別の取扱いの変更によって不利な扱いを受けることを防止するものであって、性別の取扱いの変更の審判を受けた者に対し、一般の男女に認められていないような特例を認める趣旨でないと解するのが相当である。そして、女性と子との間の法律上の親子関係(母子関係)は出産という事実関係によって当然に生ずるものと解されており(最高裁昭和35年(オ)第1189号同37年4月27日第二小法廷判決・民集16巻7号1247頁参照)、民法には、出生した子を懐胎、出産していない女性をもってその子の母とすべき趣旨をうかがわせる規定が見当たらないことからすれば、現行民法の解釈としては、出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず、その子を懐胎、出産していない女性との間には、母子関係の成立を認めることはできないと解される(最高裁平成18年(許)第47号同19年3月23日第二小法廷決定・民集61巻2号619頁参照)。

 そうすると、たとえ、血縁上の親子関係があるからといって、懐胎、出産していない男性を「母」として、「母」と子との間に母子関係を認めることは、女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者について、一般の女性とは異なる取扱いにより法律上の親子関係を認めることとなり、上述した特例法の趣旨に反することになる。
 以上によれば,特例法4条1項により法律上女性とみなされる者が、民法779条が規定する「母」に当たるとすることは、現行法制度と整合しないというべきである。

ウ これを本件についてみると、被告は、女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者であるから、民法779条が規定する「父」とはならず、また、原告らを懐胎、出産していないから、民法779条が規定する「母」ともならず、他に、現行法制度上、原告らと被告の間で法律上の親子関係を形成することを認めるべき根拠は見当たらないというべきである。

(3)なお、付言するに、原告*について被告の認知を認めることには、上記(2)ア及びイで説示した以外にも、次のような問題が存在する。
 すなわち、特例法3条1項4号は、性別の取扱いの変更を認める要件として、生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあることを定めているところ、この規定は、当該審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、親子関係等に関わる問題が生じ、社会に混乱を生じさせかねないことや、長きにわたって生物学的な性別に基づき男女の区別がされてきた中で急激な形での変化を避ける等の配慮に基づくものと解される(最高裁平成30年(ク)第269号同31年1月23日第二小法廷決定・裁判集民事261号1頁参照)。

ところが、前記認定事実によれば、被告は、原告ら母が原告*を懐胎し出産した当時、既に性別適合手術を終えて生殖機能を喪失していたにもかかわらず、凍結精子を用いることにより変更前の性別の生殖機能により子が生まれるのと同様の事態を生じさせたことになるから、原告ら母が原告*を出産するに至った経緯は、特例法3条1項4号の趣旨に整合しないものといわざるを得ず、この観点からも、原告*と被告との間に法律上の親子関係を認めるのは相当ではないというべきである。

(4)以上によれば、原告らと被告との間に法律上の親子関係を認めることは現行法制度と整合しないから、本件各認知を認めることはできないというべきである。

(5)原告らは、本件鑑定書によれば、原告らと被告が生物学上の親子関係にある旨の結果が出ており、被告は原告らの認知を望んでいながら認知することができない状態に置かれ、原告らも被告との間で法律上の親子関係を形成することができず、著しい不利益を被っている状態にある旨主張する。

 しかしながら、原告らと被告との間で血縁上の親子関係があり、被告が原告らとの親子関係の存在を争っていないとしても、現行法制度との整合性など諸般の事情を考慮して、法律上の親子関係を認めるのが相当であるといえない場合には認知の訴えを認めるべきではないと解すべきであることは前記(1)で説示したとおりであり、仮に原告らが著しい不利益を被っている状態にあるとしても、このことから直ちに、原告らと被告との法律上の親子関係が認められるものではない。
 したがって、この点に関する原告らの主張は採用することができない。

(6)原告らは、戸籍上の記載における「父」という概念が必ず法律上の「男」でなければならないという規定は民法にも戸籍法にも特例法にも存在せず、現行法においては、既に「女である父」や「男である母」の存在が認められており、「父」が絶対に法律上の「男」である必然性も、「母」が絶対に法律上の「女」である必然性も既に失われており、本件において、戸籍上、被告を原告らとの関係のみにおいて「父」と記載したところで、特例法4条2項の趣旨に反するものではなく、本件は、極めて例外的に生じるケースであり、これを肯定しても、戸籍実務その他の法的安定性を害するものではない旨主張する。

 なるほど、平成20年6月18日号外法律第70号によって特例法3条1項3号が「現に子がいないこと」から「現に未成年の子がいないこと」に改正されたことで、当該審判を受ける者に成人の子がいる場合には、性別の取扱いの変更が認められることとなり、この結果、現行法上、いわゆる「女である父」や「男である母」が存在するという事態が生じ得ることは原告らの主張するとおりである。

 しかしながら、このような事態が生じ得るのは、特例法4条2項により、同条1項の規定が性別の取扱いの変更の審判の前に生じた身分関係等に影響を及ぼさないとされ,当該身分関係等がそのまま引き継がれた結果に過ぎず、上記の特例法の改正は当該審判の後に「女である父」や「男である母」が存在する父子関係や母子関係を新たに創設することまで認める趣旨であると解することはできない。
 また、今後の社会情勢等に照らせば、生殖補助医療により生まれた子が女性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者に対して認知を求める事案が極めて例外的に生じるケースであるとは限らないというべきである。
 したがって、この点に関する原告らの主張は採用することができない。

(7)原告らは、母子間の法律上の親子関係の原則が分娩の事実により当然に発生するとしても、性別の取扱いの変更の審判を受けた者が「母」として認知することについては、母によって認知することができる場合も例外的に存在すると解するのが自然であり、本件でも、被告が「母」として原告らを認知することは妨げられない旨主張する。しかしながら、上記(2)で説示したとおり、現行民法の解釈によれば、出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず、その子を懐胎、出産していない女性との間には、母子関係の成立は認められない。
 したがって、この点に関する原告らの主張には理由がない。

3 結論
 以上によれば、原告らの請求は理由がないからいずれも棄却する。
東京家庭裁判所家事第6部
裁判長裁判官 小河原寧 裁判官 松本啓裕 裁判官 佐野東吾
以上:6,255文字
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R 7- 2- 6(木):先天性聴覚障害児童逸失利益を全労働者平均賃金基準で判断した高裁判決紹介
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○「自賠責後遺障害4級相当難聴者基礎収入について判断した地裁判決紹介」で、歩行中の被害者(先天性の両側感音性難聴があった当時11歳の女性)が交通事故で死亡したことによる損害賠償請求で逸失利益の算定基準収入として、賃金センサス平成30年の全労働者平均賃金497万2000円の85%に相当する422万6200円とするのが相当とした令和5年2月27日大阪地裁判決(自保ジャーナル2138号19頁、判時2572号71頁)を紹介していました。

○その控訴審令和7年1月20日大阪高裁判決(裁判所ウェブサイト)は、被害児童の聴覚の状態像を個別具体的に分析した上で、被害児童が就労可能年齢に達したときの労働能力の見通し、聴覚障害者をめぐる社会情勢・社会意識や職場環境の変化を踏まえた被害児童の就労の見通しを検討した結果、被害児童については、全労働者平均賃金を減額するべき程度に労働能力に制限があるとはいえないとの画期的結論を出しました。35頁に渡る長文判決ですが、結論のまとめ部分を紹介します。

○判決は、被害児童Aは、一般就労、即ち、障害の有無にかかわらず、健聴者と同じ職場で同じ勤務条件や労働環境のもとで同等に働くことが十分可能であったと考えられ、Aの逸失利益を算定する際の基礎収入については、平成30年の全労働者平均賃金を用いるのが相当であって、Aの基礎収入につき、この平均賃金から何らかの減額をする理由はないとしました。

「【速報】障害もった重機事故死亡女児の「逸失利益」が争われた裁判めぐり被告側が最高裁に“上告せず” 一審判決から一転…二審は「全労働者と同じ100%で計算」 判決確定へ」によると、被告側は4日の上告期限までに上告せず判決は確定しました。

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主   文
1 原判決中控訴人B及び控訴人Cに係る部分を次のとおり変更する。
(1)被控訴人らは、控訴人Bに対し、連帯して、2127万8101円及びうち1734万8101円に対する平成30年7月28日から、うち393万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被控訴人らは、控訴人Cに対し、連帯して、2127万8101円及びうち1734万8101円に対する平成30年7月28日から、うち393万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)控訴人B及び控訴人Cのその余の請求をいずれも棄却する。
(4)控訴人B及び控訴人Cと被控訴人らとの間に係る訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを4分し、その1を控訴人B及び控訴人Cの負担とし、その余は被控訴人らの負担とする。
(5)この判決の本項(1)(2)は、仮に執行することができる。
2 控訴人Dの控訴を棄却する。
3 控訴人Dに係る控訴費用は控訴人Dの負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人らは、控訴人Bに対し、連帯して、2982万8765円及びうち2412万8765円に対する平成30年7月28日から、うち570万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人らは、控訴人Cに対し、連帯して、2982万8765円及びうち2412万8765円に対する平成30年7月28日から、うち570万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被控訴人らは、控訴人Dに対し、連帯して、165万円及びこれに対する平成30年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実等


     (中略)

2 争点(1)(本件事故により生じたAの損害)について

     (中略)

3 控訴人らの補充的主張に対する判断その1-逸失利益(Aの損害項目(1))について
当裁判所は、控訴人らの控訴に基づき、Aの聴覚障害の状態像を解明するべく、教育心理学特別支援教育(特にろう・難聴関係担当)の専門家であるP大学のN教授(以下「証人N」という。なお、証人Nは意見書(甲35の1、甲82の1)の作成者でもある。)の証人尋問を実施し、その結果も踏まえて検討した結果、Aの労働能力は、一般に未成年者の逸失利益を認定するための基礎収入とされる労働者平均賃金を、当然に減額するべき程度の制限があったとはいえない状態であったと評価するのが相当であると判断し、この判断に基づき、逸失利益を認定した。その理由は以下のとおりである。

(1)認定事実
 前記1で補正の上引用した原判決の認定事実等のほか、証拠(甲35の1、甲82の1、甲105、証人N)及び後掲証拠によれば、Aの聴覚障害の状態像やコミュニケーション能力等について、以下の事実が認められ、これに反する証拠はない。
ア 聴覚障害の分析とAの障害部分

     (中略)

オ 小括
 以上の検討の結果、Aが就労可能年齢に達した時点において、まず、前記イのとおり、Aの中枢系能力は、平均的なレベルの健聴者の能力と遜色ない程度に備わり、聴力に関しても、性能が飛躍的に進歩した補聴器装用に併せて、一定程度不足する聴力の不足部分を手話や文字等の聴力の補助的手段で適切に補うことにより、支障なくコミュニケーションができたと見込まれるから、Aは、聴覚に関して、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるとはいえない状態にあるものと評価することができる。

また、前記ウのとおり、本件事故当時においても、将来、障害者法制の整備、テクノロジーの目覚ましい進歩、さらには聴覚障害者に対する教育、就労環境等の変化等、聴覚障害者をめぐる社会情勢や社会意識が著しく前進していく状況は予測可能であった。そして、現に、Aが就労可能年齢に達した現時点においては、障害の「社会モデル」の考え方が浸透し、事業主の法的義務となった社会的障壁を除去するためのささやかな合理的配慮の提供として、聴覚障害者に対し様々な補助的手段の併用が認められ、聴覚障害者がそれらを駆使して、健聴者とともに同じ条件で働く職場環境が少なからず構築されているといった、聴覚障害者をめぐる就労現場の実態があり、このような労働実態は、本件事故当時においても蓋然性をもって合理的に予測可能であったといってよい。

さらに、前記エのとおり、Aは、就労可能な年齢に達した時点において、本件支援学校等の教育によって社会的障壁を除去する意識や行動力を身に付け、聴力の補助的手段としてAが選択した方法を認めて協力してもらうなど、決して過重とはいえない合理的配慮がされる就労環境を獲得し、健聴者と同じ職場で同じ条件で働くことができたであろうことが、本件事故当時においても、これまた、蓋然性をもって合理的に予測することができたといえる。

 そうすると、Aは、就労可能年齢に達した時点において、生来の聴覚障害を自分自身及び職場(社会)全体で調整し、対応することができると合理的に予測できるから、損害の公平な分担の理念に照らして、全労働者平均賃金を基礎収入として認めることにつき顕著な妨げとなる事由はなく、健聴者と比べて、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるということはできない。

 このように、Aは、一般就労、即ち、障害の有無にかかわらず、健聴者と同じ職場で同じ勤務条件や労働環境のもとで同等に働くことが十分可能であったと考えられる。そうすると、Aの逸失利益を算定する際の基礎収入については、平成30年の全労働者平均賃金を用いるのが相当であって、Aの基礎収入につき、この平均賃金から何らかの減額をする理由はないといわなければならない。


     (中略)

(3)逸失利益の認容額
 そこで、Aの基礎収入を平成30年の全労働者平均賃金497万2000円、労働能力喪失率を100%、生活費控除率を45%とし、Aの労働能力喪失期間49年(死亡時11歳であったAが18歳に達してから67歳までの期間)に対応するライプニッツ係数12.912を用いて、Aの逸失利益を計算すると、下記のとおり、3530万9155円となる。
計算式 497万2000円×1×(1-0.45)×12.912=3530万9155円

     (中略)

6 Aの認容損害額
 以上によれば、Aの損害項目(1)ないし(9)の合計金額は5730万8068円であり、控訴人らが自賠責保険金として2400万1390円の支払を受けた平成30年7月27日までに生じた遅延損害金は138万9524円となる。
計算式 5730万8068円×0.05×177日÷365日=138万9524円
 そうすると、Aの損害項目(11)の既払金(自賠責保険金)2400万1390円を上記遅延損害金138万9524円に充当した残額を、上記損害額合計5730万8068円から控除すると、Aの損害項目(12)の自賠責保険金控除後の残額は、3469万6202円となる。
計算式 5730万8068円-(2400万1390円-138万9524円)=3469万6202円
 控訴人B及び控訴人Cの相続分は各2分の1であるから、控訴人B及び控訴人Cは、それぞれ1734万8101円の範囲でAの損害賠償請求権を取得したことになる。

7 争点(2)(本件事故により生じた控訴人ら固有の損害)について
(1)控訴人ら固有の慰謝料について
 控訴人らが指摘する事情(マスコミの報道等によって社会的耳目を集めたことによる負担も含む。)を踏まえても、控訴人B及び控訴人Cの固有の慰謝料はそれぞれ200万円、控訴人Dの固有の慰謝料は100万円とするのが相当であって、その理由は、原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の「3 争点(2)(本件事故により生じた控訴人ら固有の損害)について(1)」のとおりであるから、これを引用する(なお、上記各慰謝料額の減額変更を検討しないのは、前記5で説示したとおりである。)。

(2)弁護士費用
 本件事案の内容、審理経過、認容損害額その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、被控訴人らに賠償させるべき弁護士費用は、控訴人B及び控訴人Cにつきそれぞれ193万円、控訴人Dにつき10万円とするのが相当である。

第4 結論
 以上の次第で、控訴人らの請求は、被控訴人Eに対しては、民法709条に基づき、被控訴人会社に対しては、民法715条に基づき、控訴人B及び控訴人Cについて、損害賠償金各2127万8101円及びうち各1734万8101円に対する平成30年7月28日(自賠責保険金支払日の翌日)から、うち各393万円に対する平成30年2月1日(不法行為の日)から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度において、控訴人Dについて、損害賠償金110万円及びこれに対する平成30年2月1日(不法行為の日)から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度において理由があり、その余はいずれも理由がない。そうすると、本件控訴のうち控訴人B及び控訴人Cの各請求に係る部分については、これと一部結論を異にする原判決は一部相当でなく、控訴人B及び控訴人Cの本件控訴の一部は理由があるから、原判決のうち控訴人B及び控訴人Cに係る部分を一部変更し、控訴人Dの控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。大阪高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官 徳岡由美子 裁判官 住山真一郎 裁判官 新宮智之

以上:4,774文字
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R 7- 2- 5(水):他主占有者の相続人に独自占有に基づく時効取得を認めた最高裁判決紹介2
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○「他主占有者の相続人に独自占有に基づく時効取得を認めた最高裁判決紹介」の続きで、その根拠となった昭和46年11月30日最高裁判決(判タ 271号179頁、判時652号37頁)全文を紹介します。

○相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによつて占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであつたときでも、相続人は民法185条にいう「新権原」により所有の意思をもつて占有を始めたものというべきであるとしました。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○の上告理由について。
 所論の事実関係に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できないものではなく、右認定判断の過程に所論の違法を認めることはできない。

 そして、原審の確定した事実によれば、訴外奥田熈次は、かねて兄である被上告人から、その所有の本件土地建物の管理を委託されたため、本件建物の南半分に居住し、本件土地および本件建物の北半分の賃料を受領していたところ、同訴外人は昭和24年6月15日死亡し、上告人らが相続人となり、その後も、同訴外人の妻上告人片田さき子において本件建物の南半分に居住するとともに、本件土地および本件建物の北半分の賃料を受領してこれを取得しており、被上告人もこの事実を了知していたというのである。しかも、上告人奥田伊津子および同浜口奈美が、右訴外人死亡当時それぞれ6才および4才の幼女にすぎず、上告人片田はその母であり親権者であつて、上告人奥田および同浜口も上告人片田とともに本件建物の南半分に居住していたことは当事者間に争いがない。

 以上の事実関係のもとにおいては、上告人らは、右訴外人の死亡により、本件土地建物に対する同人の占有を相続により承継したばかりでなく,新たに本件土地建物を事実上支配することによりこれに対する占有を開始したものというべく、したがつて、かりに上告人らに所有の意思があるとみられる場合においては、上告人らは、右訴外人の死亡後民法185条にいう「新権原ニ因リ」本件土地建物の自主占有をするに至つたものと解するのを相当とする。これと見解を異にする原審の判断は違法というべきである。

 しかしながら、他方、原審の確定した事実によれば、上告人片田が前記の賃料を取得したのは、被上告人から右訴外人が本件土地建物の管理を委託された関係もあり、同人の遺族として生活の援助を受けるという趣旨で特に許されたためであり、右上告人は昭和32年以降同37年まで被上告人に本件家屋の南半分の家賃を支払つており、上告人らが右訴外人の死亡後本件土地建物を占有するにつき所有の意思を有していたとはいえないというのであるから、上告人らは自己の占有のみを主張しても、本件土地建物を、時効により取得することができないものといわざるをえない。したがつて、上告人らの取得時効に関する右主張を排斥した原審の判断は、結局相当であり、原判決の前記の違法はその結論に影響を及ぼすものではない。

 その余の点については、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 よつて、民訴法401条、95条、89条、93条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 松本正雄 裁判官 関根小郷)
以上:1,485文字
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