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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 2- 4- 2(木):2020年04月01日発行第266号”プラトン弁護士の実務”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和2年4月1日発行第266号「プラトン弁護士の実務」をお届けします。

○ギリシャ哲学というと、ソクラテス・プラトン・アリストテレスなんて名前だけは知っていますが、その哲学の内容なんて全く興味がなく、全く知りません(^^;)。「プラトン先生は哲学者としては凄い人ですが、実務家としては、全く活躍していません。」なんて言い切れるまで、勉強している大山先生にはただただ驚きです。

○ウィキペディアでのプラトンの解説を見ると、青年期はアテナイを代表するレスラーとしても活躍し、正義・徳・善を理知的かつ執拗に追求していく哲学者(愛知者)としての主知主義的な姿勢を学び、国家公共に携わる政治家を目指していたと説明されています。

○大山先生は、多くの弁護士はプラトン的とされますが、司法改革以前の弁護士少数時代に比べると、人権至上主義に凝り固まった弁護士の割合は少なくなっているようにも感じます。俺たちは世の指導者だとのエリート意識の塊のような弁護士も多かったのですが、司法改革の成果で、その割合も少なくなっています。エリート意識を持ちたくても持てない状況になりましたから(^^;)。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

プラトン弁護士の実務


プラトンは哲学者の代名詞みたいな人です。2500年も前の人ですが、師であるソクラテスを主人公にした哲学書を沢山残しています。ソクラテスは本を1冊も残してませんから、「ソクラテスがプラトンを作り、プラトンがソクラテスを作った。」なんて言われているわけです。

いま読んでも、とても面白い。本の中で、プラトン描くソクラテスが、自信たっぷりな人の見解をコテンパンに論破していきます。「哲学も良いけど、いい年した大人になれば、しっかり働け。」なんて正論?も、プラトン先生にかかると、ボロクソにやられちゃうんです。

プラトンの哲学書の中では、「国家」なんか有名です。「正義」とは何かについて考察している本ですが、ある人が、「正義とは強者の利益だ!」と持論を展開します。「お前みたいな世間知らずのバカに、本当の真理を教えてやる。」みたいな感じで話し出すんです。プラトン先生、こういう「切られ役」の人を憎々しく描写するのが得意です。現代でも、「正義が勝つ」のか「勝ったのが正義」なのか、争いがありますよね。でも、プラトン先生にかかれば、この程度の意見は、たちどころに「論破」されてしまいます。

これを受けて、今度はプラトンのお弟子さんが問題提起します。「正義が強者の利益だというのが間違いなのは分かりました。しかし、仮に姿を完全に消すことのできる指輪があった場合、それを手に入れた人はあらゆる不正を行っても罰せられず、国家権力さえも手に入れられます。そうだとすれば、そもそも正義とは何なのでしょうか?」という質問です。

これに対する回答を、プラトン描くソクラテスが検討していくのが、「国家」の内容となります。そこで、散々検討した後で、プラトンが考える、正義の国家とは何かといいますと、「真理を学んだ哲人王による統治」なんだそうです。「真理」は絶対のものですから、哲人王に成る人は、「真理」に対する疑いを持つことも許されないのです。なんか、凄く不気味な国家になっちゃいそうで心配です。実務的観点から、こんな国家が本当に運営できるのかという疑問もあるのです。

プラトン先生は哲学者としては凄い人ですが、実務家としては、全く活躍していません。それどころか、現実の政治の話になると、当時の基準でも酷い人権侵害国家を持ち上げたり、独裁者がでるとホイホイ付いて行こうとしたりします。「せ、先生の英知はどこに行ったんですか?」と言いたくなるような惨状ですね。

でも、エライ学者先生なんかに、こういう人結構いるんですね。ドイツの哲学者で、「ヒットラー万歳」と心から言ってた人もいます。日本の法学者で、スターリン、毛沢東、金日成が政敵を粛清する度に、涙を流して喜んでた先生もいました。こんな凄い学者達でなくても、良い大学を出て優秀なはずなのに、実務の世界に出たとたん、ピントがずれていて役に立たない人って本当に居ます。

ということで弁護士の話です。私は、多くの弁護士の思想は、とてもプラトン的だと思っています。哲人王の「真理」にあたるのが、弁護士にとっての「憲法」「人権」なんですね。絶対の真理だから、一言一句変えることは許されません。その真理を学んだ「哲人」みたいな法律家が、世の中を導いていくのだと本気で信じている弁護士はかなりいます。それはそれで問題ですが、弁護士の場合、プラトンみたいに、弁も立つし、法律論もしっかりしている一方で、実務能力に欠けていて、プラトン描くソクラテスみたいに、相手方やお客様を「論破」して、怒らせてしまう人が相当数いることも大問題なのです。

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◇ 弁護士より一言

哲学入門みたいなのを読んでいた中学生の息子が、「プラトンって知っている?」なんて聞いてきます。「そのくらい知っているよ。」と答えますと、「じゃあ、カントって誰だ?」なんて追及してくるんです。私が答えると、息子も意地になって次から次へ聞いてきます。。「じゃあ、ポスト構造主義って知ってる?」そ、そんな難しいこと知ってるわけないやろ!プラトンの描く「切られ役」の人みたいに、「しっかり勉強しなさい!」と言ってしまったのでした。。。
以上:2,337文字
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R 2- 4- 1(水):令和2年4月1日から民法等改正法が施行されます-重要条文備忘録1
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○「120年ぶり民法大改正備忘録-週間ダイヤモンドから」の続きです。
本日令和2年4月1日から120年ぶりの大改正された民法が施行されます。残念ながら私が利用している電子政府の総合窓口e-Gov掲載民法は、現時点では、「データベースに未反映の改正がある場合があります。」と記載の通り、改正法が反映されていません。

○以下、「120年ぶり民法大改正備忘録-週間ダイヤモンドから」に記載した重要改正部分の正確な条文の備忘録です。以下は、膨大な改正条文のホンの一部です。重要改正条文は結構な量があり、覚えるのが大変です。

○法定利率が現行5%から3%に引き下げ変動制へ
404条(法定利率)
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0・1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。


○個人保証に制限-但し、制限例外で骨抜き
第446条(保証人の責任等)
 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

第448条(保証人の負担が主たる債務より重い場合)
 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。

第二目 個人根保証契約
465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等)

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

第三目 事業に係る債務についての保証契約の特則
465条の6(公正証書の作成と保証の効力)
(保証人が法人である貸金等債務の根保証契約の求償権)

事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2 前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
(略)


○賃貸借契約敷金-明確に定義して、経年劣化原状回復義務無しを規定
621条(賃借人の原状回復義務)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

第四款 敷金
622条の2
賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一号 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二号 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2項 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。


○消滅時効-原則5年に統一
166条(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一号 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二号 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

167条(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第二号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。

168条(定期金債権の消滅時効)
定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一号 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
二号 前号に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。
2項 定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

以上:2,857文字
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R 2- 3-31(火):輸血用血清の給血者に対する医師の問診義務についての最高裁判決紹介
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○給血者がいわゆる職業的給血者で、血清反応陰性の検査証明書を持参し、健康診断および血液検査を経たことを証する血液斡旋所の会員証を所持していた場合でも、同人が医師から問われないためその後梅毒感染の危険のあつたことを言わなかつたにすぎないような場合、医師が、単に「身体は丈夫か」と尋ねただけで、梅毒感染の危険の有無を推知するに足る問診をせずに同人から採血して患者に輸血し、その患者に給血者の罹患していた梅毒を感染させるに至つたときは、同医師は右患者の梅毒感染につき過失の責を免れないとした昭和36年2月16日最高裁判決(判例タイムズ115号76頁)全文を紹介します。  

○国立病院の医師が血清検査証明書等を持参した給血者に対して、たんに「身体は丈夫か」ときいただけで、それ以上の検査をしなかつたため、輸血を受けた婦人がばい毒に感染してしまつたというので、国に不法行為に因る損害賠償義務をみとめた原審昭和31年9月17日東京高裁判決(判タ63号55頁)の上告審です。

○判旨は、医師が給血者に対し問診を怠つたという点に過失ありとする原審の見解を是認するもので、所定の証明書等を持参したものに対しては問診を省略するのが医師の慣行であるとの国の主張に対しては、仮にそのような慣行が行われていたとしても、注意義務存否の法的判断には影響がない、とし、また、仮に問診したとしても真実を述べなかつたであろう、という所論に対しては、必ずしもそう断定することはできないので、本件は必要な問診をしたのになおかつ結果の発生を予見し得なかつたというのではなく、相当の問診をすれば予見し得たであろうと推測されるのにそれをしないで、そのため不幸な事態をひき起すにいたつたものであるから、医師の注意義務違背の責を負うべきは当然である、としました。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告理由について。
 しかし、医師が直接診察を受ける者の身体自体から知覚し得る以外の症状その他判断の資料となるべき事項は、その正確性からいつて、血清反応検査、視診、触診、聴診等に対し従属的であるにもせよ、問診により外ない場合もあるのであるから、原判決が本件において、たとい給血者が、信頼するに足る血清反応陰性の検査証明書を持参し、健康診断及び血液検査を経たことを証する血液斡旋所の会員証を所持する場合であつても、これらによつて直ちに輸血による梅毒感染の危険なしと速断することができず、また陰性又は潜伏期間中の梅毒につき、現在、確定的な診断を下すに足る利用可能な科学的方法がないとされている以上、たとい従属的であるにもせよ、梅毒感染の危険の有無について最もよく了知している給血者自身に対し、梅毒感染の危険の有無を推知するに足る事項を診問し、その危険を確かめた上、事情の許すかぎり(本件の場合は、一刻を争うほど緊急の必要に迫られてはいなかつた)そのような危険がないと認められる給血者から輸血すべきであり、それが医師としての当然の注意義務であるとした判断は、その確定した事実関係の下において正当といわなければならない。

 所論は、医師の間では従来、給血者が右のような証明書、会員証等を持参するときは、問診を省略する慣行が行なわれていたから、A医師が右の場合に処し、これを省略したとしても注意義務懈怠の責はない旨主張するが、注意義務の存否は、もともと法的判断によつて決定さるべき事項であつて、仮に所論のような慣行が行なわれていたとしても、それは唯だ過失の軽重及びその度合を判定するについて参酌さるべき事項であるにとどまり、そのことの故に直ちに注意義務が否定さるべきいわれはない。

 所論は、仮に医師に右の如き問診の注意義務があるとしても、給血を以つて職業とする者、ことに性病感染の危険をもつ者に対し、性病感染の危険の有無につき発問してみても、それらの者から真実の答述を期待するが如きことは、統計的にも不可能であるから、かかる者に対してもまた問診の義務ありとする原判示は、実験則ないし条理に反して医師に対し不当の注意義務を課するものである旨主張するが、たとい所論のような職業的給血者であつても、職業的給血者であるというだけで直ちに、なんらの個人差も例外も認めず、常に悉く真実を述べないと速断する所論には、にわかに左祖することはできない。

 現に本件給血者Bは、職業的給血者ではあつたが、原判決及びその引用する第一審判決の確定した事実によれば、当時別段給血によつて生活の資を得なければならぬ事情にはなかつたというのであり、また梅毒感染の危険の有無についても、問われなかつたから答えなかつたに過ぎないというのであるから、これに携わつたA医師が、懇ろに同人に対し、真実の答述をなさしめるように誘導し、具体的かつ詳細な問診をなせば、同人の血液に梅毒感染の危険あることを推知し得べき結果を得られなかつたとは断言し得ない。

 されば原判決がこの点に関し、「一面職業的給血者と雖も、医師がかかる危険の有無の判断資料となるべき事項について具体的に詳細な問診をなせば、一々答える必要があり、質問に対する反応を見る機会も多く、その心理的影響によつて真実を述べる場合のあることも相当予想される」旨判断したのは、その確定された事情の下において正当とすべく、所論の違法があるとは認められない。所論はひつきよう抽象的にこの問題を論定しようとするものであるから採ることができない。

 所論はまた、仮に担当医師に問診の義務があるとしても、この原判旨のような問診は、医師に過度の注意義務を課するものである旨主張するが、いやしくも人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照し、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのは、已むを得ないところといわざるを得ない。

 然るに本件の場合は、A医師が、医師として必要な問診をしたに拘らず、なおかつ結果の発生を予見し得なかつたというのではなく、相当の問診をすれば結果の発生を予見し得たであろうと推測されるのに、敢てそれをなさず、ただ単に「からだは丈夫か」と尋ねただけで直ちに輸血を行ない、以つて本件の如き事態をひき起すに至つたというのであるから、原判決が医師としての業務に照し、注意義務違背による過失の責ありとしたのは相当であり、所論違法のかどありとは認められない。
 よつて、民訴396条、384条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 高木常七、裁判官 斎藤悠輔、裁判官 入江俊郎、裁判官 下飯坂潤夫


以上:2,794文字
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R 2- 3-30(月):免疫学研究者によるやさしいコロナウィルス解説動画紹介2
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○「免疫学研究者によるやさしいコロナウィルス解説動画紹介1」の続きで後半です。
なお、仙台での新型コロナウィルス感染者は4名になりました。

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新型コロナ 仙台市で新たに2人確認 青葉区一番町のパブで秋田の感染者に接触か
河北新報2020年03月29日日曜日

仙台市は29日、いずれも市内在住で、外国籍の30代私立学校女性教諭と日本人の30代男性会社員が新型コロナウイルスに感染したと発表した。市内で確認された感染者は計3人、宮城県内では計4人となった。
市によると、2人は20日午後7~11時ごろ、青葉区一番町の英国風パブ「HUB仙台一番町四丁目店」で飲食。27日に感染が確認された由利本荘市に住む外国人指導助手(ALT)2人を含む8人のグループと5分程度立ち話をした。
女性は21日午後9時から22日午前1時にも、ALTらと同店で飲食をした。市は感染拡大防止の観点から、同店に営業休止を依頼している。

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やさしいコロナウイルス解説⑤ーヒトーヒト感染の成立ー

やさしいコロナウイルス解説⑥ーウイルスは体の外でどれくらい丈夫なの?(1)ー

やさしいコロナウイルス解説⑦ーウイルスは体の外でどれくらい丈夫なの?(2)ー

やさしいコロナウイルス解説⑧ーヒトーヒト感染の拡大ー
以上:609文字
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R 2- 3-29(日):免疫学研究者によるやさしいコロナウィルス解説動画紹介1
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○山中伸弥教授による新型コロナウィルス解説HP「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」「動画で学ぶ」に「スタンフォード大学中内研究室の新妻耕太さんが、奥様と共に作られている動画集です。ウイルスの基本から、専門用語無しで解説されています。」との紹介がありました。

○その動画の案内は以下の通りです。
2020/03/06 に公開
現役の免疫学の研究者が、一般の人でも理解できるよう専門用語を使わずに生物学の基礎を解説しています。
中学生くらいの方でもわかるように心がけて作成しました。
第一回はウイルスとはどんなものか?に関する解説です。
アドバイス、感想、リクエストよろしくお願いいたします。
新妻免疫塾はスタンフォード大学で免疫学を研究する新妻が、生物学のおもしろさをやさしく伝えるチャンネルです。
妻のLucy Xuがこのチャンネルのプロデューサーです!
◆プロフィール◆
筑波大学にて人間生物学博士取得。免疫受容体に関する研究を行う。
現スタンフォード大学博士研究員。免疫学、幹細胞学を研究。
以前は高校の理科教員を目指しており、教育実習と学習塾でのアルバイト講師経験があります。
塾では主に小・中学生を指導していました。
○素人にも大変分かり易く解説されており、参考になります。以下、4動画紹介します。

やさしいコロナウイルス解説①ーそもそもウイルスって何?ー


やさしいコロナウイルス解説②ーウイルスはどうやって細胞に潜入するの?ー


やさしいコロナウイルス解説③ーウイルスは細胞内でどう増えるの?ー


やさしいコロナウイルス解説④ーウイルスの体内増殖と体外への旅立ちー
以上:669文字
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R 2- 3-28(土):6年2ヶ月近く使用継続した”LaVie Z LZ750/NSB”使用断念
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○「NEC-NOTEPC”LaVie Z LZ750/NSB”バッテリー故障で使えずどうするか」の続きです。
平成26年1月30日、NECパーソナルコンピュータ「LaVie Z LZ750/NSB」を購入し、以来、令和2年3月21日まで、6年2ヶ月近くにわたって使用を継続してきました。「13.3型液晶搭載ノートPCとして世界最軽量となる約795g」と厚さ14.9㎜が一番のお気に入りで、使用丸6年経過後も、兎に角、使えるだけ使っていこうと思っていました。

○ところが、令和2年3月22日(日)、石巻法律相談センター担当で、午前9時25分発仙石東北ライン特別快速電車に乗って石巻市に向かう途中で「LaVie Z LZ750/NSB」を開いて使おうとしたら、電源は入るも起動中の表示が継続するだけで立ち上がりません。スイッチを入れ直して何度も起動を試みるも、結局立ち上がらず、諦めて、法律相談担当を終えて、仙台駅に帰ったとき、ヨドバシ仙台に持参して修理をお願いしました。

○令和2年3月27日、ようやく、ヨドバシ修理センターから電話が入り、基盤(マザーボード)が故障しており、修理するため基盤を交換する必要があり、OSを入れ直すのでデータは全て削除し、再度、設定をゼロからし直す必要があります、修理代金は部品代だけ約4万3000円ですとの回答が来ました。

○6年2ヶ月近く使用を継続したこの「LaVie Z LZ750/NSB」、これまでヨドバシ修理センターにはバッテリー故障、ディスプレイ故障、キーボード故障2回で4回修理のお世話になっており、令和元年1月30日で5年延長保証は経過し、自費修理になります。キーボード故障が2回あり、令和2年1月に3万円程かけて修理したばかりでした。

○そこで6年2ヶ月の使用を持って「LaVie Z LZ750/NSB」は諦めることにしました。メーカーの部品供給保証は残り1年しかなく、おそらく今後も老朽化での故障が出てくると思われるからです。平成2年10月に初めてNECノートパソコンを購入した私は、その後、少なくとも3年おきにはノートパソコンを買い替えており、6年以上も同じノートパソコンを使い続けたのは、これが初めてであり、良く持ったものです。それだけのお気に入りでした。

○今後、「LaVie Z LZ750/NSB」の後継機を探さなければなりません。兎に角、画面サイズ13.3インチ以上で、重さ800g程度、厚さ1.5㎜以内のノートパソコンが現在販売されているのか、本日、ヨドバシ仙台に探しに行きます。
以上:1,061文字
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R 2- 3-27(金):コロナウイルス対策についてのメルケル独首相の演説紹介
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○令和2年3月18日に行われたコロナウイルス対策についてのメルケル独首相の演説が、感動的だと言うことで話題になっています。その日本語訳が、ネットのあちこちで紹介されていますが、私の備忘録として紹介します。

○宮城県でも令和2年3月26日新型コロナ感染2例目が出ました。25日に都内で感染が確認された知人が2月下旬から今月13日までの間、女性の自宅を複数回訪れていたことが感染に繋がったようです。知人は女性宅を訪れる際、都内から東北新幹線を利用し、JR仙台駅から女性宅までの経路は不明で、県は経路が分かり次第、公表する方針を示したとされていますが、コロナウィルスはあちこちに蔓延し、無症状・無自覚のコロナウィルス感染者があちこちにいると思われます。それを前提としたメルケル首相の演説です。

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親愛なる国民の皆様

コロナウイルスは現在わが国の生活を劇的に変化させています。私たちが考える日常や公的生活、社会的な付き合い ― こうしたものすべてがかつてないほど試されています。
何百万人という方々が出勤できず、子どもたちは学校あるいはまた保育所に行けず、劇場や映画館やお店は閉まっています。そして何よりも困難なことはおそらく、いつもなら当たり前の触れ合いがなくなっているということでしょう。もちろんこのような状況で私たちはみな、これからどうなるのか疑問や心配事でいっぱいです。

私は今日このような通常とは違った方法で皆様に話しかけています。それは、この状況で連邦首相としての私を、そして連邦政府の同僚たちを何が導いているのかを皆様にお伝えしたいからです。開かれた民主主義に必要なことは、私たちが政治的決断を透明にし、説明すること、私たちの行動の根拠をできる限り示して、それを伝達することで、理解を得られるようにすることです。

もし、市民の皆さんがこの課題を自分の課題として理解すれば、私たちはこれを乗り越えられると固く信じています。このため次のことを言わせてください。
事態は深刻です。あなたも真剣に考えてください。東西ドイツ統一以来、いいえ、第二次世界大戦以来、これほど市民による一致団結した行動が重要になるような課題がわが国に降りかかってきたことはありませんでした。

私はここで、現在のエピデミックの状況、連邦政府および各省庁がわが国のすべての人を守り、経済的、社会的、文化的な損害を押さえるための様々な措置を説明したいと思います。しかし、私は、あなたがた一人一人が必要とされている理由と、一人一人がどのような貢献をできるかについてもお伝えしたいと思います。

エピデミックについてですが、私がここで言うことはすべて、連邦政府とロバート・コッホ研究所の専門家やその他の学者およびウイルス学者との継続審議から得られた所見です。世界中で懸命に研究が進められていますが、コロナウイルスに対する治療法もワクチンもまだありません。

この状況が続く限り、唯一できることは、ウイルスの拡散スピードを緩和し、数か月にわたって引き延ばすことで時間を稼ぐことです。これが私たちのすべての行動の指針です。研究者がクスリとワクチンを開発するための時間です。また、発症した人ができる限りベストな条件で治療を受けられるようにするための時間でもあります。

ドイツは素晴らしい医療システムを持っています。もしかしたら世界最高のシステムのひとつかもしれません。そのことが私たちに希望を与えています。しかし、わが国の病院も、コロナ感染の症状がひどい患者が短期間に多数入院してきたとしたら、完全に許容量を超えてしまうことでしょう。

これは統計の抽象的な数字だけの話ではありません。お父さんであり、おじいさんであり、お母さんであり、おばあさんであり、パートナーであり、要するに生きた人たちの話です。そして私たちは、どの命もどの人も重要とする共同体です。

私は、この機会にまず、医師として介護サービスやその他の機能でわが国の病院を始めとする医療施設で働いている方すべてに言葉を贈りたいと思います。あなた方は私たちのためにこの戦いの最前線に立っています。あなた方は最初に病人を、そして、感染の経過が場合によってどれだけ重篤なものかを目の当たりにしています。
そして毎日改めて仕事に向かい、人のために尽くしています。あなた方の仕事は偉大です。そのことに私は心から感謝します。

さて、重要なのは、ドイツ国内のウイルスの拡散スピードを緩やかにすることです。そして、その際、これが重要ですが、1つのことに賭けなければなりません。それは、公的生活を可能な限り制限することです。もちろん理性と判断力を持ってです。国は引き続き機能し、もちろん供給も引き続き確保されることになるからです。私たちはできる限り多くの経済活動を維持するつもりです。

しかし、人を危険にさらす可能性のあるものすべて、個人を、また共同体を脅かす可能性のあるものすべてを今減らす必要があります。人から人への感染リスクを可能な限り抑える必要があります。
今でもすでに制限が劇的であることは承知しています。イベント、見本市、コンサートは中止、とりあえず学校も大学も保育所も閉鎖され、遊び場でのお遊びも禁止です。
連邦政府と各州が合意した閉鎖措置が、私たちの生活に、そして民主主義的な自己認識にどれだけ厳しく介入するか、私は承知しています。わが連邦共和国ではこうした制限はいまだかつてありませんでした。
 
私は保証します。旅行および移動の自由が苦労して勝ち取った権利であるという私のようなものにとっては、このような制限は絶対的に必要な場合のみ正当化されるものです。そうしたことは民主主義社会において決して軽々しく、一時的であっても決められるべきではありません。しかし、それは今、命を救うために不可欠なのです。

このため、国境検査の厳格化と重要な隣国数か国への入国制限令が今週初めから発効しています。
経済全体にとって、大企業も中小企業も、商店やレストラン、フリーランサーにとっても同様に、今は非常に困難な状況です。
今後何週間かはいっそう困難になるでしょう。私は皆様に約束します。連邦政府は、経済的影響を緩和し、特に雇用を守るために可能なことをすべて行います。
わが国の経営者も被雇用者もこの難しい試練を乗り越えられるよう、連邦政府は、必要なものをすべて投入する能力があり、またそれを実行に移す予定です。

また、皆様は、食料品供給が常時確保されること、たとえ1日棚が空になったとしても補充されること信じて安心してください。スーパーに行くすべての方にお伝えしたいのですが、備蓄は意味があります。ちなみにそれはいつでも意味のあるものでした。けれども限度をわきまえてください。何かがもう二度と入手できないかのような買い占めは無意味ですし、つまるところ完全に連帯意識に欠けた行動です。

ここで、普段あまり感謝されることのない人たちにもお礼を言わせてください。このような状況下で日々スーパーのレジに座っている方、商品棚を補充している方は、現在ある中でも最も困難な仕事のひとつを担っています。同胞のために尽力し、言葉通りの意味でお店の営業を維持してくださりありがとうございます。

さて、今日私にとって最も緊急性の高いものについて申し上げます。私たちがウイルスの速すぎる拡散を阻止する効果的な手段を投入しなければ、あらゆる国の施策が無駄になってしまうでしょう。その手段とは私たち自身です。私たちの誰もが同じようにウイルスにかかる可能性があるように、今誰もが皆協力する必要があります。まず第一の協力は、今日何が重要なのかについて真剣に考えることです。パニックに陥らず、しかし、自分にはあまり関係がないなどと一瞬たりとも考えないことです。不要な人など誰もいません。私たち全員の力が必要なのです。

私たちがどれだけ脆弱であるか、どれだけ他の人の思いやりのある行動に依存しているか、それをエピデミックは私たちに教えます。また、それはつまり、どれだけ私たちが力を合わせて行動することで自分たち自身を守り、お互いに力づけることができるかということでもあります。
一人一人の行動が大切なのです。私たちは、ウイルスの拡散をただ受け入れるしかない運命であるわけではありません。私たちには対抗策があります。つまり、思いやりからお互いに距離を取ることです。

ウィルス学者の助言は明確です。握手はもうしない、頻繁によく手を洗う、最低でも1.5メートル人との距離を取る、特にお年寄りは感染の危険性が高いのでほとんど接触しないのがベスト、ということです。
こうした要求がどれだけ難しいことか私は承知しています。緊急事態の時こそお互いに近くにいたいと思うものです。私たちは好意を身体的な近さやスキンシップとして理解しています。けれども、残念ながら現在はその逆が正しいのです。これはみんなが本当に理解しなければなりません。今は、距離だけが思いやりの表現なのです。

よかれと思ってする訪問や、不必要な旅行、こうしたことすべてが感染を意味することがあるため、現在は本当に控えるべきです。専門家がこう言うのには理由があります。おじいちゃんおばあちゃんと孫は今一緒にいてはいけない、と。
不必要な接触を避けることで、病院で日々増え続ける感染者の世話をしているすべての方々を助けることになります。こうして命を救うのです。多くの人にとってこれはきついことでしょう。誰も一人にしないこと、声かけと希望が必要な方たちの世話をすることも重要になってきます。私たちは家族として、また社会として別の相互扶助の形を見つけるでしょう。
今でもすでに、ウイルスとその社会的影響に対抗する創造的な形態が出てきています。今でもすでに、おじいちゃんおばあちゃんがさみしくないようにポッドキャストをするお孫さんたちがいます。

私たちは皆、好意と友情を示す別の方法を見つけなければなりません。スカイプや電話、イーメール、あるいはまた手紙を書くなど。郵便は配達されるのですから。自分で買い物に行けないお年寄りのための近所の助け合いの素晴らしい例も今話題になっています。まだまだ多くの可能性があると 私は確信しています。私たちがお互いに一人にさせないことを社会として示すことになるでしょう。

皆様にお願いします。今後有効となる規則を遵守してください。私たちは政府として、何が修正できるか、また、何がまだ必要なのかを常に新たに審議します。
状況は刻々と変わりますし、私たちはその中で学習能力を維持し、いつでも考え直し、他の手段で対応できるようにします。そうなればそれもご説明します。
このため、皆様にお願いします。噂を信じないでください。公的機関による通達のみを信じてください。通達は多くの言語にも翻訳されます。

私たちは民主主義社会です。私たちは強制ではなく、知識の共有と協力によって生きています。これは歴史的な課題であり、力を合わせることでしか乗り越えられません。
私たちがこの危機を乗り越えられるということには、私はまったく疑いを持っていません。けれども、犠牲者が何人出るのか。どれだけ多くの愛する人たちを亡くすことになるのか。それは大部分私たち自身にかかっています。私たちは今、一致団結して対処できます。現在の制限を受け止め、お互いに協力し合うことができます。

この状況は深刻であり、まだ見通しが立っていません。 それはつまり、一人一人がどれだけきちんと規則を守って実行に移すかということにも事態が左右されるということです。
たとえ今まで一度もこのようなことを経験したことがなくても、私たちは、思いやりを持って理性的に行動し、それによって命を救うことを示さなければなりません。それは、一人一人例外なく、つまり私たち全員にかかっているのです。
皆様、ご自愛ください、そして愛する人たちを守ってください。ありがとうございました。
以上:4,927文字
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R 2- 3-26(木):十中八九の救命可能性で致死との因果関係を認めた最高裁判決紹介
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○「訴訟上の証明の性質について歴史的証明とした最高裁判決紹介」の続きで、刑事事件ですが、救急医療を要請しなかった不作為と被害者の死の結果との間、すなわち遺棄と致死との間の因果関係が争われた事件で、救急医療を要請すれば十中八九救命の可能性があったことを根拠に因果関係を認めた平成元年12月15日最高裁決定(判タ718号77頁、判時1337号149頁)全文を紹介します。

○事案は、暴力団構成員の被告人が、被害者(当時13才の女性)をホテルに連れ込んで、覚せい剤を注射したところ、同女が苦しみ出し、ホテルの窓から飛び下りようとするなど錯乱状態に陥ったのに、覚せい剤使用の事実の発覚をおそれ、同女をそのままに放置して、ホテルを立ち去り、その後ほどなくして、同女は、同室で覚せい剤による急性心不全により死亡したものです。

○一審昭和61年1月26日札幌地裁判決(高等裁判所刑事判例集42巻1号52頁)は、被害者が錯乱状態に陥った時点で救急車を呼んでいれば、十中八九救命できたという救急医療と法医学の各専門家の証言があるところ、現実の救命可能性が100パーセントであったとはいえないとして、遺棄行為と死の結果との間に因果関係を否定し、致死については無罪としました。

○控訴審平成元年1月26日札幌高裁(高刑集42巻1号1頁)は、救命することが十分可能であったのであり、専門家の証言が100パーセント確実であったとしないのは事実評価の科学的正確性を尊ぶ医学者の立場として当然であるが、専門家が100パーセントの救命の可能性を認めなかったからといって、そのことが直ちに刑法上の因果関係を否定すべきことには連ならないというべきであるとして、因果関係を肯定し、保護者遺棄致死罪の成立を認めました。

○被告人が上告し、最高裁決定は、被告人らによって注射された覚せい剤により被害者の女性が錯乱状態に陥った時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女の救命が合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められる本件事案の下では、このような措置をとらなかった被告人の不作為と同女の死亡との間には因果関係があるとしました。

○期待された作為がなされていれば結果が生じなかったであろうといえる場合に、不作為と結果との因果関係(条件関係)が認められるというのが通説です。この点が合理的な疑いを超える程度に立証されなければならなず、期待された作為をしても、結果が発生したかもしれないという合理的な疑いが残れば、因果関係は否定されます。

○本決定は、本件の事案について、被害者が錯乱状態に陥った時点で被告人が救急医療を要請していれば、「同女が年若く(当時13年)、生命力が旺盛で、特段の疾病がなかったことなどから、十中八九同女の救命が可能であった」ことから、「同女の救命は合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められるから」と判示して、因果関係を肯定しました。

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主  文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中200日を本刑に算入する。

理  由
 被告人本人の上告趣意のうち、憲法38条違反をいう点は、原判決が被告人又は共犯者の自白のみによって被告人を有罪としたものでないことは判文に照らして明らかであるから、所論は前提を欠き、その余は、違憲をいうかのような点を含め、実質は事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であり、弁護人吉川由己夫の上告趣意は、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。

なお、保護者遺棄致死の点につき職権により検討する。「原判決の認定によれば、被害者の女性が被告人らによって注射された覚せい剤により錯乱状態に陥った午前零時半ころの時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女が年若く(当時13年)、生命力が旺盛で、特段の疾病がなかったことなどから、十中八九同女の救命が可能であったというのである。

そうすると、同女の救命は合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められるから、被告人がこのような措置をとることなく漫然同女をホテル客室に放置した行為と午前2時15分ころから午前4時ころまでの間に同女が同室で覚せい剤による急性心不全のため死亡した結果との間には、刑法上の因果関係があると認めるのが相当である。したがって、原判決がこれと同旨の判断に立ち、保護者遺棄致死罪の成立を認めたのは、正当である。
 よって、刑訴法414条、386条1項三号、181条1項但書、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 貞家克己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 坂上壽夫 裁判官 園部逸夫)

以上:1,949文字
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R 2- 3-25(水):訴訟上の証明の性質について歴史的証明とした最高裁判決紹介
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○訴訟上の証明の程度について論争になっている事件を扱っていますが、訴訟上の証明は、通常人であれば誰でも疑をさしはさまない程度に真実らしいとの確信を得させるもので足りるとした昭和23年8月5日最高裁判決(最高裁判所刑事判例集2巻9号1123頁)全文を紹介します。

○「元来訴訟上の証明は、自然科学者の用ひるような実験に基くいわゆる論理的証明ではなくして、いわゆる歴史的証明である。論理的証明は「真実」そのものを目標とするに反し、歴史的証明は『真実の高度な蓋然性』をもつて満足する。言いかえれば、通常人なら誰でも疑を差挟まない程度に真実らしいとの確信を得ることで証明ができたとするものである。」と分かり易く説明しています。

○しかし、具体的事案に当たって「真実の高度な蓋然性」の有無の判断は、極めて難しいところが辛いところです。

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主   文
本件上告を棄却する。

理   由
弁護人倉谷海道及び同河野太郎の上告趣意について。
原判決に挙げている証拠を綜合すると、所論の領得の意思に関する証拠(第一審公判廷における被告人の判示同旨の供述)を除いても、「被告人が昭和22年6月18日夜田端旅館に投宿し、同夜其の隣室に宿り合せていた全く未知の客松本義正のレインコートの内ポケツトから、ひそかに同人所有の現金2622円50銭在中の革製二ツ折財布一個を抜き取りこれを隠して持つていた」という事実は、肯認し得られるのである。

そして一件記録によれば、被告人は原審公判に至つて、忽然として「それは交際のきつかけを作るために隠したのである」と主張し出したのである。なるほど、かゝる主張のようなことも、不完全な人間の住むこの世の中では全然起り得ないことではないであらう。しかし冒頭に述べたような事実があつたとしたら、それが盗んだのではなくて、交際のきつかけを作るために隠したに過ぎないということが判明するまでは、普通の人は誰でもそれは泥棒したのだと考えるであろう。

これが、吾々の常識であり又日常生活の経験則の教えるところである。元来訴訟上の証明は、自然科学者の用ひるような実験に基くいわゆる論理的証明ではなくして、いわゆる歴史的証明である。論理的証明は「真実」そのものを目標とするに反し、歴史的証明は「真実の高度な蓋然性」をもつて満足する。言いかえれば、通常人なら誰でも疑を差挟まない程度に真実らしいとの確信を得ることで証明ができたとするものである。

だから論理的証明に対しては当時の科学の水準においては反証というものを容れる余地は存在し得ないが、歴史的証明である訴訟上の証明に対しては通常反証の余地が残されている。そこで前説示のような事実が、原判決挙示の証拠によつて肯定せられ得る本件にあつては、被告人に窃盗の意思すなはち領得の意思があつたということが通常人なら誰れにも容易に推断し得られるのであるから、右推断を覆えすに足る新たな事実が反証せられない限り,判示事実に関する原審の認定は到底動かし得ないところである。

しかるに、論旨は恰も原審に論理的証明でも要求するかのやうに、或は領得の意思については警察における被告人の自白を唯一の証拠としてこれを認定したとか、或はその自白は警察官の強制拷問によるものであるとか主張し、強いて原判決の憲法違反論を試みるのであるが、領得の意思の点に関しては、前説示の通り本件の具体的事実関係によつて容易に推断されるところであるから、むしろ消極的にこれを否定すべき事実の証明こそ必要であるが、かゝる証明に役に立つ資料は何等存在しないのである。

しかも、原審は所論警察における被告人の自白は、これを事実認定の資料に供してはいないのであつて、この事は判文を一読すれば直ちに了解し得るのである。そればかりでなく、所論被告人の自白が取調警察官の強制拷問によるものであるということも、記録上これを窺い知ることができない。

なお、原審が倉谷弁護人の為した被告人の父遊佐粛行に対する証人訊問申請を却下したことは原審公判調書の記載により明らかであるけれども、その訊問事項が果して所論の通り被告人の性情、思想、素行の点にあつたかどうかは不明である。しかし、仮に所論の通りであつたとしても、さような事項は案件の裁判上必ずしも重要な事項でないことは、前段の説明によつて既に明らかであるから、原審が該証人を取調べなかつたとしても、これがため所論のような違法を招来すべき筈がない。それゆえ、論旨はいづれもその理由がない。
よつて刑訴第446条に従い主文の通り判決する。この判決は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔)

弁護人倉谷海道上告趣意
第一、本件窃盗被告事件につき原審に於て被告人に領得の意思ありたりとする証拠として原審判決中に於て「一、証人菊地一雄の当公廷に於ける(中略)判示の如き犯行を自白したる旨の供述」を援用したのである。

第二、然れども右被告人が右証人伊達警察署巡査部長菊地一雄に対して為したる領得の意思ありたる趣旨の供述は被告人を取調べたる右証人の拷問及び脅迫による自白である。即ち原審第一回公判調書被告人の供述中
「問 どの点が不服か 答 私が宿で隣りの部屋に宿つて居た人の財布を盗んだ様になつて居ますが実際は盗んだのではなく、旅の宿で退屈の余り隣りの客と交際のきつかけを作る為にやつたことなので」
と供述し、領得の意思を否認して自白を覆へして居り、
同調書中「問 それからどうした 答 警察に連れて行かれ調べられましたが私は帰つてから返そうと思つて居つたので絶対に知らないと頑張りましたがその中にダンダン警察の人も手錠をはめたりつゝき廻したり強硬に出て来ました」
「問 警察では取調の際手荒なことをしたか 答手錠を掛けつゝき廻し刑務所へぶち込んでしまへと怒鳴られました」
との供述により被告人は司法警察官より手錠を掛けて取調べを受け且つ脅迫せられた結果の自白であることが観取される。

尚原審第二回公判調書中の当時被告人の取調の掌に当りたる司法警察官菊地一雄の証言中
「問 取調た経過は 答 初めは仲々言はず金は取つた憶えない知らないと言ひ張りましたが3時間位たつてあらゆる方向から訊問を進めて行く中ついに盗んだ旨自白したのであります」「答 手錠を掛けたのは自白して後宿に同行した際逃げると困りますからかけたのであります」
と陳述して居りて、右証人なる司法警察官が3時間に亘りあらゆる方向より訊問して居り相当な圧力が加はり被告人をして真実にあらざる自白をするに至らしめたる事を推知するに足るものがある。

第三、斯の如く司法警察官菊地一雄に対する被告人の領得の意思ありたる旨の自白は拷問及脅迫に基く自白であつて被告人の自由意思による任意の自白ではないのである。然るに原審に於ては右の如き任意に為されざる被告人の自白を証拠と為し被告人に対して有罪の判決を下したるは日本国憲法第38条第二項に「拷問若しくは脅迫による自白は之れを証拠とすることができない」との規定及び刑事訴訟法の応急措置に関する法律第十条第二項の「拷問若しくは脅迫による自白はこれを証拠とすることができない」との各法律に違返するものなるを以て右判決は破棄さるべきである。依つて上告した次第である。

弁護人河野太郎上告趣意
第一点 原判決は日本国憲法及日本国憲法の施行に伴ふ刑事訴訟法の応急的措置に関する法律に違背し、拷問によると信ぜられる自白を証拠とした違法がある。

原判決はその理由中証拠として、一、被告人の当公判廷に於ける領得の意思の点を除き判示と同旨の供述一、原審公判調書中被告人の判示同旨の供述記載一、証人菊地一雄の当公廷に於ける自分は伊達警察署に勤務する巡査部長であるが判示日時判示のやうな盗難事件が発生したと云ふ電話があつたので旅館に赴き取調べたところ宿泊客であつた本件被告人の言ふことに不審があつたので本署に同行して貰い調べたところ判示の如き犯行を自白した旨の供述一、松本正義の提出した盗難届中判示の事実に対応する被害顛末の記載の四者を挙げてゐる。

右の中証人菊地一雄の証言として「本署に同行して貰ひ調べたところ判示の如き犯行を自白した旨の供述」とあるが、この警察に於ける被告人の自白は拷問による自白であると信ぜられる。即ち被告人は原審第一回公判に於て「警察へ連れて行かれ調べられましたが、私は帰つてから事情を話し返さうと思つて居たので絶対に知らないと頑張りましたが、その中にだんだん警察の人も手錠をはめたりつゝき廻したり、強硬に出て来ました云々」(記録42丁裏)とあり、更に裁判長の「警察では斯様に申立てゝゐるがどうか」との問に対し「その様に言つたことは相違ありませんが手錠を掛けられてつゝき廻されたり強要されて言つたのですが、実際は私が先程申上げた様な事情なのです」(記録43丁表から裏へ)と申述べてゐる。

右に関し原審は職権を以て前記伊達警察署巡査部長菊地一雄を証人として喚問した。同証人は「自白を強要した事実はない。手錠をはめたのは自白後である」(記録63丁表から裏へ)と否定してゐるが、之に関し更に裁判長と被告人間に、裁判長「証人は左様に言つてゐるが手錠をかけられたのは自白する前か後か」被告人「自白前です」裁判長「手錠をかけられたのは自白前に司法室でか」被告人「はい」との問答がある。「証拠ノ証明力ハ判事ノ自由ナル判断ニ任ス」べきことは勿論であるが、之は決して判事の専断や事理を没した推断を許すものでない。

右の被告人と証人菊地の供述の中その何れを採るべきかは自ら明らかである。被告人を取調べた当人であり、手錠をかけたと非難されている当人である証人菊地一雄自身の口から「手錠をかけ、つつき廻して自白を強要した」旨の供述は絶対に期待できないことである。刑事訴訟法第188条は「証言ヲ為スニ因リ自己……刑事訴追ヲ受クル虞アルトキハ証言ヲ拒ムコトヲ得」と規定して居り証人菊地が被告人の基本的人権を無視して手錠をかけ、つつき廻して自白を強要した事実は場合によつては証人菊地に対する刑事訴追さへ考へ得ることである。

刑事訴訟法はかかる場合には証言拒否をさへ許している。証人菊地が「手錠をかけ自白を強要した事実はない」と証言しても、之は措信すべき価値が無いものであり、またこれ以外の証言は同人の口からは絶対に期待できないものである。現に同証人の証言中にも「初めは仲々言はず金は取つた憶えはない知らないと言ひ張りましたが、3時間位たつてあらゆる方向から訊問を進めて行く中ついに盗んだ旨自白したのであります」(記録62丁)とあり、之は言外に被告人が3時間も自白しないので業を煮やし手錠をかけつつき廻して自白を強要した当時の様子を彷彿せしめるものである。

原審に於ては後述の如く領得の意思の有無が問題となつたが、之の領得の意思を認定する証拠としては警察の自白が殆ど之を決定的ならしめている点から考へてもこの自白の価値如何は断じて看過できない。憲法第36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は絶対にこれを禁ずる」と宣言し、また憲法第38条は「何人も自己に不利益な供述を強要されない。強制、拷問若くは脅迫による自白……はこれを証拠とすることができない」と規定し、前記応急的措置に関する法律第十条も之と同趣旨を規定している。強制、拷問、脅迫による自白は絶対に之を証拠とすることができないものであるのに拘らず原審は前記各法条に違背し、強制、拷問、脅迫による自白を証拠として事実を認定したものであつて、この点、原判決は当然破毀せらるべきものである。

第二点 原判決は領得の意思に関し被告人の自白を唯一の証拠として窃盗罪に問擬した違法がある。原審第一回公判調書によれば被告人の供述として「私が宿で隣りの部屋に泊つて居る人の財布を盗んだ様になつて居りますが実際は盗んだのではなく旅の宿で退屈の余り隣りの客と交際のきつかけを作る為めにやつたことなので云々」(記録37丁表)とあり更に「(前略)ニギリめしを食べそれから少々退屈してあたりを見廻しふと隣の室との境の襖を見ると十糎程開いて居りその開いた間隙をふさいで隣の部屋にバーバリーが掛けてあり私の部屋の方からはそのバーバリーの裏側が見える様な具合になつて居て内ポケツトから黒革折たたみ式財布が三分の二程落ち相にはみ出してゐるのが認められました(中略)私は退屈してゐる時でもあつたのでその財布を抜いて隣りの人が電話を掛け終つて部屋へ帰つて来たらこの財布が私の部屋へ転り落ちて来たと言つて持つて行き交際のきつかけをつくり話し合つて旅の宿での耐え難い退屈をしのごふと思ひ財布を抜き取り私の部屋の机の上に置きました」(記録40丁裏から41丁表へ)と供述して領得の意思を否認してゐる。

然るに原審が被告人に領得の意思ありたりと認定した証拠としては証人菊池一雄の証言及び第一審公判調書である。証人菊池の証言は前記の如く「警察に於て判示の如き犯行を自白した」旨の供述にすぎず、第一審公判調書は「(前略)急ニ悪心ガオキテツイソレヲ盗ンデシマヒマシタ」(記録26丁裏)と言ふにすぎない。即ち領得の意思の有無に関し之ありと認定した証拠は何れも被告人の自白のみである。

凡そ窃盗罪にあつてはその構成要件は「不法領得の意思を以てする所持の移転」であつて、不法領得の意思と所持の移転とこの二つの事実に就て充分な証拠を必要とする。原判決の証拠は所持の移転に就ては遺憾がないが、不法領得の意思に就ては唯に被告人の警察に於ける自白及び第一審公判廷に於ける被告人の自白があるのみである。警察に於ける被告人の自白は前叙の如く手錠をかけ、つつき廻された結果の自白と信ずべく証拠としての価値が無い。

更に第一審公判に於ける自白も被告人は当時未だ身柄拘束中であり、且つ警察に於ける拷問の結果虚偽の自白を強制され、ために被告人の受けた甚大な精神的打撃は未だ癒えず諦めとも自棄とも言へる心境でついふらふらと警察の自白の通りを認めてしまつたものと考へられる。斯様な事例は他にも多々存することであり、被告人の第一審に於ける供述は措信できない。第一審公判に於ける被告人の供述が如何に措信するに足らぬものであるかについて一例として被告人は「(前略)暫ラクシテ臨検ノ警察ノ方ガ来テイロイロ聞カレルノデコレハ匿シキレヌト思ツテ此方カラ白状シ其ノ財布ヲ差出シマシタ」(記録26丁裏)などと事実に全然相違する供述をしてゐる。

被告人は警察に同行されても3時間も頑強に自白を肯じなかつた事は証人菊地の証言により明らかである。第一審公判の供述は一切投げやりな気持で行はれたもので、その間の被告人の心境に就ては原審公判に於ける「前の事件で父にも肩身のせまい思ひをさせて居り本当は盗んだのではないのですが、浅墓な考へからこんなことになり他人には信じてもらへ相もない事実なので死んで父にお詫びをし様と思ふ気持が一杯で訊問に対しては只そうですそうですと答へたのであります」と云ふ被告人の供述が真情を吐露してゐる。

然し茲に百歩を譲り前記被告人の各自白が措信すべきものであると仮定しても、前叙の如く原審に於て問題となつた領得の意思に関する証拠としては被告人の自白があるのみであつて、之は憲法第38条第三項及び前記応急的措置に関する法律第十条第三項が共に「何人も自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と明記する規定に違背することは明らかである。かかる違法を敢てした原判決はこの点に於ても破毀せらるべきものである。

第三点 原判決には被告人の基本的人権を尊重する憲法の精神に反し被告人の有する弁護権を不当に制限し、更に審理不尽を敢てした違法がある。原審に於ては領得の意思及び手錠の点が問題となつたこと前叙の如くであるが、そのため原審は職権を以て証人菊地一雄、同南川恒子を喚問した。しかしこの両証人の証言の結果からは前記問題の二点につき何等の価値ある結果も得られてゐない。

先づ証人菊地の証言を見るに、領得の意思の点については「警察に於て判示同旨の自白をした」旨の証言にすぎず、手錠の点については「手錠をはめて自白を強要したことはない」と否定するのみであつて、之は被告人の「手錠をはめて、つつき廻された」旨の供述と相反するが、被告人の血を吐く如き告白と、手錠の非難を受けてゐる当人である証人菊地の否定と、その何れを採るべきかは既に論述したところである。更に証人南川の証言に到つては、前記の二点については遂に全然触れるところなく、何等の結果をも得られなかつたことは記録に徴し明らかである。かくの如く原審は領得の意思及び手錠に関し疑問を以て証人を喚問したが、その結果は遂に何等の価値ある証言をも見出し得なかつた。

しかるに原審は更に適当な証拠調をすることなく、漫然と判決を行つてしまつた。殊に手錠の点に就ては憲法及び前記応急的措置に関する法律が厳に自白の強要を禁じ、強制、拷問、脅迫による自白は証拠とはなし得ないことを宣言するのであるからその審理は最も慎重を要すべきであるに拘らず、単に証人菊地自身の否定を以て簡単に片附け去るが如きは審理不尽も甚しい。

原審に於ては倉谷弁護人から被告人の父遊佐粛行を在廷証人として申請したところ原審は之をも却下した。原審は前記二点につき職権を以てしても更に慎重な審理をなすべきであるのに之をなさない許りか、申請に係る在廷の証人さへ却下した。被告人の性情、思想、素行等を熟知する父親の証言には前記二点に関しても如何なる価値ある証言を得られんやも計り難く、而かも他に適当な証人が存しないに拘らず之を却下し去つた原審は被告人の有する弁護権を不当に制限したものと言はなければならぬ。かくの如く重大な二点に関し更に慎重な審理をすることなく、漫然と認定を行ひ判決を言渡した原審は、被告人の人権を尊重し、刑事訴訟手続の慎重を期する憲法及び前記応急的措置に関する法律の精神に違背し、審理不尽の違法あることは免れない。原判決はこの点に於ても破毀せらるべきものと信ずる。
以上:7,468文字
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R 2- 3-24(火):因果関係重要判断基準含む東大ルンバール事件最高裁判決事案検討・解説
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○「因果関係重要判断基準含む東大ルンバール事件最高裁判決全文紹介」で、この昭和50年10月24日最高裁判決は、交通事故事件で、頻繁に援用している判決ですが、全文はまだ見ていませんでしたと記載していました。

○ある事件で、この事件の論理を詳細に展開する必要が生じましたので、事案内容を検討し、その論旨をシッカリ勉強します。
この事件は、いわゆる東大治療ミス訴訟上告審判決で、東大ルンバール事件と呼ばれる有名な判例です。医師が化膿性髄膜炎の治療としてしたルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)の施術とその後の発作等及びこれにつづく病変との因果関係を原審昭和48年2月22日東京高裁判決(最高裁判所民事判例集29巻9号1480頁、訟務月報21巻11号2203頁)が否定したことについて、経験則に反するとして破棄したものです。

○事案概要は以下の通りです。
・上告人(原告)は、3歳のとき化膿性髄膜炎のため、昭和30年9月6日東京大学医学部附属病院小児科へ入院し、治療の結果、次第に快方に向っていた
・同月17日午後零時30分頃から1時頃までの間に担当医師の1人が上告人に対しルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)を実施した
・その15分ないし20分後、突然に嘔吐、けいれんの発作等を起し、現在も後遺症として知能障害、運動障害等が残った
・上告人の主張は、
①上告人(原告)は、もともと常人にくらべ脆弱な血管の持主で、泣き叫び暴れたりすると脳圧が亢進し、脳出血を惹起する可能性があった
②従って担当医師としては、ルンバールに当り、脳圧を刺戟しないように慎重細心な注意を払う義務があった
③然るにこの担当医師は、当日開催の学会会場係の受持ちであったため気持が焦り、一般にルンバール施術後患者が嘔吐することがあるので、食事の前後を避けて行うのが通例であるのに、食事の直後、しかも、泣き叫ぶ上告人に看護婦が馬乗りとなるなどして体を固定させたうえ本件ルンバールを実施したが、一度が穿刺に成功せず、何度もやりなおして施術終了まで約30分間上告人を極度の興奮状態に陥し入れた
④これが、上告人に対し過度の刺戟を脳圧に加え、脆弱な血管を損傷し、脳出血を生じさせ、本件障害の原因となったものであり、これは、担当医師の前記過失に因るもの
であるとした。
⑤また、仮に、本件ルンバールの実施と本件障害との間に直接の因果関係が認められないとしても、担当医師らは、本件ルンバールによる発作とその後の病変に対する看護治療上に過失があった
以上の事実に基づき、上告人から医師の使用者である国に対し、1957万6236円の損害賠償を請求した

これに対し、被上告入(被告)国は、本件発作とその後の病変は、化膿性髄膜炎の再燃によるものであって、本件ルンバールとの因果関係は存在しない、のみならず、ルンバールの実施及びその後の治療等につき医師の過失は存在しないと反論した。


○第一審の東京地裁は、本件発作とその後の病変の原因は、本件ルンバールによって惹起された脳出血にあるとして因果関係を肯定したものの、本件ルンバール及び看護治療上の医師の過失を否定しました。第二審の東京高裁は、本件発作と病変の原因が脳出血によるか化膿性髄膜炎に伴う脳実質の病変の再燃によるものか判定し難く、本件発作と病変の原因が本件ルンバールの実施に因るものとは断定し難いとして、医師の過失には触れるまでもなく、上告人(原告)の請求を棄却するとしました。

○不法行為に基づく損害賠償事件では、一般的には、民法416条を根拠に相当因果関係説に立って判断されます。しかし、医療過誤事件では、その行為又は不行為と結果との自然的因果関係の存在そのものが重要な問題となります。医療行為が高度の科学的分野に属し、患者の特異体質など生体反応の多様性が問題をより複雑なものにしています。したがって、因果関係の立証を厳格に要求すれば、損害賠償を認める余地が極めて狭いものとなってしまいます。

○学説や裁判例中には、因果関係が科学的に証明されなくても、相当の蓋然性があれば因果関係の存在を認定してよいとし、原告側でその結果が医療行為の際に生じたものであること、及びそれが医療行為によって生じたというある程度の蓋然性について一応の立証をすれば、それが医師の行為によるものという一応の推定をし、医師の側で反証をあげないかぎり因果関係を認定してよいとする見解が、有力になっています(注釈民法(19)151頁、法務総合研究所編・医療過誤に関する研究38頁以下、鈴木俊光・医療過誤における因果関係の立証・ジュリ427号47頁、最高裁昭和36年2月16日梅毒輸血事件判決、第一審東京地裁判決、東京高裁昭和44年5月30日判決・判時570号51頁)。

○訴訟上の証明は、自然科学的な論理的証明ではなく、いわゆる歴史的証明です。論理的証明は、真実そのものを目標とし、当時の科学の水準において反応を容れる余地も存在しないが、歴史的証明では、真実の高度な蓋然性をもって満足し、通常人なら誰でも疑を差し挾まない程度に真実らしいとの確信を得ることで証明ができたとします(昭和23年8月5日最高裁判所判決最高裁判所刑事判例集2巻9号1123頁)。

○控訴審判決は、鑑定書その他の証拠によっても、原因が脳出血によるか、化膿性髄膜炎の再燃によるものか判定し難く、したがって、本件発作とその後の病変が本件ルンバールによることを断定し難いとしています。確かに、患者に生じた結果が、医師の行為によって起る可能性と医師の行為と無関係に発生する可能性がある以上、それが医師の行為によって起ったことを確定する必要がります。

○しかし、最高裁判決は、
上告人が入院当初の重篤な病状から一貫して快方に向い、その病気が再燃する可能性も少い段階において、本件ルンバール施行後15分ないし20分を経て突然に本件発作が生じたこと、
本件発作の2日後に行われた髄液検査の結果も好転していたこと、
もともと、上告人は脆弱な血管の持主で入院当初より出血性傾向が認められたこと、
本件発作が突然のけいれんを伴う意識混濁で始まり、けいれんが右半身に強く現われ、脳波所見も脳の異常部位が左部にあると判断されること、
主治医も退院まで脳出血によると診断して治療していたこと
などを、因果関係に関する前記観点に立って総合検討した結果、他に特段の事情が認められないかぎり、経験則上、本件発作とその後の病変の原因が脳出血であり、これが本件ルンバールに起因するものと認めるのが相当としました。

○控訴審の高裁判決は、「原因が脳出血によるか、化膿性髄膜炎の再燃によるものか判定し難く、したがって、本件発作とその後の病変が本件ルンバールによることを断定し難い」としています。しかし、最高裁判決は、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挾まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる」として、控訴審判決は、「因果関係に関する法則の解釈適用を誤り、経験則違背、理由不備の違法をおかしたものというべく、その違法は結論に影響することが明らかである」として、破棄しました。極めて妥当な判断です。
以上:3,049文字
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R 2- 3-23(月):信用保証協会対連帯保証人請求を権利濫用として棄却した地裁判決紹介
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○信用保証協会が求償債権を取得後10年余を経て連帯保証人に対して提起した求償金請求が主債務者の破産手続の終結から5年以内にされたものであっても権利の濫用として許されないとされた平成9年11月25日和歌山地裁田辺支部判決(判時1656号129頁、判タ980号171頁)を紹介します。長文であり、別コンテンツで内容説明します。

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主   文
一 被告Y1は、原告に対し、金1億0176万6162円及び内金5528万7912円に対する平成2年11月30日から支払済みに至るまで年14・60パーセントの割合による金員を支払え。
二 原告の被告Y2に対する請求を棄却する。
三 訴訟費用は、原告と被告Y1との間においては、原告に生じた費用の2分の1を被告Y1の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告Y2との間においては、全部原告の負担とする。
四 この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 原告の請求

 被告らは、原告に対し、各自金1億0176万6162円及び内金5528万7912円に対する平成2年11月30日から支払済みに至るまで年14・60パーセントの割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
一 本件は、原告が金融機関(訴外新宮信用金庫、訴外株式会社第三相互銀行(現株式会社第三銀行))から保証委託を受け、これら金融機関の訴外A工業株式会社(以下「A」)に対する三件の貸金債務(以下「本件貸金債務」)につき保証をし、その後これら債務の不履行により金融機関に代位弁済(一件につき昭和60年7月25日、その余につき同年9月26日)したことにより、Aは原告に対し求償債務(以下「本件求償債務」)を負担することになったが、被告らが、本件求償債務につきAのために連帯保証をしていたことから、原告が被告らに連帯保証債務(以下「本件連帯保証債務」)の支払を求めた事案である(原告の請求原因については、別紙のとおりであり、その認否については、被告Y2が、請求原因1及び3を、被告Y1が請求原因1、3及び5を認め、その余はいずれも不知。)。

二 (被告らの消滅時効の主張)
1 原告がAから本件求償債務につき最後に弁済を受けたのは、原告の別紙計算書によれば、平成2年11月29日であるから、この日から商事債権の5年の短期消滅時効期間が既に経過しており、被告らは、この消滅時効を援用する。

2 仮に、後記のように主債務者のAにつき、破産手続の存在により本件求償債務の時効中断が認められたとしても、Aの破産手続の中で権利行使があったのは、あくまでも原債権たる本件貸金債務についてであって、本件求償債務自体に対する権利行使はなかったのである。最高裁平成7年3月23日第一小法廷判決は、求償権の行使が一度もないのに拘わらず、求償債務に対する消滅時効の中断を認めたが、これは、原債権の破産手続における代位弁済による原債権の承継届が、法的に求償権に対する行使の意思表示として評価できるという理由による。

そして、被告らは、原債権たる本件貸金債務自体については連帯保証をしていなかったものである。したがって、右判例の解釈から、右中断の扱いは例外的に意思表示の存続する間だけ時効を中断する趣旨と解すべきで、配当によって権利行使の終了している本件では(右最高裁判例は、配当のなかった場合のもの)、最後の配当のなされた平成2年11月27日から再び時効が進行を始め、平成7年11月27日をもって本件求償債務は時効により消滅した。

(原告の消滅時効に対する主張)
 本件では、主債務者のAが昭和59年8月31日和歌山地方裁判所新宮支部において破産宣告を受け、本件貸金債務については、各金融機関が債権届を出して債権調査期日において確定していたところ、原告は本件貸金債務の代位弁済後配当通知のあった平成2年9月3日までに、破産裁判所に対し求償権者として、原債権たる本件貸金債務につき各金融機関の地位を承継した旨の届出名義の変更を行った。

原告は、平成2年9月26日と同年11月27日配当を受け、これを本件求償債務に充当し、右破産手続は平成3年2月12日終結したものである。本件訴訟は、右終結の日から5年以内である平成8年2月5日に提起されたものであるから、本件求償債権の消滅時効は完成しておらず、本件連帯保証債務も消滅していない。前記最高裁判例は、破産手続参加による時効の中断効を破産手続終結の時までとしたもので、最後配当時までとしたものではない。

三 (被告Y2の権利濫用の主張)
1 仮に消滅時効がAの破産手続の終結まで中断していたとしても、原告が最後に代位弁済をした昭和60年9月26日から10年以上して、Aの破産手続に関与していない被告Y2に対し、突然元利金を含め1億2000万円以上になる本件連帯保証債務の履行を求めることは、権利濫用に当たり許されない。

2 即ち、Aの代表者は訴外B(以下「訴外B」)であったが、同人が代表者であった有限会社東商店(以下「東商店」)も、Aと同じ日に破産宣告を受けた。原告は、この東商店についても信用保証をなし、被告Y2がその求償債務につき連帯保証人となっていたが、原告は、東商店に対する求償債務については、連帯保証人である被告Y2に対し131万9066円の請求をなし、被告Y2は毎月5000円ずつ支払を続けてきたが、本件求償債務に対しては請求を受けず、被告Y2は、最早本件求償債務については免責されたものと考えて生活してきた。

商法が5年の短期消滅時効を決めているのは、取引社会の中にあって5年で金銭貸借関係の清算を済ませるのが妥当とされる期間だと考えたからである。しかるに、原告は、連帯保証人である被告Y2に対し、いつでも請求できる状態にありながら、10年以上にわたり放置しておき、この間に被告Y2は、このような多額の保証債務がないという外観を保って取引社会の中で活動してきたもので、第三者も被告Y2のこの外観を信頼して取引をしてきたものである。

したがって、このように原告が代位弁済後10年以上の長期にわたり、被告Y2に対し法的手段を取らず放置しておきながら、現在に至って本件連帯保証債務の請求の訴を起こすことは、取引社会に混乱をもたらすのみでなく、被告Y2を人生の晩年において破産に追い込むものであり、権利濫用として許されない。

(原告の権利濫用に対する主張)
 被告Y2は、本訴提起まで本件連帯保証債務の請求を受けたことがないというが、最近でも平成4年5月1日に督促状送付、平成7年11月6日に残高の通知というように何度も通知をしている。

第三 当裁判所の判断
一 原告主張の請求の原因は、別紙のとおりであるところ、請求原因の一及び三については、当事者間に争いがなく、その余の請求原因については、甲一ないし16及び証人水田順造、被告Y2本人並びに弁論の全趣旨により、これを認めることができ(なお、請求原因五については、原告と被告Y1との間において争いなし)、結局、本件訴訟の争点は、両被告の関係では、本件連帯保証債務について消滅時効が完成したか否かであり、更に、被告Y2との関係では、原告の本訴請求が権利濫用に当たるかの二点である。

二 消滅時効の完成について
1 甲17、18、21、24、被告Y2本人並びに弁論の全趣旨によれば、主債務者のAは、昭和59年8月31日和歌山地方裁判所新宮支部において破産宣告を受けたこと、本件貸金債務については、各金融機関が右破産手続において債権届を出して債権調査期日において確定していたところ、原告は本件貸金債務の代位弁済後、配当通知のあった平成2年9月3日までに、破産裁判所に対し求償権者として、原債権たる本件貸金債務につき各金融機関の地位を承継した旨の届出名義の変更を行ったこと、原告は、平成2年9月26日と同年11月27日配当を受け、これを本件求償債務に充当し、右破産手続は平成3年2月12日終結したものであること、本件訴訟は、右終結の日から5年以内である平成8年2月5日に提起されたこと、以上の事実が認められる。

2 そして、最高裁平成7年3月23日第一小法廷判決は、債権者が主たる債務者の破産手続において債権全額の届出をし、債権調査の期日が終了した後、保証人が、債権者に債権全額を弁済した上、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときには、右弁済によって保証人が破産者に対して取得する求償権の消滅時効は、右求償権の全部について、右届出名義の変更のときから破産手続の終了に至るまで中断すると解するのが相当である。と判示して、求償権の消滅時効が破産手続の終結までであると明確に述べているから、消滅時効の中断は、最後配当の日までであるとする、被告らの主張は独自の見解というしかない。

3 そして、主債務者の本件求償債務につき、時効が中断したと認められる以上、破産手続における債権の届出名義の変更については、原債権たる本件貸金債務を行使したものに過ぎず、本件求償権自体の行使がなされたものではないとしても、主債務者につき中断が生じたとされるため、民法457条一項により中断は連帯保証人にも及ぶものと解されるから、被告らとの関係でも、消滅時効は破産終結の日の翌日から進行を始めるものと解せざるを得ず、したがって、本件連帯保証債務については消滅時効は完成していない。

三 権利濫用について
1 ところで、前記最高裁判決では、主債務者につき破産手続が開始した場合には、主債務者に対し求償権を行使しようとしても、破産手続が終結しない限り、法的手段を取ることはできないが、求償債務の連帯保証人については主債務者の破産手続中でも、連帯保証人自身破産申立をし破産手続中でない限り、これを相手に法的手段を取ることが可能であり、主債務者の破産手続の終結を待つ必要はないことはいうまでもない。

2 そして、連帯保証人としては、主債務者の破産手続が開始後、早い時期に求償債務につき連帯保証による請求を受ければ、自らも破産申立をして債務を整理清算し、免責を受けるなど早期に再出発をするチャンスを得ることもできるが、主債務者の破産手続の進行が長期に及び、何年も放置された後に連帯保証人として法的請求を受けたような場合には、その間の営業継続により形成された取引先などに突然の迷惑を及ぼすことから、自ら簡単に破産の申立をすることもできず、また、破産申立をしたとしても、従前における早期申立に比べ、取引先に対し、より以上の迷惑を及ぼすことになるから、再出発のための協力も得にくくなって、連帯保証人の更生を妨げる可能性も高いものと考えられる。

3 更に、前記最高裁判例は、破産裁判所に対してなされた原債権の届出名義の変更の申出は、求償権の満足を得ようとしてする届出債権の行使であって、求償権について、時効中断効の肯認の基礎とされる権利の行使があったものと評価されるということを、理由として求償権についての時効の中断を認めているが、しかしながら、行使されたのはあくまでも代位にかかる原債権であって求償権ではなく、全くの第三者の連帯保証人の場合、主債務者を破産者とする破産手続については、その進行の状況を当然に知りうるものでもないから、このような求償権の行使の意思を知りうるものでないこと、したがって、第三者の連帯保証人に対する関係で、求償債務につき時効の中断が生ずるのは、民法457条一項で主たる債務者につき時効中断が生じた結果、連帯保証人にも中断が生じたに過ぎない。

4 そして、主債務者は、法人の場合には自らの破産手続で清算を終え、また、個人の場合には、免責手続で一定の要件で債務につき責を免れるものであり、その結果主たる債務者の求償債務については、消滅するか自然債務になる一方、連帯保証人についてのみ、求償債務の責任が残る結果になるのである。してみると、破綻の原因を作った主債務者には、免責などにより更生の機会を与えられながら、連帯保証人は、なお何時までも求償債務につき法的責任を負い、債権額によっては、何時でも破産の危険を負担しなければならないという不合理なことも発生するのである。

このように考えると、主債務者の財務内容につき十分な情報があり、主債務者の破産申立と同時に自らも破産申立をすることが可能で、その後においても、主債務者の破産手続の進行状況、届出債権額、資産評価や配当見込などを知りうる、主債務者の代表者や親族の連帯保証人については格別、それ以外の第三者の連帯保証人については、早期に求償債務につき請求をなし、自らも破産申立をなすか、資産の処分などにより清算をするか、長期分割弁済をなすかなど、連帯保証人の求償債務処理について可能な限りで方向付けをしたうえで、連帯保証人自身の営業の存続の可否を判断させ、債務の回収を図ることが、連帯保証人を中心として形成される取引の信用の維持のために不可欠であり、近時、消費者破産において、破産者の生活の更生のため免責制度が利用されていることにも鑑みると、主債務者が経済的に破綻したことが明らかになった破産宣告や代位弁済から、5年以上も経過しながら、何らの具体的法的手段を取らず放置しておくことは、職務の怠慢というしかない。

したがって、破産終結から5年以内に求償債務につき訴訟が提起されたとしても、破産手続の進行が遅れて当該代位弁済により求償権を取得した時から、著しい長期間が経過したり、その債権額が著しく高額で、連帯保証人自らも破産の申立に至ることが必然である一方、主債務者の破産申立後に第三者との取引が生じ,その第三者に不測の損害を与えるおそれがあり、更に右連帯保証人を破産に追い込むことが苛酷なものと認められる場合には、求償債務の連帯保証人に対する請求が権利濫用として許されない場合がある、と解すべきである。

5 ところで、証人水田順造、被告Y2本人、並びに甲32、乙1ないし3によれば、A、東商店、訴外Bは昭和59年の同時期にいずれも破産宣告を受けたものであること(同年(フ)第12ないし14号)、被告Y2は、訴外Bの友人で、Aの監査役に就任していたこと、このため被告Y2は、それぞれの破産宣告時で、元金だけでAにつき1億2537万9000円、東商店につき1億0651万9066円、訴外Bにつき1072万円の連帯保証をしていたこと、原告は、金融機関のA及び東商店に対する貸金債務につき、信用保証委託を受け保証をしていたこと、その内、代位弁済により取得した東商店の131万9066円の債務については、その破産後直ぐ回収にかかる、右求償権の連帯保証人であった被告から毎月5000円の割合で返済を受けていた事実があること、一方、Aの本件求償債務については、平成2年6月20日串本の担保物件の処分で520万0009円を受領、同年9月28日破産の配当58万6057円受領、11月29日破産の追加配当9万5749円を受領したものの、連帯保証人である被告Y2に対して、本件求償債務の支払を請求して、直接支払を受けたことはないこと、Aの破産手続は、平成3年2月12日に、保証人東義和の破産手続は、同年3月27日にそれぞれ破産終結しており、原告の使用していたAの管理処理表の平成3年6月28日付け欄には、残債権につき5528万7912円との記載がなされていること、そして、平成6年11月1日と平成7年11月6日には、原告から本件求償債務関係の債務者に残高通知書が送付された記載があるが、宛先から法人と東義和は除くとされていることから、訴外Bは破産手続の免責を受けたものと推測されること、以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

6 そうすると、Aにつき破産終結後の平成3年6月28日には、本件求償債権額がほぼ確定したものと把握していたものと考えられるうえ、そもそも連帯保証人の被告Y2については、代位弁済後においては何時にても法的手段を取り得たもので、昭和60年7月25日と同年9月26日に代位弁済をしてから、本訴提起の平成8年2月5日まで法的手段を取らず、いつでも破産に追い込める状態に置いておくことは、被告Y2にとって、甚だしく苛酷な状態であるものと考えることができる。

そして、主債務者たる訴外Bが既に免責を受け、更生への途を辿っている一方、被告Y2はこのような苛酷な状態に置かれたうえ、破産になれば、これから再び第一歩からやり直さなければならないことを考えると、Aに対する破産手続の関係で、被告Y2の本件求償債務に対する連帯保証債務につき時効が成立したと直ちに解されないとしても、なお被告Y2に対する本件求償債務の請求は、権利の濫用として許されないものというべきである。


第四 結論
 そうすると、原告の被告Y2に対する請求は理由がないから棄却し、被告Y1に対する請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条、仮執行の宣言につき同法196条1項を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 平澤雄二)

別紙 損害金計算書〈省略〉
別紙 請求の原因〈省略〉
以上:7,051文字
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R 2- 3-22(日):東京オリンピック聖火日本到着-しかし先行き危ぶまれます
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○「裁判所もコロナウィルス対策が強化されマスク着用義務化-要電話会議」の続きです。
安倍首相がなんと言おうと、令和2年7月からの東京オリンピック実現は風前の灯火となっています。安倍首相は、完全実現を力説していますが、この状況で実現したら奇跡的です。奇跡が起きることを祈るのみです。 」と記載していましたが、令和2年3月21日からIOC(国際オリンピック委員会)に対し、ノルウェー五輪委員会やイギリス陸連等から東京オリンピック延期の要請がなされ、いよいよ少なくとも延期にならざるを得ない状況となってきました。

○宮城県に到着した聖火の松島での点火式は、大風の中、何とか実現しましたが、石巻での点火式では、なかなか点火出来ず、東京オリンピックの行き先を暗示しているようでした。コロナウィルス騒ぎで、裁判所も、殆ど全職員がマスク姿となり、家裁調停室は、仙台に限らず、部屋が大きな部屋に変わり、「間隔をおいて椅子に座れる広い部屋にかわったのは,おそらくコロナ対策だと思います。」、「裁判所から『来週の電話会議は,コロナの関係で,裁判所では行いません。先生の事務所に裁判所から電話しますので,双方代理人と同時に,電話での「進行協議」に切り替えます。』といった電話がありました。」なんて弁護士ブログ記事等から、全国の裁判所が同様の方針になっているようです。

○このコロナウィルス騒ぎ、弁護士業務への影響も心配になってきます。平成23年3月11日の東日本大震災発生後は、半年ほど、事件の新件の入りが、ピタリと止まったと感じた時がありました。特に当事務所のメイン業務となっていた交通事故事件は、一時期、全く入らなくなりました。後日、ある損保代理店を経営している方から、東日本大震災のショックで、多くの交通事故被害者が闘争本能を失い、弁護士まで相談する意欲がなくなり、保険会社のいいなりで示談が次々にまとめられたと聞いて納得しました。

○東日本大震災が発生してからしばらくの間、本格的に争う事件の相談が途絶えて、新件も入らなくなり、売上は前年に比べて半分以下に落ちるのではと危惧した時期がありました。今回の、コロナウィルス騒ぎも、現時点では東日本大震災時ほど相談が減ってはいませんが、今後の展開次第では東日本大震災時以上に厳しくなりそうな予感もします。

○東日本大震災直後に仙台地裁HPに
今回の東北地方太平洋沖地震により,裁判所の庁舎も,相当程度の被害を受けました。このため,庁舎の安全確認ができるまでの間,裁判所の各種業務を見合わせざるを得ない状況となりました。裁判所を利用される皆様には,大変御迷惑をお掛けいたしますが,業務の再開につきましては,裁判所から改めて御連絡をいたしますので,それまでの間は 裁判所への来庁を見合わせてください。
と掲載され、ほぼ1ヶ月ほど全ての事件期日が取消になったように記憶しています。今後の展開次第では同様の事態になるかも知れません。

○当初高をくくっていたアメリカトランプ大統領も、自分は戦争時の大統領だと言って国家非常事態宣言を出し、カリフォルニア州やニューヨーク州では外出禁止令まで出されています。「アメリカ人は、最初は対岸の火事で、中国大変だねぇ、日本もトバッチリを受けて大変だねぇ、なんていって、アジア人どうのこうの、などと言っていて自分たちはまったく無防備だからこういうことになるのですよ。」なんて意見もあります。

○欧米・中国・韓国に比べて日本はまだ感染者数も少ないのですが、あくまで公式に発表される数であり、その数は、検査数に依存するところもあり、欧米・韓国等の数と単純比較できないようにも感じます。兎に角、道行く人は、皆ウィルス保持者であり、自分自身も既に保持者になっているかも知れないと考え、ウィルスを移したり移されたりしないように、1m以内に近づかないことを徹底して、早期事態収束を祈るしかありません。
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