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算定表上限2000万円超過年収の義務者養育費を算定した高裁決定紹介

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平成30年10月18日(木):初稿
○「算定表上限2000万円超過年収の義務者養育費を算定した家裁審判紹介」の続きで、その抗告審である平成26年6月30日福岡高裁決定(判タ1410号100頁、 判時2250号25頁 )を紹介します。

○年収6171万円の医師である抗告人父は、相手方母との間で子A・Bに対し、1人当たり月額20万円の養育費を支払うと定めて離婚しましたが、その後、再婚し再婚相手の子E・Fと養子縁組し、更に再婚相手との間に実子Gが生まれたことで、A・Bの養育費を月額11万円に減額することを求めていました。

○一審熊本家裁は、東京・大阪養育費等研究会が提唱する算定方式によれば、A・Bの養育費は月額15万円が相当としましたが、抗告人の多額の年収からは、努力すれば、前記算定方式により算定された1人当たり月額約15万円と調停で合意された1人当たり月額20万円との差額を補うことは可能であるとして月額20万円の養育費を維持しました。

○福岡高裁決定では、調停離婚後、申立人(抗告人)は再婚し、再婚相手の子E・Fと養子縁組をし、その後、新たにGが出生しているが、これらはいずれも調停時には想定されていなかった事情であり、これらによってそれぞれの生活状況は大きく変化し、申立人(抗告人)が負担すべき未成年者の養育費の算定結果も相当程度変わっているというのであるから、民法880条にいう「事情に変更を生じたとき」に該当するというべきである判断して、平成25年×月までは月額20万円としても、その後は月額17万円に減額しました。

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主   文
1 原審判を取り消す。
2 当事者間の熊本家庭裁判所平成19年(家イ)第××号夫婦関係調整調停事件において平成20年×月×日に成立した調停条項3項を「申立人は,相手方に対し,前項記載の長女A及び長男Bの養育料として,平成20年×月から平成25年×月まで,一人につき1か月20万円ずつ,平成25年×月から同人らがそれぞれ満20歳に達する日の属する月まで,一人につき1か月17万円ずつを,毎月×日限り,相手方名義の○○銀行○○支店普通預金口座(口座番号××××)に振り込む方法で支払う。ただし,振込手数料は申立人の負担とする。」と変更する。
3 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 即時抗告の趣旨及び理由
 本件即時抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告申立書」,「即時抗告申立書訂正申立書」,「抗告理由書」,「準備書面」(各写し)に記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 本件について,一件記録により認められる事実は,以下のとおり補正するほか,原審判「理由」第2の1のとおりであるから,これを引用する。
 原審判2頁16行目の「現在,」を削除し,同17行目の「監護養育している」を「監護養育していた」と,3頁6行目の「夫」を「元夫」とそれぞれ改め,同3頁14行目の後に改行の上,「(7)相手方は,平成26年×月×日,夫Eと離婚した。」を加える。

2 抗告人が負担すべき養育費の算定
(1)抗告人の基礎収入額

 抗告人の妻Dは,未成年者ら(A及びB)を扶養する義務を負わず,その年収は330万円で,抗告人や相手方に比較すれば著しく低いことを考えると,未成年者らの養育費算定にあたっては,E,F,Gの養育費は専ら抗告人が負担しているものとして,抗告人の基礎収入の算定にあたっては妻Dの収入を合算しない一方,妻Dを抗告人の扶養者ではないとみなすのが相当である。

 そして,上記1で引用した認定事実(5)の抗告人の年収額は社会保険料控除前の金額であり,市県民税(所得・課税)証明書の記載等からも,給与所得者として基礎収入額を算定すべきであるが,年収2000万円までの基礎収入割合は概ね34ないし42パーセント(ただし高額所得者の方が割合は小さい。東京・大阪養育費等研究会「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」判例タイムズ1111号285頁参照)とされているところ,年収2000万円を超える高額所得者の場合は,基礎収入割合はさらに低くなると考えられるから,抗告人の職業及び年収額等を考慮して,抗告人の基礎収入割合を27パーセントとするのが相当であり,その基礎収入額は1666万4000円(1000円未満四捨五入。以下同じ。)となる。

 この点について,抗告人は,基礎収入割合を25.6パーセントとすべきと主張するが、基礎収入割合は収入金額のみから機械的に算出されるものではなく,収入の増加に応じて常に一律の割合で減少していくものでもないから,抗告人の上記主張は採用することができない。

(2)相手方の基礎収入額
 相手方は,夫Cと離婚したというのであり,もともとCは未成年者らと養子縁組をしていないから,法律上扶養義務を負わず,相手方の基礎収入額の算定にあたってCの収入を考慮すべきではない。 
 そして,上記1で引用した認定事実(5)の相手方の年収額は社会保険料控除前の金額で,市県民税(所得・課税)証明書の記載等からも,給与所得者として扱われるべきところ,その職業及び年収額等を考慮すると,基礎収入割合を35パーセントとするのが相当であり,基礎収入額は349万8000円となる。

(3)養育費の算定
 未成年者らが抗告人と同居していたと仮定した場合の未成年者らの生活費に充てられる金額を算定すると,抗告人の生活指数を100,E、F、G未成年者らの生活指数をそれぞれ55として,年間488万8000円となる(計算式:1666万4000円×(55+55)÷(100+55+55+55+55+55))。
 この金額を,抗告人と相手方の基礎収入額で按分すると,抗告人が未成年者らのために負担すべき費用は年間404万円となり(計算式:488万8000円×1666万4000円÷(1666万4000円+349万8000円)),1か月では33万7000円(一人当たり16万9000円)となる。

(4)変更の可否及び金額についての検討
 抗告人及び相手方は,調停離婚後,それぞれ再婚し(ただし,相手方はその後離婚している。),抗告人は,EG及びFと養子縁組をし,その後,新たにGが出生しているが,これらはいずれも調停時には想定されていなかった事情であり,これらによってそれぞれの生活状況は大きく変化し,上記(3)のとおり,抗告人が負担すべき未成年者の養育費の算定結果も相当程度変わっているというのであるから,民法880条にいう「事情に変更を生じたとき」に該当するというべきである。

 そして,上記(3)の算定結果のほか,抗告人及び妻D,相手方の職業及び収入額,生活状況,それぞれの未成熟の子らの生育状況等を総合考慮すると,平成25年×月から,未成年者らの一人あたりの養育費月額20万円を月額17万円に変更するのが相当である。
 この点について,相手方は,未成年者らが医師や看護師等を目指して大学に進学する可能性が高く,満20歳に達した後も学費が必要であるなどと主張するが,現段階では未成年者らの進路は未確定であり,この点についての相手方の主張は理由がない。

3 結論
 以上のとおりであるから,これに反する原審判を取消した上,主文第2項記載のとおり養育費についての調停条項の変更を認めるのが相当であるので,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 一志泰滋 裁判官 金光健二 裁判官 小田島靖人)
以上:3,054文字

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