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不貞行為損害賠償請求事件の地裁から家裁への移送認めた最高裁決定紹介

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令和 1年10月14日(月):初稿
○「不貞行為損害賠償請求事件の地裁から家裁への移送認めた高裁決定紹介」の続きで、その許可抗告審である平成31年2月12日最高裁決定(判タ1460号43頁)を紹介します。

○先ず事案概要復習です。
・配偶者Aが、夫Xに対し横浜家裁に離婚訴訟を提起
・XはAはYと不貞行為をした有責配偶者であると主張して,その離婚請求の棄却を求める
・XはYに対し、Aとの不貞行為を理由に損害賠償請求を横浜地裁に提起
・原々審横浜地裁は、人事訴訟法8条1項に基づき横浜家裁に移送決定
・Xが即時抗告するも原審は棄却し、Xが許可抗告の申立
・最高裁も許可抗告申立を棄却


○損害賠償請求訴訟については,地裁又は簡裁に管轄があります(裁判所法24条1号,33条1項1号)が、人事訴訟法(人訴法)は,「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求」(関連損害賠償請求)について家庭裁判所に管轄を認めています。
裁判所法第24条(裁判権)
 地方裁判所は、次の事項について裁判権を有する。
一 第33条第1項第一号の請求以外の請求に係る訴訟(第31条の3第1項第二号の人事訴訟を除く。)及び第33条第1項第一号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審


○人訴法17条1項は,人事訴訟の請求と関連損害賠償請求は一の訴えですることができる旨を定め,同条2項は,関連損害賠償請求の訴えは人事訴訟が係属している家裁に対して提起することができる旨を定め,人訴法8条1項は,人事訴訟が係属している場合において,関連損害賠償請求の訴えが第1審裁判所に提起されたときは,その第1審裁判所は関連損害賠償請求訴訟を上記人事訴訟が係属する家庭裁判所に移送することができる旨を定めており,それぞれの場合において家庭裁判所が関連損害賠償請求訴訟について自ら審理及び判断することができる旨を定めています。

人事訴訟法第17条(関連請求の併合等)
 人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求とは、民事訴訟法第136条の規定にかかわらず、一の訴えですることができる。この場合においては、当該人事訴訟に係る請求について管轄権を有する家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
2 人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求を目的とする訴えは、前項に規定する場合のほか、既に当該人事訴訟の係属する家庭裁判所にも提起することができる。この場合においては、同項後段の規定を準用する。
3 第8条第2項の規定は、前項の場合における同項の人事訴訟に係る事件及び同項の損害の賠償に関する請求に係る事件について準用する


○これらの人訴法の各規定の趣旨は,関連損害賠償請求が人事訴訟の請求原因事実を基礎とするものであり,両者の審理判断において主張立証の観点から緊密な牽連関係があり,関連損害賠償請求を人事訴訟の請求と併合し,又は反訴の提起をすることを許すことについては,当事者の立証の便宜及び訴訟経済に合致し,しかも人事訴訟の審理に別段の錯そう遅延を生ずるおそれはないことから,関連損害賠償請求を人事訴訟に併合して審理できるようにしたものです(小野瀬厚・岡健太郎「一問一答新しい人事訴訟制度」36頁)。

○関連損害賠償請求の典型例は、原告が配偶者である被告に対して不貞行為を原因とする離婚請求をした場合における,原告の被告に対する上記不貞行為を原因とする慰謝料請求があります。また、離婚訴訟の被告が離婚請求が認容された場合の予備的反訴として離婚慰謝料請求をすることも実務上しばしばみら、このような離婚慰謝料請求も関連損害賠償請求に当たります。関連損害賠償請求は、人事訴訟の当事者の一方から他方に対する請求に限られず,第三者に対する請求であってもよいとされています(昭和33年1月23日最高裁判決、最高裁判所裁判集民事30号131頁)。

○離婚訴訟の被告が,原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して,その離婚請求の棄却を求めている場合,同訴訟において,不貞行為の有無や不貞行為より前に婚姻関係が破綻していたかなどといった点が審理されることとなるのが通常で、これらの点は,被告の上記第三者を相手方として提起した上記不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟における審理内容と重複するものであり,これらの訴訟を同一手続で審理することが当事者の立証の便宜に資し,訴訟経済にかなう場合が多いものと考えらます。

○離婚訴訟の被告が,原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して,その離婚請求の棄却を求めている場合において,不貞行為第三者を相手方とする損害賠償請求訴訟を離婚訴訟の係属する家庭裁判所に提起した場合、家庭裁判所は,受理して地方裁判所への移送をしないとの取扱いがされています。

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主   文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。

理   由
1 抗告代理人○○○○らの抗告理由1について

 人事訴訟法8条1項は,家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第1審裁判所は,相当と認めるときは,申立てにより,当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができることなどを規定している。その趣旨は,人事訴訟と審理が重複する関係にある損害賠償に関する請求に係る訴訟について,当事者の立証の便宜及び訴訟経済の観点から,上記人事訴訟が係属する家庭裁判所に移送して併合審理をすることができるようにしたものと解される。

 上記の趣旨に照らせば,離婚訴訟の被告が,原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して,その離婚請求の棄却を求めている場合において,上記被告が上記第三者を相手方として提起した上記不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟は,人事訴訟法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たると解するのが相当である。

 これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 

2 同2について
 論旨は,原審の裁量に属する移送の相当性についての判断の不当をいうものであるところ,所論の点に関する原審の判断は,是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 岡部喜代子 裁判官 山崎敏充 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林景一 裁判官 宮崎裕子)
以上:2,734文字

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