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同性カップル不貞行為に損害賠償を認めた地裁判例理由部分紹介1

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令和 1年10月30日(水):初稿
○2019年09月18日19時37分弁護士ドットコムニュースで、以下の通り報じられた令和元年9月18日宇都宮地裁真岡支部判決(裁判所ウェブサイト・ウエストロー・ジャパン)理由部分を2回に分けて紹介します。

○事案は、女性同士の同性婚カップルの一方が第三者男性と不貞行為をして同性婚が破綻したことについて、不貞行為をしたカップル女性と不貞行為相手方男性に対し、連帯して慰謝料等約640万円の請求を求め、カップル女性に対してのみ110万円の支払がみとめられたものです。

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現行法では同性婚が認められていない中、アメリカで結婚し、日本で7年にわたり同居していた女性の同性カップルが「事実婚」として認められるのか争った裁判で、画期的な判決が下された。

元パートナー女性と第三者の男性の不貞行為によって、事実婚関係が破綻したとして、30代女性が2人に約630万円の損害賠償を請求していた訴訟で、宇都宮地裁真岡支部(中畑洋輔裁判官)は9月18日、元パートナー女性に対し、110万円を支払うよう命じた。

判決では、「価値観、生活形態が多様化し、婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている」とし、同性カップルの事実婚にも「実態に応じて一定の法的保護を与える必要性がある」と判断。被告女性の不貞行為を認め、慰謝料を支払うよう命じた。


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主   文 
1 被告Aは,原告に対し,110万円及びこれに対する平成29年1月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 
2 原告の被告Aに対するその余の請求及び被告Bに対する請求をいずれも棄却する。 
3 訴訟費用は,これを6分し,その5を原告の,その余を被告Aの負担とする。 
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 

事実及び理由
第1 請求
 
 被告らは,原告に対し,連帯して637万4000円及びこれに対する平成29年1月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 

第2 事案の概要 
 本件は,原告が,原告と同性婚の関係にあった被告A及び後に被告Aと婚姻した被告Bに対し,被告らが不貞行為を行った結果,原告と被告Aの同性の事実婚(内縁関係)が破綻したとして,共同不法行為に基づき,婚姻関係の解消に伴う費用等相当額337万4000円及び慰謝料300万円並びにこれらに対する不法行為(最終不貞行為)の日の翌日である平成29年1月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 


              (中略)



第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前提事実,証拠(甲8,9,22,乙1,2,原告本人,被告ら本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 
⑴ 原告と被告Aは,平成21年1月頃にレズビアンを対象にしたクラブのイベントで知り合い,同年3月から交際を開始した。その後,原告と被告Aは,平成22年2月からH市で同居を開始した。当初は被告Aが大学生であったため,収入のあった原告が主として生活費を負担していたが,同年4月,被告Aが就職をしたのに伴い,同程度の生活費を負担するようになった。 

 被告Aが同年7月に会社を退職し,平成23年4月から大学院に通うようになってからは,再び原告の方が生活費を多く負担するようになり,代わりに被告Aは家事全般を負担していた。 
 被告Aは,平成25年7月,東京都内の勤務先に就職したが,原告及び被告Aは,同年8月,原告の仕事の関係でI市に引っ越した。引っ越し後は,被告Aも原告と同程度の生活費を負担するようになったが,なお,家事については被告Aが全般を負担していた。 

⑵ 原告及び被告Aは,平成26年3月頃から,結婚について具体的な話合いを始めた。原告及び被告Aは,それぞれの親にカミングアウト(自己の性的指向等を打ち明けること)をして,お互いをパートナーとして紹介した。 

 さらに,原告及び被告Aは,同年12月29日,米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得し,同州内で結婚式を挙げた。また,平成27年5月10日には,日本においても,被告Aの母校である大学のキャンパスで結婚式を挙げ,披露宴も開催した(原告及び被告Aの一部の親族も参加している。)。 

⑶ 被告Aは,子を持つことを希望していたことから,原告と話し合い,被告Aが第三者からの精子提供による人工授精を受けることで妊娠・出産をし,原告と育てることを計画した。 
 被告Aは,平成27年7月,SNS(ミクシィ)を通じて精子提供者としての被告Bに出会い,原告にも被告Bを紹介した。原告は,第三者の精子提供に要する費用の一部を負担することに同意し,被告Aを通じて80万円を支出した。 

 被告Aは,当初,人工授精を受けることを予定していたが,被告Bの精子の状態が良くないことから,人工授精ではなく顕微授精が必要なことが判明した(そのための追加費用も必要となったが,これについては被告Bが負担し,被告Bは,原告に対して30万円を支払った。)。被告Aは,顕微授精のため被告Bが居住していたE市に行くこともあった。 

 その結果,被告Aは,平成28年9月に妊娠したことが判明したものの,同年10月22日,流産をした。原告は,被告Aの流産手術には付添いをしたが,その後の術後検診の際は,職場への説明の問題があるとして付添いをしなかった(ただし,原告は,自分の親等の場合であれば職場に説明の上,付添いをする旨述べていた。)。 

⑷ 原告は,被告Aが流産した後も,被告Bが引き続き精子提供を続けてくれるとのことであったため,将来的に子をもうけ,育てるための場所として物件の購入の検討を開始した。 
 原告は,平成28年11月には,被告Aとともにマンションの内見に行き,価格3680万円のマンションを原告単独名義で購入することとし,同年12月10日には,正式な契約を締結し,手付金として100万円を支払った。なお,被告Aは,同日はJ県に旅行に行っており(被告Aは,この際にも被告Bと面会している。),契約の締結には立ち会っていない。 

⑸ 被告Aは,医療機関を利用するのではなく,被告B本人からシリンジ法での精子提供を受けることに挑戦したいと考え,平成28年12月28日,E市の被告B宅に行ったまま,同年中は原告の下に戻らず(被告Aは,原告に対しては,自身の体調不良で帰れない旨の連絡をしていたが,それだけでなく,原告との関係が悪くなっており,帰りたくなかったことも滞在を延長した理由であった。),被告Bのアパートに宿泊し,結果的に戻ってきたのは,平成29年1月3日であった。 

⑹ 被告Aは,同日,戻るなり,原告に対し,不動産の売買契約の解約の可否等について尋ねた。原告が手付金の没収や違約金について答えると,被告Aは,「私は原告のことが好きだけど,被告Bのことも好きになった。両方と付き合っていきたいんだけど。」などと言った。 

 そのため,原告は,被告らの事情を把握したいと考え,同月4日,原告及び被告ら(被告Bについては電話で)は,3人で話合いを行った。 
 原告が被告Bに対し,被告らがこれまでに性的関係を持ったか否かについて尋ねると,被告Bは,ペッティング(挿入を除いた性行為)といった行為を中心に行ったことについては認め,原告の「セックスしたわけなんですか。」との質問に対しても,「まあ,あの,うん,そういう風に言えばそうですね。」,「もちろん,思いとどまった時ももちろんあったから,1回目は何かそういう雰囲気になっても思いとどまって,やってないです。やらなかったんですけど,次の時に,多分流産した時かな。」,「その時は,なんかもう,見てられなくて。」などと述べた。 

 他方,被告Aは,「二人(原告及び被告B)とも好きなので選べない。」,「どうしていいのか分からない。」などと言っていた。被告Bは,原告と被告Aが別れるのであれば被告Aとの関係を継続したいが,原告がよければ2番目(原告と被告Aが関係を継続したまま被告Bも被告Aと関わっていくこと)でもよいこと,今後,原告,被告A及びその子が住む家に訪問したいことなどを述べていたが,最終的には,原告と被告Aの今後の関係は,二人で決めてほしいという意向であったため,一旦は原告と被告Aの決定に委ねるということで3人での話合いを終わりにした。 
 その後,原告と被告Aは,取りあえずは被告Aが被告Bに対して連絡を取らないことを約束して同居を継続することとした。 

⑺ その後も原告と被告Aは同居していたものの,被告Aは,原告ではなく,被告Bを選ぶこととし,その旨原告に伝えた。そして,被告Aは,平成29年1月12日に原告と同居していたアパートを出て友人宅に宿泊するようになり,同月27日,同アパートから荷物を搬出し,K県に引っ越して原告との別居を開始した。 

⑻ 被告Aは,平成29年8月頃,被告Bに連絡を取り,原告と別れた旨を告げた。その後,被告らは,不妊治療を開始し,被告Aは,平成30年8月に長女を出産した。 

2 争点1(権利又は法律上保護される利益の有無)について 
⑴ 同性のカップル間の関係が内縁関係(事実婚)としての保護を受け得るか否か 
 内縁関係は婚姻関係に準じるものとして保護されるべき生活関係に当たると解される(最高裁判所昭和33年4月11日判決・民集12巻5号789頁参照)ところ,現在の我が国においては,法律上男女間での婚姻しか認められていないことから,これまでの判例・学説上も,内縁関係は当然に男女間を前提とするものと解されてきたところである。 

 しかしながら,近時,価値観や生活形態が多様化し,婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている。世界的に見ても,同性のカップル間の婚姻を法律上も認める制度を採用する国が存在するし,法律上の婚姻までは認めないとしても,同性のカップル間の関係を公的に認証する制度を採用する国もかなりの数に上っていること,日本国内においても,このような制度を採用する地方自治体が現れてきていること(甲13)は,公知の事実でもある。かかる社会情勢を踏まえると,同性のカップルであっても,その実態に応じて,一定の法的保護を与える必要性は高いということができる(婚姻届を提出することができるのに自らの意思により提出していない事実婚の場合と比べて,法律上婚姻届を提出したくても法律上それができない同性婚の場合に,およそ一切の法的保護を否定することについて合理的な理由は見いだし難い。)。また,憲法24条1項が「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し」としているのも,憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず,およそ同性婚を否定する趣旨とまでは解されないから,前記のとおり解することが憲法に反するとも認められない。 

 そうすると,法律上同性婚を認めるか否かは別論,同性のカップルであっても,その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては,それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ,不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である(なお,現行法上,婚姻が男女間に限られていることからすると,婚姻関係に準じる内縁関係(事実婚)自体は,少なくとも現時点においては,飽くまで男女間の関係に限られると解するのが相当であり,同性婚を内縁関係(事実婚)そのものと見ることはできないというべきである。)。 

⑵ 原告と被告Aが内縁関係と同視できる生活関係にあったか否か 
 そこで,更に進んで,原告と被告Aが,内縁関係と同視できる生活関係にあったと認められるか否かについて検討すると,認定事実⑴のとおり,原告及び被告Aは,平成22年2月から同棲を開始し,原告が不貞行為があったと主張する平成28年の年末から平成29年の年始までに約7年間の同棲生活を行っていたのであるから,比較的長い期間の共同生活の事実があると認められる。また,原告及び被告Aは
,同性婚が法律上認められている米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得した上,日本国内での結婚式・披露宴も行い,その関係を周囲の親しい人に明らかにすること(いわゆるカミングアウト)などもしている。さらに,原告は二人(さらに,将来的には二人の間の子)が住むためのマンションの購入を進め,他方,被告Aは,二人の間で育てる子を妊娠すべく,第三者からの精子提供を受けるなどしていることなどに照らすと,お互いを将来的なパートナーとする意思も有していると認められるのであって,これらの事実関係に照らすと,原告及び被告Aは,日本では法律上の婚姻が認められていないために正式な婚姻届の提出をすることはできず,生殖上の理由から二人双方と血のつながった子をもうけることはできないという限界はあるものの,それ以外の面では,男女間の婚姻と何ら変わらない実態を有しているということができ,内縁関係と同視できる生活関係にあったと認めることができる(被告らは,原告が締結したという保険契約を裏付ける証拠が提出されていないことや,婚姻登録及び結婚式の前後で生活費の分担状況に変わりがないことなどを主張するが,これらを踏まえても,前記の認定は左右されない。)。
 
以上:5,524文字

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