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別居中の夫から妻への未成年者面会交流を認めた高裁決定紹介

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令和 2年 2月 8日(土):初稿
○「別居中の夫から妻への未成年者面会交流を認めた家裁審判紹介」の続きで、その抗告審である平成30年11月20日東京高裁決定(判時2427号23頁)全文を紹介します。

○別居中の夫婦間で、未成年者の実父である相手方が、未成年者を監護養育している実母である抗告人に対し、相手方と未成年者が面会交流する時期、方法等につき定めることを求めたところ、原審は、抗告人に対し、面会交流をさせなければならない旨を命じる審判をしました。

○抗告人母が、原審判を不服として即時抗告をし、本件申立てを却下するとの審判に代わる裁判を求めましたが、控訴審決定も原審判と同様の頻度、時間、引渡方法、代替日の定めにより相手方と未成年者の面会交流を行うのが相当として、但し、その際には、抗告人が面会交流に立ち会うことができる旨を併せて定めるのが相当であると判断し、原審判を変更しました。

○その理由について以下の通り説明しています。
①途中中断はあるが、概ね月に1回、2時間程度の頻度で数回行われた面会交流において、対未成年者との関係において問題が見受けられず、良好に実施されたことからすると、月に1回の面会交流とするが、未成年者がより自由に相手方と面会できるよう、1回当たりの時間を5時間と長く定めることが相当
②面会交流の際に、未成年者が非監護親との交流を楽しみ、のびのびと過ごすためには、実施場所について限定することは相当ではない
③抗告人が主張する相手方による未成年者の連れ去りの懸念や従前の面会交流の状況等を考慮すると、当分の間は、抗告人の立会いの下で面会交流を実施することが相当である
④抗告人と相手方が、未成年者の父母として子の利益に十分に配慮して行動すべきことはいうまでもないところであり、このような態様による面会交流が子の福祉に反するものとはいえない
⑤本件においては、過去の経緯や抗告人の主張からすると、抗告人の相手方に対する不信感が強いことがうかがわれ、当事者間の協議により定めるべき事項について協議が調わないことが懸念されるから、面会交流の確実な実施のためには、面会交流の曜日や時間、引渡方法、代替日は、第1次的には当事者の協議によることとするが、協議が調わない場合についても定めておく

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主   文
1 原審判を次のとおり変更する。
2 抗告人は,相手方に対し,次のとおり,未成年者を相手方と面会交流させなければならない。
(1)頻度 月1回,第2週の▼曜日から◆曜日までの日のうち当事者間の協議により定める日。ただし,当事者間の協議が調わない場合は,第2●曜日とする。
(2)各回の面会交流時間 5時間とし,具体的な時間帯は当事者間の協議により定める。ただし,当事者間の協議が調わない場合は,午前10時から午後3時までとする。
(3)未成年者の引渡方法 抗告人は,面会交流開始時に,引渡場所において未成年者を相手方に引き渡し,相手方は,面会交流終了時に,引渡場所において未成年者を抗告人に引き渡す。なお,引渡場所は,当事者間の協議で定めるが,協議が調わない場合は,D駅東口ロータリーとする。
(4)代替日 未成年者の病気や幼稚園及び学校の行事等のやむを得ない事情により,上記(1)に従い定められた日程で面会交流を実施できない場合には,当事者双方は,協議により代替日を定める。なお,協議が調わない場合は,第3●曜日,第4●曜日の順に代替日とする。
3 抗告人は,前項の面会交流における相手方と未成年者との面会交流に立ち会うことができる。
4 手続費用は,第1,2審を通じ,各自の負担とする。

理   由
第1 事案の概要

1 本件は,未成年者の実父である相手方が,未成年者の実母である抗告人に対し,相手方と未成年者が面会交流する時期,方法等につき定めることを求めた事案である。
 原審は,抗告人に対し,主文第2項の要領による面会交流をさせなければならない旨を命じる審判をしたため,抗告人が,原審判を不服として即時抗告をし,本件申立てを却下するとの審判に代わる裁判を求めた。

2 抗告人の抗告の理由は,別紙「抗告理由書」記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審判と同様の頻度,時間,引渡方法,代替日の定めにより相手方と未成年者の面会交流を行うのが相当であるが,その際には,抗告人が面会交流に立ち会うことができる旨を併せて定めるのが相当であると判断する。その理由は,次のとおり補正し,2項に抗告人の補充主張に対する判断を付加するほかは,原審判の「理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1及び2に説示するとおりであるから,これを引用する。なお,略称は,原審判の例による。

(原審判の補正)
(1)3頁8行目の「平成28年4月中旬頃から,」を「抗告人と喧嘩口論となることが多いことから,抗告人と一緒に住むことに耐えられなくなり,平成28年4月中旬ころから,抗告人に知らせることなく」と,同頁10行目の「別居した。」を「別居し,転居先を抗告人に知らせなかった。」と各改める。

(2)3頁10行目末尾に「他方,抗告人は,相手方と相談して平成28年4月にローンを組んで家族3人で住むための1戸建ての家を購入したばかりであり,相手方が家を出ることなど全く予想していなかった。」を付加する。 

(3)3頁24行目の「相手方は,」の次に「平成28年6月15日,」を付加する。

(4)4頁15行目冒頭に次を付加する。
「しかし,この間,抗告人は,未成年者の生活費の負担すら拒んで親の責任を放棄している相手方には子と会うことなど認められないとして,7月以降の面会交流の実施を拒み,相手方が婚姻費用を支払ったため,9月19日に面会交流が再開されたことがあった。また,」

(5)4頁23行目冒頭から同頁26行目末尾までを削除する。

(6)5頁10行目の「不当である。」を「未成年者の成育の点からみてきわめて不適切といわざるを得ず,子の福祉に反するものというほかない。」と改める。

(7)5頁10行目の「しかし,」から6頁1行目から2行目の「認められない。」までを次のとおり改める。
「また,前記認定のとおり,相手方が未成年者と同居中,子どもの泣き声と男性の怒鳴り声が聞こえると近隣住民から児童相談所への通告がなされ,児童相談所職員が家庭訪問をした経緯があることや,家庭裁判所調査官による調査の際に,相手方の未成年者に対する関わりにつき指示的,禁止的なものが散見されたことからすると,相手方の未成年者に対する関わり方に不適切な面がなかったとまではいえない。

 しかし,父母が別居しても,子にとっては親であることには変わりはなく,非監護親からの愛情も感じられることが子の健全な成長のために重要であり,非監護親と子との面会交流が実現することにより,別居等による子の喪失感等が軽減されることが期待できるから,子の福祉に反しない限り,非監護親と子との面会交流は認められるべきである。そして,面会交流の可否については,非監護親と子との関係,子の心身の状況,子の意向及び心情,監護親と非監護親との関係その他子をめぐる一切の事情を考慮した上で,子の利益を最も優先して判断すべきである(民法766条1項参照)。

 このような観点から本件についてみると,相手方が未成年者を監護していた期間,上記のように不適切な面がなかったとはいえないが,他方そのことにより未成年者の健康状態等に問題が生じたとの事実は関係機関に対する調査等によっても認められず,未成年者は,相手方を頼り自然に触れあって甘えるなど,親子として良好な関係を保ち,相手方は,未成年者の安全,健康に配慮した工夫をしていたと認められること,未成年者が抗告人と同居するようになってから数回行われた未成年者と相手方との面会交流の場においても,不適切な関わりは認められず,抗告人が相手方に宛てた書面にも未成年者が相手方と会えることを楽しみにしている旨の記述があり,未成年者と非監護親である相手方との関係が良好であることが確認されたものである。

 抗告人は,上記のとおり相手方による未成年者の連れ去りのおそれを主張するが,前記のとおり相手方が前件審判の確定後に任意に未成年者を抗告人に引渡していること,その後数回行われた面会交流において,相手方が未成年者を連れ去るおそれを感じさせる言動をしたとは認められないこと,非監護親である相手方と未成年者との関係が良好で,未成年者自身相手方と会うことを楽しんでいることがうかがわれることなどに加え,子の福祉の観点から見た非監護者と子との面会交流の重要性等を考慮すると,未成年者と相手方との直接の面会交流を認めるのが相当である。ただし,相手方による未成年者の連れ去りのおそれがあるとする抗告人の懸念は,前記認定に照らして是認できるところであるから,抗告人の懸念にも配慮して,面会交流の具体的内容を定める必要がある。」

(8)6頁2行目の「その他,」を「なお,」と改める。

(9)6頁10行目から11行目の「面会交流実施の可否に直接関係しない。」を「,未成年者との関係において,面会交流の実施につき妨げとなる事情とは認められない。」と改める。

(10)6頁16行目冒頭から7頁3行目末尾までを次のとおり改める。
「ア 前記のとおり,途中中断はあるが,概ね月に1回,2時間程度の頻度で数回行われた面会交流において,対未成年者との関係において問題が見受けられず,良好に実施されたことからすると,月に1回の面会交流とするが,未成年者がより自由に相手方と面会できるよう,1回あたりの時間を長くすることが相当である。また,面会交流の際に,未成年者が非監護親との交流を楽しみ,のびのびと過ごすためには,実施場所について限定することは相当ではない。

イ しかし,未成年者の年齢からすると,相手方と未成年者との面会交流を子の福祉に適うように実施していくためには,監護者である抗告人の協力が不可欠であるところ,抗告人は,相手方の対応に不信を抱き,面会交流を中断したり,平成30年1月18日以降は信頼関係が破壊されたなどとして,面会交流の実施を拒んだりしていることからすると,現段階においては,未成年者と相手方との面会交流が継続的に行われるようにすることが何より大切であり,そのためには,前述のとおり,抗告人が主張する相手方による未成年者の連れ去りの懸念についても十分な配慮をすることが必要である。

 また,本件においては,未成年者が抗告人の下に戻ってから数回行われた未成年者と相手方との面会交流は,いずれも抗告人手続代理人の事務所において,抗告人が衝立越しに様子を窺える状態で,約2時間ずつ行われたにすぎない。

 このような抗告人の懸念や従前の面会交流の状況等を考慮すると,当分の間は,抗告人の立会いの下で面会交流を実施することが相当であり,抗告人と相手方が,未成年者の父母として子の利益に十分に配慮して行動すべきことはいうまでもないところであり,このような態様による面会交流が子の福祉に反するものとはいえない。なお,第三者機関の利用については,相手方が反対していることに加え,費用負担の問題が生じるところ,前記のとおり婚姻費用等の支払をめぐって面会交流が中断した経緯をも考慮すると,第三者機関の利用による面会交流は適切とはいえない。

ウ 本件においては,前記認定した過去の経緯や本件における抗告人の主張からすると,抗告人の相手方に対する不信感が強いことがうかがわれ,当事者間の協議により定めるべき事項について協議が調わないことが懸念されるから,面会交流の確実な実施のためには,面会交流の曜日や時間,引渡方法,代替日は,第1次的には当事者の協議によることとするが,協議が調わない場合についても定めておくこととする。

2 抗告人の補充主張に対する判断
 抗告人は,相手方による未成年者の連れ去りのおそれや面会交流中に相手方が未成年者に対し不適切な関わりをするおそれがあると主張し,直接の面会交流は否定されるべきであると主張する。また,原審が未成年者と相手方との交流場面観察等の調査を経なかったことにつき,必要な調査,審理が尽くされていない旨主張する。

 しかし,前記のとおり,相手方と未成年者の面会交流が子の福祉に反すると認められるような事情はうかがえず,具体的な面会交流の内容の定め方を工夫することにより,抗告人の主張する連れ去りや不適切な関わりの懸念を解消することができるというべきであるから,抗告人の主張する事由をもって直接の面会交流の実施を拒否することはできない。

また,抗告人の主張する原審における調査・審理に関しては,前件審判に係る未成年者の監護者をめぐる紛争の中で,平成28年8月から9月にかけて,家庭裁判所調査官による未成年者の状況調査が実施され,調査報告書が作成されており,その中で相手方と未成年者の関係等が明らかになっているから,重ねて子に負担をかける可能性のある調査をすることの必要性が高いとはいえず,他に原審において調査・審理が尽くされていないと認めるべき資料はないから,本件において,調査や審理が尽くされていないとはいえない。
 したがって,抗告人の主張はいずれも採用できない。

3 以上からすれば,未成年者と相手方との面会交流は,主文のとおりの内容により,抗告人の立会いを認める形で実施するのが相当である。
 もっとも,抗告人の立会いを認めたのは,前記のとおり,抗告人の懸念に配慮したものであるから,抗告人の立会いを認める形での面会交流を実施するのは,抗告人の前記懸念に対する配慮が不要と合理的に解されるまでの当分の間に限られるべきである。

 なお,相手方は,面会交流の際,〔1〕親族等の参加や〔2〕写真撮影や動画撮影をすることを求めている。しかし,非監護親の親族が監護親に対し,未成年者との面会交流を求め得る法的根拠はないから,非監護親がこれを認めるよう監護親に求めることはできない。また,前記のとおり,面会交流時の相手方の行動をとらえて,抗告人が信頼関係が失われたなどとして,面会交流が中断した経緯を踏まえると,写真撮影や動画撮影は,トラブルを防止し,安定的かつ継続的に面会交流を実施するとの観点からこれを避けることが望ましい。

 他方,抗告人は,面会交流中に抗告人の承諾を得ない〔1〕飲食物の提供,及び〔2〕プレゼントの交付を禁止するよう求めているところ,未成年者が幼いことからすれば,原則として,口にする飲食物については監護親である抗告人の承諾を得ることが望ましいが,プレゼントに関しては,その時期さえ特定すればよく,抗告人の承諾を得る必要性までは認められない。

 以上のとおりであるが,そもそも上記各点に係る相手方及び抗告人の要望は,いずれも監護親である抗告人と非監護親である相手方が,未成年者の状況等を考慮した上で,未成年者の福祉の観点から協議等により定めるべき事柄であり,本件において,これらの点について審判をもって定めるのを相当とする特段の事情も認められない。

4 よって,これと異なる原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。
平成30年11月20日 東京高等裁判所第24民事部 裁判長裁判官 村田渉 裁判官 住友隆行 裁判官 建石直子

以上:6,291文字

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