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別居父から同居母への子の面会交流申立に間接交流のみ認めた家裁審判紹介

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令和 2年 8月25日(火):初稿
○別居親である申立人(父)が、同居親である相手方(母)に対し、前件調停事件の調停条項に基づく面会交流が実施されなくなったとして、未成年者らとの面会交流を求めた事案において、間接交流のみを認めた令和元年7月19日神戸家裁審判(ウエストロージャパン)全文を紹介します。

○平成22年生まれの長女、平成24年生まれの二女について別居した父が同居している母に面会交流を申立てしたところ、父母の別居原因は父の不貞行為で、長女は,申立人父に対し,相手方母を傷つけたことを謝罪し,関係修復に努めることを求め,それに十分に応えない父と面会交流することは,母を悲しませることになると案じており、母は父に不信感を募らせ、主治医から,心身の不調を来す原因となる父との接触を避けることが望ましいと診断されたことなどが、子と申立人父との直接面会交流は相当でないと判断しています。

○もっともな判断と思ったのですが、大阪高裁で覆されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 申立人と相手方との間の神戸家庭裁判所平成27年(家イ)第259号夫婦関係調整調停事件について平成27年9月4日に成立した調停のうち,申立人と未成年者らとの面会交流に関する調停条項第5項を次のとおり変更する。
(1) 相手方は,申立人から未成年者ら宛の手紙を受け取ったときは,これを未成年者らに渡す。
(2) 相手方は,未成年者らが申立人宛に手紙を書いたときは,これを申立人に送付する。
(3) 相手方は,申立人から未成年者ら宛の誕生日又はクリスマスに贈り物を受け取ったときは,これを未成年者らに渡す。
(4) 相手方は,申立人に対し,毎年3月,7月及び11月の各末日限り,4か月以内に撮影した未成年者らの写真数葉を送付又は送信する。
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨及び実情

 本件は,父である申立人が,別居している母である相手方に対し,主文1項記載の平成27年9月4日に成立した調停に基づく申立人と未成年者らとの面会交流が,平成30年6月末頃から実施されていないとして,申立人と未成年者らが面会交流する時期,方法などについての協議を求める事案である。

第2 当裁判所の判断
1 事実の調査の結果によると,次の事実が認められる。

(1) 申立人(昭和62年○月○日生)と相手方(昭和62年○月○日生)は,相手方の妊娠を機に平成22年3月29日に婚姻し,長女である未成年者C(平成22年○月○日生。以下「長女」という。)が出生した。申立人と相手方は,平成24年7月に挙式を予定していたが,申立人が女性とメールをしていたことから,平成23年10月頃別居した。

(2) 申立人と相手方は,平成24年3月に再び同居し,挙式の準備を始めたところ,平成25年5月頃,申立人と別の女性とのLINEによるやりとりが発覚し,相手方は深く傷ついた。申立人は,同月28日,女性とは一切連絡をとらないこと,浮気があったときは離婚に応じ,慰謝料500万円を支払う旨の手書きの誓約書を作成した。

(3) 未成年者D(以下「二女」という。)は,同年○月○日に出生したところ,同年12月頃,申立人が二女出生の頃から,かつて交際していた女性と頻繁に電話をしていたことが発覚し,相手方は深く傷ついた。
 相手方は,同年12月24日,未成年者らを連れて申立人と別居した。申立人は,別居後,月に一,二回程度,長女を連れてH公園,I,映画館等に出かけ,面会交流を続けた。
 相手方は,申立人が別居した後も女性関係について誠意のある謝罪をしないばかりか,相手方や未成年者らを気遣うこともなく,金のこと以外に連絡をしてこないと感じて失望した。

(4) 相手方は,平成27年2月18日,申立人に対し,未成年者らの親権者を相手方と定めて離婚すること,養育費,財産分与及び慰謝料500万円の支払並びに年金分割を求める夫婦関係調整調停事件(神戸家庭裁判所平成27年(家イ)第259号)を申し立てた。申立人と相手方は,同年9月4日、上記調停事件において,①当分の間別居を継続すること,②申立人と相手方が同居又は離婚するまでの間,未成年者らの監護者を相手方と定め,相手方が監護養育すること,③申立人が相手方に対し支払う同月からの婚姻費用を月額20万円と定めること,④未成年者らの進学等の教育費,習い事等の費用及び未成年者らの疾病等による別段の費用については別途協議すること,⑤相手方は,申立人に対し,申立人が未成年者らと月1回程度面会交流することを認め,その日時,場所,方法については,未成年者らの意思を尊重し,その福祉に配慮し,事前に協議して定めることを合意し,調停が成立した(以下「前件調停」といい,面会交流に関する第5項を「本件実施要領」という。)。前件調停後,申立人は未成年者らと外出して面会交流が実施された。

(5) 申立人は,平成28年夏に相手方を誘い,未成年者らを連れてG旅行をし,その頃から,申立人が相手方の自宅に上がったり,翌日の仕事先によっては宿泊したりした。相手方は,平成29年2月頃,申立人と相談の上,転居した。申立人と相手方は,同年夏にも未成年者らを連れてG旅行をしたほか,Eも旅行し,平成30年6月には相手方の親族の結婚式に参列するなどした。

 相手方は,平成29年秋頃,申立人に居所を尋ねて機嫌を損ねたところ,その前後の時期から,不眠,食欲不振,頭痛等の症状があらわれるようになり,仕事中のミスが増え,未成年者らにも心配をかけた。
 相手方は,平成30年5月ころから心療内科に通院し,投薬治療を受けるようになり,同年6月8日,医師の指示により休職した。申立人は,その頃,毎日のように体調不良の相手方の自宅に顔を見せるようになったが,その約1週間後,相手方が申立人の居所を突き止めて訪れたところ,申立人が交際する女性と対面することとなった。

 申立人と相手方との関係は,これを契機に悪化し,相手方は,大きなショックを受けて,日常生活において放心したり,フラッシュバックが起きたりして,自転車で走行中にガードレールにぶつかって右手首を骨折するなどした。
 相手方は,申立人の交際女性と対面したことについて,未成年者らに話していない。
 申立人と未成年者らとの面会交流は,同月末頃から実施されなくなった。相手方の体調は快方に向かい,同年9月には復職したが,同年10月19日付け診断書には,相手方はストレス関連障害により通院治療中であり,いまだ顕著な不安,意欲低下,倦怠感,睡眠障害などの心身症状が認められ,心身ストレス増加の誘因となる申立人との接触を避けることが望ましいと記載された。

(6) 申立人は,相手方に対し,平成30年8月31日,未成年者らとの面会交流が同年6月末頃から実施されなくなったとして,面会交流する時期,方法などについての協議を求める調停事件を神戸家庭裁判所尼崎支部に申し立てたところ,同事件は,同年9月11日,神戸家庭裁判所に回付された(神戸家庭裁判所平成30年(家イ)第1370号,同第1371号)。

 他方,相手方は,同月3日,申立人に対し,未成年者らの親権者を相手方と定めて離婚すること,養育費,財産分与及び慰謝料1000万円の支払並びに年金分割を求める夫婦関係調整調停事件(同第1308号)及び婚姻費用分担金の増額を求める調停事件(同第1309号)を申し立てた。

(7) 相手方が申し立てた前記(6)の夫婦関係調整調停事件は,未成年者らの親権者を相手方と定めて離婚すること及び年金分割についての合意は調ったが,養育費及び離婚給付の額並びに面会交流の実施要領についての合意が調わず,平成31年4月9日に不成立となった。相手方は,同日,前記(6)の婚姻費用(増額)調停事件を取り下げた。
 申立人が申し立てた前記(6)の面会交流調停事件は,令和元年5月14日に不成立となり,本件審判手続に移行した。

(8) 申立人は,前記(6)の各調停手続の間に,相手方及び未成年者ら宛に手紙を書いたところ,その内容は,謝罪や感謝を繰り返し伝えるものであったが,相手方に宛てた部分には,謝罪の原因について「今回の件」と記載するにとどまり,具体的な記載はなかった。

(9) 家庭裁判所調査官(以下「家裁調査官」という。)が平成31年2月14日に当庁において未成年者らと面接した結果は,次のとおりである。
ア 長女
(ア) 申立人からのクリスマスプレゼントを受け取ったことについて,「もうすぐお引越しあるし,ママとパパが仲直りしてからって思ったけど,それじゃクリスマスじゃなくなっちゃうからって。ママが。」「パパは,ママに.ひどいことしたけど,Cちゃん(長女)達には優しいところがあるんだなって。」と述べた。また,申立人について「ママに何回もひどいことした。パパは,結婚式挙げるはずやったけど,『Cちゃん(長女)が生まれたからできなかった。』って言った。お母さんに,『Cちゃんが生まれて,結婚式ができなくてごめんね。』と言ったら,『Cちゃんが悪いわけじゃない。』って言ってくれた。じゃあ,Cが生まれてこなかったら結婚式したのかなって。結婚式するする詐欺。」などと一気に述べた。そして,家裁調査官から「ひどいこと」について問われると,「悪いこと」と答え,相手方が部屋の隅で泣いていることがあったこと,泣いている姿を見たのは,長女が小学生になってから5回ほどあり,二女と二人で相手方を抱きしめると,相手方が「『心が温かくなったよ。』と言った。」と述べた。このような出来事から,申立人が「ひどいことをした」と考えるようになったが,申立人からプレゼントをもらったことについて,嬉しく思っていた。

 また,申立人からもらった手紙について,「一番気になったのは,『今,謝る準備してます。』ってところ。『準備って何?』って。」「謝ってたら,ママが骨折したり,部屋の隅っこで泣くことなかった。」と述べ,相手方が自転車で走行中に申立人からの着信に驚いて転倒し,右手を骨折したと説明した。

(イ) 申立人と最後に会ったのは,小学校1年生か2年生の2学期ころで,G旅行に行けなくなって以降は会っていないが,それまでは,2か月に1回又はそれ以上会っていたし,申立人が相手方の自宅を訪れて未成年者らと一緒に寝たり入浴することがあったと述べた。長女は,申立人が父方祖父母宅に住んでいると思っていたが,他方,父方祖父母は申立人が相手方の自宅に住んでいると思っていたこと,相手方が申立人の住居を尋ねても申立人は教えてくれなかったと相手方から聞いたと述べた。

(ウ) 申立人が相手方宅を訪れた際の気持ちについて,「楽しい」「喜ぶ」「好き」という顔の表情を描いたカード(以下「表情カード」という。)を選んだが,「パパがママに悪いことしたって聞いてから。」は「困る」「心配」「悲しい」「恐い」という表情カードを選び,「心配」のカードを選びながら「ママが心配だから。」とつぶやいた。そして,申立人が未成年者らに対しても悪いことをしたのかを問われると,前記(ア)の結婚式のエピソードや相手方の誕生日に申立人が指輪を贈らなかったエピソードについて説明した。

 また,申立人が相手方に謝ったと聞いたとしたらどのように気持ちになるか問われると,「暖かい」「明るい」「安心」の表情カードを選び,申立人が相手方に謝るだけでなく,相手方が明るくなったり元気になることが大事なのか問われると,「うん,そう。」「ママが一番大好き。Dちゃん(二女)も好き。」と笑顔で答え,「さっきのお話だと,パパのことも好きだったんだよね?」と問われると,しばらく黙った後,「うん。」と答えた。

 また,「みんなで一緒に住みたい。家で過ごせたらよかったけど,それは無理だった。」「ちゃんとパパが謝って,ママとパパが仲直りしてくれたら,こう(理想の家族の図)なれなくても,パパがみんなに,悪いことしたら謝るって約束してくれたら,こんな顔(笑顔の表情カード)になる。」と述べた。

 さらに,「ママは,パパが好きで結婚したから,Cちゃんもパパが大事。パパとママが結婚してなかったら,生まれてきてない。でも悪いことしたら謝らないといけないのは,Cちゃんでも知ってる。ちゃんとしてほしい。」「パパに会いたいけど…仲良くなってから。家族が大事で,もう少しで離婚するかもしれない。」「パパはママの言うことを聞いてほしい。」などと述べた。

イ 二女
(ア) 申立人からプレゼントをもらったことについて「嬉しい。」と述べたほか,「(申立人と)一緒に住みたい。」と述べたが,一緒に住むことは難しいと聞いているか問われると,頷いた。また,申立人と会って何をしたいか問われると「パパと自転車したい。」と即答し,申立人が好きか問われると,頷いた。
 また,「一緒に遊びたい。ママも。」と述べ,相手方がいないときはと問われると,「Cちゃん」などと述べた。

(イ) 相手方が泣いているところを見たことがあり,「ママが泣いているのさ,かわいい。」と述べ,「かわいそう。」と言い直し,続けて「かわいくて,笑っちゃう。」とも述べた。泣いている相手方を見たときの気持ちは「悲しい」と述べ,泣いている相手方がいい気持ちになるように笑うのか問われると,頷いた。

(10) 申立人は,本件における審判期日において,①第三者機関を利用して面会交流を実施する場合には,その費用は負担する,②長女の携帯電話で電話やメッセージによる間接交流も検討できる,③面会交流が実施できないことについて相手方を責める気持ちはない,④できる限り未成年者らと会えたらいいと思っていると述べた。

(11) 相手方は,本件における審問期日において,①申立人の両親は遠方にいるため,面会交流の援助者となることは困難である,②未成年者らの申立人に対する不信感が大きく,申立人と相手方の関係が今よりも改善するまで面会交流を始めることはできない,③第三者機関を利用することも考えられない,④申立人から,なぜこのようになってしまったのかについて説明してもらえなかったため,申立人に対する不信感が最高潮に達しているが,体調の関係もあって,現時点で離婚訴訟を提起する負担に耐えられない,⑤現状では,申立人との面会交流は未成年者らのためにならないから,当面は申立人から未成年者ら宛の手紙を,手続代理人事務所を経由して受け取り,その後は相手方の実家を経由して受け取るような間接的な交流を行うことが考えられると述べた。

2 前記1の認定事実に基づいて検討する。
(1) 面会交流の実施要領は,将来に向けた親子の面会交流が円滑に行われるためのものであり,子と同居親や別居親の状況を踏まえ,子の福祉のために持続可能なものとして定められるが,子や親の状況が変化し,定められた実施要領では円滑な面会交流が持続できないときは,面会交流の実施要領を実情に合わせて変更しなければ,面会交流を巡る紛争状態が拡大するなどして,子の福祉を害する事態を招くおそれがある。

(2) 前記1によると,申立人と未成年者らとの面会交流が平成30年6月末頃から実施されなくなった直接の原因は,相手方が心身の不調により心療内科に通うようになり,申立人が相手方の自宅を頻繁に訪れていた矢先に,相手方が突き止めた申立人の居所で申立人の交際女性と対面し,申立人と相手方との関係が悪化したことにあると解される。

 申立人と相手方は,婚姻当初に申立人の女性問題が原因で別居し,再同居して二女が出生した後も,女性問題が原因で再び別居し,既に5年半ほどが経過し,その間,相手方が離婚等を求める調停を申し立て,婚姻費用の分担や面会交流などの取り決めをした前件調停が成立するなど,婚姻関係は悪化していた。

 しかしながら,申立人は,平成28年と平成29年の夏には相手方と未成年者らとG旅行をし,相手方の自宅を訪れるなどして,関係修復の兆しがあるかのように見える中,平成30年6月に,相手方が突き止めた申立人の居所で交際女性と対面したことは相手方に大きなショックを与えることとなり,相手方は,心身の不調から日常生活に支障が生じて怪我をし,部屋の隅で泣くなどして,その様子を見た未成年者らが相手方を気遣う事態となった。

 未成年者らは,申立人を慕う気持ちはあるが,特に,長女は,申立人に対し,相手方を傷つけたことを謝罪し,関係修復に努めることを求め,それに十分に応えない申立人と面会交流することは,相手方を悲しませることになると案じていると解される。
 そして,相手方は,申立人が現状に至る経緯について十分に説明しないとして不信感を募らせ,主治医から,心身の不調を来す原因となる申立人との接触を避けることが望ましいと診断されたことを併せ考慮すると,当面は申立人と未成年者らとの面会交流を実施することは相当ではない。


 そうすると,当面は,申立人が未成年者らに対し手紙を送付したり,誕生日やクリスマスにプレゼントを贈ったりし,相手方は,受け取った手紙やプレゼントを未成年者らに渡すこととし,併せて,未成年者らが手紙を書いたときは申立人に送付し,相手方が申立人に対し未成年者らの写真を定期的に送る方法による間接交流をするのが相当である。
 そこで,前件調停における本件実施要領を,主文1項のとおり変更することとする。

(3) なお,申立人を慕う気持ちのある未成年者らと申立人との面会交流が長く途絶えることは,別居親の愛情を実感し,健全な成長の糧とするという重要な意義のある面会交流の機会を奪うことになるから,申立人と未成年者らとの面会交流の再開の時期及び方法について,適宜の時期に協議を始めるのが相当である。そのためには,申立人と相手方との間の婚姻関係の紛争を含め,紛争状態の解消に向けて互いに努力することが求められる
 よって,主文のとおり審判する。 神戸家庭裁判所 (裁判官 永井尚子)
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