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離婚慰謝料賠償債務は離婚成立時に遅滞に陥るとした最高裁判決紹介

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令和 4年 3月25日(金):初稿
○平成16年11月に婚姻の届出をし、婚姻後同居し、2子をもうけるも、平成29年3月に別居するに至った夫婦の上告人と被上告人の間で、上告人が、本訴として、被上告人に対し、離婚を請求するなどし、被上告人が、反訴として、上告人に対し、離婚を請求するなどするとともに、不法行為に基づき、離婚に伴う慰謝料及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めました。

○原審が、被上告人の離婚請求を認容し、被上告人の慰謝料請求を120万円の限度で認容すべきものとした上で、上記120万円に対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求を認容したため、上告人が上告しました。

○これに対し、離婚に伴う慰謝料として上告人が負担すべき損害賠償債務は、離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥るとして、改正法の施行日前に上告人が遅滞の責任を負ったということはできず、上記債務の遅延損害金の利率は、改正法による改正後の民法404条2項所定の年3パーセントであるとし、原判決中、上記部分を認容した部分を変更した令和4年1月28日最高裁判決(裁判所ウェブサイト)を紹介します。

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主   文
1 原判決主文第1項(2)のうち,20万円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求を認容した部分を次のとおり変更する。
 上告人は,被上告人に対し,20万円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
 被上告人のその余の請求を棄却する。
2 原判決中,子の監護費用の分担に関する部分についての本件上告を却下する。
3 上告人のその余の上告を棄却する。
4 訴訟の総費用は、これを5分し,その4を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。 

理   由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由(ただし,排除された部分を除く。)について
1 上告人と被上告人は,平成16年11月に婚姻の届出をした夫婦であり,婚姻後同居し,2子をもうけたが,平成29年3月に別居するに至った。本件は,上告人が,本訴として,被上告人に対し,離婚を請求するなどし,被上告人が,反訴として,上告人に対し,離婚を請求するなどするとともに,不法行為に基づき,離婚に伴う慰謝料及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 原審は,被上告人の離婚請求を認容し,被上告人の慰謝料請求を120万円の限度で認容すべきものとした上で,要旨次のとおり判断し,上記120万円に対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求を認容すべきものとした。

 被上告人の慰謝料請求は,上告人が被上告人との婚姻関係を破綻させたことに責任があることを前提とするものであるところ,上記婚姻関係が破綻した時は,平成29年法律第44号(以下「改正法」という。)の施行日である令和2年4月1日より前であると認められるから,上記の慰謝料として上告人が負担すべき損害賠償債務の遅延損害金の利率は,改正法による改正前の民法所定の年5分と解するのが相当である。

3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)離婚に伴う慰謝料請求は,夫婦の一方が,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として損害の賠償を求めるものであり,このような損害は,離婚が成立して初めて評価されるものであるから,その請求権は,当該夫婦の離婚の成立により発生するものと解すべきである。

そして,不法行為による損害賠償債務は,損害の発生と同時に,何らの催告を要することなく,遅滞に陥るものである(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)。したがって,離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥ると解するのが相当である。


(2)以上によれば,離婚に伴う慰謝料として上告人が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥るというべきである。したがって,改正法の施行日前に上告人が遅滞の責任を負った(改正法附則17条3項参照)ということはできず,上記債務の遅延損害金の利率は,改正法による改正後の民法404条2項所定の年3パーセントである。

 なお,被上告人の慰謝料請求は,上告人との婚姻関係の破綻を生ずる原因となった上告人の個別の違法行為を理由とするものではない。そして,離婚に伴う慰謝料とは別に婚姻関係の破綻自体による慰謝料が問題となる余地はないというべきであり,被上告人の慰謝料請求は,離婚に伴う慰謝料を請求するものと解すべきである。

4 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。そして,以上に説示したところによれば,被上告人の附帯請求のうち,不服申立ての範囲である20万円に対する遅延損害金を請求する部分については,本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきである。

したがって,原判決中,上記部分を認容した部分を主文第1項のとおり変更することとし,子の監護費用の分担に関する上告については,上告受理申立書及び上告受理申立て理由書に上告受理申立て理由の記載がないからこれを却下し,その余の上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,これを棄却することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 菅野博之 裁判官 三浦守 裁判官 草野耕一 裁判官 岡村和美)
以上:2,457文字

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