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夫に対してのみ婚姻破綻慰謝料支払義務を認めた高裁判決紹介

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令和 4年 8月 9日(火):初稿
○「夫婦それぞれに婚姻破綻慰謝料支払義務を認めた家裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和2年9月3日大阪高裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○夫である被控訴人が妻である控訴人に対し、婚姻を継続し難い重大な事由があると主張して離婚を求めるとともに、未成年の子らの親権者の指定(いずれも被控訴人)及び養育費の附帯処分の申立てをし、破綻慰謝料の支払を求めて本訴を提起したのに対し、控訴人が被控訴人に対し、婚姻を継続し難い重大な事由があると主張して離婚を求めるとともに、子らの親権者の指定(いずれも控訴人)及び養育費の附帯処分の申立てをし、破綻慰謝料の支払を求めて反訴を提起しました。

○原審令和元年11月15日大津家裁判決は、双方からの離婚請求を認容し、子らの親権者を控訴人妻と定め、被控訴人夫に対して毎月各4万2000円の養育費の支払を命ずるとともに、慰謝料として、被控訴人は控訴人に対し100万円と遅延損害金の支払を、控訴人は被控訴人に対し200万円と遅延損害金の支払をするよう命じる判決を言い渡しました。

○これに対し、控訴人妻がが控訴しましたが、控訴審大阪高裁判決は、被控訴人夫と控訴人妻との婚姻関係が破綻するに至った原因は、被控訴人夫の言動等によるところが大きいというべきであり、双方の収入状況や子らの年齢等、本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、被控訴人の本訴請求(破綻慰謝料)は理由がなく、被控訴人は、控訴人に対し、養育費として子1人当たり毎月8万円を負担すべきと解するのが相当であり、被控訴人が控訴人に支払うべき慰謝料は120万円と認めるのが相当であると原審判決を変更し、控訴人妻が控訴審で追加的附帯処分として申し立てた年金分割について請求すべき按分割合は0.5と定めるのが相当であるとしました。

○この判決は、令和4年1月28日最高裁判決で一部変更になっており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 原判決主文第3項ないし第7項を次のとおり変更する。
(1)被控訴人は,控訴人に対し,本判決確定の日から長女C(平成17年○月○日生)及び長男D(平成24年○月○日生)がそれぞれ満20歳に達する日の属する月まで,1人につき,1か月8万円を毎月末日限り支払え。
(2)被控訴人は,控訴人に対し,120万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)控訴人のその余の請求を棄却する。
(4)被控訴人の一審本訴請求(慰謝料)を棄却する。
2 控訴人と被控訴人との間の別紙年金分割のための情報通知書(厚生年金保険制度)記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める。
3 訴訟費用は,第1,2審を通じて本訴・反訴ともこれを5分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決主文第3項を次のとおり変更する。
 被控訴人は,控訴人に対し,本判決確定の日から上記長女及び長男がそれぞれ満20歳に達する日の属する月まで,1人につき1か月9万円を毎月末日限り支払え。

2 原判決主文第4項及び第7項を次のとおり変更する。
 被控訴人は、控訴人に対し,150万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 原判決主文第5項を取り消す。 

4 上記取消しに係る被控訴人の請求を棄却する。

5 控訴人の当審における追加的附帯処分の申立て
 控訴人と被控訴人との間の別紙年金分割のための情報通知書記載にかかる年金分割についての請求すべき按分割合0.5と定める。

6 訴訟費用は,第1審,第2審を通じ本訴反訴とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
1 本件は,夫である被控訴人が妻である控訴人に対し,婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)があると主張して離婚を求めるとともに,未成年の子ら(以下「子ら」という。)の親権者の指定(いずれも被控訴人),養育費の附帯処分の申立てをし,破綻慰謝料の支払を求めて本訴を提起したのに対し,控訴人が被控訴人に対し,婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)があると主張して離婚を求めるとともに,子らの親権者の指定(いずれも控訴人),養育費の附帯処分の申立てをし,破綻慰謝料の支払を求めて反訴を提起した事案である。

 原審は,双方からの離婚請求を認容し,子らの親権者を控訴人と定め,被控訴人に対して養育費の支払を未成年者らが満20歳に達する日の月まで,毎月末日限り,各4万2000円の支払を命ずるとともに,慰謝料として,被控訴人は控訴人に対し100万円と離婚確定日からの法定利率による遅延損害金の支払を,控訴人は被控訴人に対し200万円と離婚確定日からの法定利率による遅延損害金の支払を命じる原判決を言い渡したところ,これを不服とする控訴人が控訴の趣旨記載の裁判を求めて控訴した(なお,控訴人は,当審において,年金分割における按分割合の指定を求める追加的附帯処分の申立てをした。)。

2 前提事実並びに主な争点及び主な争点に対する当事者の主張は,次のとおり付加訂正するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要等」の「2 前提事実」(3頁9行目から13行目まで)及び「3 主な争点に対する当事者の主張」(3頁15行目から5頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これらを引用する。
(1)原判決3頁11行目の末尾に「(甲1)」を加える。
(2)原判決3頁13行目の末尾に「(弁論の全趣旨)」を加える。
(3)原判決3頁14行目の末尾に改行して,次のとおり加える。
「(1)争点1(婚姻関係破綻の原因)について

(被控訴人の主張)
 被控訴人と控訴人とは,確かに婚姻当初から円満でない時期もあったが,被控訴人は離婚を考えていたわけではなかった。控訴人がたびたび家出をした場合であっても,時間が経過すれば戻ってくるとの認識でいた。しかし,控訴人が,婚姻時点で1442万2427円が預金されていた被控訴人の口座から多額の現金を横領し,その残額が平成29年3月30日時点で100万9695円しか残っていなかった。また,それ以外も多額の浪費をしたことによって,もはや婚姻を継続し難い状態となった。
 そこで,被控訴人は,控訴人に対し,離婚を請求する。
(控訴人の主張)
 被控訴人は,平成24年8月頃に夫婦喧嘩をして以来,控訴人と子らを無視するようになり,平成28年頃から風俗店に通うようになって,帰宅が深夜になることが増えた。
 被控訴人は,外食や飲み会,キャバクラのいわゆる同伴,アフター等にとどまらずいわゆる「ピンサロ」に行ったり,「女体盛り」の企画などにも多額の浪費を繰り返してきた。
 このような被控訴人による無視や浪費,度を超した風俗店通い等によって,これ以上,被控訴人との婚姻生活を継続していくことができないと考えた控訴人は,離婚を決意し,平成29年3月○日に子らを連れて家を出た。」

(4)原判決3頁15行目を「(2)争点2(親権者の指定)について」に訂正する。

(5)原判決4頁21行目を「(3)争点3(養育費)について」に訂正する。

(6)原判決5頁1行目の「月額6万円」を「月額9万円」に改める。

(7)原判決5頁3行目を「(4)争点4(慰謝料)について」に訂正する。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前提事実に加え,証拠(甲8,11,乙5,15,26,被控訴人及び控訴人各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,この認定事実に反する証拠は採用しない。
(1)当事者
 被控訴人(昭和49年○月生)と控訴人(昭和56年○月生)とは,平成16年11月○日に婚姻し,平成17年○月○日には長女Cが,平成24年○月○日には長男Dが誕生した。(前提事実)

(2)生活状況
 被控訴人と控訴人は,平成24年8月頃,銀行のキャッシュカードを控訴人が預かりたいとの申し出たことに関して喧嘩となり,4か月程度家庭内別居状態となったが,同年12月頃,仲直りをした。(被控訴人本人13~15頁,控訴人本人1~3頁)
 被控訴人は,平成25年頃から26年頃にかけて,子らに対し,叱るときにはきつい言葉を発したり,怒鳴ったりすることがあったほか,「ぼけ」「犬」といった暴言をしていた。特に長女は叱られて泣くと嫌な顔をされ,さらに叱られることから被控訴人の叱りにストレスを感じていた。また,被控訴人は,控訴人に対しても,「死ね」「ぼけ」「おまえ頭おかしいんか」(控訴人が作った食事に対して)「残飯」などと発言していた。(乙26,控訴人本人2~4頁)

 被控訴人と控訴人は,平成27年夏頃に再度喧嘩をした。以来,被控訴人は,もっぱら自室で過ごすようになり,控訴人や子らとの会話をしなくなり,再度家庭内別居状態になった。ただ,控訴人は,被控訴人に対し,毎月の生活費として30万円を交付していた。また,控訴人は,家庭内別居とはいえ,被控訴人の部屋を除き家庭内の掃除をし,被控訴人の分まで含めて洗濯をしていた。(甲8,乙15,被控訴人本人14~16頁,控訴人本人4,33頁)

 被控訴人は,平成26年頃から,友人とともに複数の風俗店(ピンサロ,ファッションヘルス,キャバクラ等)に通うようになった。友人とのやり取りしているラインの中には女体盛りの企画があった。被控訴人は,風俗店の女性店員と食事に行ったりしていた。(乙5,被控訴人本人6頁)

(3)別居
 控訴人は,平成29年3月○日頃に子らを連れて自宅を出て,被控訴人と別居している。(前提事実)
 控訴人が別居を決意したのは,被控訴人の風俗通いが続いていることからこれ以上無理だと考えた平成28年11月頃であり,平成29年3月に家を出たのは,子らの学年が変わるタイミングを図ったからである。(控訴人本人6頁)

 控訴人は,同居中の家計費について,必要以上の出費をしていたことを認めており,別居後の平成27年9月から5か月間,被控訴人の口座から月200万円ずつ出金し,その後も月100万円ずつ出金していた。(甲11)
 被控訴人は,控訴人に対し,1000万円の利得金返還請求訴訟(大津地方裁判所平成30年(ワ)第49号)を提起している。(乙23)

2 争点1(婚姻関係破綻の原因)について
 被控訴人も,控訴人も,本件訴訟において婚姻関係の破綻を理由に離婚を求めているので,当事者間の婚姻関係は既に修復しがたい状態にあり,既に破綻しているといえる。しかし,上記認定事実によれば,控訴人の家計管理に問題があったとしても,これによって,被控訴人及び控訴人の家計が破綻し,多額の負債等が生じていたような婚姻関係の継続が困難となる事態を生じていたとまでは認め難いものであること,一方で,被控訴人の家族に対する態度や風俗通い等の事情は,夫婦婚姻関係の継続を困難とする程度の行為であったと認めざるを得ないことに照らすと,被控訴人と控訴人との婚姻関係が破綻するに至った原因は,控訴人の浪費等の家計管理にあったというよりは,被控訴人の風俗通い等の言動によって控訴人に離婚を決意させたことがより大きいというべきである。

3 争点2(親権者の指定)について
 控訴人及び被控訴人は,いずれも子らの親権者を控訴人と指定するとの原審の判断について不服を申し立てていない。当裁判所も子らの親権者をいずれも控訴人と指定するのが相当と考えるところ,その理由は,次のとおり加えるほか,原判決5頁22行目から7頁8行目までのとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決6頁4行目「64歳」の後に「(平成31年2月調査時)」を加える。

(2)原判決6頁22行目末尾に改行して,「長女C(当審の口頭弁論終結時15歳)は,当裁判所に対し,控訴人と一緒に居たいとの意向を表明している(乙26)。」を加える。

4 争点3(養育費)について
(1)証拠によれば,双方の収入状況は次のとおりと認められる。
ア 被控訴人の平成29年における収入は給与収入が757万2411円で,事業収入が191万5607円の合計948万8018円である(甲9の1)。また,平成30年における収入は給与収入が746万1771円で,事業収入が246万2359万円の合計992万4130円である(甲9の2)。これを平均すると,970万6074円となる。

 弁論の全趣旨によれば,被控訴人の事業所得は厩務員としての給与所得に関連するものであり,担当している競走馬の競争成績によって進上金名目で金銭が支給されるものである。しかし,現実に2年度間にわたり支給されている以上,養育費算定の観点からは,給与収入の一部とするのが相当である。

イ 控訴人の令和元年の収入は,株式会社Eから36万6779円(乙24),株式会社Fから94万3731円(乙25)の合計131万0510円である。

(2)上記双方の収入状況,子の年齢に基づき,改定算定方式・算定表(令和元年度版)に当てはめた上,本件にあらわれた一切の事情を考慮すると,被控訴人は,控訴人に対し,養育費として,本判決確定日から子らが20歳に達するまでの間,子1人当たり8万円を負担すべきと解するのが相当である。

5 争点4(慰謝料)について
 争点1で判断したとおり,被控訴人と控訴人の婚姻関係が破綻した原因は被控訴人によるものが大きいというべきであり,被控訴人の控訴人に対する態度,風俗通いの頻度,未成年の子の存在,婚姻期間の長さ等,本件にあらわれた一切の事情を総合すると,被控訴人が控訴人に支払うべき慰謝料は120万円と認めるのが相当である。

 被控訴人も控訴人に対して慰謝料を求めているが,婚姻関係が破綻した責任は被控訴人の方が大きいと認められるから,その請求には理由がなく,その請求理由も,婚姻関係の清算というよりは,財産関係の精算というべきであり,現に,被控訴人は控訴人に対し利得金返還請求訴訟を提起しているのであるから,そこで解決されるべきである。したがって,被控訴人の慰謝料請求は理由がない。


 なお,本件の本訴反訴における慰謝料請求は,いずれも相手方が婚姻関係を破綻させたことに責任があることを前提とするものであるところ,前記認定のとおり婚姻関係が破綻した時期は平成29年法律第44号(施行日は令和2年4月1日)による改正前であると認められるから,慰謝料支払義務についての遅延損害金の利率は改正前民法所定の年5分と解するのが相当である。

6 年金分割
 控訴人は,当審において,年金分割について請求すべき按分割合の指定を追加的附帯処分の申立てとして求めているが,本件で認められる一切の事情を考慮すれば,その請求すべき按分割合を0.5と定めるのが相当である。

7 まとめ
 以上のとおり,被控訴人の本訴請求(破綻慰謝料)は理由がなく,控訴人の反訴請求は,離婚,親権者の指定,養育費は各8万円の限度で,慰謝料請求は120万円の限度で理由がある。これと結論が異なる原判決は変更する必要がある。また,控訴人が当審において追加的附帯処分として申し立てた年金分割について請求すべき按分割合は0.5と定めるのが相当である。

 よって,原判決を一部変更し,被控訴人の本訴請求(慰謝料)は理由がないから棄却することとして,訴訟費用の負担については,民事訴訟法67条2項,61条を適用して,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第13民事部 裁判長裁判官 木納敏和 裁判官 杉浦徳宏 裁判官 木上寛子

以上:6,375文字

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