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祖父母養子縁組をしても実父の養育費支払の定めは変わらない家裁審判紹介

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令和 8年 3月13日(金):初稿
○「祖父母養子縁組を理由に実父の養育費支払の定めを取消した高裁決定紹介」の続きで、その原審の令和4年9月29日千葉家裁審判(判例タイムズ1521号120頁、判例時報2639号74頁)全文を紹介します。

○申立人と相手方との間において、調停離婚に際して行われた養育費に関する合意により、申立人が相手方に支払うべきものとされた未成年者の養育費(未成年者が満22歳に達した翌年の3月まで1か月15万円)につき、申立人がその減額を求めました。

○これに対し、原審審判は、申立人の収入は令和2年の給与収入よりは減少していることが認められるが、その減少幅はごく僅かであり、申立人が独立を選択せざるを得ないほどに給与が減少していたとは認められず、また、Iの代表取締役及び株主は、いずれも申立人とKの2名であり、Kが申立人の意向を受けて、Iが申立人に支払う給与ないし役員報酬を調整することは十分に考えられ、さらに、経営状態が安定してくるのは、まだこれからであると考えられることからすると現在の同社の経営状態が継続することを前提とすることはできず、改定標準算定方式に基づいて作成された養育費・婚姻費用の算定表により未成年者の養育費を算定すると、前件調停条項により合意された養育費の額(月額15万円)の約93.3%に相当するから、申立人の主張する事情をすべて考慮しても、本件において、未成年者の養育費の額に影響を及ぼすべき事情の変更は認められないとして、本件申立てを却下しました。

○祖父母との養子縁組については、一般的に,未成熟の子が養子縁組をした場合には養親が第一次的扶養義務者となり,実親は,養親が十分に扶養義務を履行できないときに限りその義務を負担すると言われているのは,権利者,すなわち,当該未成熟の子の親権者が再婚し,その再婚相手と養子縁組した場合を想定した解釈であり、満82歳母方祖父と満78歳の母方祖母は該当しないとしました。

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主   文
1 本件申立てを却下する。
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 事案の概要

 申立人と相手方との間において,調停離婚に際して行われた養育費に関する合意により,申立人が相手方に支払うべきものとされた未成年者の養育費(未成年者が満22歳に達した翌年の3月まで1か月15万円)につき,申立人がその減額を求めた事案である。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

(1)申立人(昭和50年*月*日生)と相手方(昭和51年*月*日生)は,平成17年1月1日に婚姻し,平成21年*月*日に長女である未成年者をもうけたが,平成27年9月18日,未成年者の親権者を相手方と定めて調停離婚した(甲35,乙1)。

(2)上記調停離婚に際し,申立人と相手方は,未成年者の養育費として,申立人が相手方に対し,同月から未成年者が満22歳に達した翌年の3月まで1か月15万円を支払うことを合意した(乙1。以下「前件調停条項」という。)。

(3)未成年者は,平成28年7月12日,相手方の両親であるF(昭和15年*月*日生。以下「母方祖父」という。)及びG(昭和18年*月*日生。以下「母方祖母」という。)と養子縁組をした(甲3,乙3)。

(4)申立人は,平成29年9月19日からH(旧姓○○。昭和52年*月*日生。以下「H」という。)と同居を始め,平成31年1月4日,同人と婚姻した。両者の間に子はいない(甲35,45)。

(5)申立人は,令和3年3月までは株式会社○○(以下「前勤務先」という。)に勤務する給与所得者であり,令和2年には1672万0629円の給与収入を得ていた(甲33,47)が,令和3年3月限りで同社を辞め,同年4月から,同年3月31日に設立したI株式会社(以下「I」という。)の代表取締役として就労を始めた(乙4)。
 申立人の同年の給与収入は441万0315円(ただし,前勤務先からの給与収入350万円を含む。),営業等収入は303万7500円(令和3年7月から12月までのJ報酬180万円を含む。),申立人の令和3年の営業等所得は154万0677円であり,青色申告特別控除額は65万円,社会保険料控除は58万2578円であった(甲31,32)。
 他方,Hは,令和2年当時収入がなかった(甲36)。

(6)相手方は,D有限会社(平成7年から母方祖父が代表取締役を,母方祖母が取締役をそれぞれ務める会社であり,相手方も令和3年2月1日から同社の取締役を務めている。以下「D」という。)に勤務し,令和3年には同社から300万円の給与収入を得たほか,同年中に12万5600円の不動産所得があった(甲8,乙8)。
 なお,相手方の令和3年の青色申告特別控除額は10万円,社会保険料控除は36万7422円であった(乙8)。

(7)申立人は,令和3年11月11日,相手方に対し,前件調停条項で合意した養育費の減額を求めて調停を申し立てた(当裁判所令和3年(家イ)第1447号)が,令和4年7月12日,調停不成立となり,本件審判手続に移行した。

2 検討
(1)総論
 申立人と相手方は,調停離婚に際し,未成年者の養育費の支払について前件調停条項のとおり合意している。
 もっとも,家庭裁判所は,扶養関係に関する協議又は審判がされた場合であっても,その協議又は審判の基礎とされた事情に変更が生じ,従前の協議又は審判の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には,事情の変更があったものとして,その内容の変更又は取消しをすることができる。
 そこで,前件調停条項のとおり合意された時点から,事情の変更があったといえるか否かにつき検討する。

(2)申立人の主張
 申立人は,
〔1〕未成年者が母方祖父及び母方祖母と養子縁組をしたため,申立人は現在第一次的扶養義務者ではない,
〔2〕申立人は転職により収入が減少した一方,相手方はDでの勤務を始め収入が増加した,
〔3〕申立人は再婚し,再婚相手である無収入のHを扶養している,
として,上記(1)の事情の変更があった旨主張する。

 このうち,上記〔1〕については,一般的に,未成熟の子が養子縁組をした場合には養親が第一次的扶養義務者となり,実親は,養親が十分に扶養義務を履行できないときに限りその義務を負担すると言われているのは,権利者,すなわち,当該未成熟の子の親権者が再婚し,その再婚相手と養子縁組した場合を想定した解釈であり(甲12,42,43),また,第一次的扶養義務者となる養親が,いわゆる生産年齢(15歳以上64歳以下)であること,あるいは,これを外れている場合であっても,少なくとも当面は就労を継続できる蓋然性が認められることを当然の前提としていると解すべきである。

しかし,これを本件についてみると,未成年者が養子縁組をしたことは認められるが,その養親となったのは満82歳の母方祖父と満78歳の母方祖母であって,上記解釈が想定する事案と異なる上,両名の年齢からすると,両名は生産年齢を大きく外れ,当面就労を継続できる蓋然性があるともいい難いものといわざるを得ない。

 したがって,未成年者と母方祖父及び母方祖母との養子縁組により,申立人が第一次的扶養義務を免れた旨の申立人の上記〔1〕の主張は,採用することができない。
 また,上記〔3〕についても,令和2年当時,Hに収入がなかったことは認められるものの,申立人とHとの間に子はなく,これ以外にHが就労できない事情があるともうかがわれない本件においては,同人に潜在的稼働能力もないとして,Hの生活費指数を考慮すること,すなわち,申立人がHを扶養していることにより未成年者に対する養育費の支払を減額することが相当であるとは認められない。したがって,申立人の上記〔3〕の主張も,採用することができない。

 他方,上記〔2〕については,申立人が転職し,その収入の額が,少なくとも確定申告書等の記載からすると大きく減少していること,相手方が申立人との離婚後就職し,その収入が増加していると認められることからすると,上記(1)の事情の変更があったといえるか否かは,当事者双方の総収入を認定し,これをもとに養育費の額を具体的に算定してみないと判断できない(なお,養育費の算定においては,父母双方の総収入に基づいてその負担を決するという考え方を基本として,迅速に算定する必要があることから,理論値に基づく公租公課,統計資料に基づく推計される特別経費等により判断する,いわゆる改定標準算定方式・改定算定表(司法研修所編「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」(一般財団法人法曹会)参照)の考え方により算定することが相当である。)。そこで,まず,当事者双方の具体的な収入の額について検討する。

(3)申立人の収入額
ア 令和3年4月以降の実収入をもとに算定した額
 前記認定事実によれば,申立人は令和3年4月に転職し,同月以降の総収入は,Iからの給与収入90万円を年換算した120万円(90万円÷9×12)と,営業等所得をもとに算定することになる。営業等所得については,確定申告書記載の営業等所得154万0677円に青色申告特別控除額65万円を加え,さらに確定申告書記載の営業等所得にはJ報酬(月額30万円)が6か月分しか含まれていないが,同年7月以降継続してJ報酬が支払われていることからすると,これが支払われなかった3か月分についても加算して算定することが相当であるから,上記3か月分のJ報酬90万円を加えた309万0677円を年換算した412万0903円(309万0677円÷9×12。ただし,1円未満四捨五入。以下同じ。)を事業所得と認定するのが相当である(なお,確定申告書による場合,その社会保険料控除欄の記載は給与所得から控除された社会保険料の額であるから,これを控除すべきではない。)。

 上記事業所得を給与収入の額に換算するには,「1-(職業費の割合)」で除する必要があるところ,改定標準算定方式では職業費の割合は概ね15%とされているから,令和3年4月以降の申立人の総収入(給与収入としての額)は,上記事業所得を「1-0.15」で除した484万8121円(412万0903円÷(1-0.15))を前記給与収入120万円に加えた604万8121円となる。

イ 上記アの総収入額を用いることの相当性
 相手方は,申立人が前勤務先を辞めて独立することに制約はないが,現在の状況を見る限り独立する際の見立てが十分であったとはうかがわれず,独立及びその後の経営のリスクを未成年者に負わせるべきでないこと,申立人はIの代表取締役であり,収入額をその意思で変更できる立場であることからすると,養育費を算定するに当たっては,令和3年の実収入を基準とするのではなく,転職前(令和2年当時)を基準とすべきであると主張する。

 これに対し,申立人は,前勤務先の売上げをけん引していた当時の代表取締役が令和2年9月末に退任し(甲46,47),前勤務先の経営状況が悪化して申立人の給与も下げられることになったため,独立を選択せざるを得なくなったものであるし、Iの代表取締役は申立人だけでなく,申立外K(以下「K」という。)も同社の代表取締役であり(乙4),同社の株主も申立人とKの2名である(甲13)ため,申立人の一存でその収入額を変更することはできないと主張する。

 そこで検討するに,申立人が前勤務先を退職する直前の令和3年1月から3月までの給与収入の額(350万円)を年換算すると1400万円となり,令和2年の給与収入よりは減少していることが認められるが,上記認定した令和3年4月以降の総収入に比べると,その減少幅はごく僅かであり,申立人が独立を選択せざるを得ないほどに給与が減少していたとは認められない。また,Iの代表取締役及び株主は,いずれも申立人とKの2名であり,申立人のいわゆるワンマン会社とまではいえないものの,Iにおける両名の立場はほぼ同等であって(甲13~17によれば,保有株式数もJとしての報酬額も同一である。),Kが申立人の意向を受けて,Iが申立人に支払う給与ないし役員報酬を調整することは十分に考えられる。 

 申立人は,Iの経営状態からすると,申立人に支払われている給与は相当額であるとも主張するが,Iは令和3年3月に設立されたばかりであり,経営状態が安定してくるのは,まだこれからであると考えられることからすると,現在の同社の経営状態が継続することを前提とすることはできない。

ウ 小括
 以上によれば,申立人の総収入につき,令和3年4月以降の実収入をもとに算定することは相当でなく,少なくとも令和3年1月から3月までの前勤務先からの給与収入350万円を年換算した1400万円を基準とするのが相当である。

(4)相手方の収入額
 前件調停条項を合意するに際し,相手方の総収入をいくらと見積もったかについては,当事者間に争いがあるが,現時点の総収入は,令和3年の給与収入及び不動産所得をもとに算定すると,不動産所得12万5600円に青色申告特別控除額10万円を加えて給与収入額に換算した26万5412円((12万5600円+10万円)÷(1-0.15))を給与収入に加えた326万5412円となる。

(5)検討
 上記(3),(4)の当事者双方の収入額をもとに,改定標準算定方式に基づいて作成された養育費・婚姻費用の算定表により未成年者の養育費を算定すると,12~14万円の範囲と14~16万円の範囲の境界線上に該当し,未成年者の養育費の額はおおむね月額14万円程度と算定される。この算定額は,前件調停条項により合意された養育費の額(月額15万円)の約93.3%に相当し,その差額からすると,前記(1)の事情の変更があったと認めることはできない。
 したがって,申立人の前記〔2〕の主張も,採用することができない。

(6)まとめ
 以上のとおり,申立人の主張する事情を全て考慮しても,本件において,未成年者の養育費の額に影響を及ぼすべき事情の変更は認められない。

3 結語
 よって,前件調停条項において合意された養育費の額を変更すべき事情は認められず,申立人の本件申立てには理由がないから,これを却下することとし,主文のとおり審判する。
裁判官 鈴木雄輔
以上:5,883文字

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