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地震による工作物崩壊により他に与えた損害について1

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平成23年 3月25日(金):初稿
○「震災関連法律相談開始に当たり」に記載した相談例について具体的に検討を始めます。
相談例で多いのは表記「地震による工作物崩壊により他に与えた損害」についての賠償責任如何です。先ず以下の例について検討します。
・損壊家屋の隣家への落下による損害相談
A;今回の大地震で自宅屋根が崩れ落ちて、隣家の駐車場の自動車に落ちて、自動車屋根部分が大きく凹み、その修理代を損害として請求されている。この損害賠償義務があるか。
B;同様事案として、今回の大地震で、自己敷地内擁壁が崩れて、隣家の敷地内が大量の土砂に埋まり、その撤去を求められている。その撤去義務があるか。


○これらの地震等災害に伴う法律関係について最適の参考資料は、関東弁護士連合会編集新日本法規出版株式会社発行「Q&A災害時の法律実務ハンドブック」ですが、現在絶版となっており、さすがのamazonでも「この本は現在お取り扱い出来ません」となっています。但し、次のアドレスで、この書籍を筆頭に、災害関係有益文献がZIPファイルやPDFファイルとして公開されています。本書籍についてはZIPファイルを解凍してPDFファイルにして印刷すれば文献として使えます。
http://pub.idisk-just.com/fview/RTXUhRbPR9yIq2wEx97daW3A0_SivWEfhm5xlunT9VtzJPdR4lgwnSkb1o9U-LizB0bYxQC3dQkwljviGYfjzCz7p5zBY_cDW6u_B_B-CoJYwnf0hsnqSIj9LOizUawM
次に「裁判実務体系震災関係訴訟法」がありますが、こちらは在庫はあるようです。幸い当事務所ではいずれも所持していました。これまで殆ど参照することはありませんでしたが、震災関連相談を実施するに当たり、勉強していきます。

○上記設例で適用になる民法条文は
第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

です。
 この規定は、自宅屋根は「土地の工作物」に該当し「設置又は保存に瑕疵」があれば、占有者は過失がなければ責任は負いませんが、所有者は、たとえ過失がなくても損害賠償責任を負うことになります。
 問題は、崩れ落ちた自宅屋根について「設置又は保存に瑕疵」があったかどうかです。

○この「設置又は保存」の「瑕疵」とは、「そのものがその種類において本来備えているべき(特に)安全性に関して性状や設備を欠いていること」と定義されており、要求される安全性は通常のもので足りると解説されています。従って地震で崩れ落ちた自宅屋根が、要求される通常の安全性が確保されたものであれば、「瑕疵」には該当せず、損害賠償責任がないとされます。

○ここで難問は「要求される通常の安全性が確保されたもの」と評価出来るかどうかです。ブロック塀倒壊で多数の死者を出した昭和53年6月の宮城県沖地震の事案で昭和56年5月8日仙台地裁判決は、
①ブロック塀の設置保存の「瑕疵」とは「ブロック塀の安全性を欠いていること」、
②その「安全性」は「当該工作物の通常備えるべき相対的なもの」で「通常発生することが予想される地震動に耐えうるもの」、
③当時の仙台地方では「通常発生することが予想される地震動」とは「震度5を予想しておけばよい」(当時の仙台地方での予測可能な最大級の地震は震度5)
④問題のブロック塀が地盤、地質、施行状況等諸事情に照らして震度5の地震に耐え得る安全性を欠いていたとの立証がない
としてブロック塀の下敷きとなった方の遺族からの請求を棄却しました。

○この裁判例での結論では、震度5に耐えうるような土地の造成・工作物の建築であれば、その所有者・販売業者・請負業者の不法行為責任、瑕疵担保責任は瑕疵・過失不存在がなく、不可抗力として免責され、今回の東北・関東大震災での仙台での震度は6強とのとてつもない大きさであり、原則免責となります。しかし、近隣の居宅では屋根が落ちないのにその家だけ落ちたと言う様な事情があると損害を受けた側は納得出来ないはずです。このような場合について更に掘り下げた検討が必要です。

以上:1,811文字

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