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ファウルボールによる失明について責任を認めた札幌地裁判決理由紹介1

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平成27年 4月 6日(月):初稿
○私も年に1,2回、仙台市内にあるkoboスタジアムで楽天の試合をバックネット裏で観戦することがあります。ファウルボールが飛んできてもバックネットで遮られますが、ネットがない1塁側、3塁側の内野席に勢いのあるファイルボールが飛び込むことがあり、危険だなと思うこともあります。

○1塁側内野席でこのファイルボールを右顔面で受け止め、その衝撃で右眼を失明した女性が、球場と球場を管理する札幌市相手に損害賠償の訴えを提起していました。その判決結果が、以下の産経新聞 3月26日(木)13時55分配信ニュースです。

○平成27年3月26日札幌地裁判決(裁判所ウエブサイト)は、プロ野球の試合を観戦中、打者の打ったファウルボールが原告の顔面に直撃し右眼球破裂により失明した事故について、球場に設けられていた安全設備等は、原告席付近で観戦する観客に対するものとしては通常有すべき安全性を欠いていたとして、工作物責任(民法717条1項)及び営造物責任上の瑕疵(国家賠償法2条1項)を認定し、原告の北海道日本ハムファイターズと札幌市に対する損害賠償請求の殆どを認めました。以下、その判断理由について3回に分けて紹介します。

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「試合中のファウル当たって失明」4190万円賠償命令 日ハムなど敗訴
産経新聞 3月26日(木)13時55分配信


 札幌ドーム(札幌市)の内野席でプロ野球観戦中にファウルボールが当たって右目を失明した市内の30代女性が北海道日本ハムファイターズなどに計約4650万円の損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁(長谷川恭弘裁判長)は26日、球団などに約4190万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 女性側は「投手は打者の思い通りに打撃させないことを目指して投球するため、プロ野球選手でも打球の方向や角度は予想困難だ。老若男女を問わず安心して観戦できる防球ネットなどを備えておくべきだった」と主張。球団側は「観客は打球に注意しさえすればファウルボールの直撃を回避できる。事故当時、十分な対策を講じていた」と反論していた。

 訴状によると、女性は平成22年8月21日、夫や子ども3人と日本ハム対西武戦を観戦していた際、ライナー性のファウルボールの直撃を顔に受け、右顔面骨骨折や右眼球破裂の重傷を負った。


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4 当裁判所の判断
1 争点1(本件事故の態様(本件打球の軌道及び原告の挙動))について
(1) 原告が本件試合の観戦に訪れた経緯や本件事故の状況について,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

ア 被告ファイターズは,本件ドームで行われる本件球団のプロ野球の試合に小学生を招待する企画を実施しており,原告の長男及び長女が通う小学校においても,その保護者に対し,同企画を案内する文書(甲1)が配布された。原告は,長男及び長女が観戦を希望したため,Aとともに3人の子を連れて内野自由席で観戦することにした。上記文書には,保護者の責任で事故のないよう十分配慮するようお願いする旨記載されており,原告もこの記載を読んだ上で観戦を申し込んだ。(甲1,37,原告本人)

イ 平成22年8月21日(本件事故当日),Aは,原告に先立ち,長男及び長女とともに,本件ドームを訪れ,招待された長男及び長女の観戦チケットを交換するとともに,原告,A及び二男の観戦チケットを購入した上,本件ドームに入場し,1塁側内野席の中の18通路10列26番から30番までの座席を確保した。
 原告は,同日午後3時頃,二男とともに本件ドームを訪れ,Aから入場ゲート越しに観戦チケットを受け取り,本件ドームに入場した。

 原告は,Aが確保していた座席へ行った。原告,長女及び次男は,通路側の3つの座席をグラウンドが見えにくいという理由で何回か入れ替わったが,本件事故の時点では,原告が通路に面した1塁側内野席18通路10列30番の座席(本件座席)に座り,その左隣に二男が座り,さらにその左隣に長女が座っており,A及び長男は離席していた。(甲2,3,原告本人)

ウ 本件事故当日の午後3時53分頃,本件球団が攻撃側となる本件試合の3回裏,投手が投じた初球に対して打者がバットで打ったところ,1塁側内野席方向にファウルボール(本件打球)が飛んだ。
 本件打球は,若干の弧を描きつつも低い弾道で,かつボールの回転による横方向への動きも僅かに含みながら飛来した。打者が本件打球を放ってから本件打球が本件座席に到達して原告の顔面に衝突するまでの時間は,約2秒であり,本件打球がグラウンドと1塁側内野席との境に設置されていたラバーフェンス上を通過するときのグラウンド面からの高さは,5.5ないし6メートル程度であった。(甲13,36,乙イ15,16,21,36,40)

エ 原告は,打者が本件打球を打った後,本件打球の行方を見ておらず,隣の席の二男の様子をうかがおうと僅かに下に顔を向け,視線を上げたときには打球がすぐ目の前にきており,本件打球が原告の右顔面に衝突した(本件事故)。(甲37,原告本人[調書10,11,25,26,37,38頁])

(2) なお,本件打球が飛来した状況(前記(1)ウ)について,被告らは,原告が提出した解析結果(甲13)等の信用性に疑問がある旨主張する。
 そして,本件打球の画像に防球ネットを設置していた頃の画像を重ねた写真(乙イ21)によると,本件打球は,グラウンド面からの高さが約5メートルの防球ネットの上をある程度超えていたものと考えられる。しかし,どの程度超えていたのかは明らかでない。

 原告が提出した解析結果である「ファールボール激突事故における打球軌道シミュレーション」(甲13)をみると,その作成者であるCは,機械工学を専門とする大学院教授であり,その有する専門技術的な知見に基づき,本件試合の映像,本件ドームの設計図書,本件座席と打席との位置関係を示した図面(甲12)を基礎資料として,計算及びシミュレーションを行い,本件打球が1塁側内野席前のフェンスの真上を通過した際の高さを5.75メートル,打撃から原告に衝突したときまでの時間を1.724秒,そのときの水平速度を時速130.36キロメートルと算出しており,その計算過程等に明らかな誤りは認められず,基本的に信用できるものである。

 もっとも,上記解析は,本件打球へのスピンによる影響を考慮することは容易ではないとした上でスピンによる横方向への力の作用(加速度)を仮定して計算していること(甲13[2,5頁]),本件打球の打ち上げ角度を14.3度と設定している点(同4頁)はAが作成した甲12号証に基づくものと考えられるが,これ自体必ずしも厳密なものとは認められないこと,C自身も触れるとおり考慮していない諸条件の影響を受け得ることなどからすると,上記解析結果は,誤差を含んだものである。なお,Aが作成した甲36号証については,静止画像をつなぎ合わせたパノラマ画像をよりどころに本件打球がフェンスの真上を通過したときの高さを5.40メートルと算出しているところ,静止画像自体にぶれがある点や映像を平面に投影して計算していることが認められ,誤差が生じている可能性が相当程度あるものと考えられ,その正確性には疑問があるが,上記解析結果と矛盾しないものである。
 そうすると,本件打球がグラウンドと1塁側内野席との境に設置されていたラバーフェンス上を通過するときのグラウンド面からの高さは,前記認定のとおり,5.5ないし6メートル程度と認められる。

(3) また,本件打球の飛行時間(前記(1)ウ)について,原告は,解析結果(甲13)である1.724秒前後であると主張し,他方,被告ファイターズは,本件打球が撮影されている動画にタイムカウンターを付したもの(乙イ36)を提出した上,2.0666秒ないし2.1333秒で,原告の主張する時間より長いと主張する。
 前記(2)のとおり,上記解析結果(甲13)は,基本的には信用できるものであるが,飛行時間についてもある程度の誤差を含んでいるものと認められ,他方,本件打球が撮影されている動画にタイムカウンターを付したもの(乙イ36)の正確性についても必ずしも明らかではなく,本件打球の飛行時間は,前記認定のとおり,約2秒と認められる。

以上:3,490文字

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