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ペット(猫)を遺産相続した場合の動物愛護法に基づく責任基礎の基礎

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令和 1年 9月10日(火):初稿
○母と離別し、5年ほど一人暮らしをしていた父が突然死去し、一人息子が唯一の相続人となり、父の遺産を全て引き継ぎました。遺産としては約1000万円の預金とペットの猫(5歳)がありました。一人息子は、猫が嫌いで、父が亡くなった後は、猫好きの友人に一時的にお世話を依頼していますが、その一人息子から自分では猫を飼う気がないので、友人に引き取って貰えない場合は、最終的には殺処分を考えていますが、殺処分は可能でしょうかとの質問を受けました。

○私自身家族で2匹の猫を飼って現在3年目になります。いまでは猫も大切な家族の一員であり、殺処分なんておよそ考えられませんが、嫌いな人にとっては、単なる物であり、殺処分も厭わないようです。しかし、以下の動物愛護法や施行規則・環境省告示等の規制からは簡単に殺処分はできないと思われます。

先ず動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)及びその施行規則等での動物殺処分に関連すると思われる一般人に関する規制を概観します。

第2条(基本原則)
 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
2 何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。

第7条(動物の所有者又は占有者の責務等)
 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。
2 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、その予防のために必要な注意を払うように努めなければならない。
3 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
5 動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
6 動物の所有者は、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置として環境大臣が定めるものを講ずるように努めなければならない。
7 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる。

第31条(飼養又は保管の方法)
 特定動物飼養者は、その許可に係る飼養又は保管をするには、当該特定動物に係る特定飼養施設の点検を定期的に行うこと、当該特定動物についてその許可を受けていることを明らかにすることその他の環境省令で定める方法によらなければならない。

第35条(犬及び猫の引取り)
 都道府県等(都道府県及び指定都市、地方自治法第252条の22第1項の中核市(以下「中核市」という。)その他政令で定める市(特別区を含む。以下同じ。)をいう。以下同じ。)は、犬又は猫の引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。ただし、犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第7条第4項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。
2 前項本文の規定により都道府県等が犬又は猫を引き取る場合には、都道府県知事等(都道府県等の長をいう。以下同じ。)は、その犬又は猫を引き取るべき場所を指定することができる。
3 第一項本文及び前項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。
4 都道府県知事等は、第1項本文(前項において準用する場合を含む。次項、第7項及び第8項において同じ。)の規定により引取りを行つた犬又は猫について、殺処分がなくなることを目指して、所有者がいると推測されるものについてはその所有者を発見し、当該所有者に返還するよう努めるとともに、所有者がいないと推測されるもの、所有者から引取りを求められたもの又は所有者の発見ができないものについてはその飼養を希望する者を募集し、当該希望する者に譲り渡すよう努めるものとする。

動物の愛護及び管理に関する法律施行規則第21条の2(犬猫の引取りを求める相当の事由がないと認められる場合)
 法第35条第1項 ただし書の環境省令で定める場合は、次のいずれかに該当する場合とする。ただし、次のいずれかに該当する場合であっても、生活環境の保全上の支障を防止するために必要と認められる場合については、この限りでない。
一 犬猫等販売業者から引取りを求められた場合
二 引取りを繰り返し求められた場合
三 子犬 又は子猫の引取りを求められた場合であって、当該引取りを求める者が都道府県等からの繁殖を制限するための措置に関する指示に従っていない場合
四 犬又は猫の老齢又は疾病を理由として引取りを求められた場合
五 引取りを求める犬又は猫の飼養が困難であるとは認められない理由により引取りを求められた場合
六 あらかじめ引取りを求める犬又は猫の譲渡先を見つけるための取組を行っていない場合
七 前各号に掲げるもののほか、法第7条第4項 の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として都道府県 等の条例、規則等に定める場合

家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(平成14年環境省告示第37号、最終改正:平成25年環境省告示第82号)
第5 猫の飼養及び保管に関する基準

4 猫の所有者は、やむを得ず猫を継続して飼養することができなくなった場合には、適正に飼養することのできる者に当該猫を譲渡するように努めること。なお、都道府県等に引取りを求めても、終生飼養の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合には、これが拒否される可能性があることについて十分認識すること。

第40条(動物を殺す場合の方法)
 動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない。
2 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、前項の方法に関し必要な事項を定めることができる。

第44条
 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、100万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、100万円以下の罰金に処する。
4 前3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬は 虫類に属するもの


○動物愛護法第7条で、猫を飼っていた亡父には、猫がその命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)努力義務を負っており、相続人の一人息子は相続によってその終生飼養努力義務を負う地位を引き継ぎます。従って自ら殺処分を行うことは到底許されず、自ら殺処分を行えば2年以下の懲役、放置すれば100万円以下の罰金を負う犯罪者となります。

○終生飼養義務を全うできない場合、仙台では保健所に引き取りを申し出ることになりますが、1000万円の預貯金も相続しており、動物愛護法施行規則第21条の2の犬猫の引取りを求める相当の事由がないと認められる場合に該当しそうです。環境省告示の猫の飼養及び保管に関する基準では、引き取り拒否されることを十分認識するよう求められます。

○環境省告示「猫の飼養及び保管に関する基準」によれば、猫の所有者は、やむを得ず猫を継続して飼養することができなくなった場合には、適正に飼養することのできる者に当該猫を譲渡するように努めることが必要です。この努力を怠ったまま保健所に引き取りを求めても財産があれば引取りを求める相当の事由がないと認められて拒否されそうです。結局、相続で得た預貯金を一部取り崩して持参金付で引き取り先を探すしかないように思えます。
以上:3,794文字

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