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民法第718条動物占有者責任を否定した地裁判決紹介

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令和 7年 8月29日(金):初稿
○ネット検索するとドッグランとは、犬が自由に遊んだり運動したりするために作られた場所で、通常、リードを外して犬を遊ばせることができ、ストレス解消や運動不足の解消に役立ち、ドッグランは、柵で囲まれた安全な空間で、他の犬と交流することも可能です。室内と屋外の施設があり、快適に犬を遊ばせることができますと説明されています。

○このドッグランにおいて、被告の占有する犬が原告に衝突し、これによって原告が傷害を負ったと主張して、民法動物占有者責任(民法718条1項本文)に基づき、①損害賠償金約3523万円、②確定遅延損害金、③遅延損害金の支払を求めました。

第718条(動物の占有者等の責任)
 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。


○これに対し、被告は、本件事故当時、リードを持って被告犬の行動に合わせて数メートル程度の距離に位置していたと認められ、被告犬の行動や状態に応じて被告犬を制止したりリードをつけたりすることができるように被告犬の動静を監視していたということができ、また、被告は、本件ドッグランの中央付近に位置していた原告が被告犬を含む他の犬の動静を注視しないことまで予見することはできなかったと認められるから、被告は被告犬の動静について相当の注意を払っていたと認めることができるとして、原告の請求を棄却した令和7年1月20日神戸地裁尼崎支部判決(裁判所ウェブサイト)関連部分を紹介します。

○この判決は控訴審で覆されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、3739万6538円及びうち3527万9753円に対する令和5年2月6日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 原告は、被告に対し、ドッグランにおいて被告の占有する犬が原告に衝突し、これによって原告が傷害を負ったと主張して、動物占有者責任(民法718条1項本文)に基づき、〔1〕損害賠償金3527万9753円、〔2〕〔1〕に対する令和3年2月6日(事故日)から令和5年2月5日までの民法所定の年3%の割合による確定遅延損害金211万6785円、〔3〕〔1〕に対する同月6日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める。

2 前提事実(証拠等を付記したものを除き、当事者間に争いがない。)
(1)原告は、昭和57年12月生まれの男性である(甲2の1)。
(2)事故の発生
 令和3年2月6日、大阪市甲区内のg(以下「本件ドッグラン」という。)において、被告の占有する犬(ゴールデンレトリバー。以下「被告犬」という。)が原告の後方から衝突した(かかる限度では当事者間に争いがない。以下「本件事故」という。)。

3 争点及び争点に関する当事者の主張
 本件の争点は次のとおりであり、これに対する当事者の主張の要旨は別紙1のとおりである。
(1)被告が相当の注意を払ったか否か(争点1)
(2)本件事故と原告の損害の因果関係の存否(争点2)
(3)原告の損害の有無及び額(争点3)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前記前提事実に加えて、証拠(甲36、乙18のほか各掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(1)本件ドッグランについて
 本件ドッグランには大型犬が利用するエリアと小型犬が利用するエリアが存在し、両エリアは別紙2のとおりフェンスによって区切られていた(甲14、15の1~3、原告本人〔1頁〕)。

(2)本件事故時の利用状況
ア 原告は、本件事故当日、配偶者と原告犬と共に本件ドッグランを訪れた。
イ 被告は、被告犬と共に本件ドッグランを訪れた。被告は、被告犬にリードをつけた状態で数分歩いた後、被告犬のリードを外した(被告本人〔2、9頁〕。
ウ 被告犬は、本件事故前の時点で、原告犬を追い掛けるなどしていた(甲17の2、18、19の1~4、原告本人〔3頁〕、被告本人〔3頁〕)。
エ 原告は、本件事故直前、本件ドッグランの中央付近にいて、南側のフェンス付近の白い椅子に座っていた配偶者の方を見ていた。すると、被告犬が原告の後方から衝突した。本件事故当時の原告がいた位置や被告犬が原告に衝突する態様は、概ね別紙2のとおりである。(甲1、14、19の1、原告本人〔8頁〕、被告本人〔3頁〕)
オ 本件事故当時、原告ら家族及び被告ら家族の他に、二、三組程度が本件ドッグランを利用していた(原告本人〔27頁〕)。

2 争点1(被告が相当の注意を払ったか否か)について
(1)原告の主張する被告の過失について
ア 原告は、被告には、被告犬が興奮した状態にあったのに、リードを離して本件ドッグランに入場させた、再度リードをつけるなどしなかった過失(過失1、2)があると主張する。
 確かに、本件事故の前段階において、原告犬と被告犬は走りながら追いかけっこをしていた(認定事実(2)ウ)。もっとも、かかる挙動から被告犬がリードをつけて制御しなければならないような状態にあったとは直ちに認められない。原告は、何が起こるか分からず危険と感じたため双方の犬をずっと観察して目を離していなかったと供述する一方、原告が被告犬を動画撮影した理由については原告犬が他の犬に追い掛けられるのは初めてで驚いた、実際にけんかをする様子もなく楽しそうに見えたと供述する(原告本人〔5、28頁〕)。本件の全証拠によっても、お互いに走り合いながら、犬どうしがぶつかるなどの事態は生じたとは認められない。そして、路上などであれば格別、ドッグランという施設の性質に照らして、被告犬がリードを外した状態で走っていたことが不適切ということもできない。

 また、原告は、被告犬を遊ばせる前の時点において、被告からの声掛けはなく、原告犬と被告犬の相性確認もなかった旨供述するが(原告本人〔28頁〕)、双方の犬が追いかけっこをしている様子を見て仲良く遊んでいるように感じて原告から被告にやめさせるよう声を掛けることもなかったというのであるから、原告の供述する事実関係は前記認定を左右するものではない。
 したがって,原告の主張する前記過失(過失1、2)が被告にあったとは認められない。 

イ また、原告は、被告が被告犬の動静を監視していたのであれば、原告に衝突し得ることを予見し得たのに、制止しなかった過失(過失3)があると主張する。
 しかしながら、ドッグランである以上、犬が動き回ったり、走り回ったりすることは利用者であれば誰でも予見することができる。原告はそのような場所の中央付近に立っていたのであるから(認定事実(2)エ)、本件ドッグランを利用する犬の動静については注視して、その動静に応じて衝突を避けるべき義務を原告も負っていたというべきである。本件事故当時、原告は南側にあった白いテーブル付近を見ており(認定事実(2)エ)、本件ドッグランを利用する犬から視線を切らしていたということができる。

 なお、原告は、本件事故当時、原告犬は配偶者と共に南側の白いテーブル付近にいたと主張し、これに沿う供述をする(原告本人〔8頁〕)。しかしながら、原告は前記のとおり供述する一方で、原告犬は走っていなかったものの具体的に何をしていたか分からないとも供述する(原告本人〔17頁〕)。仮に、原告犬が南側の白いテーブル付近にいたならば、当該場所から相応に離れた本件ドッグランの中央付近に原告が立っていたのは、本件ドッグランを利用する複数の犬(認定事実(2)オ)が走り回ることが想定されることに照らして危険であり、不自然ということができる。したがって、本件事故当時、原告犬が南側の白いテーブル付近にいたと認めることはできず、原告犬が本件事故当時にいた位置を認めるに足りる的確な証拠はない。

 そして、被告は、中央付近に立っている利用者に対して、本件ドッグランを利用している犬の動静を注視して、その動静に応じた行動をとることを期待し、予見していたというべきであり、利用者が他の犬の動静を注視しないという事態まで予見することはできなかった。また、被告犬は初めから原告に向かって走っていた訳ではなく、本件ドッグラン全体を走り回っていたのであるから(甲17の2、被告本人〔10、16頁〕)、本件事故直前に原告にぶつかり得る可能性を認識し、予見したとしても、原告が適切な行動をとらないことまでは予見し得なかったのであるから、衝突という結果の回避可能性はなかったと認められる。
 したがって、原告の主張する前記過失(過失3)が被告にあったとは認められない。


(2)被告が相当の注意を払ったかについて
 被告は、本件事故当時、リードを持って被告犬の行動に合わせて数メートル程度の距離に位置していたと認められ(被告本人〔3、10、16頁〕。本件事故前の挙動〔甲19の2〕と整合するほか、ドッグランを利用する者の行動として自然であり、信用することができる。)、被告犬の行動や状態に応じて被告犬を制止したりリードをつけたりすることができるように被告犬の動静を監視していたということができる。これに加えて前記(1)イに説示したことも併せれば、被告は、本件ドッグランの中央付近に位置していた原告が被告犬を含む他の犬の動静を注視しないことまで予見することはできなかったと認められる。そうすると、被告は被告犬の動静について相当の注意を払っていたと認めることができる。

第4 結論
 よって、その余の点(争点2、3)について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所尼崎支部第1民事部 裁判官 木村航晟

(別紙1)争点に対する当事者の主張の要旨
(省略)

以上:4,146文字

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