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マンション管理組合は共用部分の占有者に当たらないとした高裁判決紹介

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令和 8年 2月25日(水):初稿
○「マンション管理組合は共用部分の占有者に当たるとした最高裁判決紹介」の続きで、その原審控訴審令和5年9月27日東京高裁判決(判時2612号38頁)関連部分を紹介します。

○区分所有建物である共同住宅の区分所有者の1人で203号室について共有持分を有し、同室に居住する一審原告が、上階からの漏水事故が4回にわたり発生したと主張して、上階の302号室の区分所有者で同室に居住する一審被告Y1に対し、
(1)〔1〕一審被告Y1が302号室のリフォーム工事を行った際に一審被告組合に対してした誓約又は〔2〕本件建物の管理規約に基づいて、本件事故が発生した箇所につき、本件各調査及び本件各補修を行うよう求め、
(2)〔1〕本件誓約の債務不履行、〔2〕不法行為又は〔3〕工作物責任に基づく損害賠償請求として、203号室の補修費用、同室の資産価値下落分の補償金等合計1400万1328円及び遅延損害金の支払(一審被告組合との連帯支払)を求めました。

○さらに本件建物の区分所有者全員で構成され本件建物を管理する一審被告組合に対し、
(1)本件規約に基づいて、本件事故が発生した箇所につき本件各調査及び本件各補修を行うよう求め、
(2)〔1〕工作物責任、〔2〕本件規約に基づく管理義務の債務不履行に基づく損害賠償請求として、上記と同額の賠償金及び遅遅延損害金の支払(一審被告Y1との連帯支払)を求めました。

○原判決が、一審原告の一審被告Y1に対する請求を38万9593円及び遅延損害金の支払を求める限度で認容し、一審原告の一審被告組合に対する請求を1009万7247円及び遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却したところ、一審原告及び一審被告らがそれぞれ控訴しました。

○これに対し、控訴審東京高裁判決は、一審原告の請求は、一審被告Y1に対しては40万4176円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、一審原告による一審被告組合の管理義務違反を理由とする債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償請求は理由がないとして、原判決を変更しました。

○控訴審判決は、その理由として、本件建物の共用部分の占有者は、管理組合である一審被告組合ではなく、本件建物の区分所有者の全員であるとし、管理組合が、同規約に基づき、区分所有者全員との関係において、上記債務の履行を引受ける義務を負うものであると解したとしても、このことから当然に、管理組合が、民法717条1項に基づく損害賠償請求権を有する「他人」に対して、直接に損害賠償支払義務を負い、同債務を履行すべき責任を負うものと解することはできないとしました。一審原告としては、到底、納得出来ない理由でした。

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主   文
1 一審原告の控訴に基づき、
(1)原判決主文1項及び3項のうち一審被告Y1に係る部分を次のとおり変更する。
(2)一審被告Y1は、一審原告に対し、40万4176円及びこれに対する平成27年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)一審原告の一審被告Y1に対するその余の請求を棄却する。
2 一審被告組合の控訴に基づき、
(1)原判決中、一審被告組合の敗訴部分を取り消す。
(2)上記取消部分に係る一審原告の一審被告組合に対する請求を棄却する。
3 一審原告のその余の控訴及び一審被告Y1の控訴をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、一審原告と一審被告組合との関係では、第1、2審とも一審原告の負担とし、一審原告及び一審被告Y1との関係では、第1、2審ともこれを100分し、その97を一審原告の、その余を一審被告Y1の各負担とする。
5 この判決は、1項(2)に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 一審原告の控訴の趣旨
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)一審被告らは、原判決別紙物件目録記載の建物について原判決別紙要調査補修事項目録記載の工事をせよ。
(3)一審被告らは、一審原告に対し、連帯して、1400万1328円及びこれに対する平成27年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 一審被告Y1の控訴の趣旨
(1)原判決中、一審被告Y1敗訴部分を取り消す。
(2)上記取消部分に係る一審原告の請求を棄却する。

3 一審被告組合の控訴の趣旨
(1)原判決中、一審被告組合敗訴部分を取り消す。
(2)上記取消部分に係る一審原告の請求を棄却する。

第2 事案の概要(略称は、本判決で定義するもののほか、原判決のものを用いる。)
1 本件は、区分所有建物である共同住宅(名称:●●《略》●●)(本件建物)の区分所有者の1人で203号室について共有持分を有し、同室に居住する一審原告が、平成25年10月26日から平成27年3月10日にかけて上階からの漏水事故が4回にわたり発生したと主張して(これらの漏水事故を併せて「本件事故」)、上階の302号室の区分所有者で同室に居住する一審被告Y1に対し、
(1)〔1〕一審被告Y1が平成20年10月頃から同年12月頃までの間に302号室のリフォーム工事を行った際に一審被告組合に対してした誓約(本件誓約)又は〔2〕本件建物の管理規約(本件規約)に基づいて、本件事故が発生した箇所につき、原判決別紙要調査補修事項目録記載1の各調査(本件各調査)及び同記載2の各補修(本件各補修)を行うよう求め、
(2)〔1〕本件誓約の債務不履行(平成29年法律第44号による改正前の民法(改正前民法)415条)、〔2〕不法行為(民法709条)又は〔3〕工作物責任(民法717条1項本文若しくは同項ただし書)に基づく損害賠償請求として、203号室の補修費用、同室の資産価値下落分の補償金等合計1400万1328円及びこれに対する最終の漏水事故発生日である平成27年3月10日から支払済みまでの改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(一審被告組合との連帯支払)を求めるとともに、
本件建物の区分所有者全員で構成され本件建物を管理する一審被告組合に対し、
(1)本件規約に基づいて、本件事故が発生した箇所につき本件各調査及び本件各補修を行うよう求め、
(2)〔1〕工作物責任(民法717条1項本文若しくは同項ただし書)、〔2〕本件規約に基づく管理義務の債務不履行(改正前民法415条)又は〔3〕不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求として、上記と同額の賠償金及び遅遅延損害金の支払(一審被告Y1との連帯支払)を求める事案である。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、原審と異なり、一審原告の請求は、一審被告Y1に対しては40万4176円及びこれに対する最終の漏水事故発生日である平成27年3月10日から支払済みまでの改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、一審被告組合に対しては理由がないと判断する。その理由は、以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」1から8までに記載のとおりであるからこれを引用する。


     (中略)

イ 一審被告組合に対する請求の可否
(ア)一審原告は、上記の本件建物の瑕疵はいずれも共用部分として区分所有者全員が占有及び所有(共有)する部分に存するものであり、区分所有者全員が負う民法717条1項本文に基づく損害賠償債務は区分所有者全員に総有的に帰属するものであるから、このような債務に関する訴訟においては、区分所有者全員で構成される管理組合に当事者適格が認められる旨を主張する。

 そこで検討するに、本件建物の共用部分の占有者は、管理組合である一審被告組合ではなく、本件建物の区分所有者の全員であると認められる。そして、一審被告組合が区分所有者全員との関係において共用部分を管理する責任を負うとしても、このことから直ちに民法717条1項本文の「占有者」として、これに基づく損害賠償責任を負うものと解することはできない。

 この点について、原判決は、区分所有建物の区分所有者が、区分所有者全員からなる組合を構成する目的には、共用部分の使用によって生じる権利義務関係の処理を組合に一本化することも含まれ、区分所有建物の区分所有者全員からなる管理組合の管理規約に、同組合が共用部分を管理し、その修繕を同組合の負担において行う旨の定めがあるときは、この定めは、区分所有者全員が、同組合に対し、共用部分の保存の瑕疵により第三者が損害を被った場合に発生することになる民法717条1項に基づく損害賠償債務について、それを履行する権限を付与するという趣旨を含むものと解するのが相当であると判示する。

しかしながら、上記管理規約の定めから当然に、管理組合において、区分所有者全員が負うべき民法717条1項に基づく損害賠償債務の履行をする権限を付与され、区分所有者全員との関係で同債務の履行を引き受ける義務を負うことになるものと認めることは困難である。特に、当該債務について、その負担の時期及び負担額が特定していない段階において、管理組合が、同規約に基づいて無条件に上記損害賠償債務について区分所有者全員との関係で債務の履行引受義務を負うものと解することは相当ではないというべきである。

また、仮に、管理組合が、同規約に基づき、区分所有者全員との関係において、上記債務の履行を引受ける義務を負うものであると解したとしても、このことから当然に、管理組合が、民法717条1項に基づく損害賠償請求権を有する「他人」に対して、直接に損害賠償支払義務を負い、同債務を履行すべき責任を負うものと解することはできない。
 以上のとおりであるから、一審原告は、一審被告組合に対し、民法717条1項に基づく損害賠償請求権を有するものとは解されない。

(イ)また、一審原告は、一審被告組合が、本件規約20条本文並びに31条(1)及び(2)によって本件建物の共用部分を管理する義務を負うものである以上、この管理義務違反に基づき、一審原告に対し、改正前民法415条又は民法709条に基づく損害賠償義務を負う旨を主張する。

 しかしながら、本件で提出された証拠によっても、本件建物の北側外壁のコンクリート躯体部分及び3階床下のスラブ部分(2階天井のスラブ部分)に隙間ないし亀裂を生じた原因は明らかであるとはいえないのであって、そのような瑕疵が生じた原因が一審被告組合の管理義務違反に基づくものであるとは認められないし、一審被告組合は、本件事故に対し、必要な範囲で原因を調査し、適宜の措置を実施してきたものであって、この点においても一審被告組合の管理義務違反を認めることはできない。

 そもそも、一審被告組合は、区分所有法3条を根拠として、区分所有者が共同して建物等の管理を行う目的で構成された団体(管理組合)であって、区分所有者が拠出した管理費等を原資とする予算の範囲内で、区分所有者の多数の意思に従い、補修工事等をすることをその目的の一つとするものである。一審被告組合は、本件建物の建築業者でも修繕業者でもないのであるから、本件建物が瑕疵のない状態にあることを個々の区分所有者との関係において保証すべき立場にあるともいえない。このような一審被告組合の立場を踏まえれば、一審原告に対し、本件建物における上記瑕疵の発生や、これに伴う本件事故の発生が、一審被告組合の管理義務違反によるものであるとは認め難いものである。

(ウ)以上のとおりであるから、一審原告による一審被告組合の管理義務違反を理由とする債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。


     (中略)

(7)弁護士費用
 一審原告は、本件訴訟の追行を弁護士に委任せざるを得なかったもので、訴訟の難易及び認容額等を考慮すれば、本件事故と相当因果関係を有する弁護士費用としては5万円を認めるのが相当である。」

(25)原判決34頁24行目の「損害賠償請求をしたものであるから、同請求により、」を「損害賠償請求(催告)をし、その後6か月以内に民事調停の申立てをした上、同調停の不成立後1か月以内に本件訴えを提起したものであるから、以上により、」と改める。

(26)原判決35頁17行目の「効力があるものではなく」を「一審被告Y1に法的義務を生じさせるものではなく」と、同頁23行目の「で効力があるものではなく」を「の権利義務を定めたものではなく」とそれぞれ改める。

(27)原判決36頁9行目の「前記事実関係」の次に「(前提事実(2))」を加える。

2 結論
 以上より、一審原告の請求は、一審被告Y1に対しては40万4176円及びこれに対する最終の漏水事故発生日である平成27年3月10日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、一審被告組合に対する請求は理由がないからこれを棄却すべきところ、これと異なる原判決は一部失当であるから、一審被告Y1に関する部分は、一審原告の控訴に基づき上記の範囲で変更し、一審被告組合に関する部分は、その控訴に基づき取消した上で取消部分に係る一審原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 
(裁判長裁判官 木納敏和 裁判官 真辺朋子 森剛)
以上:5,464文字

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