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2009/10/16 第15号 示談弁護士(4)

平成24年 2月29日(水):初稿
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

 前回は、示談弁護士にとって一番大切な教えは、古代中国の大富豪である陶朱公から学ばなくてはいけないというところで終わりました。

 いつものことながら記憶で書きますので少し違っているかもしれませんが、大体こんな話です。

 陶朱公には、3人の息子がいました。長男は、陶朱公が貧しい中、冨を築くのを手伝った苦労人です。それだけにお金の大切さを良く知っています。

 一方、三男は、陶朱公が大金持ちになってから生まれた、苦労知らずのお坊ちゃまです。

 あるとき、次男が他国で、その国の法を犯したということで、死刑の判決をうけました。それを聞いた陶朱公は、苦労知らずの三男に大金を持たせて、次男の助命活動に行かせようとします。

 ところが、家の者達は大反対するんですね。あんなボンボンの三男ではなくて、長男を行かせるべきだと言うのです。そこで、陶朱公もやむを得ず長男を行かせますが、そのときに何度も長男に念を押しました。「その国に着いたら、何々という人のところに行き、このお金を全て渡して、ただその人に全てを任せなさい」と。

 長男はその人に大金を全て渡して、お願いします。お金の大切さを知っている人ですから、そんな大金を渡すのは不安だったのですが、陶朱公に言われていたのでやむを得ず渡したわけです。

 その人は、その国の実力者でして、国王のところに出かけていきます。

 国王に、「国に不吉なことがあるので、王として徳を積むために、罪人に恩赦を与える必要があります。」と言って、次男たち死刑囚を助けたわけです。

 ところが長男は、そんなことは知りません。いきなり恩赦になって次男が助かったと思いますから、その人に渡したお金が無駄に思えてきたのですね。そこで、その人のところに行き、「お渡ししたお金は、まだ残っているでしょうか。」などと聞いたわけです。聞かれた人は大変怒りまして、「まだそこにあるからもって帰りなさい。」と長男にいうや、また王のところに出かけていき、「不吉なことがなくなりましたので、恩赦の必要はありません。」と進言します。その結果、次男は処刑されてしまいました。

 事の顛末を聞いた陶朱公は言います。「こんなことになるのではと心配して、自分は三男を使いに出そうとしたのだ。およそ、助命活動などと言うものは、お金を惜しむ気持ちがあったらうまくいかない。お金の苦労をしてきた長男と違い、苦労知らずの三男ならば、少しもお金を惜しまなかったはずだ。」どうです?なかなか深い話しでしょう。ここで私が言いたいのは、まあ私など、昔から苦労知らずの甘ちゃんだと言われ続けてきた人間ですが、そんな人間の方が役に立つこともある、ということではないのです。(分かりにくいなぁ)更に、「弁護士費用をケチるなよ!」ということでもありません。(ほ、ホントです!!)示談というのは、まさに、現代の助命活動です。被害者にお金を受け取っていただけるだけでも大変ありがたいことなのに、示談金額で駆け引きするのでは、まとまる話もまとまらなくなります。

 そこで、「示談弁護士」心得の第1条はこうなります。

 「示談弁護士の役割は、被害者を説得して賠償金を安くすることではない。気持ちよく賠償金を支払うように、依頼者を説得することだ。」陶朱公もきっと、「その通りだ!」と言ってくれると思うのです。

 
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 弁護士より一言

 今回の話しを読んだ妻から、「陶朱公っていう人は、まるでパパみたい。」と言われました。若き日には范蠡の名前で越王勾践に仕え、越を復興した大軍師に似ていると言われて、正直嬉しかった。そこで、理由を聞いてみたんですね。

 「長男には最初から、『助命活動にはお金を惜しんではいけない。たとえ頼んだ人と無関係に次男が助かったように見えても、お金についてあれこれいってはいけない』と、理由と一緒によく教えてあげればよかったでしょう。ちゃんと理由も言わないでおいて、後でうまくいかないと、『俺はちゃんと分かっていたんだ。』って言うところがパパとそっくり。」だそうです。ううう。励みになりますので、引き続きコメントをお願いします。

 (2009年10月16日第15号)
以上:1,684文字

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