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2011/ 8/ 1 第58号 錦の御旗と人権弁護士(1)

平成24年 2月29日(水):初稿
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

 戦争をする場合、何より大切なのは「正当性」なんだそうです。「正義は我にあり!」という自信があるからこそ、徹底的に戦えるんですね。

 アメリカがイラクを攻撃したときも、「石油が欲しいから戦争します!」なんて言ってたら、誰の共感も得られません。やはり、「大量破壊兵器を作っている、悪の権化から世界を守ります!」という正義の理由が必要です。

 足利尊氏の名参謀であった赤松円心は、その辺のところをよく理解していたようです。尊氏が合戦に負けたのは、敵には「皇室を守る官軍だ」という正当性があるのに、尊氏の方にはそれがないからだと考えたわけです。

 そこで、尊氏に対して進言したのが、有名な錦の御旗戦法!です。

 「凡そ合戦には旗を以って本とす。官軍は錦の御旗を先だつ」自分達も錦の御旗を担ぎ出して、官軍になってしまおうということですね。いわゆる南北朝時代の始まりです。なんだか、日本史教養講座みたいになっちゃいましたけど、弁護士の仕事の多くは訴訟その他の紛争、つまりは合戦関連なんです。そうしますと、合戦に勝つためには、やはり「錦の御旗」が必要です。

 そこで、弁護士にとっての「錦の御旗」はなんだろうかと考えたところ、それは「人権」ではないかと思いいたったわけです。

 少し前までは、絶対的な国家権力がかなり無茶なことをしてました。

 それに対抗するための錦の御旗として、「人権」は非常に役に立ったようです。「国に逆らうのは、個人の我が儘だ!」なんて言われて、しゅんとしていた人たちに、自分達が正しいのだという自信を与えた「人権」という錦の御旗の役割は、非常に高く評価できると思っています。

 しかしながら、現在では、国民相互の利害をどのように調整するのかが一番の課題になっています。このように、パイを国民の間でどう分けるのかという問題を解決するためツールとして、「人権」は害の方が大きいように思えるのです。

 例えば、戦後の経済発展のもと、多くの人が地方から都会に出てきました。当然、都会の便利の良いところはそんなにありませんから、多くの人を収容するとなると、住居を高層化する必要があります。

 一方、側に高層ビルが建つと、それまで近所に住んでいた人たちの日当たりが悪くなります。そこで、両者の利害をどう調整するかの問題が起こるわけです。

 ところが、この問題に対して、多くの弁護士が「日照権」だなんて「人権」を持ってきて、それまで都会に不動産を持っていた人たちに肩入れしたわけです。新しく都会に来た人たちが、手ごろな値段の高層マンションに住むことは許さんというわけです。

 「それまで住んでいた人たちの既得権益を守らせろ!」なんて言ったのでは合戦に勝てません。錦の御旗たる「日照権」を振りかざして戦ったのは、戦術としてはうまいなあ、と勉強になります。

 しかしだからと言って、それで何か正義が実現できたとは、とてもじゃないけど思えませんね。これは、足利尊氏が錦の御旗を掲げたのを見て、「うまいなあ!」と感心することはあっても、尊皇の思いに感服しないのと同じことです。

 こんなこと、取り立てて言わなくても、常識だと思っていたのですが、どうも弁護士の中では超少数意見のようです。そんなわけで、次回に続きます。

 
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 弁護士より一言

 次女は先日、小学校の社会見学で、県警本部に行くことになりました。

 そこで妻が、「大人しくしないとだめよ。警察で騒いだりしたら、おまわりさんに直ぐに逮捕されちゃうのよ!」などと言ってからかいました。

 すると娘は、目を輝かせて、元気いっぱい答えたのです。「知ってる!友達もみんなそう言ってたよ。去年、男の子が逮捕されたんだって。本当に怖いよね。」ほ、本当ですか!!娘はお陰さまで、逮捕されることなく、警察見学から戻って参りました。

 (2011年8月1日第58号)
以上:1,557文字

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