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2016年07月16日発行第177号”6人の怒れる裁判員(2)”

平成28年 7月18日(月):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成28年7月16日発行第177号「6人の怒れる裁判員(2)」をお届けします。

○裁判員裁判の導入が決まったとき、私自身も素人の方々が事実認定をして量刑まで決めるなんて、ホントに出来るだろうかと疑問を感じ、その導入にはむしろ反対の気持ちを持っていました。

○平成20年私の最後の国選刑事事件となったある事件は、仙台から車で1時間30分ほどかかるある田舎で起こった事件で、孫が祖母を木刀で滅多打ちして、救急搬送され入院加療を継続し、私が弁護を担当したときは単なる傷害事件として受任したものです。ところが、事件から数十日後に祖母が死亡し、傷害致死事件に切り替わり、裁判員裁判予行演習事件となりました。

○公判前整理手続が始まり、不勉強な私は、裁判員裁判予行演習事件と気づかず、後半整理手続で裁判期日指定されたとき、午前10時から午後5時まで丸一日指定され、そんなに長時間必要ないのではと裁判官に問い合わせて、赤っ恥をかきました(^^;)。この事件は、後で知ったのですが、週刊誌にも取り上げられ地元では大いに話題になったものでした。

○この事案は、30代の若者が、80代の祖母を長時間木刀で滅多打ちにして、お岩様みたいな顔にさせて、最終的には死亡させた悪質な事案で、私の感覚では、到底、執行猶予なんてつけるべきではない事案でした。私は、被告人に裁判前に数回面会しましたが、到底、執行猶予はつかない事案だが、できる限り刑が軽くなるように頑張りますと伝えて、当時、可能なことはし、通常の国選刑事事件の数倍の長さの弁論要旨を作成して判決に臨みました。

○結果は、検察官の求刑を半分に短くする判決で、その認定理由等も納得できるもので、何より、被告人自身が納得して、判決後丁寧な礼状を頂き、苦労が報われ感激しました。裁判員事件でも予行演習で実際裁判員が居ませんでしたが、仮に裁判員が入った場合、さらに刑が、重くなるか、軽くなるかは、判断の難しい事件でした。悪質な性犯罪等は、裁判員によって重罰化しているとのことですが、事案によっては刑が軽くなる場合があるのかどうか、興味あるところです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

6人の怒れる裁判員(2)


「普通の人達である裁判員に、ちゃんとした裁判なんかできるはずがない。」なんて言う弁護士は沢山います。正直私も、疑問に思っていました。

アメリカのミュージカルに「オクラホマ」ってありますよね。軽快な音楽は、みんな知っているはずです。両想いの恋人がいる女性に横恋慕し、ストーカーとなった男の話です。その男ともみ合う中で、恋人は男を殺してしまいます。しかし、その場で「陪審裁判」が行われ、満場一致で恋人は無罪となり、そのまま新婚旅行にでかけるという、凄い話です!さすがにこれを見て私も、「こんなに簡単に陪審裁判で無罪にしちゃって良いんかいな?」と心配になった一方、一般市民の意思が、ストレートに反映される制度というのは、魅力的にも思えました。

民衆による裁判ということで、一番有名なのは、「ソクラテスの弁明」ですね。戦争に負けて、人心が荒んでいるアテネが舞台です。若者を堕落させたという罪で、ソクラテスが裁判にかけられます。500人の一般市民によって裁かれるわけです。その裁判でのソクラテスの弁明を、弟子のプラトンが感動的に記録しています。ソクラテスの時代にも、弁護を担当するプロがいて、そういう人達は、市民の同情をひくようにしなさいなんて、ソクラテスに助言をします。これって、現代の弁護士も、というより、私自身よくやります。裁判になると、とりあえず被告人に「最近結婚したとか、子供が生まれたとか、祖父母が病気で先がないとか、そんな事情があったら教えてください!」なんてお願いするのです。(おいおい。。。)

しかしソクラテス大先生は、こんなお涙頂戴式の弁護を潔しとせず、弁護のプロに依頼することなく、真正面から自分についての弁明を行います。「弁明」の中でソクラテスは、アテネを「惰眠を貪る馬」に、自分自身を「アブ」にたとえます。自分はうるさいかもしれないが、馬を起こすアブのようなものだというわけです。アブを受け入れて目を覚ますよりも、アブを殺してしまうことを選んではいけないということですね。

こんなこと言われたら、アテネの市民は面白くないでしょう。(わ、私も「今の弁護士会は既得権益を守るだけの、惰眠をむさぼる馬だ。」なんて批判していますから、十分気を付けないと。。。)もっとも、ソクラテス大先生の場合、最初から有罪を目指して「弁明」していたようにも思えちゃいます。少なくとも私には、アテネの「裁判員」たちが、それほどひどい判断をしたとは、思えないのです。

日本でも、裁判員の制度をぼろくそに言う人がかなりいるようです。裁判員になると、昼間に何日も時間を拘束されるので、「そんなの引き受けるのは、仕事もしていないような人たちだけだ。」みたいに言う人もいました。こういうこと言うの、弁護士に多いのです。しかし、私は10件近く裁判員裁判をやりましたが、基本的には皆さん常識的な社会人だなというのが実感です。皆さん真剣に、事件に向き合っているなと感じました。

確かに、前回も書きましたが、裁判員制度が始まって、特に性犯罪など、刑がとても重くなりました。自分の依頼者が、裁判員によって、それまでよりもはるかに重く処分されるのは、非常につらいものがあります。それでも、一般の人達の「常識」が、裁判に入ってきている事実は、重く受け止めたいと思うのです。私は、刑事裁判に限らず、日本の司法には、裁判官、検察官、弁護士といった「プロ」の間だけで通用する「常識」が沢山あると思っています。それらについて、一般市民はほとんど何も知らされていません。刑事裁判以外にも多数ある、それら「常識」は、一般市民にとって、本当に「常識」といえるのか?
ということで、もう1回続きます。

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◇ 弁護士より一言
富士山に登るということを、皆に宣伝してきました。子供たちにも、富士登山の危険など、さんざん話したところ、とても心配されました。「ぱぱ、やばくない?生きて帰れるの?」あまり心配させるといけないので、「大丈夫。5合目まではバスで行くから。」と正直に伝えたところ、「なんだ、パパもゆとりだね!」こ、こいつらぁ。でも、子供たちでお金を出し合って、酸素ボンベを買ってくれたのでした。
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