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2017年06月16日発行第199号”消極弁護士の熱情”

平成29年 6月17日(土):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成29年6月16日発行第199号「消極弁護士の熱情」をお届けします。

○「勘定」と「感情」は、いずれもひらがなでは「かんじょう」ですが、どちらかと言えば、前者は「かん」、後者は「じょう」にアクセントがあり、発音では別の言葉に聞こえます。区別するためアカウントの「かんじょう」、エモーションの「かんじょう」と説明することもあります。

○人間の行動原理は、「勘定」よりも「感情」が遙かに優先します。「感情」にとらわれているお客様に、ここは「勘定」を優先して考えた方が宜しいですよなんてアドバイスは、全く耳に入りません。「勘定」は、「損得」に繋がりますが、「損得」なんかどうでもよい、「損」を承知でも「感情」を優先します。

○「感情」に続く言葉は「……にとらわれる」で、「勘定」に続く言葉は「……ができる」で、どちらかというと、「感情」はマイナスに、「勘定」はプラスに評価されます。目先の「感情」にとらわれ、大きな「損」を被ろうとしているお客様を「感情」のとらわれから「解放」するのが弁護士の重要な役割でもありますが、そのためには弁護士もその感情に同化する作業も必要です。どこまで同化すべきか、そのさじ加減が大変難しいのですが。


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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

消極弁護士の熱情


高校生の娘たちから、英語の勉強について質問を受けます。どれも凄く難しいのです。「理屈じゃなく、覚えろ!」なんて言ってしまうのです。考えてみますと、私が学生のころにも、理解できないことはありました。passive(受身な、消極的な)とpassion(熱情)の関係なんか、すごく不思議でした。同じ系列の単語なのに、正反対の意味です。暗記するのに苦労したのです。

その後、2つの単語は実は同じものを現わしているのだと知りました。実体は同じで、それに対する評価だけが違うのです。私は会社員生活が長かったんですが、人間関係って難しいですよね。普段は我慢していても、「やってられるか!もう辞めてやる。」なんて感情的になることもあります。しかし、理性的に考えると、会社を辞めて家族とどうやって食べて行くのか?子供の学校はどうするのか?そんなことを考えて、普通はぐっと我慢します。しかし最終的に我慢できず、辞表を出したとします。

これを肯定的にとらえると、「やっと、今までの偽りの生活を捨てることができた。熱情(passion)をもって、本来の自分に戻れたんだ!」となります。

一方、同じことを否定的にとらえると、「一時の怒りの感情に、身を任せて(passive)しまった。自分をコントロールできずに恥ずかしい。」ということになるのです。どちらが「正しい」ということもないでしょう。私もそうですし、ほとんどの人が、この2つの気持ちの間で、揺れ動いていると思います。「こらえて生きるも男なら売られた喧嘩を買うのも男」なのです!(ふ、古いなあ。何のことか分かりますか?)

弁護士をしていますと、お客様のこういった、「理性で考えた損得勘定」と、「これは絶対に認められないという感情」に向き合うことが多々あるのです。

刑事事件のお客様で、「自分は絶対にやっていない!」という方は相当数いらっしゃいます。電車の中の痴漢事件など多いですね。弁護士としてはどうしても、理性に基づく損得勘定で話してしまいます。「本気で争えば何年もかかります。勝てるかどうかも分からない。たとえ勝てても、それまでに、家庭も崩壊してしまうのが普通です。腹も立つでしょうが、示談して穏便に終わらせる方が絶対に得ですよ。」

問題社員を首にしたら、逆に訴えられたなんて経営者の方も沢山います。「とんでもない奴だ!たとえ負けても、最高裁まで戦ってやる!」なんて言われたことは、何度もあります。その度に、「怒りに支配されてはダメですよ。冷静に、他の従業員や家族のことを考えて下さい。」なんて言ってきました。今考えると、本人の気持ちを無視した発言に思えるのも事実です。私自身、損得なんか考えずに、熱情の赴くまま行動して、たとえ損しても、「ああ、すっきりした!」と思ったことは何回もありますから。ううう。。。

そうは言いましても、やはり弁護士としては、まず損得を考えて、「感情に支配されてはダメですよ。」とアドバイスするのが筋のように思います。それで思いとどまる人は、最初からその程度の「熱情」だったのでしょう。行動してしまえば、絶対に後から後悔するはずです。私がいくら止めても、「これだけは絶対に許せません!」というお客様は、たとえ損したとしても、本気で何とかしようとしている人だと思います。

そんなお客様には、私も「熱情」を持ってついていく。そんな弁護士になりたいものです。

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◇ 弁護士より一言

高校生の娘は、英語の勉強のため、留学したいと言っていました。ところが先日、「もう英語分かったから、留学しないでもいいかも。」なんて言います。娘によると、海外のレストランで注文できるくらいの英語力を身につけるため、留学したかったそうです。

ところが、メニューを適当に指さして、「This one, please.」と言えばよいことが分かったとのこと。あ、あほか!もっとも私も、アメリカに住んでいたとき、レストランで同じように注文していたのでした。
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