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2018年06月01日発行第222号”弁護士のマルクス主義”

平成30年 6月 1日(金):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成30年6月1日発行第222号「弁護士のマルクス主義」をお届けします。

○大山先生からマルクス主義の話が出てくるとは想定外でした。私の学生時代、マルクスの資本論くらい読んでおきべきなんて言われていたような気もしますが、私は、表題くらいしか読んでおりません(^^;)。唯物論・唯心論なんて、学生時代少しだけかじったような気もしますが、忘却の彼方です。大山先生は、資本論までキチンと読みこなしていたんですね。流石、幅広い勉強家です。

○無産階級を規律するのが「刑法」なんて考え方も初めて知りました。「刑法」は、「人を殺すな」なんて1行も書いてなく、刑法は、一般国民を規律する法律ではないと言う説明は聞いたことがあります。刑法第199条(殺人)は、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定しています。この規定は、刑事裁判官に対する命令であり、刑法違反ができるのは裁判官だけということです。言われてみると確かにそのとおりです。ついでに刑事裁判で裁かれるのは、被告人ではなく、検察官であると説明されています。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士のマルクス主義


マルクス主義だなんて、最近はほとんど忘れられた存在です。しかし私が子供の頃までは、「マルクスを知らずば人にあらず。」みたいな感じでした。深遠なマルクスの学問を理解できないことに絶望して、自殺した人まで出たそうです。経済学の世界でも、「マルクス主義経済学」なんて、とてももてはやされてましたよね。

いまでは「マル経」なんて言えば、嘲笑の対象でしょう。経済どころか、少し前までは、「マルクス主義法学」までありました。法律の世界でもマルクスは大まじめで取り上げられていたのです。今の時代では、「法律の専攻は何ですか?」と聞かれて、「マルクス主義法学です。」なんて人がいるとは、とてもじゃないけど想像できません。ことほど左様にマルクスの評判は悪化したのですが、私個人としては、マルクス大先生は、メチャクチャ凄い人だと思っています。

「マルクス主義法学」は、確かに、実務では何の役にも立たないでしょう。しかし、近代市民社会以降の、法律の基本構造を理解するという点では、私はマルクス先生に教えて貰いました。現代の法律は、大きく分けて3つの分野に分かれるんですね。1つ目は、憲法のような国の基本を決める法律です。次は、民法といった、一般市民の間の、主に経済的な問題について定める法律。そして最後に、刑法のような、違法行為をしたものを処罰する法律です。

こういう毛色の違う3種類の法律があることは、法律を勉強した人は誰でも知っています。しかし、この3種類の法律の意味と言いましょうか、位置づけを教えてくれたのはマルクス先生だけでした。現在の法律は、近代資本主義社会が成立し、新たに力を付けてきた、資本家・資産家階級が作ったものなんですね。そんな資産家たちが、旧権力者の支配する「国家」に対して、自分たちの自由を保証しろと突き付けたのが「憲法」です。資産を持っている、自分たち同士の争いを解決するためのルールとして作ったのが「民法」です。そして、資産を持たない、無産階級を規律するために作ったのが「刑法」ということだそうです。この説明を聞いたときに、「なるほどそう考えればすっきりするな!」と、腹に落ちた気がしたのでした。(こう理解したからといって、個々の法律問題の解決には役立ちませんが。。。)

マルクス主義の一番のポイントは、世の中の事象を、経済状況である「下部構造」と、思想・芸術や政治制度などの「上部構造」に分けて考えることです。そして、上部構造は下部構造によって決まってくるのだと喝破したのです。初めてこの考えを知ったときには、なるほどマルクスは天才だなと感動しました!

その一方、「人間の気持ちなんて、経済状況によって変わってくるものだ。あとからもっともらしい理屈をつけても、根本原因は経済状況にあるんだ。」ということは、ごく一般の人も理解しているように思えます。娘の結婚相手について「どんなに今好きでも、経済力の無い相手だと、いずれはうまくいかなくなるよ。」とアドバイスする親の方が多数派でしょう。女性の非婚率と離婚率の増加は、女性の収入の増加に比例して起こっていることも、はっきり口に出さなくても、皆さん気が付いているはずです。

弁護士の場合は、職務上、離婚の相談などよく受けることがあります。離婚したい理由はそれぞれ納得のいくものがあります。それ自体に嘘はないと確信しています。しかし、離婚する家庭の資産状況、親の資産状況、それぞれの職業と収入が、離婚しようという気持ちに及ぼす影響は、無視できないのです。

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◇ 弁護士より一言

マルクスの未亡人が「遺産としては、資本論より資本を残して欲しかった。」と愚痴を言ったという笑い話があります。なるほどという気もしちゃいます!

少し前に、妻が息子に、「ママは若いころは凄くモテたのよ。」なんて、下らない自慢をしてました。それに対して息子が、「ママの嘘を見破ってやったぞ。」みたいな得意顔で言い返したんです。「それなら、なんでパパと結婚したの?」あ、あんまりな言い草だろ!パパは、マルクスほどの偉人にはなれなくても、マルクスより資本を残すぞと決意したのでした。
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