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2019年07月16日発行第249号”弁護士の弁明”

令和 1年 7月16日(火):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和元年7月16日発行第249号「弁護士の弁明」をお届けします。

○ソクラテス、プラトン、アリストテレスというギリシャ哲学の偉人の名前だけは知っていますが、誰が何をして何を残したかなんて、昔、世界史や倫理社会等で習ったと思われますが、忘却の彼方で殆ど覚えておらず、勉強し直そうなんて気は全くありまません(^^;)。

○それを大山先生は、今でも読み直しているようで、その勉強意欲にはただただ恐れ入ります。ソクラテスというと、妻クサンティッペが悪妻だったと言うことくらいしか覚えていませんが、この話は、創作も多く、本当に悪妻であったのかどうかは不明であるとのことです。

○ソクラテスは弟子たちから脱獄を勧められたとき、「悪法もまた法なり」と、悪法であっても法を侵す行為をしてはならないと信じて自殺したといわれるそうですが、この自殺も、魂の永遠を信じ、死は恐れるに足りないと信じたためであり、彼が法律遵守の観点から死刑を受け入れたのかは疑問であるとの解説もあるようです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の弁明


プラトンの「ソクラテスの弁明」です。ソクラテスへの死刑判決がだされた裁判の記録ですね。2400年以上前の話ですが、今読んでも非常に感動します。

ソクラテスといえば、「汝、自らを知れ」と、皆に教えて回った人です。でも私だって、「自惚れ屋で利己的な自分自身」なんて真実を他人から突き付けられたくないです。40歳になってから結婚相談所に行って、「20代の女性をお願いします。」という男性が沢山いるそうです。こういう人に、「自分自身を知って下さい。何故あなたみたいなおじさんと結婚したがる若い女性がいると思うんですか?」なんて真実を伝えると、怒って脱会しちゃいます。こういう場合には、「なかなか難しいですが、一緒に頑張りましょう!」と言わないといけないんですね。

ソクラテス先生にも、この程度の世間知があれば良かったんですが、皆に「真実」を告げた結果、憎まれて裁判にかけられてしまいます。多くの支援者が、ソクラテスを助けようとして良いアドバイスをします。しかし、ソクラテス大先生は頑固ですから、そういうアドバイスは一切採用しないんです。「同情をひくために、涙を流してみせたり、親兄弟妻子を法廷に連れてきた方が良い」などと言うアドバイスは一蹴します。「裁判がそのようなことで左右されるのは、国民にとっても国家にとっても不名誉なことだ」なんて正論を言います。

そ、それはそうかもしれませんが、そんなこと言ったら刑事弁護が出来なくなります。私なんか、裁判を受ける被告人に対して、「結婚したとか、子供が生まれたとか、親が重病とかいうことありませんか?」などといった、少しでも有利になりそうな事情を確認します。ソクラテスが何と言おうとも、刑を軽くするために、出来ることなら何でもするのが弁護士の仕事なんです。

こんなソクラテスに対して、親身に忠告する人もいました。「そんな弁明をしていると死刑になることが分からないのか?」というわけです。これに対するソクラテスの返答が凄い。「自分のしている行為で、どういう結果が出るか分からないようなら、愚か者といわれてもしようがない。自分は、このままでは死刑になることは十分に分かっている。それでも間違ったこととは闘う。」というわけです。

学生の頃にこれを読んで、「ソクラテスはエライ人だ。」と感動もしましたが、「なんか頑固な、変な人だな。」とも、同時に思ったのです。弁護士をしていると、ソクラテスみたいな主張を依頼者から聞くことがよく有ります。例えば労働問題ですね。日本の法律では、相当問題のある社員でも解雇はできないことになっています。「挨拶もできない。お客様にお茶を、ドンと音を立てて乱暴に出す。顧客を怒らせ、他の社員の悪口ばかり言っている。いくら注意してもきかない」社員だからといって、法律上解雇は認められないんです。

「それがルールです。ルールに則ってゲームするしかありません。」と説得すると、多くの経営者は、しぶしぶでも納得してくれます。しかし、依頼者の中には、ソクラテスみたいな人もいるんです。「ルールが何かは理解した。このまま争っても、負けることも了解した。それでも、こんな間違った法律は、争わざるを得ない。最高裁まで闘う!」みたいに言われちゃいます。

もっとも、中には実際に負けると、文句を言ってきそうな依頼者もいます。そういう人には、「自分自身を知って下さい。負けて損したら我慢できないでしょう。」と伝えたいんですが、中々言えない。「一緒に頑張りましょう!」と結婚相談所みたいなことを言ってしまうのです。

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◇ 弁護士より一言

この「一言」は、クスっと笑ってもらえるように作りたいのですが、最近なかなか難しい。10年以上続けている中で、子供もすっかり大きくなり、面白いネタをパパに提供してくれなくなったのです。そんな中、頑張って「一言」を書いて妻に見せると「なんか最近面白くないな。」なんて言われます。そのやり取りを聞いていた中学生の息子が、「ママ、もっとオブラートに包んで言ってよ。『一緒に頑張ろうね。』って励ましてあげて!」と忠告してくれました。
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