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2023年06月16日発行第343号”弁護士の老年法”

令和 5年 6月16日(金):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和5年6月16日発行第343号”弁護士の老年法」をお届けします。

○未成年の少年による重大事件が発生する度に少年事件が増えている如くオーバーに報道されますが、少年事件数は昭和40年108万件をピークに令和3年4万6978件とピーク時の4%に、また刑事事件も昭和40年520万件をピークに令和3年84万件とピーク時の16%に激減しています。

○65歳以上高齢者数は、昭和55(1980)年1064万人、平成12(2000)年2051万人、令和3(2021)年3612万人と増え続け、令和27(2045)年頃3856万人のピークに達し、その後、人口減少に伴い、減少に転じると予想されています。

○激減中の刑事事件で高齢者が占める割合がどうなっているかの統計は不明で、ここ10数年刑事事件から離れている私にも全く不明です。しかし、現在も刑事事件を多数取り扱っている大山先生には、高齢者犯罪者が増えていると実感されているのかも知れません。私も虞犯老人として老年院送りにならないよう自制します(^^;)。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

”弁護士の老年法”


少し前に、3億円もの高級腕時計の強盗事件がありました。未成年の少年達による犯行ということで、大きく報道さたのです。こういう事件が起こりますと、必ず少年法が問題視されます。「悪い奴らが少年法で守られているのはけしからん」というのがよく聞く主張です。「未成年だからって、甘やかすな!」くらいのことを、多く人が言っているようです。確かに、もっともな主張にも思えます。

しかし一見すると少年が悪いように見えても、まだ分別の足りない子供なのだから社会として守っていこう、というのが少年法の考えとなっています。少年が加害者ではなく被害者となる場合には、一般的に世間は同情的で、この少年法の考えを認めているようです。それがまさに、少年法の考えですね。うちの事務所では、児童買春事件の弁護などよく行っています。言うまでもなく、児童を買った大人が犯罪者で、買われた児童は被害者です。

ただ「被害者」の中には、セミプロみたいな人がいるのも事実なんです。そんなとき、犯人の中には「自分の方が誘われた被害者だ」くらいのことを言い出す人もいます。見方によってはそうかもしれませんが、「間違っても警察や検察で、そんなこと言わないで下さい!」と注意することになります。そもそも、少年法廃止をネット等で言っている人たちですが、少年法のことを誤解しています。「少年の罪を軽くするだけの法律」みたいに思っていますが違うんです。正しくは、「少年の重い犯罪は軽く処分する一方、軽い犯罪の場合は事実上重く処分する」という法律です。大人なら罰金で済むような事件が、少年の場合は処遇を検討するという名目で少年鑑別所に、更生のためという名目で少年院に入れられるなんてことはよくあります。さらに少年の場合は、家に寄り付かなかったり、悪い友達と付き合っていたりして、将来犯罪を起こしそうという「虞犯」(ぐはん)の状態でも、法的処分の対象になるのです。

ということで、少年法についての私の意見です。今の日本で必要なのは、少年法をなくすことではなくて、少年法の精神を引き継いだ「老年法」を制定することだと考えています!英語でも老人のことを、「セカンドチャイルドフッド」なんていう言葉があります。年を取ると、子供返りするのです。そいえば、「勲章を欲しがる7歳 70歳」なんて川柳がありました。老人と子供は、かなり似てくるのは間違いないようです。そうであれば、重大犯罪などの場合、少年と同じく老人も、処分を軽くすることは考慮に値します。子供返りして、分別の無くなった老人を、社会として守っていく必要があるからです。

実際、現行の刑事訴訟法では、70歳以上の人の場合、刑の執行を停止できるなんて規定もありますが、老年法はそれをさらに進めたものといえます。中国で二千年以上前に書かれた礼記(らいき)でも、7歳以下と80歳以上は罪を犯しても罰しないと定められていたそうです。つまり老年法は、中国古典の精神にも合致しちゃうのです!もっとも、少年法に反対する人たちは、老年法に対しても同じように反対しそうです。でも、老人が死刑や無期懲役に相当するような、重い罪を犯すことはまずありませんから、その点を心配するのは少しずれてる気がします。

お店で店員さんに暴言をはいたり、道でことさら人にぶつかったり、若者に無茶な説教をしたりと、社会に迷惑を掛ける人が多数派です。こういう人達は、将来より重い罪を犯す可能性のある「虞犯老人」たちと言えちゃいます。しかし、刑法をはじめとする今の法律では、「迷惑老人」「虞犯老人」に十分対応できませんでした。そこで「老年法」の出番です。「老年鑑別所」で一定期間拘束して、虞犯老人の処遇を検討できます。さらに必要に応じて、「老年院」に入ってもらうことで、今後の更生も期待できちゃいます。もっとも「俺は老年院帰りだ!」なんて、かえって威張る老人も出てきそうで、心配は残るのでした。

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◇ 弁護士より一言

「老年法」のアイデアを家族に話しました。「人は年を取ると、脳の機能が劣化して感情を抑えられなくなる。そこから切れやすい老人が生じてくる」なんて説明してたら、「それって、パパだね!老年院に入れられないように気を付けて。」と言われました。「し、失礼な。。。」と、ムカッと来ましたが、ここで切れたらいけないと、必死で怒りの感情を抑えたのでした。
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