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保険会社への直接請求裁判の判決例紹介1の3

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平成20年 7月10日(木):初稿
(判決続き)

2 請求原因に対する認否
(1)請求原因(1)は,訴外有子の死因が脳挫傷である点については否認し,その余は認める。

(2)請求原因(2)は否認する。

(3)請求原因(3)は認める。

(4)請求原因(4)は認める。

(5)請求原因(5)は争う。ただし,訴外有子は,国民年金と遺族年金を年間約204万円受給しており,本件事故当時82歳の高齢で,聴覚,視覚に障害があったことを考慮すると,逸失利益の基礎収入は,年間100万円以下とするのが相当である。生活費控除を30パーセント,就労可能年数を4年(ライプニッツ係数3.546)として訴外有子の逸失利益を計算すると,248万2200円となる。
 100万円×(1-0.3)×3.546=248万2200円
 原告甲野の慰謝料は,180万円,原告丙野,原告丁野の慰謝料は各90万円が相当である。

(6)請求原因(6)は知らない。

(7)請求原因(7)のうち,原告甲野が,平成18年10月31日、被告乙共済連から自賠責保険金合計1727万0850円を受領したことは認め,その余は争う。

3 抗弁(過失相殺の評価根拠事実)
(1)本件事故現場の道路は国道286号線であり,片側3車線の幅員10.4メートルの直線道路で,対向車線とは中央分離帯で区分されている。中央分離帯には高さ約1メートルの植栽が施されているため,反対車線の見通しは困難である。
(2)本件事故現場の道路には横断歩道はなく,歩行者のための地下通路がある。
(3)訴外有子は,国道286号線をほぼ東から西へ横断し,中央分離帯をすぎて第3車線に進入しようとしたときには,左手から第2車線を訴外庚野車,第3車線から加害車両が進行してきていたが,これらの車両の動向に注意せず横断を継続した。
(4)上記訴外有子の過失を考慮するとその過失割合は4 0パーセントとするのが相当である。

4 抗弁に対する認否
 抗弁は否認する。

5 再抗弁(過失相殺の評価障害事実)
(1)本件道路は,横断禁止場所ではなく,横断禁止の標識もない。
(2)訴外有子は本件事故当時82歳の高齢者であり,かつ,難聴の身体障害者であった。
(3)本件道路周辺は住宅街である。
(4)訴外己野は,時速50キロメートルの高速で進行中に,車内のダッシュボードから助手席に落ちたノートを拾うために上半身を助手席側に屈めて進路前方から視線を3ないし5秒問もの長い間はずし,前方を全く見ることなく運転をしていたものである。
(5)これらの事情を考慮すると,本件事故は,訴外己野の一方的過失によって発生した事故であり,訴外有子に過失は全くない。

6 再抗弁に対する認否
 再抗弁は否認する。

理由
1 請求原因(1)の事実のうち,訴外有子の死因につき,甲2によれば,訴外有子は,本件事故により,頭部挫創,急性硬膜下血腫の傷害を負った外,財団法人○×病院に搬送されたときにはショック状態で,採血上著明な貧血があり,受傷から4時間40分後に,出血性ショックで死亡したことが認められる。その余の請求原因(1)の事実は,当事者間に争いがない。

2 訴外己野が前方不注視のまま加害車両を運転して進行し,本件事故が発生したことは当事者間に争いがなく,甲8の1ないし10によれば,本件事故状況について,次の(1)ないし(4)のとおりの事実を認めることができる。
(1)本件事故現場は,国道286号線と,これに△方面からほぼ東西に交わる幅員約5メートルの道路が丁字形に交差している交差点で,国道286号線は,歩道と車道が区別され,片側3車線(幅員約10.4メートル)で,高さ約1.0メートルの植栽が植えられた中央分離帯で区分されている。本件事故現場の交差点には,歩行者用の地下通路が設けられていた。なお,本件事故現場付近は,横断禁止場所とはされていないが,上記歩行者用の地下通路があり,交通量が多く,速度規制もないので,歩行者が自由に横断できる場所とは言い難い状況にあった。

(2)訴外己野は,加害車両を運転し,国道286号線を×○方面から×△方面に向けて時速約50キロメートルで走行中,ダッシュボードから助手席側に落ちたノートを拾おうとして助手席側に上半身を屈めたため,数秒間前方を注視せずに走行した。

(3)そのため,訴外己野は,加害車両の進路前方を右方から左方へ横断歩行中の訴外有子を前方約9.4メートルの地点に至ってようやく認め,右転把したが間に合わず,自車左前部を同人に衝突させて,訴外有子を路上に転倒させた。

(4)その結果,訴外有子に,頭部挫創,急性硬膜下血腫等の傷害を負わせ,出血性ショックにより死亡させた。

(5)上記認定の事実によれば,訴外己野は,自動車運転者としての基本的な注意義務である前方左右を注視すべき義務に違反し,進路前方を全く注視しなかった過失によって加害車両を訴外有子に衝突させたといえるから,訴外己野には民法709条ないし711条,自賠法3条により,訴外有子及び原告らに対する損害賠償責任があるということができる。

3 請求原因(3)(保険契約の締結)の事実は,当事者間に争いがない。

4 請求原因(4)(訴外己野への損害賠償請求権不行使承諾)の事実は,当事者間に争いがない。

5 請求原因(5)(損害)について
(1) 訴外有子に発生した損害
 訴外有子の逸失利益について,248万2200円の限度では当事者間に争いがない。
ア 逸失利益 414万8947円
(ア) 基礎収入
  甲8の7(原告甲野の検察官に対する供述調書),甲9(原告甲野の報告書)によれば,訴外有子は,原告甲野夫婦及びその子供3人と同居し,その家事の大部分を担当していたことが認められる。
 訴外有子が,本件事故当時8 2歳という高齢であったことを考えると平成18年賃金センサス産業計・企業規模計6 5歳以上女子労働者学歴計の年間給与額(278万5800円)の6割である167万1480円を基礎収入とするのが相当である。
(イ)生活費控除
 訴外有子の生活費控除の割合を30パーセントとすることについては当事者間に争いがない(原告らは,平成19年7月2日付第2準備書面で生活費控除の必要がないと主張するものの,損害額の計算では30パーセントの生活費割合を控除した金額を主張している。)。
(ウ)就労可能年数
  4年(ライプニッツ係数3.546)とすることに争いはなく,相当と認める。
(エ)以上より,訴外有子の逸失利益は,414万8947円となる。
  167万480円×(1-0.3)× 3.546=414万8947円

イ 慰謝料1800万円
 甲8の7,甲9及び弁論の全趣旨によれば以下の事情が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
 訴外有子は,明るい性格で,原告甲野一家の中で生活し,原告甲野の妻がしている農業の手伝いをしていた。訴外有子には,友人も多く,老人クラブの活動をしたり,図書館から本を借りてきて読書をするなどしながら,老後の人生を楽しんでいた。訴外有子は,本件事故に遭遇し,突然その生命を奪われ,老後の人生を楽しむことができなくなった。これら,本件に現れた一切の事情を考慮し,訴外有子の慰謝料としては1800万円を相当と認める。

以上:2,952文字

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