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交通事故傷害での統合失調症発症に起因力3分の1認めた例

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平成23年 6月17日(金):初稿
○「統合失調症の再発による損害と交通事故との因果関係肯定例1」に続けて統合失調症(旧名称精神分裂病)と交通事故に傷害との因果関係を認めた例を紹介します。
昭和53年7月4日東京高裁判決(判時909号54頁、判タ378号136頁)で、精神分裂病の直接的原因は遺伝性素因にあるが、事故による頭部外傷も間接的誘因となりうるとし、事故の右疾病に対する起因力を3分の1と評価して、その限度で加害者の責任を肯定するのが相当としました。
 本件では、因果関係の競合や過失相殺による割合的減額は損害の全額についてなされるべきだとして、本訴請求の対象外である自賠責保険金についても減額の対象となることを認めていますが、この点は,現在は当然と考えられております。

○以下、統合失調症(精神分裂病)と交通事故による傷害との因果関係について判断した部分の判決全文を紹介します。

二 控訴人が本訴において主張する損害賠償請求は、主として右負傷そのものに関するものではなく、その後に発生した精神分裂症に関するものであるところ、控訴人が右精神分裂症は右負傷に起因して発生したものと主張するのに対し、被控訴人はこれを争い、本件事故を控訴人の精神分裂症との間には相当因果関係がないと主張するので、まずこの点について判断する。

1 一般に、精神分裂病は医学上遺伝性精神病とされ、遺伝性素因のない者は後天的な原因により発病することはありえないものとされ、法制度上も例えば優生保護法別表第一のようにそれを遺伝性精神病としている。ただし、頭部外傷が脳機質に損傷を及ぼす程度に達した場合脳病変を生じ後遺症として性格異常を来たすことがあり、往々にして精神分裂病と誤診されることもあるが、これは精神分裂病と異なるものである。

したがつて、本件事故後に訴控人が精神分裂病の発病をしたとしても、その直接的原因は控訴人の遺伝性素因にあるものといわざるをえない。しかし、事故による頭部外傷が精神分裂病発病の間接的誘因となることでも全く否定されているわけではなく、右外傷が精神分裂病の発病につきある程度の誘引力を有していたと認められる場合においては、両者の間に法的意味における因果関係を肯定すべきものといわなければならない。

(証拠)を総合すると、次の事実が認められる。
(一)控訴人は本件事故により左肘挫創、頭部外傷を負い、事故当日から7日間に4日通院治療して外傷は治癒し、昭和45年10月1日から同年12月24日まで左前腕骨不全骨折、頸部捻挫で柔道整骨師Aの治療を受け、その後山梨療養所では同年同月26日から昭和46年4月9日まで、昭和47年3月2日から同年6月19日まで、昭和48年6月13日から昭和49年3月16日までの3回にわたり、頭部打撲後遺症、精神分裂病様症状の病名で入院治療し、各退院後も引続き通院治療した。

右山梨療養所の当初の診断書(医師B作成の甲第6号証の1)によると、「病名1頭部外傷、2性格障害、事故後頭痛を頻回に訴え、また、急性錯乱状態の様にあり家具をこわしたり暴れたりする様になつた。昭和45年12月27日来院脳波検査の結果、意識障害の疑いあり入院し加療したが脳波上は軽度の改善を認めた。但し、性格上の問題については受傷前後の性格の違いがはつきりしない。昭和46年4月9日錯乱状態頭痛は消失し退院した。」との記載がある。

(二)控訴人は昭和49年3月13日から昭和50年4月7日まで山梨県立北病院に通院治療し、将来も引続き通院治療を要するが、同病院の医師Cは、控訴人は破瓜型と緊張型の中間位の精神分裂病であり、「精神分裂病は原因不明の疾患であるが遺伝的体質的素質の上に身体的心理的影響が加わつて発病すると一般に考えられている。従つて、発病前の種々の要素が綜合したものであり、この場合単に頭部外傷のみが唯一決定的な原因として関与しているとは考えない。しかし、本件においては、頭部外傷が重大な影響を与えたと考えている。なぜなら、外傷性の身体症状(頭痛など)と精神的症状(不眠など)が完全に治る前に、いやむしろ増悪傾向に引きつづいて急性錯乱状態となり、それが鎮静化したときに情意鈍麻を遺しているという経過があるからである。」としている(後遺障害診断の回答書―甲第11号証の3、更に原審における証人Cの証言)。もつとも、右病型は控訴人の年齢19ないし20歳ころ発病し易いものであるが、これを考慮しても、なお右のことがいえるという。
 以上の事実が認められる。

2 右認定事実によると、他に別段の証拠のない本件においては、控訴人の精神分裂病の発病については本件事故が間接的な誘因をなし、しかもそれがかなりの影響力を有していたものと認めるのが相当であり、そうである以上本件事故と控訴人の右疾病との間には因果関係が存することを否定しえず、前記1説示と合わせ考慮すると、不法行為上の損害賠償責任の関係においては、右起因力を3分の1と評価し、その限度における被控訴人の賠償責任を肯定するのが相当である。


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