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追突事故での統合失調症発症との因果関係を認めた判例全文紹介2

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平成25年 6月11日(火):初稿
○「追突事故での統合失調症発症との因果関係を認めた判例全文紹介1」を続けます。
事案の概要の内争点部分です。


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2 争点
(1) 本件交通事故の責任原因及び過失割合
(原告の主張

 訴外丁山は、本件交通事故発生場所の交差点を右折進行するにあたり、前方を注視して進行する注意義務を怠り、前方を進行していた原告車の動静を注視せず、訴外丁山車の右前部を原告車の左後部に追突させたものであるから、訴外丁山は、民法709条(人的損害については他に自動車損害賠償保障法3条)に基づき、原告に生じた損害を賠償すべき責任を負担している。
 被告らの過失相殺の主張は、否認ないし争う。

(被告らの主張)
 本件交通事故につき訴外丁山に前方不注視の過失があることは、認める。
 ただし、本件交通事故の態様は、接触時点でこそ訴外丁山車による原告車への追突というのと類似するとは言え、原告車による訴外丁山車の前方への割り込みが主な原因をなしている。

 訴外丁山車による追突と見た場合でも、原告車が、その前の車が進んでいるにもかかわらず、急ブレーキをかけて停止したため、訴外丁山がブレーキをかけたが間に合わず、訴外丁山車が原告車に追突したというものである。よって、別冊判例タイムズNo.16の第107表を参照して、30%の過失相殺がなされるのが相当である。

(2) 本件交通事故によって生じた原告の損害
(原告の主張)

(ア)入院雑費 1万2,000円
 次の計算式による。
 1,500円日×8日=1万2,000円

(イ)付添交通宿泊費 1万7,130円
 原告の入院に付き添うための諸費用である。

(ウ)通院治療費 7万5,420円
 前記1(2)のイのB病院神経精神科への通院治療のうち、平成20年1月以降の分の費用である。なお、症状固定日までの治療費は、被告Y保険会社により填補済みのため、本訴請求から除外している。

(エ)通院交通費 22万8,000円
 前記1(2)のア(イ)、(ウ)及びイの各通院のために要した交通費である。

(オ)文書料 5万3,445円

(カ)休業損害 132万5,199円
 前記1(2)の入通院の状況からして、少なくとも本件交通事故後3ヶ月間を休業期間とし、平成19年賃金センサス高専・短大卒35~39歳年収額530万0,800円を基礎収入として、次の計算式による。
 530万0,800円÷12月×3月=132万5,199円

(キ)入通院慰謝料 200万円
 前記1(2)の入通院の状況からすれば、上記金額が相当である。

(ク)逸失利益 4,691万0,383円
 原告は、本件交通事故により、頸椎捻挫、頸部神経根症となり、頸部重苦感、両上肢痺れ感の後遺障害が残り、これは少なくとも「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、自賠法施行令別表第二の第12級13号に該当するものであり、これによる労働能力の喪失は14%である。

 さらに、原告は、本件交通事故のストレス(本件交通事故の処理に関する訴外丁山及び被告Y保険会社の不当な対応によるストレスを含む。)により、統合失調症を発症し、幻覚(幻聴、幻視)、体感幻覚、不安、緊張、攻撃性、被害妄想、不眠、身体症状(頭痛、吐気)、頭痛、不安の症状が残り、これにより全く就労ができない状態となっている。このように原告の労働能力の喪失は100%であり、統合失調症が本件交通事故のみを原因として発生したとは断言できないことを考慮しても、本件交通事故は統合失調症の発症に少なくとも2分の1の割合で関与している。

 以上を総合すると、原告は、本件交通事故により、合計64%(=14%+100%×2分の1)の労働能力を喪失したものであり、控えめに見ても自賠法施行令別表第二の第7級相当の後遺障害を残し、前記(カ)で休業期間の終期とした本件交通事故後3ヶ月経過時点以降67歳までの就労可能年数32年にわたり(ライプニッツ係数は15.803)、労働能力を56%喪失したものと言える。
 以上により、平成19年賃金センサス高専・短大卒35~39歳年収額530万0,800円を基礎収入として、次の計算式による。
 530万0,800円×56%×15.803=4691万0383円

(ケ)後遺障害慰謝料 1,100万円
 上記(ク)に述べたとおりの後遺障害(自賠法施行令別表第二の第7級相当)からすれば、上記金額が相当である。

(コ)物損 12万7,628円
 本件交通事故による原告車の破損の修理費である。

(サ)弁護士費用 600万円

(シ)(ア)ないし(サ)の合計額 6,774万9,205円

(ス)損害の填補 184万7,429円
 原告に対しては、平成21年2月13日に原告契約保険会社である訴外E保険会社より人身障害補償保険金として109万7429円が、平成21年4月3日に被告W保険会社より自賠責保険金75万円が、各支払われた。

(セ)(ス)による填補後の損害額(平成21年4月3日経過時点)
 (ス)の各支払いはいずれも上記(シ)の損害合計額に対して事故発生日から年5分の割合で発生する遅延損害金に充当された。その結果、平成21年4月3日経過時点での損害額は、損害元本6,774万9,205円、遅延損害金残金876万9,705円である。

(ソ)まとめ
 よって、原告は、被告Y保険会社に対し、任意保険の直接請求権に基づいて、損害賠償として7,651万8,910円及びうち6,774万9,205円に対する平成21年4月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めるとともに、被告W保険会社に対し、自動車損害賠償保障法16条に基づき上記金員のうち976万円(後遺障害等級7級の保険金額1,051万円-75万円)の支払いを求める。

(被告らの主張)
ア 本件交通事故に起因して原告に人的損害が生じたことを否認する。
 本件交通事故による原告車に生じる衝撃は軽微であり、原告に何らかの身体影響が生じることは、常識に照らして、考えがたい。
 統合失調症についても、本件交通事故との因果関係はない。
 訴外丁山に物損を賠償すべき責任のあることは認める。

イ 原告の主張する各費目については、(コ)の物損は不知とし、その余は否認する。
 原告の頸部から両肩部にかけての重苦感、両上肢痺れ感等の後遺障害は、他覚所見が存在しないから、これにつき「局部に頑固な神経症状を残すもの」として自賠法施行令別表第二の第12級13号に該当する旨の原告の主張は失当である。
 統合失調症については、上記のとおり、本件交通事故との因果関係はないし、仮に本件交通事故が統合失調症の発症に関与するところがあったとしても、大幅な素因減額が行われるべきである。

(ス)の損害の填補に関しては、原告の主張の他、238万8,687円が原告に支払われている。


以上:2,831文字

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