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平成30年版赤い本下巻”整骨院における施術費について”紹介3

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平成30年 5月25日(金):初稿
○「平成30年版赤い本下巻”整骨院における施術費について”紹介2」の続きです。

第3 必要かつ相当な施術行為の費用と認められない場合の損害の範囲
 整骨院での施術が必要かつ相当な施術行為の費用と認められない場合の損害の範囲の考え方
(1)保険基準説と割合説
 交通事故の被害者の場合、整骨院における施術の全てについて必要かつ相当な施術とは認められず、施術が損害として一切認められない事案は多くない。
 そこで施術費の一部が損害として認められる場合の範囲の定め方が問題になる。
ア 保険基準説
 施術費について労災保険料の1.5~2倍を上限の目安にする考え方
 整形外科医において過剰・濃厚診療が行われた事案において、裁判例の多くが社会保険上の診療報酬算定基準額の概ね2倍(1点単価20円)を超えた場合には交通事故との相当因果関係を欠くとされることから、施術費も同様に考えるべき
 より低額な健康保険算定基準を用いるのが相当とする考え方もある

イ 割合説
 施術の期間、料金、施術の必要性等の種々の事情を斟酌して、施術費総額の何割かという限度で認める考え方

(2)平成15年以降の裁判例の傾向
 保険基準説による裁判例は少数で、多くは割合説による処理をしている。
 症状固定日までの施術期間のうち、施術の必要性、相当性が認められる特定の日までの施術費を認める処理もある

(3)裁判例の紹介
 以下、最近の裁判例での施術費判断部分を紹介します。

ア 平成23年5月10日京都地裁判決(自保ジャーナル・第1855号)

原告は、本件事故により、右肩関節不全損傷の傷害を負い、本件事故後からB大病院整形外科で加療を受けていたところ、同科の医師により、整骨院における施術の指示又は紹介がなされた事実は窺えず、かえって、平成19年6月8日、「接骨院への紹介は書けない」旨説明した事実が認められる。しかし、証拠(略)によれば、B大病院整形外科の医師は、保存的療法と手術療法を検討し、保存的療法が望ましい旨の判断を行い、運動療法によるリハビリの必要性を認めていたこと、平成19年7月25日の診療録には、接骨院でマイクロウェーブ、近医の整形外科で筋力訓練、可動域訓練中である旨の記載があるところ、前記の原告の通院経過及び証拠(略)によれば、この訓練はC院における運動療法等であると推認でき、これら訓練の医学的な必要性自体は否定できないものであること、平成19年12月21日時点においても丁山医師は、保存療法が必要との判断をしており、D病院を紹介したこと、原告は、この紹介を受けて、平成20年1月12日でC院での施術を終了し、平成20年1月7日からD病院でのリハビリを行っていること、D病院でのリハビリの頻度は、C院における頻度とほぼ同程度であったこと、C院における施術により疼痛及び可動域がやや改善したことがそれぞれ認められる。以上を踏まえれば、C院における施術には、医師の指示はないが、一定の医学的必要、効果があったものと認められ、その施術料の8割の限度で治療の必要性、相当性があるものと考える。

イ 平成28年6月3日東京地裁判決(LEX/DB)
原告は,同年3月13日,ひらの整形外科の医師に対し,「仕事が終わるのが遅いので妻が行っている接骨院に行きたい」と述べたところ,同医師から「保険会社がいいならどうぞ」と言われ,被告の任意保険会社の承諾を得て,ハピネス整骨院に通院したことが認められるから,同整骨院の施術については一応必要性・相当性があると認められる。しかし,原告の通院回数は166日中138日(前記前提事実)と頻回であり,施術費は合計65万7770円(甲6の〔3〕,〔5〕,〔7〕,〔9〕,〔12〕,〔14〕)に及んでいることからすると,本件事故と相当因果関係のある施術費は65万7770円の7割である46万0439円と認めるのが相当である(なお,被告の任意保険会社が同整骨院に施術費を全額支払った事実(甲7,弁論の全趣旨)は,この判断の妨げにならない。)。

ウ 平成27年2月26日大阪地裁判決(ウエストロー・ジャパン)
原告は,平成24年4月12日から同年11月5日までの間,山下鍼灸接骨院に通院して施術を受けている(実日数77日)。この点,松本病院の医師から,頚部及び腰部につき,柔道整復師の施術が必要であるとして,消炎鎮痛処置の指示があったことは,前記イ認定のとおりである(また,松本病院の平成26年8月28日付け診断書(甲15)には,「初診日(平成24年4月28日)より両手関節の痛みあり。接骨院で,上記傷病(頚椎捻挫,腰部捻挫,両手関節捻挫)のリハビリが必要であることを認める。」と記載されている。)。そして,松本病院受診時の原告の症状等も考慮すると,少なくとも頚部,腰部,右手関節部については,接骨院における施術の必要性を肯認できるというべきである。もっとも,松本病院への通院が月1回から2回程度,多くとも月3回にすぎなかったのに対し,山下鍼灸接骨院への通院は概ね3日に1回程度であり,松本病院に比べて頻繁であったこと,にもかかわらず,山下鍼灸接骨院での施術が終了した平成24年11月の時点では,腰部の鈍痛や違和感,右手関節部の疼痛が残存している状況にあって(甲6の8),7か月近くに及んだ山下接骨院での施術により明らかに施術の効果が上がったとはいい難い面があることは否定できない。
 したがって,山下鍼灸接骨院の施術費については,平成24年4月12日から同年11月5日までの施術費合計額(甲6の1の1~6の8)の5割の限度(34万2780円)で本件事故と相当因果関係があるものと判断するのが相当である。

エ 平成26年9月9日大阪地裁判決(交民集47巻5号1118頁)
ア 以上によれば、①整骨院治療を望んだのはもっぱら原告であり、医師等医療関係者からの発案ではないこと、②原告から相談を受けた医師は、勧められない旨返答しており、これは西洋医学の立場から当該事案における整骨院治療を不相当と考える旨の意見表明と考えられること、③原告の整骨院への通院は約5ヶ月間で54日間にも及んでおり、かつ総通院日数の4割を占めていて、治療全体の中では過大な割合であるといえること等の事情が認められ、これらに照らすと、整骨院治療の相当性を認めるのは難しい。
イ 他方、④通院期間自体は事故から半年以内の期間に収まっており著しく長期にわたっているとはいえないこと、⑤施術録上施術によって一定の効果があったことはうかがわれること、⑥通院期間中に医師から重ねて整骨院での施術を強く抑止されるようなことまではなかったこと等の事情もあり、これらに照らすと、その根当性を完全に否定するのもまた相当ではない。
ウ 以上を総合し、本件においては、整骨院における施術関係の費用(施術費用及び交通費)につき、その25%に限って、本件と相当因果関係のある損害と認める。

オ 平成26年7月2日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)
 本件事故により車両に生じた損傷は小さく,本件事故は軽微な接触事故であること,原告は,衝突前から被告車両が接近してくるのを見ており,不意に衝撃を受けたものでないこと,本件事故による原告の傷害は骨折や神経学的所見のない捻挫や打撲のみであり,後遺障害も残っていないこと,原告は,平成24年10月16日以降,病院での治療は受けていないこと,医師の具体的指示がないのに,自らの判断でベイタウン整骨院に通い,平成24年10月19日から同年12月28日まで,週5日以上の頻度で施術を受けていること,その施術費用は,同年10月分が14万6390円,同年11月分が28万2290円,同年12月分が26万5010円であることがそれぞれ認められる。
 上記認定した原告の負傷状況や治療等の経過のほか,被告が原告の損害について具体的な反論等をしないことを考慮すれば,同年10月の施術費は本件事故と相当因果関係がある損害と認められる。
 しかし,原告の傷害内容,事故からの期間経過に照らし,被告が原告の損害について具体的な反論等をしないことを考慮しても,同年11月及び同年12月の施術回数は多数に過ぎるというべきであり,同期間の施術費はその2分の1の限度で本件事故と相当因果関係がある損害と認めるのが相当である。また,同様に,原告の傷害内容,事故からの期間経過に照らせば,平成25年1月以降,武田整形外科医院の処方に基づく調剤を受ける以外に,原告がベイタウン整骨院で施術を受ける必要性があったとは認め難いところ,同月以降の施術費は本件事故と相当因果関係を認めることはできない。
 よって,下記計算式のとおり,42万0040円の限度で本件事故と相当因果関係のある損害と認める。
 (計算式)
 14万6390円+(28万2290円+26万5010円)÷2=42万0040円
 エ 以上のとおり,本件事故と相当因果関係のある原告の治療費等として,45万8470円を相当と認める。
以上:3,692文字

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