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髄液漏れ一審判決否認を覆した名古屋高裁平成28年12月21日判決紹介2

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平成31年 1月28日(月):初稿
○「髄液漏れ一審判決否認を覆した名古屋高裁平成28年12月21日判決紹介」の続きで、損害部分についての判断を紹介します。後遺障害等級第12級が認められたにも拘わらず認容額約785万円は少ないと感じられますが、請求額が888万円であり、請求額の9割近い金額が認められていますので、被害者側完全勝利と評価できる判決です。

○髄液漏れが地裁・高裁いずれでも否認されて、上告受理の申立がなされ、上告受理しないとの最高裁決定を受ける交通事故損害賠償請求事件は山のようにありますが、本件の様に一審で髄液漏れが否認されて、控訴審で認められ、最高裁でも認められた事案は希有な例です。「髄液漏れ一審判決否認を覆した名古屋高裁平成29年6月1日判決全文紹介1」で紹介した判決は、上告受理申立はされていませんでした。

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6 争点(3)(控訴人の損害)について
(1) 治療費 36万6527円
 C病院において行われた2回にわたるブラッドパッチ治療等の費用として、合計36万6527円が認められる。
 なお、B整形外科における治療費につき、平成23年11月30日までの分は本件示談により支払済みとして請求されておらず、それより後の分は国保で支払われている。

(2) 交通費 3570円
 C病院に入通院した際のタクシー代として、少なくとも合計3570円が認められる。

(3) 入院雑費 8400円
 上記(1)にかかる入院雑費(1日1400円の合計6日分)として、合計8400円を認める。

(4) 文書料 2万0840円
 B整形外科における診断書等作成費用として、合計2万0840円が認められる。

(5) 休業損害 196万1400円
 控訴人の本件事故発生時の直近3ヶ月は、平成23年2月ないし同年4月であり、この間の控訴人の月収は、前から順に11万4000円、8万7000円、9万円であると認められる。したがって、その平均日額は、3269円(11万4000円+8万7000円+9万円)÷(28日+31日+30日)となる。
 控訴人は、本件事故による受傷から症状固定までの間、本件事故による傷害のため、直前まで行っていた幼稚園バスの運転をすることができなくなり、就労できず又は就労が著しく困難な状況にあったものと認められるから、休業期間としては、本件事故日である平成23年5月13日から症状固定日である平成26年3月3日までの1026日であることは認められる。

 しかしながら、前記2(3)イ、ウの診療経過からすると、控訴人は、平成24年3月に実施された1回目のブラッドパッチ治療により低髄液圧症候群の症状が緩和された後、同年7月頃には再び悪化の兆しがあり、遅くとも同年9月ないし10月頃までには悪化が顕著となっていたものと認められ、この頃には2回目のブラッドパッチ治療がなされていて然るべきであったといえるにもかかわらず、それより1年以上後の平成25年11月まで実施されなかったものである。仮に、これより早い平成24年9月ないし10月頃に控訴人に対する2回目のブラッドパッチ治療が実施されていたとすれば、同年中には控訴人の低髄液圧症候群が完治していた可能性は高いものと考えられる。そうすると、このような治療の遅延により生じた損害を全て加害者である被控訴人の負担とすることは、損害の公平な分担の見地から相当ではないから、休業損害額を算定するに当たっての休業期間としては、上記1026日の全期間とするのではなく、本件事故日である平成23年5月13日から平成24年末頃までの600日に限定されるべきである。
 したがって、休業損害として認められるのは、196万1400円(3269円×600日)となる。

(6) 後遺障害逸失利益 118万7362円
 控訴人の本件事故前3ヶ月の平均賃金は、前記のとおり1日当たり3269円であるから、年収は119万3185円となり、後遺障害等級12級13号の労働能力喪失率は14%である。また、就労可能年数は9年であり、ライプニッツ係数は7.108である。
 したがって、控訴人に認められる後遺障害逸失利益は、118万7362円(119万3185円×0.14×7.108)となる。

(7) 慰謝料
ア 入通院慰謝料 196万6000円
 控訴人は、本件事故日である平成23年5月13日から症状固定日である平成26年3月3日までB整形外科に通院し(実通院日数258日)、この間の平成24年3月9日から同月11日まで(3日間)、平成25年11月21日から同月23日まで(3日間)はC病院に入院していたものであり、通院期間は33ヶ月半強(実通院日 数258日)、入院期間は約1週間である。以上からすると、入通院慰謝料として控訴人が主張する196万6000円は相当額の範囲内ということができ、その全額を認めることが相当である。

イ 後遺障害慰謝料 290万円
 前記のとおり、控訴人の後遺障害の程度は少なくとも12級13号に該当し、控訴人は、症状固定後も現在まで治療が続いており、今後も治療が必要であることを考慮すれば、後遺障害慰謝料として控訴人が主張する290万円は相当額の範囲内ということができ、その全額を認めることが相当である。

ウ なお、上記アとイの合計額は、486万6000円となるところ、本件事故後、被控訴人の側の保険会社であるD保険会社の担当者が弁護士代理を無視して、後に無効とされるような本件示談を直接控訴人本人と成立させ、安価な示談金で済まそうとしたことや、被控訴人が控訴人に謝罪することもなく、控訴人の多大なる身体的精神的苦痛を慮ることもなく、本件訴訟について、賠償金目的の「残念な事件である」などと嘯いていること等の事後的な諸事情をも考慮すれば、上記金額は本件の慰謝料額として高きに失するとは到底いえない。

(8) 小計(上記(1)ないし(7)) 841万4099円

(9) 過失相殺後の金額 799万3394円
 前記5のとおり、上記(8)の金員から過失相殺として5%を減ずると、799万3394円となる(円未満切捨て)。

(10) 既払金 85万7000円
 平成23年11月30日までの入通院慰謝料として85万7000円が支払われたことにつき、当事者間に争いがない(前記2(4)の認定によれば、厳密には85万7000円から5%を差し引いて支払われているものとも解されるが、控訴人は既払金額として85万7000円を主張している。)。

(11) 既払控除後の金額(上記(9)-(10))
 713万6394円

(12) 弁護士費用 71万円
 上記(11)の金額の約1割程度である71万円を本件事故との相当因果関係のある損害と認める。

(13) 合計(上記(11)+(12)) 784万6394円

7 まとめ
 以上のとおりであるから、被控訴人は、控訴人に対し、自賠法3条に基づく損害賠償金784万6394円及びこれに対する本件事故日である平成23年5月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべきである。

第四 結論
 よって、以上と異なる原判決を本件控訴に基づいて変更することとし、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成28年9月28日) 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官 藤山雅行 裁判官 上杉英司 裁判官 前田郁勝
以上:3,049文字

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